式の最中、真衣がケーキを倒した。私のドレスにもクリームがついた。もちろん、あれが偶然だとは思えなかった。
「わざとやったに決まってる」
「そんなことないだろ。事故だよ。許してやれよ」
夫になるはずの鉄平は、真衣の味方ばかりした。私が心が狭いとまで言った。式場から出てきた私に、鉄平は「早く戻れ」と怒鳴った。
「ま衣さんとあなた、どういう関係なの?」
「大学の後輩だって言っただろ」
「疑われるような態度を取るからよ」
そう言い返すと、鉄平は真衣の連絡先を教えろと言い出した。真衣を責めるなと。私は従った。
式の後、私は真衣に会いに行った。「どうしてあんなことをしたの?」と聞くと、彼女は平然と言った。
「私もずっと鉄平と付き合ってたのよ。ある日、急に別れ話を切り出されて、理由を聞いたら『お前と結婚するから』って。二股だったのよ」
「それで仕返しにケーキを倒したの?」
「あんたさえいなければ、私が幸せになれたのよ」
しかも、彼女は「ケーキを倒す提案をしたのは鉄平の方よ」と告げた。そんなこと、信じたくなかった。
私は鉄平と直接話した。彼は認めた。
「式を盛り上げるためのイベントだったんだよ」
「ふざけないで。あのケーキは私が高校の時からお世話になっているパティシエの盾野さんが作ってくれたものよ」
「なんだと?」
「盾野さんには、全部報告したわ」
鉄平は慌てた。彼の会社は盾野さんと仕事を進めようとしていたからだ。盾野さんは鉄平にこう言った。
「あなたのような人間を、私は信用できません。今回の仕事の話は白紙に戻させてもらいます」
それを聞いた鉄平は、真衣に怒りの電話をかけた。真衣は私に「あんたのせいで大変なのよ」と逆ギレしてきた。
私は彼女に言った。「ケーキ代とドレスのクリーニング代を請求させてもらうわ。慰謝料もね」
その後、鉄平は私に「話をさせてくれ」と何度も頼んできた。だが、私の返事は決まっていた。
「このままじゃ、結婚はできない。婚約は解消するわ。慰謝料も払ってちょうだい」
鉄平は「お前を守るためだった」と叫んだが、もう遅かった。私は心を決めていた。
数週間後、私は盾野さんに会いに行った。彼は「うちのミルクレープ、好きだっただろ。好きなだけ食べていいよ」と笑った。
私は鉄平と別れ、心には傷が残った。でも、結婚する前に別れられたのは良かったと思っている。今は、盾野さんの焼き菓子を食べながら、少しずつ心を回復させている。



