「あか、さっき送ってきた写真。あれ何?」
「あ、お姉ちゃん見てくれたんだ。純平さんの願望、すっごく可愛くなかった?お姉ちゃん相手だと見せないよね。」
「一体何考えてるのよ。」
「見たままだけど。お姉ちゃんの婚約者、寝取ってみたみたいな。」
「ふざけないで。いくら何でもこれは──」
「ああ、そうそう。私、純平さんの子供妊娠しちゃったから。」
「は?冗談よね。」
「ガチガチ。後で検査の結果とか見せてあげる。奪っちゃってごめんね。私、純平さんと幸せになるから。お姉ちゃんの婚約者、いただきまーす。」
その日から、私の妹・愛花は本当にそうなった。私の婚約者を奪い、妊娠を告げ、私の前で幸せそうに笑った。
「本当に純平の子なの?他の男の子って可能性は?」
「いや、グイグイきすぎ。最近は純平さん以外とは関係持ってないから確定だよ。ってか、お姉ちゃん、脳破壊されてるじゃん。」
「…そう。おめでとう。よかったね。」
「え?いいの?ガチでやばくない?」
「自分から報告してきて、その言い草はないでしょ?」
「それはそうなんだけど、そのリアクションは違うっていうか。泣き喚いたら納得行くの?『よくもじぺよ』って言えばいい?」
「…はいはい。脳破壊、脳破壊。これ、ダメだわ。」
「ふざけないでよ。純平さんは私みたいな可愛くて愛嬌ある子が好きなの。だからお姉ちゃんを捨てたの。わかる?捨てられちゃった。ピエー。」
「あ、そう。そうやって強がってんだ。私よりもブスだからしょうがないもんね。男取られるのも当然っていうか。」
「お母さんに連絡入れたら、明日はお式典だって。なんで?」
「とにかくありがとう。愛花のこと大好き。純平のことはよろしくね。」
その時はまだ、私はただ惨めだと思っていた。でも、2週間後。事態は思ってもみない方向へ動き始めた。
「まさみ、お前の婚約者、相当やってるみたいだぞ。」
「お、さすが。仕事が早い。やっぱり弁護士の先生は違うね。」
「チッ、すかすな。ってか、瞬って呼ぶのやめろ。今はお前の雇った担当弁護士だぞ。もうただの近所の兄ちゃんじゃねえんだ。」
「はいはい。俊介先生。」
「お前に先生とか呼ばれると落ち着かないな。知らないよ。ってか、純平が相当やってるって何?愛花だけじゃないの?」
「俺も驚き通り越して呆れたんだが、愛花ちゃんを含めて不倫相手は4人だ。」
「4人?私を入れて5人?なんていうか、ここまで来ると一周回って尊敬するわ。しかも今まで証拠を掴ませなかったんだから。愛花のおかげでようやく証拠掴んだと思ってたら、まさかの4人って。」
「不倫はしてるだろうって、お前言ってたもんな。」
「それはうん。結婚してから2年になるけど、明らかに帰りも遅いし、スマホのパスワードも変えてて怪しかったもん。」
「なんでパスワード知ってんの?怖くね?」
「いや、前は私の誕生日だったの。そういうことね。でも、今まで探偵使っても証拠が出なかったよね。」
「だな。不倫のプロだわ、お前の婚約者は。嬉しくないけど。」
「なんでそれが急に一気に判明したの?」
「それは愛花ちゃんのお手柄。お前に妊娠暴露したんだろ?純平も愛花ちゃんの妊娠を焦ったんだろうな。さすがに逃げられないってことで、他の不倫相手を切ろうとして雑になった。そこを探偵の連中が写真でパシャリ。ついでに言えば、俺も動けるようになったしな。」
「どういうこと?」
「愛花ちゃんのおかげで不倫が確定したろ。妊娠した宣言から妊娠検査の結果まで送ってきたからね。そうなると、弁護士として開示請求ができるんだよ。銀行やら携帯キャリアやらクレカやら、色々な。それで証拠を掴んだってことか。」
「やるじゃん。なんか本物の弁護士みたい。」
「弁護士なんだよ。本物の。でも、これでようやく肩の荷が降りるわ。私も婚約破棄の前に、きっちりと落とし前をつけたかったし。」
「あとはこっちに任せとけ。この状況で負けるなら、弁護士引退してやるよ。」
「期待してる。愛花には本当に感謝。後でお礼に行っとこ。」
「いい性格してんな、お前。」
「ありがとう。褒めてないから。じゃ、あとはよろしくね。」
数日後。愛花からLINEが来た。
「あ、もう幸せすぎ。今、純平さんのために晩御飯作ってます。愛弁当。」
「愛じゃないでしょ。結婚してないんだから。」
「はい。負け惜しみ。お姉ちゃんとは別れて結婚してくれるって言ってたよ。私の婚約破棄は本当ね。おめでとう。」
「良かったね。…そんなつまらないことなら返信しなくてもいいけど。私、今日も残業で忙しいんだ。」
「うわ、忙しいアピールですか?キモ。仕事できる女感出してきてうざい。私みたいに顔よし、スタイルよし、愛嬌よしが結局は最強なわけ。顔室、スタイル普通のブスにはわかんないか。」
「そうですか。じゃあ最強の愛花ちゃん、何?」
「慰謝料払ってくれるよね。」
「は?慰謝料?」
「不倫した挙げ句、妊娠でしょ。当然だから。200万ね、しっかり払って。」
「200万?嘘でしょ?マジ?」
「マジなんですよね。純平さんってかなり稼ぎいいし、お願いすれば払ってくれるでしょ。ああ、それは無理。なんで?純平はそれどころじゃないから。私を含めて4人から慰謝料請求されるから。」
「は?どういうこと?私以外の女とも関係持ってるの?」
「私も入れて5人同時だって。脳みそが下半身についてんのかよって思ったわ。」
「じゃあ何?私の慰謝料は誰が払うの?」
「愛花が自分でどうぞ。」
翌日、久しぶりに再会したのは、幼馴染みの俊介だった。
「久しぶり、まさみちゃん。」
「うわ、ガリ勉先輩じゃん。うす。」
「おわ、懐かしいな、その呼び方。ってか、なんかよ、お姉ちゃんはガリ勉先輩に懐いてたけど、私ってダサいガリ勉に興味ないんだけど。」
「一応昔馴染みだろ。挨拶くらいはと思ってな。」
「挨拶何の?」
「俺、まさみの担当弁護士だから。」
「へ、ちょ、マジ?ガリ勉先輩って弁護士になったの?すっごい食いつくじゃん。ってか年収は?弁護士ってことは純平さんよりも高収入?」
「いや、教えないぞ。」
「ええ、マジか。昔から他の人とは違うと思ってたんだよね。」
「その割には散々馬鹿にしてきてたと思うけど。」
「あれは私もガキだっただけですよ。思春期特有の、気になる人には冷たくなるあれです。」
「あっそ。相変わらずだな。まさみとは似てない感じがすごい。」
「お姉ちゃん、あんなブスに似てるわけないじゃないですか。私ってあの頃から可愛かったでしょ。今の方が昔の何倍も可愛いんですよ。スタイルだってモデルみたいって評判なんです。」
「あのさ、それを伝えてどうしたいわけ?」
「ああ、下心あるとか思われてます?ショック。」
「しらじらしいやつだな。というか俺がまさみの担当弁護士って意味分かってるか?」
「はい。今それって関係あります?」
「関係あるから連絡してんだろ。愛花ちゃんへの慰謝料請求を俺がやるから。」
「ああ、そっか。そういうことじゃん。」
「だからそう言ってるだろう。ちなみに純平への慰謝料請求も俺がやる。」
「ってことは敵?いや、でも、なんだよ。そうだ。今日って夜、開いてます?」
「は?ごめん、会話が迷子すぎる。どこから出てきたそれ?」
「私、お寿司食べたいな。カウンターのやつ。」
「いや、だから、はい。はい。細かい話はその時にしましょうよ。せっかく久しぶりに連絡取ってるんだから、今日は楽しみましょうね。」
「あ、ごめん。無理。」
「え?無理?無理って何語?」
「日本語。そもそも俺、愛花ちゃんタイプじゃないし。」
「は?ちょっと待って。断んの?私から誘ってあげてるんですけど。私だよ。可愛くてスタイルもいい愛花ちゃんですよ。」
「知らん。そんなに寿司食いたいなら、純平とでも行ってこい。」
「はあ。男のくせに何言ってるんですか?女の子がご飯食べたいって言ったら奢るのが普通なの。」
「どこの世界の普通だよ。」
「ありえない。モテませんよ。」
「モテなくて結構だ。」
「とはいえ、そうだな。飯食いに行くか。」
「え?本当に?」
「ああ、本当に。ただ、今夜は予定があるから、詳しい日程は後でまた連絡する。」
「うん。わかりました。やった。俊介さん大好き。」
数日後、愛花がまたLINEを送ってきた。
「お姉ちゃん、本当にありがとうね。俊介さんだよ。その人、お姉ちゃんの担当弁護士なんでしょ?おかげで久しぶりに連絡くれてさ、今日この後、2人で食事行くことになってるの。」
「へえ。そうなんだ。というか純平は?浮気じゃない?それ。」
「ああ、あのクソ男。あれはもういらないの。」
「いらないって。」
「もしお姉ちゃんが欲しいなら返してあげるよ。慰謝料をまとめて請求されちゃって、もうゴミだから。」
「いや、ごめん。私もいらない。」
「純平さんかわいそう。というか、愛花も同じでしょ。何?200万の慰謝料払えるの?」
「余裕です。」
「そんなに貯金あったの?意外。」
「いや、ないよ。コスメとか服で給料は全部使うし。」
「は?じゃあどうやって払うの?」
「俊介さんが払ってくれるから大丈夫。弁護士だよ。200万くらい余裕でしょ。」
「いや、問題はそこじゃないから。なんで俊介が払うのって話ね?」
「今日の夜、この後、私、俊介さんと食事に行くの。2人っきりで言ってたわね。それがもう察しが悪すぎ。持てない人生を送ってると、そんなに鈍くなるの?やっぱ。」
「だから何だって言うのよ。」
「男と女が夜に2人っきりで食事行くんだよ。その後なんて…これ以上言えない。だから俊介が払ってくれるって。払ってくれなくても、お姉ちゃんの弁護士を降りるかもだし。そうなったら結局払わなくても済むよね。」
「おめでたい頭してるよね、愛花って。」
「嫉妬やめてください。まあ、婚約者奪った後に幼馴染みの男までってことは、どんまいだけど。なんで俊介がなびく前提なのよ。」
「いや、私だよ。可愛くてスタイル抜群の私だよ。男が放っておくわけないじゃん。俊介さんなら、この子も育ててくれるよ。」
「だからどこから来るのよ、その自信。」
「男に相手にされない、枯れた女には分からないでしょ。ま、女の幸せは男にモテることだけじゃないよ。多分、仕事だけやって一生独身で頑張ってね。」
「頑張りますよ。私、これから用事あるから。」
「ああ、仕事大変だね。私は俊介さんと高級お寿司食べに行ってくるから、負け犬人生楽しんで。」
数時間後。俊介から電話がかかってきた。
「マジで最低、ありえないから。急に怒って店を出ていったと思ったら、どうしたんだ?」
「どうしたもこうしたもないから。愛花ちゃんがお望みの高級寿司だったのに。」
「だからそこじゃねえって言ってんでしょ。不満があったならはっきり言えよ。普通、女と食事する席に他の女を呼ぶ?しかも、この私との食事で。」
「呼ぶだろ。そのために食事に誘ったんだから。お姉ちゃんと一緒に、って。」
「お姉ちゃんと一緒って何?三者面談かよ。」
「というより、慰謝料についての話し合いな。そっちが飛び出したせいで中断したけど。」
「やってられるか。こっちはね、メイクして服も可愛いの選んだの。男と違って金も時間もかかってるんですけど。」
「頼んでないからな。」
「持てない男ってマジでキモい。そういうことを言う男は誰にも相手にされないから。」
「相手にされない男との食事に、そんなに気合入れてきたのか。苦労なこった。」
「紛らわしいことしないでよ。」
「紛らわしいって。俺は食事に誘っただけだろ。」
「そんなのもう告白でしょ。」
「飛躍しすぎだろ。怖いわ。」
「ああ、もう本当に腹立つ。慰謝料200万チャラにできると思ってたのに、どうしてくれんのよ。」
「逆切れするなよ。そもそもタイプじゃないって言っておいたよな。だったら、あんたのタイプは?」
「聞いてどうすんだよ。…ああ、まさみが好きだよ。」
「は?お姉ちゃん?うわ、ありえない。あんなブスがいいとか、趣味悪すぎでしょ。」
「見た目だけの中身スカスカの女よりはマシだろ。」
「それ、私のこと?他に誰がいるんだよ。まさみは昔から努力家で、それを鼻にかけたりもしなかった。そんな姿を見てたから、俺も頑張れたんだ。」
「女の魅力がかけらもないブスがいいとか、意味不明。」
「見てくれだけが魅力だと思ってるお前の方が意味不明だわ。」
「ですって。…ってか、今まではっきり言われてこなかったみたいだけど、お前って別にモテないからな。」
「は?何言ってんの?そんなはずないでしょ。」
「バカな男からしたら、アクセサリーみたいなもんだろう。見た目がいい女を連れてるって。俺レベルの話。」
「適当言わないで。みんな私を愛してくれてたから。」
「本気で愛されてたら、クソ男に手も出されてねえよ。」
「それはお姉ちゃんも一緒じゃん。純平さん、見る目ないよな。私にも同じこと言えるでしょ。」
「いや、お前は不倫相手で妊娠までさせられてるんだぞ。同じじゃないだろ。それだけ適当に扱われてただけだ。」
「こんな言わせておけば。」
「ああ、でも感謝はしてる。お前のおかげで、まさみがいい女だって再確認できたわ。そこだけはサンキューな。」
「当て馬?この私が当て馬にもなってねえだろ。自分に魅力がないって自覚した方がいいぞ。まさみと同じ土俵にすら立ててないって。」
翌朝、愛花がまた怒り狂って連絡してきた。
「本当に何なの?あのクソ男。」
「何?昨日もせっかくの食事の席から飛び出していって。俊介さんに失礼でしょ。」
「失礼?失礼なのはあの男だから。私に魅力がないって言ったんだよ。ありえなくない?挙げ句の果てに、私よりもお姉ちゃんの方がいいって。どんだけ失礼なのって思わない?私に対して失礼だと思わない?」
「はあ。お姉ちゃんを、私を下に見たいんだね。でも、事実じゃない?私、お姉ちゃんよりもブスだし、スタイルも悪いし。」
「そういうとこだと思うけど。というか、文句言うのはいいけどさ、慰謝料はちゃんと払ってね。」
「いや、無理。貯金とかないし。」
「だとしても払うんだよ。」
「ねえ、お姉ちゃん。私って、たって姉妹だよね。じゃあ、慰謝料とかやめない?私、ほら、妊娠もしてるし、かわいそうだと思わない?」
「思わないけど。なんでよ。」
「だって自業自得よね。勝手に不倫して、勝手に妊娠したんでしょ?悪いのは手を出してきた純平さんの方でしょ。あと、純平さんに不倫させたお姉ちゃん。私は悪くないから。」
「その主張で、よく泣き落とししようと思ったね。余計無理だわ。だって私は悪くないもん。なんで私ばっかりこんな目に遭うの?」
「なんで被害者ぶってるの?怖いんだけど。お姉ちゃんっていつもそう。何が?学生の頃から勉強できて、運動できて、みんなの中心で。私よりブスのくせに。」
「それは努力してきたからでしょ。」
「努力、努力って、そればっかり。何もしてない私が悪いみたいじゃん。」
「別に悪くはないよ。努力してない人が努力した人を笑う権利はないってだけ。それに、自分だけが不遇だと思ってるのも腹立つから。」
「は?どういうこと?」
「私が愛花と比較されないで生きてきたと思ってるの?『愛花ちゃんは可愛いね』『愛嬌あるね』『それに比べてまさみちゃんは…』っていう経験、いっぱいあるよ。」
「それは事実だからしょうがないじゃん。」
「じゃあ、努力してこなかった結果も事実でしょ。不倫したのも、妊娠したのも事実。男に相手にされなかったのも事実。だから受け入れな。」
「嫌だ。200万も払いたくない。貯金もなくて、200万も払って、子供も抱えて、これからどうしたらいいの?」
「真面目に生きればいいと思うよ。まあ、それができたらこんなことにはなってないか。」
「お姉ちゃん、お願い、助けて。」
「助けたいって思える態度を取ってこなかった自分を恨みな。見た目がどれだけ良くても、性格が悪いとそうなるのよ。」
数日後。
「俊介、本当に今回はありがとうございました。愛花ちゃんから慰謝料払われたんだって。」
「うちのお母さんに土下座して用意したんだって。」
「じゃあ、借金か。お母さん、愛花にぶち切れだったから、借金の取り立ては厳しく行くって言ってたよ。」
「本当なら自業自得だし、ほっておくのもありだったけど、子供がいるからな。不倫の末の子供とはいえ、お母さんからしたら孫だし。それに、子供に罪はないからね。一応、借金返済が終わるまでは実家暮らし確定。逃げる隙はないじゃん。それだけお母さんも本気ってこと。この機会にあの腐った性根を叩き直すって言ってた。」
「お前の元婚約者は、泥沼らしいよ。不倫相手の中に人妻もいたらしくて、今も絶賛裁判中らしいな。」
「泣きついてきたけど、LINE、ブロックしてやったわ。」
「それが正解だろ。」
「ああ。…次の相手とか考えてんの?」
「いや、さすがに今はないでしょ。あんなことがあった後だし、しばらくは恋愛はいいかな。」
「そっか。そうだよな。」
「何?なんか歯切れが悪いね。」
「いや、なんでもない。」
「本当に?」
「本当に。…たださ、今度、飯とか行かないか。」
「なんで急に?」
「今回の打ち上げ的な。」
「うーん。まあ、いっか。高級寿司にする?」
「愛花ちゃんじゃないから、別にいいよ。居酒屋で飲まない?」
「それがいいな。お前とは気楽に飲む方が合ってる気がするし。あ、安い女で悪うございました。」
「そうじゃなくて、落ち着くなって話。」
「おお。何?告白ですか?愛花ちゃんみたいなこと言うなよ。」
「ごめんごめん。俊介はお兄ちゃんみたいなもんだしね。からかっただけ。」
「お兄ちゃん。お兄ちゃんか。」
「何?ご不満?」
「伸び代に期待だな。」
「伸び代があったらいいね。…お前さ。」
「うん。」
「今は俺もタイミングが違うと思うし。まあ、いつかね。それまではお兄ちゃんでやってるよ。」
「うん。これからもよろしくね。」
その後。愛花は今、実家で暮らしている。お母さんは容赦をする気はないようで、日常生活の乱れから家事に至るまで、徹底的に教育し直すべく、甘さを一切捨てて接している。もちろん、お母さんへの200万の借金も返済中だ。
コスメも服も買えない。毎日怒られてばかり。こんな生活嫌だと、愛花は毎日泣いている。これから出産もして、さらに大変な思いをするだろう。借金の返済が終わっても、コスメや服を買える余裕はもうない。
それが愛花が選んだ結果だ。しっかり受け止めて、反省してほしい。
一方、私の元婚約者である純平は、泥沼の裁判の真っただ中だ。会社にもバレて失職した。これから慰謝料がさらにのしかかるわけで、このクソ男に未来はない。
私自身はというと、今は恋愛のことは忘れて、仕事に没頭している。俊介とはちょくちょく飲みに行っていて、今でも仲良しだ。
いつか、今回のことが吹っ切れて、勇気が持てたら、俊介と向き合ってみるのもいいかもしれない。
でも、それはまだ、ずっと先の話だ。



