私、藤木ゆき子、65歳。駅前で小さなお弁当店を経営しています。今日、生後1ヶ月の孫、優菜に初めて触れようとした瞬間、長男の嫁である莉奈さんに「他人ですよね。赤ちゃんに触らないで」と怒鳴られました。
私は驚いて手を引っ込めました。「他人って…私は直樹の母親よ。優菜のおばあちゃんでしょ?」そう言っても、莉奈さんは鼻で笑うだけでした。「それより出産祝いは持ってきました?」私が10万円の入った封筒を渡すと、その場で開けて「10万円少ないんですけど」と言ったのです。そして、こう続けました。「まあ、お母さんもこれから年金暮らしですものね。10万円しか包めなくてもしょうがないわね。おいおい、金は受け取ったのでもう帰ってください。今日限りで私たち家族とは縁を切ってくださいね」
私は静かに頷きました。「わかりました。では今日から本当に他人として接しますね」莉奈さんは満足そうに笑いました。
私は夫を36歳の時に病気で亡くしました。直樹が7歳の時です。パートで働きながら、夫が残してくれたわずかなお金を元手に、朝4時起きでお弁当屋さんを始めました。最初は1日20個売るのがやっと。直樹には寂しい思いをさせましたが、「お母さんのお弁当、みんなが美味しいって言ってるよ。僕、お母さんの子で良かった」という言葉に何度も救われました。店は少しずつ評判になり、今では従業員を4人雇い、年金も受け取っています。決して貧しくはありません。
直樹が莉奈さんを連れてきた時、彼女は「お母さんと仲良くしたいです」と笑っていました。本当の娘ができたようで嬉しかった。しかし結婚後、莉奈さんの態度は変わりました。週に何度も夕食時に現れ、料理を採点し、「今日は70点。盛り付けが地味ですね」と言うのです。食器も下げず、直樹の分まで詰めて持ち帰りました。さらに妊娠すると、高額なベビー用品をねだるようになりました。10万円以上のものを見せられて「初孫なのにいいものを使わせたくないんですか?」と言われ、私は合計60万円以上の品を買いました。直樹が毎月3万円を食費として渡していると聞いたのに、私が受け取ったことは一度もありませんでした。
そして、お披露目会の日。私は心を込めて10万円を包みましたが、莉奈さんは「年金暮らしだから10万円でもしょうがない」と笑い、そして優菜に触れようとした私を「他人」と呼び、家から追い出したのです。
私は直樹に「縁を切ると言われた」と伝え、電話には出ませんでした。その夜、直樹が莉奈さんと彼女の両親を連れて私の家に来ました。莉奈さんは「私、何もしていないのに」と泣いています。しかし、お披露目会の日、玄関には介護福祉士さんがいました。莉奈さんの暴言を全て聞いていたのです。彼女が私を「他人」と呼び、10万円が少ないと笑い、縁を切ると言ったこと。すべて明らかになりました。
私は領収書のファイルを出し、直樹が妻に渡していたお金のことを話しました。直樹は莉奈さんに問い詰めます。「1年近く毎月3万円渡していた。あのお金はどうした?」莉奈さんは「使ったわ。服や化粧品よ。妊娠中はストレスが溜まるんだもの」と答え、逆ギレしました。「お義母さんが年金生活になるのが悪いんです。将来、面倒を見るかもしれないでしょ」その時、莉奈さんの父親が机を叩きました。「いい加減にしなさい。藤木さんの店はうちの会社が15年以上利用している大切な取引先だ。会議や研修の際、いつもお世話になっている。あなたが貧乏だと笑ったお店は、何人もの従業員を抱え、二号店を出す準備までしているのよ」
莉奈さんは震えました。私は言いました。「年金を受け取る人間だからと言って、誰かに養ってもらうとは限りません。それに『年金暮らし』という言葉は、人を見下すためにある言葉ではないわ」莉奈さんは「でも優菜に会えなくなってもいいんですか?おばあちゃんでしょ?」と食い下がりました。私は静かに答えました。「あなたが私を他人だと言ったのよ。優菜を嫌いになることはありません。でも、孫に合わせることを条件に、お金や労力を求められる関係には戻りません」
直樹は長い沈黙の後、莉奈さんに告げました。「リナ、一度実家へ戻ってくれ。母さんへの態度だけじゃない。俺が渡したお金を隠し、さらに金を出させていた。その上、優菜を使って母さんを従わせようとした。今の君とは一緒に暮らせない」莉奈さんは「家族なのよ!」と叫びましたが、私は首を横に振りました。「都合のいい時だけ『家族』という言葉を使わないで」
数ヶ月後、2人の離婚が成立しました。私は今も店を続け、直樹が優菜を預かる日に、時々孫に会っています。小さな手が私の指を握った時、胸がいっぱいになりました。しかし、もう誰かの理不尽な要求を受け入れるつもりはありません。年金を受け取りながら働くことも、小さな店を守ることも決して恥ずかしいことではない。私は「他人」と呼ばれた日、家族を失ったのではなく、家族という言葉を使って私を利用しようとする人との関係を手放しただけなのです。



