「佐藤さん、俺、結婚することになったんだ。」
「え?結婚?本当に?」
「ああ、30歳を前にして、ようやく結婚できることになったんだ。プロポーズもOKしてもらえた。」
「もしかして、あの東大卒のすごい人と?」
「そう。大手企業に勤めて、仕事でも結果を出してる、本当にすごい人なんだ。尊敬できる人と一緒になれて、俺は本当に幸せだよ。」
「私も嬉しいわ、兄さんが結婚できるなんて。」
「おいおい、俺には無理だと思ってたってことか?」
「違うよ、そういう意味じゃなくて……ちょっと現実味がなくて。」
「式も挙げるから、必ずお前にも参加してほしいんだ。」
「もちろんよ。盛大にお祝いさせてもらうわ。」
「仕事が忙しいのは分かってるけど、そんなの気にしなくていいよ。スーパーで土日も出勤だけど、兄の結婚式って言ったら絶対に休みを取るから、日程を早めに教えてくれると助かるわ。」
「ああ、もちろん。その前に両家の顔合わせもあるから、それにも千里にも来てほしいと思ってる。」
「私が行っていいの?」
「当たり前だろ。俺の自慢の妹を紹介したいんだ。」
「兄さん、あのことは内緒にしてね。」
「ああ、もちろん分かってるよ。色々と大変だったもんな。」
「ごめんね、兄さんは関係ないのに。」
「そんなの気にするな。」
「そうね。とにかく本当におめでとう。」
「ああ、ありがとう。」
あれから1ヶ月後、私は義理の姉になるはずだった愛子さんに呼び出された。
「千里さん、久しぶり。ちょっと話があるのだけど。」
「はい、どうかされましたか?」
「私たちの結婚式なんだけど、欠席でお願いできないかしら。」
「え?欠席?どうしてですか?」
「私と安典さんの結婚式は、ただの結婚式じゃないの。私たちの立場、分かってくれてるでしょ?」
「立場?」
「私は東大卒。安典さんだって名門の出身よ。当然、式に来るのはそういう人ばかりなの。そこにあなたが混ざって、平気だと思う?」
「なるほど……そういうお式になるんですね。」
「だからこそ、千里さんには欠席をお願いしたのよ。」
「どうしてですか?」
「『身分不相応』っていう言葉、分かる?」
「分かりますよ。」
「ああ、よかった。伝わったみたいね。」
「つまり、私にはその式に出る資格がないとおっしゃりたいんですね。」
「そうよ。スーパーでレジを打ってる底辺の義妹さん。」
「そんな風に私のことを思ってたんですね。」
「顔合わせで、あなたの話を聞いた時は驚いたわ。まさか安典さんの妹が、こんな出来損ないだなんてね。」
「スーパーでレジを打つことが、そんなに悪いことなんでしょうか?26にもなってそんなことをしてて、恥ずかしくないの?私があなたの歳の頃には、今の会社でバリバリ仕事をこなしてたわ。」
「私が働いてる会社、知ってる?」
「いいえ、聞いてませんね。」
「ITコンサルの会社よ。今は大きな案件を任されてるの。これが成功したら、すぐに昇進するわ。あなたじゃ到底追いつけないような立場に、私はなるのよ。」
「別に、私はあなたに追いつこうなんて思ってませんが。」
「負け惜しみは聞きたくないから、やめなさい。」
「お姉さんって、そういう人だったんですね。前に会った時は、もっと品のある人だと思ってましたけど。」
「そりゃ、ちゃんと使い分けてるからよ。優秀な人と無能な人を、同じように扱うのは不公平でしょ?」
「兄さんには、そういう一面は見せてないんですね。」
「そりゃそうよ。私ほどじゃないけど、安典さんは優秀な人だからね。大手に勤めて、仕事だってできる。」
「仕事でも期待されてるんですってね。」
「そうなんだ。そこまでとは知らなかった。」
「あなた、何も教えてもらってないのね。」
「兄は、そういう自慢みたいなことはしないから。」
「とにかく、欠席でよろしく。」
「これを聞いたら、兄さんは怒ると思いますよ。」
「だったら、私が説得するわ。こんな場違いな式に出ない方が、あなたのためだってね。」
「どうして、そんなことが言えるんですか?」
「だって私は、そのために勉強して頑張ってきたんだから。」
「どういうことですか?」
「バカを見下すのが楽しくて、勉強してたのよ。立場が上になればなるほど、見下せる人間が増えていくでしょ?それが私は楽しくて仕方ないの。」
「……性格が終わってますね。」
「でも私は優秀なの。頭が終わってるあなたとは、雲泥の差の生活をさせてもらってるわ。」
「こんな人と、兄が結婚するのは認めたくありません。」
「あんたの気持ちなんて、関係ないわ。少なくとも安典さんは、私と結婚できることをとても喜んでる。その幸せを、あなたが潰していいと思ってるの?」
「それは……」
「だったら、あんたは黙って身を引きなさい。結婚式にも参加しないで。」
「そんなの、納得できません。」
「私の方が学歴が上なの。下の人間なんだから、言うことを聞きなさい。」
「まだ、返事はできません。」
「頭の回転が遅いのね。すぐに決断しなさいよ。」
翌日、今度は愛子さんの母親から電話がかかってきた。
「千里さん、娘から話は聞いてますよね。お願いですから、娘の言う通りにしてください。」
「あなたは、人の親として、娘さんが言ってることがおかしいとは思いませんか?」
「いいえ、娘は正しいことを言ってると思いますよ。今回の式で、娘は色々なコネクションを得られるんです。もちろん、それは安典さんも同じこと。ただ、あなたの存在はそれを邪魔するものです。学歴のない人間は、それだけマイナスな存在なんですよ。そのことを、もっと自覚した方がいい。」
「かなり偏った考え方をしてますね。あなたのせいで、愛子さんはおかしな人になったんじゃないんですか?」
「そんなことはありませんよ。愛子はずっと優秀でしたから。」
「人を見下すような性格ですよ。」
「そうせざるを得ないでしょ。だって多くの人よりも立場が上なんだから。見下すのが必然なんです。」
「あなたたちが、似たもの親子だということは分かりました。」
「まあ、血は争えますからね。」
「血?」
「DNAが劣ってるから、そんなことになったんでしょ?」
「……DNA?」
「あなたの両親がもっと優れた人材なら、あなたも優秀な人間になれてたって言ってるんです。」
「うちの両親が悪いと、言ってるように聞こえますが。」
「そう思ってるのよ、私は。」
「そんなことを言われて、嬉しいわけないでしょ。二人とも、私にとっては大切な両親なんです。」
「でもあなたは、彼らの子供だから、出来損ないになったのよ。安典さんは血の滲むような努力をして、さらに運も良かったから、今の立場にいるんでしょうけど……普通は、あなたくらいになっていたはずよ。」
「そんなわけないでしょ。」
「そう思いたい気持ちも分かるけどね。ただ、遺伝はやっぱりあるのよ。それに比べて、うちの娘は本当に優秀だったわ。」
「それも、遺伝ですか?」
「そうね。よく分かってるじゃない。」
「手柄を横取りしてるように聞こえますが。」
「実際にそうなんだから、しょうがないでしょ。できれば、あなたの両親にも来てほしくないけど……さすがにそれは体裁が良くないからね。せめて、あなただけでも欠席してちょうだい。」
「……あなたたちと顔を合わせなくて済むなら、それもいいかもしれませんね。」
「理由は何でもいいわよ。欠席と言ってくれれば、私たちはそれでいいから。」
ところが、1週間後、愛子さんから再び連絡が来た。
「千里さん、先日は色々と言ってごめんなさいね。やっぱり、あなたには参加してほしいの。」
「え?どういうことですか?私に、あれだけ来るなと言ってたのに。」
「考えを改めたのよ。やっぱり家族なんだし、来た方がいいと思って。」
「……ちなみに、このことはまだ安典さんには言ってないわよね?」
「言ってないですよ。やっぱり、気にしてたんじゃないですか?」
「余計なトラブルはない方がいいと思っただけよ。みんながハッピーな気持ちで式に参列した方がいいでしょ?」
「私は、そんな気持ちにはなれませんけどね。」
「実は、参加してほしいのには、もう一つ理由があって。」
「何ですか?」
「あなたに、余興をお願いしたいなって思ったのよ。」
「余興?」
「もちろん、くだらない歌とか、そんなんじゃダメよ。」
「じゃあ、何をするんですか?」
「そうね……色々と考えてるけど、何をするかは当日に伝えるわ。」
「は?当日?」
「そっちの方が、盛り上がると思うのよ。これを受けてくれるなら、参加を認めてあげるわ。」
「……何か、よからぬことを考えてそうですね。」
「で、どうするの?」
「……別に、いいですよ。」
「決まりね。それじゃあ、よろしく。」
結婚式当日。
「千里ちゃん、私の式で、英語でスピーチをしてちょうだい。」
「英語でスピーチ、ですか?」
「きっとみんな、大喜びするはずよ。」
「そうやって無茶ぶりして、私に恥をかかせようとしてるんですか?」
「あなたは『バカ』っていう特技があるんだから、それを生かした余興だと思って。」
「……はい。やってみます。」
「あら、随分とすんなり受けるのね。」
「兄の大事な式を盛り上げるのに、協力したいので。」
「言っておくけど、30分くらいはやってもらうからね。テープを流すとか、そういうズルはなしよ。」
「もちろんです。テーマは何でもいいですか?」
「それじゃあ、結婚のお祝いに関するスピーチにしてもらおうかしら。」
「分かりました。」
「せいぜい、大恥をかきなさい。」
2時間後。
「あれは、どういうこと?」
「え?お姉さん、今お色直し中じゃないんですか?」
「そんなことよりも、さっきの余興はどういうことなの?」
「上手く話せてましたか?自分なりに心を込めて話したつもりだったんですけど……英語が分かる人が少なくて、ポカンとしてた人も多かったと思います。」
「何人か笑ったりしてたから、ちゃんと話せてたんじゃないの?」
「お姉さんには、伝わってなかったですか?」
「馬鹿にしないで。それなりに分かったわよ。ただ、あんたの発音がちょっと違ってて、聞き取りづらかったってだけ。どこで学んだか知らないけど、スピーキングもちゃんとやるべきだったと思うわ。」
「申し訳ありません。ちょっと友達にイギリス人の子がいて、イギリス訛りが入っちゃってたかもしれません。」
「は?イギリス訛り?」
「そうなんです。アメリカの大学に行ってた時に、一番仲の良かった子がイギリス人で、その子とよく一緒にいたので、訛っちゃったんですよね。」
「アメリカの大学?何を言ってるの?」
「言ってなかったですけど、私、アメリカの大学を卒業してるんです。」
「は?」
「ハーバードです。」
「嘘つかないでよ。」
「本当ですよ。兄に聞いてくれたら分かると思います。一応、卒業証書もありますけど。」
「そんなの、聞いたことないんだけど。」
「すみません。兄には、隠してくれとお願いしてたんです。」
「どうしてよ。」
「ハーバードに合格した時に、地元で騒ぎになって、変な人に付きまとわれたことがあって……それから、経歴を隠すようになったんです。だから、お姉さんにも隠しておいてほしいってお願いしてました。」
「そういうことだったのね。」
「だから、英語でスピーチすること自体は、とても楽なことではあったんです。ただ、人前で話すのは苦手ですし、30分も何を話せばいいか分からなくて、とても緊張しましたけどね。」
「ハーバードだから、こんなの楽勝って言いたいの?」
「そんなこと、言ってないですよ。」
「そうやって、私を見下して。性格が悪いわね。」
「私はそんなことしませんよ。学歴マウントなんて、恥ずかしいことだと思ってますから。」
「いくらすごい学歴があっても、あんたは今は結局、ただのフリーターでしょ?そんなの宝の持ち腐れ。結局、しょうもない人間であることには変わりないわ。」
「お姉さんからどう思われようと、関係ないです。でも、お姉さんが英語の分からない人で良かったです。」
「何を言ってるの?」
「そうじゃなかったら、30分も話させてくれなかったと思いますから。」
「……意味が分からないわ。」
2時間後。
「安典さん、どこにいるの?」
「もう家に帰ってるよ。」
「どうして待ってくれないのよ。ドレスを脱いだりして、時間がかかるのは分かってたでしょ?」
「早く帰りたかったんだよ。」
「どうして?なんか途中から不機嫌になってたよね。何かあったの?」
「そりゃあ、あんなスピーチを聞かされたからな。」
「え?スピーチ?千里さんのスピーチの内容、分からなかったの?」
「あんまりちゃんと聞いてなかったのよ。色々と引き継ぎとか考えてたから。」
「本当か?そういうのは司会の人がすることだぞ。」
「本当よ。じゃあ、安典さんは分かったって言うの?」
「分かったよ。英語は得意だしな。」
「だったら、何て言ってたか説明してみてよ。」
「お望み通り、教えてやるよ。千里はスピーチで、今回の式に出るまでの経緯を話してたんだ。」
「経緯?」
「お前とお母さんが、千里を式に参加させないようにしてたってことだよ。」
「は?」
「お前が千里のことを『底辺』だとか、バカにしてたらしいな。しかも、うちの両親のことまで馬鹿にしてた。」
「私は、両親のことは何も言ってないわ。」
「あんたの母親が、そう言ってたんだよ。」
「でも、私は千里さんの経歴を知らなかったから……あなたが言ってくれれば、私だって馬鹿にしたりしなかったわ。」
「なんだよ、それ。学歴がそんなに大事なのか?」
「大事に決まってるでしょ。私は東大に行くために、遊ぶこともなく努力してたの。それは、あなたも分かってるでしょ?」
「もちろん、分かってるよ。」
「だから、そんな私には、勉強をサボってた連中を馬鹿にする資格があるのよ。それは、いい大学に行ったエリートだけに許された特権だからね。」
「くだらない。そんなわけがないだろう。」
「どうしてよ。」
「俺たちは、好きで勉強してただけだ。夢があったり、大学に行きたいと思ったり、そういう気持ちがあったからやっていただけだ。それが偉いとか、上とか、そんなのはないんだよ。」
「それはそうだけど……だったら、お前は今後、子供が生まれて、その子が高校を卒業して、好きな仕事が見つかったから働きたいと言ったら、反対するのか?その子の夢を、お前の偏った考えのために潰すつもりか?」
「だって、学歴は大事よ。」
「それは人による。お前の考えを押し付けるな。悪いが、そんな人間とは家族になることはできない。」
「え?今、なんて?」
「家族を大事にできない人間とは、一緒にいられないと言ってるんだ。婚約は解消させてもらう。二度と俺に関わろうとするな。」
「ちょっと待ってよ。なんでそうなるのよ?」
「俺はもう、お前に愛想が尽きたんだよ。」
翌日。
「あんたのせいで、結婚が解消になりそうなのよ。なんとかしなさいよ。」
「それは、兄が決めたことですよ。私たちではなくて、夫婦で話し合うことですから、あまり関わらない方がいいんじゃないですか?」
「親として、娘が恥をかくのを黙って見ておけというの?」
「あなたの娘さんは、だいぶ恥ずかしいことをおっしゃってましたよ。もっと前に止めておくべきじゃなかったんですか?」
「あの子は、何も間違ってないのよ。東大に行ったんだから、間違いなんて何もないわ。」
「あなたは、かなり学歴を信仰してるようですね。」
「当たり前でしょ。この国を仕切ってるのは、全員高学歴者なのよ。つまり、高学歴こそが全てだってこと。」
「そんなことはありませんよ。学歴のいい人だって犯罪はするし、間違ったことをするんです。高学歴の人が全て正しいのなら、もっと世界は平和になってると思いますよ。」
「黙りなさい。少なくとも娘は間違ってないわ。東大に現役で合格できるだけの、優秀な頭脳の持ち主なんだから。」
「どうして、そこまで思えるんですか?」
「……私も昔は、東大に行こうと勉強してたのよ。」
「そうなんですね。」
「でも、私は三浪までしても無理だった。東大の高い壁を、超えることができなかった。なのに、愛子は現役で合格したわ。私ができなかったことを、平気でやってのけたの。私なんかがあの子に言えることは、何もない。」
「親として、あの子がやりたいと思ってることを支えることしか、私にはできないわ。」
「そんなことで、上とか下とか決めないでください。あなたはもう少し、自分で考えて物事を判断するべきです。親として、娘が間違った方向に進んでるのなら、厳しく注意をするべきなんですよ。」
「そんなことする必要ないって言ってるでしょ。」
「少なくとも、今回の婚約解消は、あなたたちの発言が原因です。そうなったことを、反省してほしいですね。まあ、無理でしょうけど。」
「婚約解消させないように、協力しなさいよ。」
「嫌です。私は、家族として兄に幸せになってもらいたいんです。そのためには、あなたたちとは関わらない方がいいと思うので。では、さようなら。家族にならなくて、本当に良かった。」
2ヶ月後。
「よくもやってくれたわね。ブロックするのを忘れてたわ。」
「嫌がらせ?私、何かしました?」
「人の仕事を奪っておいて、よく言うわね。」
「もしかして、今回の契約の話ですか?」
「そうよ。うちが先に相談を進めてたのに。」
「コンペだったので、仕方ないでしょ。私が開発した自動システムを、クライアントが気に入ってくれて、愛子さんの会社ではなく、うちを選んでくれたってだけですから。」
「うちみたいな大手が、あんたのような小さな会社に負けるなんて。」
「2年前に私が作った会社ですからね。規模は大きくないですけど、優秀な人材が揃ってますよ。」
「スーパーで働いてたのって、もしかして……」
「そうです。自動システムの開発をする上で、各スーパーの現状を知りたかったんです。今って、どこのスーパーも深刻な人手不足なんですよ。だから、自動化ができないと回らないなと思ったんです。ただ、そうなると万引きとか、高齢者のお客さんが使えないとか、色々な問題がありまして……それらを全て解決できるシステムを、今回開発したんです。」
「今回コンペで勝ち取ったところは、全国展開してる大手スーパーなので、このレジがかなりの台数使われることになると思いますよ。」
「どうして、こんなことになるのよ。私が、あんたに負けるなんて。私は正しい道を歩いてきた。勝ち続けてきたのよ。なのに、あんたと会ってから、何もかもがうまくいかないわ。結婚もダメになったし、仕事も失敗した。」
「あなたは、いい学歴とエリートという肩書きを得て、満足してたんですよ。ええ、そんなことでは、これから何一つうまくいきません。」
「どうして、そんなことが言えるのよ?」
「あなたは、人を見下して馬鹿にするのがお好きだって言ってましたよね。」
「そうよ。それで私は、家族のことも馬鹿にしてたわ。それの、何が悪いの?」
「そうやって下ばかりを見てる人間が、これから先、上に行くことはありえません。私は常に、自分の目標を叶えるために、なりふり構わずやってるんです。下を見て気持ちよくなってるあなたが、この先何かを掴むことはないですよ。」
「そんなわけ……」
「この世は、学歴が全てなんでしょ?東大よりも、ハーバード大の方が上ですよ。どっちが正しいことを言ってるか、分かりますよね?学歴至上主義のあなたなら。」
その後、愛子さんは私に対して敵対心を燃やし、どうにかして上に立とうと画策したそうです。ただ、そのやり方がまずかったようで、後輩から手柄を奪ったり、大手であることを振りかざして脅迫めいた言動で契約を取ろうとしたみたいですね。それらが全てバレてしまい、愛子さんは懲戒処分を受けました。プライドの高い彼女は、キャリアでの失敗を受け入れられなかったのでしょう。今は家に塞ぎ込んで、引きこもり生活を送ってるそうです。
一方、愛子さんの母親は、娘を首にした会社を逆恨みして、毎日苦情の電話をかけ続けたそうです。もちろん、業務妨害と判断されて、逆に損害賠償を請求されてしまったとのこと。そして今は、その支払いのために、スーパーで働きながらお金を稼いでるそうです。
ちなみに兄ですが、婚約解消したことを引きずらずに、仕事に打ち込んでいます。兄の仕事に対する姿勢は、同じ社会人として本当に尊敬するところが多いです。私も、開発したレジシステムが全国のスーパーで導入されて、会社としても忙しくなってきたので、現状に甘えず、もっと上を目指して頑張りたいと思います。



