義母から電話がかかってきた。「あなたたち家族は結婚式に来なくていいから」って、笑顔で言われたんです。私はてっきり、何かの間違いだと思った。でも次の瞬間、義母は言いました。「貧乏人一家なんて呼ぶわけないじゃない」って。私たちが貧乏人?…

義母から電話がかかってきた。「あなたたち家族は結婚式に来なくていいから」って、笑顔で言われたんです。私はてっきり、何かの間違いだと思った。でも次の瞬間、義母は言いました。「貧乏人一家なんて呼ぶわけないじゃない」って。私たちが貧乏人?...

義母から電話がかかってきたのは、何の前触れもない昼下がりだった。

「みささん、マリ子の結婚式の件だけど」
「はい、何でしょうか」
「あなたたち家族は来なくていいから」

一瞬、何を言われたのか分からなかった。

「え? どういう意味ですか?」
「言葉通りよ。マリ子の結婚式にあなたたち家族は招待しないってことだから、勝手に来ないでちょうだいね」

頭が真っ白になった。私たちが何か粗相をしただろうか。それとも何か誤解があるのだろうか。

「ちょっと待ってください。それはどういう判断で? マリ子さんに何かしてしまいましたか?」

義母はあっけらかんと言った。

「判断も何もないでしょ。最初から決めてたのよ。娘の結婚式に貧乏人一家なんて呼ぶわけないじゃない」

貧乏人。その言葉が耳に刺さった。私たちが、貧乏人?

「私たちがですか?」
「そうよ。他に誰がいるっていうの」

「お義母さんの前で常識のないことはしていません。むしろ突然『貧乏人は来るな』と言う方が非常識だと思います。大体、どの辺りを見て貧乏人だと判断されたんですか?」

義母は鼻で笑った。

「今更そんなこと挙げたらきりがないわ。結婚式もあげられなかったくせに、何言ってるのよ。普通は結婚する時にちゃんと式をあげるの。それができなかった時点で分かるでしょ」

私たちは結婚式をあげなかった。それは事実だ。でも、それは夫婦で話し合って決めたこと。お金を使うなら旅行に使いたいと思ったからだ。それを義母は「強がり」と決めつけた。

「私たちはあげなかっただけで、それも夫婦で話し合って決めたことです」
「強がらなくていいのよ。お金がないからできなかった。それだけでしょ。それにまだあるわよ。ご祝儀だってそうじゃない」
「ご祝儀? きちんと相場通りにお渡ししたはずですが」
「あの金額でよく平気でいられるわ。長男の嫁ならもっと包むのが常識でしょ。妹の結婚式なのよ。それをあんな少ない額で済ませるなんて、恥ずかしいと思わないの?」

失礼だが、事前に「ご祝儀をくれ」と要求してきたこと自体、一般的ではない。でもそれを言ったら、義母はさらに激昂した。

「何それ? 言い訳? だから貧乏人は嫌なのよ。常識がないんだから」

何から突っ込んでいいのか分からなくなった。そもそも、私たちは本当に貧乏なのだろうか。

「それなら決定的なことを言うわ。健太の態度が何よりの証拠よ」
「健太さんが何か言いました?」
「あの子、あなたの実家の話、ほとんどしないでしょ。普通は嫁の実家が立派なら少しぐらい自慢するものなのよ。それが一切ないってことはどういうことか分かる?」
「分かりません」
「自慢できる要素がないってことよ。つまり、お金がない貧乏だから話せない。それだけの話でしょ」

そう思われていたのか。私はただ、義母が嫉妬すると思って実家の話をしなかっただけなのに。全てが義母の思い込みだと気づいたのは、もう少し後のことだった。

「結婚式ってね、誰を呼ぶかで価値が決まるの。変な人間が混ざると台無しになるのよ。ちゃんとした仕事をして、ちゃんとした暮らしをしている人たちの中に、あなたたちみたいなのが混ざったらどうなると思う?」
「浮くと言いたいわけですね」
「そうよ。浮くだけならまだいいわ。恥をかくのはこっちなのよ。ああいう人たちを呼んでるのかって笑われるのはこちらなの。分かる?」

その後も義母の言葉は止まらなかった。当日は家でおとなしくしていろ、式場に近づくこともやめろ、見かけたら警察を呼ぶ、と。挙句の果てには、私の子どもたちのことを「マナーも知らない猿」とまで言った。

「あなたの子どもって可愛くないもの。育ちが違うんだから。ちゃんとした家庭で育った子は場の空気が読めるのよ。でもあんたのところは違うでしょ。写真だって一生残るのよ。そんなところに猿みたいな子がいてもね」

自分の子どもたちを侮辱されて、頭に血が上った。でも、私はグッと堪えた。義母に反論するだけ無駄だと思ったからだ。

一時間後、今度はマリ子さんから電話がかかってきた。

「お姉さん、ごめんなさい。なんか母さんが色々言っちゃったみたいで」
「ええ、いいように言われましたよ」

てっきり謝罪かと思った。しかし、次の言葉で凍りついた。

「でも、私も同じ気持ちなんです」
「え?」
「お姉さんには来て欲しくなくて」

まさか。義母だけだと思っていた。マリ子さん本人も、私たちを結婚式に呼びたくないと言うのか。

「お母さんが勝手に言ってるとばかり思ってました」
「それならちゃんと言いますね。私もお母さんとは同じ意見です。お姉さんたちがいると、ちょっと雰囲気が崩れるというか、浮くと思うんですよね」

私は深く息を吐いた。

「分かりました。最初からそう言ってくれれば良かったですね」
「すみません。建前で呼んじゃったんですけど、貧乏人は空気が読めないからそのまま参加しちゃうんですよね。私がもっと配慮しておけばよかったです」

そして、彼女はこう言ったのだ。

「ああ、でもお兄ちゃんには結婚式の費用を援助してもらうんで、そこはよろしくお願いしますね」

私は耳を疑った。来るなと言いながら、お金は出せと? そんな理屈が通るわけがない。

「こんなこと言われて支援するなんて、ふざけてるんですか?」
「ああ、お姉さんは貧乏人で常識がないから、そういう常識ないですよね。長男なんだから妹の結婚式費用を出すのは当然ですよ。それぐらいの分別はあるよね?」

「来るなと言いながらお金は出せと。意味が分かりません」
「何文句あります? 嫌ならいいですけど、お兄ちゃんに直接言いますからね。お兄ちゃんだって可愛い妹の結婚式ぐらい、喜んで援助してくれますよ」

さらに彼女は畳みかけた。

「お姉さんは自分の立場を分かった方がいいですよ。お姉さんは長男の嫁。嫁が実家の家族に偉そうな口を叩いてはいけない。これ常識ですよ。私より早く結婚してるくせに、そんなことも分からないなんて」

一時間後、今度は夫の健太さんにも同じような電話があったと聞いた。義母は夫にも「金だけ出せ」と言ったらしい。夫は長年、義母のプライドを傷つけないように耐えてきた。しかし、今回ばかりは違った。

「俺も限界だ。今まで母さんのプライドを傷つけないように余計なこと言わないようにしてきた。でも、子供たちまで侮辱するなら話は別だ。正直、お金さえ出せば黙ってくれると思って我慢してた」

私は夫に言った。

「私も同じ考えだったわ。でも、もう頭に来た」
「結婚式の費用も出さない」
「いいの?」
「いい。出す理由がない。俺の家族を侮辱しておいて、金だけ出せば通らない」

夫は続けた。

「守るべきものを間違えてたよ。それに、貯金を使うなら家族のために使いたい。せっかくだし、どこか行こうか」
「え、突然ね」
「子供たちに楽しい思い出を作ってあげたいんだよ。それにほら、ちょうど休みだしさ。俺たちもせっかくの貯金を無駄にしたくないし」
「そうね。それもそうだわ。でも、旅行なんてどこに行くの?」
「イタリアなんてどうだ?」
「イタリア?」
「明里が前に言ってたろ。ローマに行きたいって」
「そういえば特集番組を見て言ってたわ」

二人で決めた。結婚式の日は、家族でイタリアへ行く。あの家で嫌な思いをするぐらいなら、楽しい思い出で上書きしたほうがいい。

「あの子たちがあの家で嫌な思いするくらいなら、楽しい思い出で上書きした方がいい」
「そうだね。もうこれ以上傷つけさせない」
「うん。じゃあ決まりだな。イタリア、ローマで子供たちが回りたいところを回ろう。俺たちだけの旅行にするんだ」

私たちは同時刻、義母に返事をした。私は文字で残しておかないと、後でトラブルになりかねないと思い、メールで送った。

「お義母さん、結婚式の件です。お二人の気持ちはよく分かりました。私たちもあれだけのことを言われて、気持ちよくお祝いすることはできませんので、結婚式は欠席します」

すると、義母からは「やっと分かったのね。最初から来る資格なんてないんだから」と返ってきた。

一方、夫も義母に伝えた。

「母さん、マリ子の結婚式費用の援助の件だけど、俺たち夫婦で話し合ってナシにすることにした」
「え、何言ってるの? あなたは長男でしょ? それぐらい出しなさい。それにマリコが困るじゃない」
「俺の家族を貧乏人一家と侮辱したじゃないか」
「貧乏人にたかるのか。それはみささんのことを言っただけよ」
「みさは俺の家族だ。つまり、俺の侮辱にもなる。それに子供たちのことまで『恥ずかしい』とか『マナーがない』と言っておいて、それで金だけ出せって、ふざけてるのか?」
「そういうわけじゃ…」
「じゃあ、どういうわけなんだ? 母さんだって子供を2人育てたのに、どうして人の子供にそんなことが言えるんだよ」
「だって…それとこれとは話が別よ」
「いや、同じだろ。母さんが自分で言ったんだよ。貧乏家族は不要って。不要なら金も不要でしょう。筋が通ってると思うけど」

義母は怒り狂った。

「あんた、親に何てことを言うの? 絶対に嫁に寝込まされたんでしょ。みささんに何か言わされてるのよ。きっとそうだわ」
「これは俺が自分で考えた結論だよ」

その後、義母からは私にも電話がかかってきた。

「みささん、健太に何を吹き込んだの? あの子があんな生意気な態度を取るなんてありえないわ」
「自立した大人なんですから、もう親の言うことを何でも聞きませんよ。それに、私は何も吹き込んでいません。普通に考えてください。『来るな』と言ったんだから、結婚式の費用を出す義理はありませんよね」
「それはあなたのことだけを言ったのよ」
「『貧乏家族は不要』って言ってましたよね。スクショありますけど」

義母は言葉に詰まった。

「でも、仕方ないじゃない。だってあんたたちは貧乏で…」
「何を根拠にそう思ってるんですか? ああ、確か『結婚式をあげなかったから』って理由でしたっけ? あれは旅行にお金を使いたかっただけです。あまり結婚式にこだわりもなかったですし」
「でも、健太は実家のことを話さなかったでしょ」
「健太さんが実家のことを話さなかったのは、お義母さんが嫉妬すると思ったからですよ。分かりましたか? つまり、全部お義母さんの思い込みです。大体、貧乏なら服装や持ち物に出ているはずです。私たち、そんなに見すぼらしい身なりでしたか?」

義母は何も言えなかった。私は最後に、一番言いたかったことを言った。

「お義母さん、本音を言いますね。私が貧乏と言われるのは耐えられます。実際、裕福に見えるような見た目はしていませんし、お義母さんはご実家が地主で恵まれた生活を普段からされていたと思いますから。でも、子供たちを侮辱したことだけは絶対に許しません。明里は結婚式でおばあちゃんにドレスを見せたいと言っていたんですよ。それを知ってて『来るな』と言えたんですか?」

「それは…言いすぎたというか…」
「言いすぎなんてものじゃありません。明里はおばあちゃんに傷つけられたんです。私は子供たちを守ります。あなたに近づけさせません。結婚式の日は家族で旅行に行きますので、これ以上のやり取りは健太さんが家にいるお手伝いさんに伝えてください」

結婚式当日、私たちはイタリアにいた。着信は30件以上も入っていた。義母からの着信だ。私は一度も出なかった。

一時間後、ようやく電話に出たマリ子さんは涙声だった。

「みささん、助けて。結婚式の費用が足りなくって、会場のグレードを下げたらご両親から話が違うって言われてもう大変なの。親族も軽減だし…お願い、返事をしてちょうだい」
「お義母さん、そんなに電話をかけないでください。今イタリアにいるので、電話されても何もできませんよ」
「イタリア? のんきに旅行してる場合じゃないでしょう」
「のんきにって、行ったじゃないですか。旅行に行くと大きなお金を使うなら、子供たちのために使いたいですし。国内旅行だと?」

「そんなこと一言も言ってませんよ。あと、電話には出ません。今、子供たちと楽しい時間を過ごしていますし、水を刺されたくないんです。この笑顔を守れて本当に良かった。結婚式に出ていたら、きっと馬鹿にされていたでしょうから」
「そんな…お願い、なんとかしてちょうだい」
「私には何もできません。では、子供たちとの食事に戻りますね」

電話を切った後、義母はさらに追い詰められていった。

一時間後、今度はマリ子さんの婚約者が知ったらしい。義母とマリ子さんが私たちを結婚式から追い出したことを、夫が婚約者に話したのだ。婚約者はこう言ったそうだ。

「お姉さんたちみたいな家族を追い出せる人と、俺は家族にはなれない。婚約は破棄する」

キャンセル料は後日請求すると言われた。

「そんな…そんなのおかしい。なんでみんな私の話を聞いてくれないの? 私は婚約者なのよ」
「婚約者でも、常識のない人の話は誰も聞きませんよ。それに、マリ子さんからもらったLINEは全部スクショしてました。証拠があれば、誰だって信じますよ」
「そんな…」

「自分の言うことなら何でも聞いてくれる実家で甘やかされたから、そう思ったんでしょ。その考え自体が甘いんですよ」

後日、義母が私たちの家に直接来た。彼女は驚愕していた。

「みささん、どういうことなの? 何よ、この豪邸?」
「豪邸? 何の話ですか?」
「直接話に行こうと思って、家に行ったらすごく大きな家じゃない?」
「ああ。お義母さん、いつも私を見下して、今の今まで一度も家に来てくれませんでしたよね。『嫁なんだから実家に来い』って言って。どうでした? 大きな家でしょう?」
「なんでこんな豪邸に住んでるの?」
「私の父の会社は今年で創立30周年なんですよ。まだまだこれからですけど、従業員200名ほどの企業で、私は次期社長です」
「次期…社長?」

義母の顔が青ざめていくのが分かった。

「あなたが恥ずかしいと馬鹿にしていた家庭は、あなたよりも裕福な家庭なんですよ。だから、今回のことがなかったら、お義母さんの老後の面倒も見ましたし、定期的に旅行や援助するつもりでした。でも、もうしません。貧乏家族に面倒見られるのは嫌でしょう? それは…」

「そもそも、お義母さんはなぜそこまで貧乏を下げるんですか?」
「貧乏人は…何をされても仕方ないのよ。昔、友人の結婚式に夫だけ招待されたの。私は呼ばれなかったわ。『お金を稼いでいない専業主婦に来る資格はない』って言われてね。とても惨めだったわ。でも、文句は言えないの。だって、貧乏人には人権はないんだから」

義母にも過去があったのか。しかし、だからといって同じことを他人にするのは違う。

「自分がされて嫌だったことを、人にするなんて。自分が恨まれるって思わなかったんですか? でも、はっきり言いますね。お義母さんは最初に言いました。『貧乏家族は不要』って。でも、実際に不要だったのは何ですか? 私たち家族ですか? それとも、お義母さんの偏見とプライドですか?」

義母は何も言えなかった。私は最後にこう言った。

「お義母さんが本当に失ったのは、私たちとの関係だけじゃありません。一緒に旅行に行けた未来、孫と過ごせた時間、老後を安心して過ごせた生活。全部、お義母さんが自分で捨てたんです」
「そんな…ちょっと待って。お願いよ、みささん」
「さようなら、お義母さん。私にとっても、お義母さんは不要ですので」

結局、結婚式は中止となった。ゲストや親族に、義母が「お金だけ巻き上げようとした」ということがバレてしまったのだ。義母は親戚から「恥知らず」とののしられ、「貧乏人」と後ろ指を刺されているらしい。一番言われたくないことを親族から言われ、悔しい思いをしているのだろう。

マリ子さんも、婚約破棄の慰謝料と結婚式のキャンセル料で貯金を使い果たし、生活のために借金までした。文字通り、貧乏人になったのだ。散々甘やかされて育った彼女には、これからお金のない生活はとても苦労することだろう。

一方、私たち夫婦は子供たちと向き合いながら、贅沢をすることなく暮らしている。お金はあることに越したことはないが、お金があることを自慢してもいいことはない。お金自体に執着せず、家族の幸せを大切にしたい。

今回、子供たちは結婚式には参加できなかった。しかし、家族との旅行で思い出を作ることができた。あの結婚式に参加しなくてよかった。これからは家族のためにお金も時間も使おう。今回の出来事で、改めて感じた。

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