校門の前で、あの声を聞いた瞬間、十年ぶりの時間が一気に巻き戻された。
「まさか学校で会うなんてね。久しぶりじゃない? 負け犬さん。」
振り返ると、そこには昔と変わらない笑みを浮かべたナが立っていた。親友だった頃と同じ顔なのに、その目だけが冷たかった。
私は挨拶をしたのに、彼女は「無視された」と騒ぎ立てた。授業参観の日で、周りには保護者の目もあったのに、彼女は構わず言葉を続けた。
「それにしても、あんたの娘がうちのユイの親友だったなんてね。世間って狭いわ。」
「そうみたいね。私も驚いたわ。」
「というか、元親友ね。もう親友とは思っていないから。」
「あっそ。私もよ。」
彼女はあごで私を指しながら、言った。「今日は決戦だったわ。こっち見てくる人がいるから誰かと思ったら、私に夫を奪われた負け犬じゃんって思って、笑うのを必死にこらえたわ。」
その言葉に、私は腹が立つより先に、呆れが勝った。
「それで、何のために連絡してきたの? 連絡先は教えていなかったはずだけど。」
「ゆいとあんたの娘は友達だからね。あかりちゃんだっけ? ゆい経由で教えてもらったのよ。」
彼女はにこやかに言った。「まあ、友達の母親からそう言われて、嫌ですなんて言う子も少ないでしょうけど。」
そして、本題を切り出した。
「いやさあ、ちょっと釘を刺しておこうと思ってね。」
「何の話?

」
「どうせあんたのことだからシングルでしょ。貧乏生活大変なんでしょ? うちが羨ましいからって嫌がらせしないでね。」
「別にそんなことしないわ。」
「強がらなくていいのよ。ちの夫は弁護士よ。年収1000万あるのは知ってるわよね。元夫なんだから。」
「ええ、あなたが浮気して駆け落ちしたんだもの。経済能力は知ってるわ。」
「あなたみたいな普通の会社員とは違うのよ。ちにはお金があるけど、あんたにはない。だから警戒しとかないと。」
「そう。言いたいことはそれだけ? 」
「はあ。何よ、その態度むかつくわね。」
彼女はさらに続けた。「うちの娘は優秀だし、大学だっていいとこに通うのよ。ちの娘はどうせしょぼいところでしょ? かわいそうに。」
私はため息をついて、事実を告げた。
「何か大きな勘違いしてるようだけど、私、再婚してるわよ。」
「はあ?
」
「だからシングル家庭じゃないの。」
「でも愛のない家庭でかわいそうね。」
「どういう意味? 」
「あんたが再婚って、どう考えてもおかしいじゃん。夫を他の女に取られるようなやつよ。んなのが再婚できたってことは、どうせ子供ができたから結婚したに決まってるわ。愛がない家庭のくせに。」
「そう思うなら、それでいいわ。」
「ズルいわね。やっぱりあなたみたいな貧乏人は、子供ができないと結婚できないのよ。」
「つまり自慢話をしに来たわけね。」
「もういいわよ、時間の無駄だもの。」そう言って、私は背を向けた。「あなたのことは許してないし、二度と近づかないわ。けど、子供たちのことには口を出さないで。」
その日から数時間後、リビングで宿題をしていた明かりが、突然スマホを置いて言った。
「あのさ、私、高校卒業したら家出ようと思う。」
「は? どうしたの? いきなり。」
「うち、もうめちゃくちゃなの。正直限界。」
「何があったの?
」
「父さん、借金してるの。弁護士事務所も倒産寸前らしい。」
「借金? それやばいじゃん。」
「うん。しかもそれだけじゃなくて、父さんも母さんも浮気してる。」
「はあ? え、マジ? 何それ?
地獄じゃん。」
「離婚協議中なんだけど、どっちが慰謝料払うかで揉めてるの。毎日怒鳴り声が聞こえるし、子供のことなんて何も考えてない。」
「ゆい、大丈夫? 」
「大丈夫かな。今は高校卒業したら家出るって決めたら、色々諦めがついてマシになったけど。」
「そうなんだ… 辛かったら何でも言ってよ。んなら、うちに止まってもいいし。」
「ありがとう… ありちゃんにしか言えないから。」
私は、ゆいの家のことを知った。そして、数時間後、さらに驚くべきことを聞くことになった。
明かりがスマホを見せながら、言った。「あのさ、お母さん、さっきのLINE見ちゃったというか、見えちゃったっていうか…
リビングで携帯を開きっぱなしにしてたから見えたのね。」
「見るつもりはなかったんだけど… ゆいのお母さん、ひどいこと言ってたね。」
「大丈夫よ。ちは気にしなくていいの。」
「いや、それがね… ゆいのお母さん、めちゃくちゃ自慢してたけど、実際はそんなうまくいってないらしいよ。」
「どういうこと? 」
「ゆいの家、借金あるって。弁護士事務所も倒産寸前らしい。」
「詳しく教えて。」
「ゆいが辛そうだったから色々聞いたの…
親2人とも浮気してて、離婚協議中で、ゆいは家にいづらいって言ってた。」
「ゆいちゃんも本当に大変ね… 」
「でしょ? 私、ゆいのお母さんにはあんまり会ったことなかったんだけど、なんかゆいに対して当たりがきつくて。」
「明かりはゆいちゃんと仲がいいのよね。」
「うん。よく話してるじゃん、学校のこととか。」
「卒業旅行は2人で行くって言ってたものね。」
「うん。親友だからね。」
明かりがふと、真剣な顔で言った。「そう… 私も、あなたに言わないといけないことがあるの。」
「え?
何それ? 」
「今はまだ言えないわ。でも近いうちに話すことになると思う。」
「そうなの? 分かった。」
それから数日後、事態はさらに悪化した。
ナから直接、連絡が来た。
「なんか娘同士でこそこそしてるみたいだから、これからはうちのユイには近づかないでもらえない? 」
「それは当事者が決めることよ。親がとやかく言うものじゃないわ。」
「はあ?
子供のことなんだから、親が口出していいでしょう。」
「うちにとっては悪影響しかないのよ。」
「悪影響? うちの明かりが何かしたのかしら? 」
「何もしてないけど… 正直、ありちゃん、可愛くないじゃない?
うちの娘に釣り合わないし、ブスが映るから話しかけないでくれない? 」
「… 今、なんて言った? 」
「だから、ブスって言ったのよ。」
「ちょっと何?
」
「本当のことでしょ? 何かできるならやってみなさいよ。ちに旦那取られて惨めな思いしてるくせに。」
「言っとくけど、なんかあったら弁護士の夫に頼むから、あんたに勝ち目ないけど。」
その瞬間、私の中で何かが切れた。
「… あったま来た。」
私は静かに、しかしはっきりと言った。「正直、親のことで子供たちが困るからと思って、黙っていたけど… そっちが口を出すなら、容赦しないわ。」
「はあ?
」
「大体、貧乏なのはそっちでしょ。」
「何のことよ? 」
「とぼけてもいいけど、あなたの旦那の事務所は、もちろん元妻の私も知ってるのよ。調べれば今どういう状況か分かるわ。」
「誰から聞いたの? 」
「それは今は関係ないでしょ。」
私は続けた。「それにしても笑ったわ… 年収1000万、弁護士の夫…
全部嘘じゃない? 」
「嘘じゃないわよ。」
「じゃあ、嘘じゃないところを教えてよ。」
「… 夫が弁護士って言うのはそうだけど… 」
「倒産寸前で、それを言われてもね。」
「ああ…
」
「娘をいいところの大学にって話も、その状況じゃ奨学金が必要よね。」
「私の家を貧乏って馬鹿にしていたけれど、うちは娘を奨学金なしで大学に行かせてあげられるわ。」
「それでも、貧乏って言うのかしら? 」
「あんたが私に偉そうにするんじゃないわよ。」
「『負け犬のくせに』って… 同じセリフばかりね。」
私は、抑えていた言葉を全部吐き出した「お前の『負け犬』から奪った男に飽きて浮気して、家庭内泥沼化させたのは、どこの誰かしら。」
「あなた、子供ができたから結婚したくせに。」
「そうでもしないと愛されないくせに、私を見下すな。」
「そういえば、あなた、私の容姿を馬鹿にしていたわね。」
「だって実際ブスだったじゃない? クラスの男子に馬鹿にされてたし。」
「容姿については個人の価値観があるから、あなたが私のことをどう思うかは自由よ。」
「でも、愛がないなんて決めつけないで。」
「いや、ないでしょ。子供できて責任取らせただけのくせに。」
私はここで、ずっと隠してきた真実を明かすことにした。
「明かりは、連れ子よ。」
「え?
」
「だから、明かりは私と元夫の子。あなたが夫を奪った後に、妊娠が発覚したの。」
「は? そ、そんなの聞いてない。」
「養育費を一括で払わせた後は、私も連絡しなかったからね。」
「じゃ、じゃあ、ゆいとあかり… ありちゃんは? 」
「あかりとゆいちゃんは、姉妹よ。」
「は?
」
「腹違いのね。」
「う、嘘でしょ? 」
「本当よ。浮気するようなクズだから、どうせ子供ができたことなんて、あなたに話してなかったんでしょ。」
「だから、あなたも知らなかった。」
「私だって、ゆいちゃんの母親があなだと知って初めて気づいたんだもの。」
「… 」
「これで分かった? 」
「あなたは私を見下したかったようだけど、見下せるところなんて何もないのよ。」
ナは言葉を失っていた。
「それにしても…
なんで嫉妬で私に突っかかるの、もうやめてくれない? 」
「はあ? 嫉妬なんてしてないわよ。」
「あかりが言ってたわ。」
「前に、ありが一瞬あなたと会った時… 『いい服着てるわね』『育ちがいいのね』って言ってたって。」
「内心、悔しかったんでしょ。」
「明かりを見て、いい暮らしをしてると思ったから。」
「だから、私にマウントを取ってきた。」
「そうでしょ?
」
「違う、違う… そんなんじゃない。」
「違わないわよ。」
「あなたは私に劣等感を持っていたもの。」
「あなたは自分に自信がない。」
「だから愛されていても不安になる。」
「そんなだから、浮気を繰り返してるんでしょ。」
「はあ、何言ってるの? 」
「そんなんじゃないってば。」
「分かったような口聞くな。れに浮気だってしてないし。」
「あら、そうなの? 」
私はスマホを取り出した。「でも、あなたの浮気相手って…
LINE証券の営業マンよね? 」
「あ、なんで知ってるのよ。」
「私の夫の職場の人だからね。」
「いやあ、びっくりしたわ。」
「高級取り同士だから、被ることもあるのよね。」
私は写真を見せた。「写真も持ってるわ。」
「旦那が困っててね… 営業中に女性と会ってるってことで、証拠写真を部署の人間で集めてたんだって。」
「見せてもらったら、あなただったから分かった。」
「そんな偶然? 嘘でしょ?
」
「本当すごい偶然ね私は嬉しいけど。」
「ああ、そうだ。の写真、あなたの夫に渡すわね。」
「なんで渡すのよ? それだけはやめて。」
「どうして? 」
「あなたの夫は知らないでしょ? 浮気相手がどこの会社に勤めてるか。」
「知ってたら、さすがに弁護士だし、もっと色々動いてると思うのよね。」
「…
今、離婚協議中なの。」
「知ってるわよ。」
「だから、渡すの。」
「待って… もし証拠が渡ったら、私が不利になるの? 」
「そうね… 慰謝料はあなたが払うことになるわ。」
「それが狙いなの。」
「でも、そうなったら、あんたを捨てた男が得することになるのよ。」
「それでもいいの?
」
「得をすることはないわ。」
「地獄を見るだけよ。」
「え、弁護士で証拠があれば、裁判で優位になれるってすぐ分かるはずでしょ。」
「そうなれば、あなた相手に裁判するでしょうね。」
「あいつ、お金ないでしょうから… 倒産寸前で借金までしてるんだもの。」
「勝てる見込みがあるなら、動くはずよ。」
「そ、それは困るって。」
「でも、裁判するってなると、それなりにお金がかかるはずよ。」
「なれば、お金を取り戻そうと躍起になる。」
「2人で泥沼の裁判をしてくれる方が、私は嬉しいのよ。」
「2人とも苦しんでくれるわけだし。」
「今更、争うとか無理だって。」
「あら、争うのはあいつだけじゃないわよ。」
「あなたの浮気相手、奥さんいるでしょ。」
「そっちからも慰謝料請求されるらしいわよ。」
「え、あいつ既婚者だったの? 」
「あら、知らなかったの? 」
「けど、そんなの関係ないわ。」
「奥さんが激怒してるらしくて、夫が言ってたもの。」
「職場に殴り込みに来たらしくて、修羅場になって大変だったとか。」
「そんな証拠も揃ってるし、裁判になるわ。」
「ダブルで慰謝料って、大変ね。」
「お金ないのに、どうすれば…
」
「自業自得よ。」
その翌日、ゆいがナに問い詰められていた。
「なんで、あかりちゃんの母親に家のことを話したの? 」
「あ、何のこと? 」
「とぼけんじゃないわよ。」
「あんたしかいないわ。」
「あんたのせいで大変なの。」
「あなたが話したから、全部バレたじゃない。」
「バレたから何? 」
「嘘ついてたのは、お母さんの方でしょ?
」
「あんた、親に向かってなんてこと言うの? 」
「娘とも思ってないくせに。」
「あんたは私の娘でしょ? 」
「嘘つかないで。」
「お母さん、私のことなんて、何も考えてなかったじゃない。」
「そんなことないわよ。」
「なら、なんで子供ほったらかして浮気したの? 」
「父さんも浮気して、離婚協議中で…
子供のことなんて無視して、家で1人でいた時の気持ちなんて、知らないよね。」
「電気もついてないくらい家に帰って、1人で眠ってさ。」
「お母さんは自分のことしか考えてなかった。」
「私のことなんて、どうでも良かったんでしょ。」
「生意気なこと言ってるんじゃないわよ。」
「もういいよ。」
「私、高校卒業したら、しばらくおばあちゃんの家に行くから。」
「待って。」
「おばあちゃんの家ですって。」
「そんな勝手、許さないわよ。」
「親戚に浮気してること、バレるの嫌だもんね。」
「でも、そんなのどうでもいいよ。」
「私は私が生きるために行動するから、もう連絡しないで。」
「待ちなさい。」
「私の部屋の荷物がなくなってること… 今の今まで気づかなかったでしょ。」
「そういうところだよ。」
数日後、ナから電話があった。
「ゆい、あなた、親戚にも話したの? 」
「話してないけど、大体察するでしょ。」
「私はおばあちゃんとしか話してないし。」
「親戚から電話が来て、『あなたは何をしているの』って。」
「あなたのせいで、みんなに責められてるのよ。」
「娘を追い出して、浮気なんて。」
「なんでそれ、私のせいなの? 全部母さんがやったことじゃん。」
「あんたの自業自得でしょ?
」
「私は何もしてない。」
「いい加減、他人のせいにしないでよ。」
そして、1週間後… ナから、泣きそうな声で電話が来た。
「もう限界… 」
「慰謝料請求されるし、親戚には叩かれまくるし、娘は出ていくし… 」
「もう本当に無理なの。」
「あなたが私にしたことを考えれば、これくらい当然よ。」
「お願い…
もう許して。」
「私、もう十分苦しんだわ。」
「十分? まだ足りないと思うけど。」
「あんたは、私のこと分かってたくせに。」
「何ですって? 」
「ええ、そうよ。」
「私はずっとあなたに劣等感を抱いていたの。」
「母親からも『みさちゃんみたいに頑張りなさい』って、毎回毎回あんたと比べられて。」
「あなたはクラスの人気者で、私は友達がいなくて、影で笑われてたのも知ってる。」
「そんな風に育ったんだから、あなたに勝ちたいって思うのは普通でしょ。」
「だから、あなたの夫を奪ったの。」
「私の方が上だって証明したかった。」
「それの何が悪いっていうの。」
私は、静かに言った。
「… そんなことがあったのね。」
「でも、それはあなたの勘違いよ。」
「そんなわけない。」
「ねえ、あなたのお母さんは、あなたを励ましていただけよ。」
「え?
」
「あなたを貶めるつもりなんてなかった。」
「だって私は何回もあなたの家に泊まりに行ってたじゃないだから、少しだけ会話を聞いていたわ。」
「それに、あなたのお母さんが言ってたの。」
「『美沙にはもっと頑張って欲しいけど、素直じゃないから、変に伝わってないか心配だ』って。」
「『自分みたいになって苦労して欲しくないから、つい厳しくしてしまうのよね』って。」
「… 」
「私も、あなたのこと本当の友達だと思っていた。」
「でもあなたは勝手に、私に劣っている、利用されてるって思い込んだ。」
「その結果、攻撃性が増していって… 私の家庭を壊したん。」
「違う… 私は被害者で…
親に比べられた可哀想な子だから… 」
「自分は何をしてもいいって思ってたんでしょ。」
「でも、あなたは自分の都合のいいように、勝手に歪んだ解釈をしただけ。」
「… でも、それで救われたわ。」
「え? 」
「本当はね、私もあなたたちに苦しんで欲しかったの。」
「でも、復讐したい気持ちより、娘を優先した。」
「だから養育費だけもらって、それ以降しなかったの。」
「でもね…
あなたたちに苦しんで欲しいという願いは、ずっとあった。」
「なんですって。」
「娘が幸せならそれでいいって… 自分の気持ちに蓋をしてたの。」
「でも、あなたは私の娘のことまで馬鹿にした。」
「大切なものを貶されて、黙ってるほど、私だってお人好しじゃないの。」
「今、あなたは報いを受けてる。」
「ようやく、願いが叶ったわ。」
「ひどい… こんなのあんまりだわ。」
「ひどいのはあなたよ。」
「自分が被害者だなんて、二度と言わないで。」
「これから先は貧乏暮らしだろうけど、私は気の毒とは一切思わないわ。」
それから数日後、明かりが真剣な顔で言った。
「… 話があるの。」
「どうしたの?
」
「実は、ゆいちゃんのことなんだけど… 」
「ゆいがなんかあった? 」
「ゆいちゃんは… あなたの腹違いの妹なの?
」
「は? 」
「は、どういうこと? 」
明かりは、ゆっくりと言った。「ゆいの父親は、私の元夫… つまり、あなたの父親よ。」
「…
マジで? 」
「ごめんね… 今まで言えなくて。」
「うん… 大丈夫。」
「びっくりしたけど。」
「私がお母さんの連れなのは聞いてたけど、こんなことはあるんだね。」
「でも、まあ、私のお父さんは今のお父さんだし、正直そっちはどうでもいいっていうか、なんというか…
」
「あなたの立場だと、複雑よね。」
「… ゆいちゃんと、これからどうするの? 」
「どうもしないよ。」
「親友だし。」
「姉妹って言われると、なんか変な感じだけど… 大切な子なのね。」
「うん…
そうだよ。」
「ゆいのこと、大好きだから。」
「でも、お母さんからしたら嫌だよね。」
「浮気相手の子供と仲良くしてるなんてさ。」
「それとこれとは別よ。」
「それに、あなたよくゆいちゃんの話をたくさんしてくれてたでしょ。」
「ゆいちゃんも、あなたのことを大切に思ってるだろうし、仲がいいのは知ってるもの。」
「だから、私がゆいちゃんのことを浮気相手の子供だからって嫌うということはないわ。」
「そっか… それ聞いて、安心した。」
「ゆいに会うとか言われたら、どうしようかと思った。」
「それはさすがにないわよ。」
「よかった… 」
同時刻、ゆいと明かりは、スマホで話していた。
「ねえ、ゆい。」
「うん。」
「聞いた… うちら、姉妹らしいよ。」
「は?
あの話、マジ? 」
「お母さんから聞いたけど、嘘かと思ってた。」
「… びっくりしたわ。」
「親友だと思ってたら姉妹だったとか、ドラマかよ。」
「でも、なんか嬉しいかも。」
「私も、ありが姉ちゃんでよかった。」
「私も、ゆいが妹でよかった。」
「なんか… 全然知らない人がいきなり姉ですとか言われても、信じらんないし。」
「それはそう。」
「というわけで、これからもよろしくね…
姉ちゃん。」
「よろしく… 妹。」
「なんか、姉妹って変だわ。」
「ていうか、私がお姉ちゃんなの? 誕生日は明かりの方が早いじゃん。」
「だから、明かりがお姉ちゃんでしょ。」
「姉妹なら、どっちでもよくない? 」
「それいいね。」
「でも、うちらさ、なんか変わるのかな?
」
「さあ… 変わんないんじゃない? 」
「うちら、一生2人でバカやってそうだもん。」
「それ、私も思った。」
「あ、でも、姉妹ならあれじゃん。」
「病院運ばれたら、家族として病院行けるじゃん。」
「なんで病院運ばれる前提なのよ。」
「受けるんだけど。」
「いや、これからもずっと一緒にいるなら、そういうこともあるんじゃね? 」
「まあ、おばあちゃんになったら、そうだよね。」
「ばあちゃんになっても、一緒にいようね。」
「うん…
約束。」
その後、ナは夫と浮気相手の奥さんから、二重の慰謝料を請求されました。毎月の支払いに追われ、親戚からは絶縁され、孤立しました。さらに、元夫と財産分与で揉め、何もかも失ったと聞きます。
私を裏切ったあの男も、裁判までしたことで資金がなくなり、事務所も倒産しました。2人揃って金を奪い取ろうと躍起になり、地獄を見ていると聞きます。
一方、家を出たゆいちゃんは、祖父母の家で今は平和に暮らしていると聞きます。明かりとは違う大学ですが、お互い定期的に会っているようで、新生活を送る中、支え合っています。友人として、そして姉妹として、2人は掛け替えのない存在なのでしょう。
子供たちはもうすぐ成人を迎えます…親の手を借りず生きていく、その背中を私は押してあげることしかできませんが、子供たちがこれから先、自分らしく生きてくれることを願います…


