「ねえ、うちの駐車場に紫の車が止まってたんだ。ファー敷いて、後部座席にぬいぐるみが山積みの、どう見ても昭和のレディースが乗ってそうな車。もちろん、あの義姉の車だよ。連絡したら『身内なんだから優先されて当然でしょ』って言われたんだ。あんた、笑っちゃうよね。でも、義姉にはある秘密がまだあるんだ。私はそれを知ってしまって、どうやら事態は思ってたよりずっと複雑なことになりそうなんだ。」…

「ねえ、うちの駐車場に紫の車が止まってたんだ。ファー敷いて、後部座席にぬいぐるみが山積みの、どう見ても昭和のレディースが乗ってそうな車。もちろん、あの義姉の車だよ。連絡したら『身内なんだから優先されて当然でしょ』って言われたんだ。あんた、笑っちゃうよね。でも、義姉にはある秘密がまだあるんだ。私はそれを知ってしまって、どうやら事態は思ってたよりずっと複雑なことになりそうなんだ。」...

「あの、うちの駐車場に止めてある紫の車、動かしてもらえませんか?」

私は、夫の弟の妻であるしおりさんにそう連絡をした。彼女が私に駐車場を貸してくれてから、もうすぐ一週間になる。確かに、最初の二日間は我慢した。でも、三日目になっても、その派手な車は私の駐車場に居座り続けていた。紫のボディに、ダッシュボードにはファー、後部座席には大量のUFOキャッチャーのぬいぐるみ。正直、あれが誰の車かはすぐに分かった。義姉の車だ。

「え、そんなに止められてたの?ごめんね!張り紙もしたし、すぐに移動させるから!」

しおりさんは謝ってくれた。でも、私が貼った張り紙は、破り捨てられていた。それでも、しおりさんは「保証するから」と言ってくれたので、私はその間にコインパーキングを使うことにした。数日後、今度は私の夫の携帯に、義姉から直接電話があったらしい。夫は駐車場で待ち伏せして、ようやく戻ってきた義姉を捕まえたのだ。

「お姉さん、うちの駐車場に車止めてますよね?」
「はあ?何を根拠に言ってんのよ」

私が電話口で義姉にそう言うと、彼女はしらを切った。でも、私は証拠の写真を送った。しおりさんからもらった、駐車場に止まっている紫の車の写真だ。

「この令和の時代に、その特徴を併せ持つ車に乗ってるのは、お姉さんしかいませんよ」
「友達にもいるわ!それは累が友を呼んでるからよ!」
「何が言いたいんですか。車をどかしてください」
「無理よ。順番って分かるでしょ。私のママ友が先に契約して、お金も払ってるんです。でもお姉さんは無断で勝手に止めてますよね」
「それが何?身内なんだから、私が優先されて当然でしょ!」

私は呆れた。義姉は離婚して、マンションも追い出されたから、車を止める場所がなくなったと言い出した。でも、それはこちらの事情ではない。私は「レッカーしますよ」と告げた。すると義姉は「やめてよ」とようやく折れた。そして、数日後、彼女はようやく車を移動させた。

「ごめんね。迷惑かけたけど、すぐに移動させるから」

しおりさんにそう言われた時、私は彼女に全く怒っていなかった。むしろ、気を使わせてしまって申し訳なかった。幼稚園の運動会で、私と娘が浮いていた時、最初に声をかけてくれたのも彼女だった。義姉の非常識さに悩まされながらも、しおりさんという友達がいることが、どれほど心強かったか。

——

それから半年が経った頃。私は軽井沢への旅行から帰ってきた。家の鍵を開け、荷物を下ろしていると、スマホにメッセージが届いた。しおりさんからだった。

「旅行から帰ってきたんだけど、また駐車場が埋まってて…」

私は血の気が引いた。またあの義姉の仕業だ。どうやら彼女は、私たちが一週間不在だったことを見計らって、また駐車場に車を止めたらしい。しおりさんは「今回は絶対にちゃんとする」と言ってくれた。彼女の夫も、駐車場で待ち伏せして義姉を捕まえてくれた。しかし、義姉は全く反省していない様子だった。

「おい、非常識な元ヤンが何か言ってるぞ」
「はあ?急ぎ着って何よ。意味不明なんだけど」
「急ぎ着には脳がない。記憶する機能がない。お前と同じだろうがよ」

義姉は夫を「非常識」と罵り、自分の行為を正当化しようとした。そして、私たちにこう言い放った。

「半年間ただで止めさせてくれてサンキュー。得したわ」

私は怒りで震えた。夫も我慢の限界だった。彼は駐車場に立ててある看板を指差した。そこには「無断駐車はレッカー移動、料金は実費負担」と書いてあった。義姉は「たかが身内から金取るの?」と逆ギレしたが、夫は引かなかった。すると義姉は、なぜか夫に向かってこう言った。

「あんた、もしかして元ヤンだったりする?」
「だったらなんだよ」
「どこに所属してたの?」
「…姉もそうだ」
「は?あの伝説の?」

その瞬間、義姉の態度が一変した。夫が「姉は5代目早朝」と名乗った途端、彼女は目を輝かせて食い付いてきた。実は、義姉は若い頃からヤンキー文化に異常なほど憧れていて、自分も特攻服を持っているらしい。夫はそのことを利用したのだ。後で夫は白状した。

「姉貴のヤンキーへの憧れは異常だよ。中学生の頃、俺の貯金箱から金盗んで特攻服作ってたからな。あの恨みは今でも忘れてない」

義姉は夫の話を聞いて、素直に車を移動させた。その日から一週間ほどは、平穏な日々が続いた。しかし、一週間後、しおりさんから再び連絡が来た。

「はなさん、本当にごめんなさい。やっぱり駐車場を解約させてもらうね」

理由を聞くと、私の車のボンネットに毎朝ゴミが置かれているというのだ。夫が仕事に行く前に、毎回ゴミを捨てなければならない。明らかにうちの車だけに置かれているらしい。義姉の嫌がらせだ。しおりさんは新しい駐車場を自分たちで契約し、その初期費用と半年分の料金を私に渡そうとしてくれた。私は断ったが、彼女は頑として譲らなかった。

「トラブルが長引いたのも、義姉の暴走を止められなかったのも、全部私の責任だから。これだけは受け取って」

しおりさんはそう言って、私に振り込んだ。私は彼女に改めてお礼を言った。彼女は優しく笑ってこう言った。

「はなさんがやったわけじゃないでしょ。私こそ、いつもよくしてくれてありがとう。幼稚園で一人で浮いてた私に、最初に声をかけてくれたのははなさんだったんだよ」

——

数日後、私は義姉に直接会いに行くことにした。彼女は相変わらず自分の行為を「悪くない」と言い張った。私は彼女に言った。

「人の信頼は積み重ねですよ。お姉さんは、人を裏切り続けてきた実績しかないじゃないですか」

すると義姉は逆上した。「うるさい!このまま駐車場は借りるから!」と叫んだ。でも、私はもう彼女に遠慮する必要はなかった。

「うちのママ友は、新しい駐車場を借りるはめになりました。人に損害を与えて、責任を追わずに済むと思わないでくださいね」

翌日、私は義姉にメッセージを送った。駐車場を実際に使っていた期間の料金と、しおりさんが新しく借りた駐車場の初期費用、そして迷惑料として、いくらかを振り込んだ。義姉は「そんな迷惑料なんていいのに」と控えめに言ったが、私は譲らなかった。これだけは受け取ってほしいと頼み込んだ。

——

あれから一ヶ月が経った頃、しおりさんから嬉しい連絡が来た。義姉は、何度も逃げ出そうとしているらしい。でも、私たちは彼女がある人物の会社に就職する手配をしていた。その人物の名前は「霊下さん」。かつて、伝説のレディースの初代総長だった人だ。しおりさんは昔、その世界にいたらしい。義姉が憧れていた人物の一人だった。

義姉は霊下さんの会社で働き始めた。肉体労働はきついようで、最初は逃げ出そうとしたらしいが、霊下さんに厳しく指導されて、なんとか続けている。結局、彼女は自分の借金を返すために、今もその会社で働き続けている。かかった損害額は、駐車場代、修理代、迷惑料を含めて総額100万円。義両親には借金のことが知られ、実家への出入りも禁じられた。

あの紫の車は、車検代すら払えず、露頭の駐車場でナンバーを外されたまま放置され、最終的には廃車になった。

現在、私はしおりさんと変わらず仲良くさせてもらっている。父から受け継いだ駐車場は、今もちゃんと経営を続けている。たまに、あの義姉のことを思い出す。彼女は今、少しずつだが、真人間になりつつあるらしい。もう二度と、あんな迷惑をかけられることはないだろう。

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