「おい、嫁の分際で親戚の集まりで偉そうにするな。おら、親戚一同が酒を待ってるんだよ。早く酒持ってこい。このクズが。」
酔っ払った夫のケトが、正月の親戚の集まりでいきなり怒鳴ってきた。私は台所でルミおばさんが特大の船盛りを出してくれたから、ちょっとつまみを食べてただけなのに。
「ごめんごめん、今台所でつまみ食いしてた」
「はあ? なめてんのか。嫁の分際で俺らを待たせるなんて何様のつもりだ。サボってるともう1発蹴るぞ。」
「うわあ、やめて。痛いのやだよ。」
彼は本当に蹴ってきた。正月から、親戚の家の廊下で、容赦なく脇腹にドーンと。私は倒れて、ついでに顎まで打った。
「おい、さっきの件は誰にも言ってないだろうな。」
「言うわけないじゃん。」
「俺は優しい夫で通ってるんだから黙ってろよ。」
「相変わらずサッカー選手並みのいい蹴りするね。」
「せっかくのめでたい正月なのに恥を欠かせるから気合入れてやったんだ。」
「まあ目が覚めたのは確かだね。おかげでやるべきことが明確になったわ。」
「だろ。嫁ってのはな、夫の親戚の集まりでは黒子に徹するもんなんだよ。お前みたいにヘラヘラ笑って親戚と慣れ合ってる姿見ると虫が走るんだよ。」
「ええ、だって皆さんと仲良くしたいじゃん。お母さんもルミおばさんもリッカちゃん座っててって言ってくれてるのに。」
「社交辞令に決まってんだろうが。本当に座ろうとするやつがいるか。お前の居場所は台所と廊下だけだ。」
「ちょっと犬じゃないんだからさ。」
「犬以下だろ。飯も作るの遅い。酒も持ってこない。芸能の1つもできない。試しぐらいのゴミだ。」
「相変わらずひどい言われようだなあ。」
彼は酒を1分遅れるごとに、帰ってから1発ずつ追加で蹴りを入れると言った。私は笑顔のまま「お酒とお料理、すぐにお持ちします」と返した。
「たく、手間を取らせやがって。」
「ああ、そうだ。さっき蹴られたところが北海道の形をした痣になってる。写真見る? 」
「いらねえからさっさと働け。」
その夜はあと1時間くらい飲んで帰るから、先に車に乗って温めておけと言われた。「了解、本日も運転手として頑張ります」と答えると、エンジンを温めるついでにアイスを買ってこいと言う。
「え、なんで? お腹空いたの?

散々おせちやご馳走食べてたのに。」
「違うわ。デザートだよ。1番高いやつな。」
「分かった。今から行ってくるね。ああ、ついでに脇腹冷やすための氷も買ってきていいかな。」
「そんなの唾つけときゃ治るわ。甘えんじゃねえよ。」
「うん、なんかいつもと痛みが違ってさ、晴れてきてるんだよね。」
「俺のキックの後が残るなんて光栄に思え。」
「うん、確かにありがたいんだけど、もしたまたま警察に止められたりして、この痣が見つかって警察沙汰になるのは嫌じゃん。」
「警察とか物騒なこと言うな。夫婦間のことに関して警察が介入できるわけねえだろう。」
「ええ、そういうもんなんだ。」
「民事不介入って知ってるか? ケトって法律にも詳しいんだな。」
「じゃあ安心だね。」
「おおよ。だから何の心配もせず今後も俺のサンドバックでろ。」
「お役に立てて何より。」
そう言ってコンビニに向かおうとした時、ルミおばさんから電話がかかってきた。「リッカちゃんどこ? おせちを用意したのにどこにもいないから。」
「今車でコンビニに来てます。」
「なんで? うちの冷凍庫にいくらだってあるわよ。」
「ケトが高級アイスしか食べないんですって。」
「あのね、ケトは私のおいでずっと可愛がってきたわ。でも私には隠さないで欲しいの。」
「何をですか?
」
「今日廊下で思いきり蹴られてたよね。」
「え、私見ちゃったの? そうだったんですか? 参っちゃったなあ。」
「笑い事じゃないでしょ。」
「うーん、まあ、笑うしかないっていうか。」
「倒れた後もヘラヘラ笑ってたよね。どうして普段からあんなことをされてるような感じに見えたよ。」
「まあ、そうですね。」
「いつものことなんで。」
「ルミおばさんは、女性に手を上げるなんてありえないと言った。「さっさと離婚した方がいいわ。あと病院と警察にも行くのよ。」
「そうですね。考えておきます。」
「何を呑気なことを言ってるの? 笑ってやり過ごしたって何も解決しないわ。」
「私だって楽しくて笑ってるわけじゃありませんよ。」
「え、痛いです。苦しいです。今すぐ逃げ出したいんです。」
「だったら今すぐ行動しないとだめよ。」
「今じゃないんです。分かってください。」
「でも取り返しのつかない事態になったらどうすんの?
」
「そうならないために頑張ってるんです。」
「どういう意味? 」
「アイスが溶けると怒られちゃうんで一旦戻ります。話はその時に。」
翌日、ルミおばさんがお礼の連絡をくれた。昨日はありがとう、お酒のお土産までいただいて、おばあちゃんも孫たちが集まって喜んでたわと。
「ルミおばさんこそお疲れ様。相変わらず料理が上手で食べすぎちゃったよ。」
「リッカちゃんはほとんど食べられなかったみたいだけど。」
「あいつはいいんだ。気にしないでいいから。」
「良くないわ。嫁だろうと女だろうとお腹は空くのよ。」
「なんかおばさん今日はやけに突っかかるね。」
「別にそんなことないわ。」
「もしかしてリッカに何か言われた? 」
「いいえ、何にも。」
「どうしてならいいんだ。」
「ほら、あいつおしとびだから余計なこととか言ってないかなと思ってさ。」
「すごくいい子よ。ニコニコしてて可愛いし。」
「そうだったらいいんだけど。」
「ケト、絶対にリッカちゃんの笑顔を奪っちゃだめよ。」
「あいつは幸せだから大丈夫。」
「家でもいつも笑ってるし。」
「だったらいいの。ただ、もし笑顔が消えた時は覚悟しなさいよ。」
「あ、っていう釘を刺しておけば悪さもしないでしょ。」
「まさか俺が浮気するとか思ってる? 」
「思ってないし。浮気くらいむしろ可愛いもんよ。」
「いや、マジで月白だから。」
数分後、ケトが不機嫌そうに聞いてきた。「お前、ルミおばさんに何か言ったか?
」
「うん、つまみ食い仲間だけど何も言ってないよ。どうしたの? 」
「なんか変なんだよ。珍しくLINEしてきた。」
「昨日のお礼じゃない? お酒とかも持っていったし。」
「今まで1度もそんな連絡なかったのに。」
「久しぶりにあえて嬉しかったのよ。」
「なんか含みがあったんだよな。リッカの笑顔がどうとかさ。」
「私の100万ドルのスマイルで魅了しちゃったかな? 」
「調子に乗んな。」
「お前が笑っていられるのは俺が養ってやってるからだろう。」
「ですね、感謝してます。」
「俺は今日から仕事始めだって言うのにお前は呑気でいいな。」
「お疲れ様です。」
「なんだその薄い言葉は?
」
「気持ちは込めたつもりなんだけど。」
「むしゃくしゃした。今夜も覚悟しておけ。」
「脇腹はやめてね、折れてるから。」
「ああ、もしかして病院行ったのか? 」
「うん、あまりにも痛くて我慢できなかった。」
「医者には何も言ってないだろうな。」
「うん、大丈夫。いつも通り転んだことにしておいたよ。」
「ならいいが。その病院には2度と行くな。」
「どうして? 」
「毎回転んだって言うと怪しまれるだろう。」
「じゃあ、もう蹴るのやめてよ。」
「お前へのいら立ち度合で力加減が変わるんだよ。」
「じゃあせめてもう少し手加減してほしいな。」
「お前の態度次第だ。」
3日後、私はルミおばさんに連絡した。「ルミおばさん、ちょっと予定前倒しなんですけど、一旦避難させてもらっていいですか? 」
「リッカちゃん、どうしたの?
何かあった? 」
「昨日の機嫌がかなり悪くて、起き上がれないほどやられちゃいました。」
「はあ、だからすぐに逃げろって言ったでしょう。」
「今度は何に切れられたの? 」
「おでんを作ったんですけど、辛子を買い忘れたんです。」
「たったそれだけで? 」
「はい、今回は痛みが短めでしたね。」
「笑い事じゃない。」
「すみません。」
「いくら目的のためだとはいえ、私が止めるべきだった。」
「私も受け身は上達した方だと思ってたんですが、やっぱり男性の本気ってすごいです。」
「もう黙っておけないわ。妹にも報告するから。」
「お母さんショック受けちゃいますね。」
「気にすることなんかないわ、すぐに迎えに行く。」
「甘えさせてもらいます。」
「オートが止まらなくて。」
「まさか頭を打ったの?
」
「はい。」
「良くない症状ね、まずは病院よ、救急車を呼ぶわ。」
「お願いします、もうこれで最後なので。」
5時間後、ルミおばさんがケトに電話した。「この6でなし,あなたリッカちゃんに何をした? 」
「いや、普通に仲良くやってるけど。」
「あなた、普段から手をあげてるわよね。」
「ないない、絶対にありえない。」
「こんな状態にしておいてまだ言い逃れする気? 」
「もしかしてリッカと一緒にいるの? 」
「病院よ,入院することになったわ。」
「あ、脳震盪だって,よほど強く打ったのね。」
「一晩中吐いてたはずだけど気づかなかった。」
「あいつ寝相が悪いからベッドから落ちたのかな?
」
「あんたがやったんでしょ? 」
「違うよ。」
「リッカがそう言った? 言ってないでしょ。」
「いつまでも口止めできるなんて思うんじゃないわよ。」
「何の話してんの? 」
「俺がやったって言いたいわけ?
」
「そうよ。」
「違うって、大事な妻にそんなことするわけないじゃん。」
「私は見たの,正月うちの廊下で蹴ってるところ。」
「え、リッカちゃんに止められて黙ってたけど、あの日からずっと腹が煮えくり返るほど切れてるわ。」
「あれは教育だから。」
「そういう風に言い訳をするのも分かってた,でもリッカちゃんは28歳の大人よ,口で言えば分かる。」
「俺ら流のコミュニケーションってやつだよ。」
「それを世間や警察が納得してくれるといいわね。」
「ちょっと警察って何だよ,これは夫婦の問題だろ,部外者が口を出すな。」
「まさか民事不介入とでも言いたいの? 」
「そうだ。」
「法律に詳しいあんたに教えてやるわ,これは民事なんかじゃない,刑事事件よ。」
「リッカが嘘をついて作り上げてるかもしれないだろ。」
「身内の俺のことは信じてくれないのかよ。」
「証拠ならあるわ,山ほどね。」
「は、今まであんたが家でやってきたことは全て撮影されてるの。」
「嘘だろ? あいつが俺を警察に突き出すつもりでそんなもの取ってたってこと? 」
「それもあるけど、そんな単純な話じゃないわ。」
「じゃあどうして?
」
「それはリッカちゃんから聞いた方がいい,元気に回復すればの話だけどね。」
「リッカ危ないの? 」
「頭を強く打ってるのよ,なぜ無事だと思える? 」
「俺はそんなつもりでやったんじゃない,勝手に吹っ飛んだのはリッカだ。」
「そう,じゃあ同じことを警察や裁判所でも言いなさい。」
「ちょっと待てよ,そこまで大事にするのか? 」
「当然でしょう,絶対に逃さないわ。」
「身内から犯罪者が出て困るのはおばさんだろう,不動産会社経営してるんだし,悪い評判が立てば仕事がしづらくなると思うよ。」
「なぜ?
私とあんたは今日から他人よ,何の影響もないわ。」
「あ、当然も怒ってるし,縁を切ると泣いてたわ。」
「どうして母さんにまで言うんだよ。」
「なぜ喋った私を責めるの? 悪いのはリッカちゃんを苦しめたあんたよ。」
「こんなことが世間に知られたら会社も首になる,そうしたらリッカを養っていけない。」
「まだ夫婦でいられると思ってるの? 」
「俺は離婚しないぞ。」
「だったら家庭裁判所で決めてもらいましょう,良かったじゃない,あんたの大好きな民事不介入事案よ。」
「そう,それと高徳寺さんにはもう知らせてあるから。」
「え、うちの社長のこと言ってる? 」
「もちろん,そこら中にいる名前じゃないでしょ。」
「嘘つけ,はったりだろ,俺をビビらせようとしても無駄だぞ。」
「なら信じないの?
」
「そんなうまい展開あってたまるかよ。」
「メール見てみたら解雇通知が届いてるはずだから。」
「そんなわけないし,どうせ脅すならマシな嘘つきなよ。」
「なんで本当に届いてる? 今日付けだ,これで信じてくれた? 」
「なんでルミおばさんが社長と元彼なの? 」
「はあ,こんな時に冗談言ってる場合かよ。」
「本当よ,30年以上前だけど,20代の時に付き合ってた,今はビジネスパートナーとしてたまにお茶するくらい。」
「そんな,じゃあ俺が入社できたのっておばさんのおかげ?
」
「少なからずあるかもしれないわね,私にとってあんたは可愛いおいだったから,徳寺が気にかけてくれた可能性はある。」
「そんなあんたは親にも叩かれたことないはずよ,なのになぜこんなことをしたの? 」
「理由なんかない,スカッとするんだ。」
「最低ね,リッカはいつも笑ってた。」
「俺のストレス解消になればと思って我慢してたんだ。」
「これは夫婦の共同作業なんだよ。」
「ふざけたこと言ってんじゃない,リッカと話がしたい,病院を教えてくれよ。」
「だめよ,何をするかわからないもの。」
「2人で話せばきっと分かってもらえる。」
「どの道話し合いは必要なのは分かってる,回復したら連絡するよう伝えるわ。」
「分かった。」
2日後、ルミおばさんから連絡があった。「リッカちゃん、話せるようになったって。」
病院に行くと、私は「心配かけちゃったかな? ごめんね」と言った ケトは怒り狂った。
「心配どころか迷惑かけやがったな。」
「え? 」
「お前がベラベラ喋るからおばさんが騒ぎ出して大事になったじゃねえかよ。」
「そんなことになってたんだ。」
「しかもうちの社長にまで話が行って首になったんだぞ。」
「それは大変だったね。」
「他人事みたいに言うな,俺のピンチだぞ,全力でどうにかしろよ。」
「そろそろ私も解雇を出そうかな。」
「あ、何の話だ。」
「離婚しよ。」
「は、ふざけんな,俺は認めねえぞ,勝手なことすんな,お前みたいな便利な火止め手放すわけねえだろ。」
「うん,だよね,火止め簡単サンドバックだもんね。」
「お前だって楽しかっただろ,ニヤニヤ笑ってたじゃん。」
「どうして私があんなに蹴られても罵倒されても笑っていられたか分かる?
」
「俺の愛の鞭を喜んでたからだろ。」
「違う,あんたを確実に刑務所にぶち込むためよ。」
「はあ。」
「あゆみって名前覚えてるわよね。」
「誰だそれ? 」
「とぼけないで,あなたが3年前に付き合ってた彼女よ。」
「ああ,あの女か,それがどうした? 」
「彼女は中学時代からの大親友なの。」
「はあ。」
「ずっと行方不明で心配してた,2年前やっと見つけたけど,精神病院の閉鎖病棟にいたわ。」
「あ,あなたのせいで心が壊れて言葉も話せなくなってた。」
「なんだよそれ,俺は関係ない。」
「彼女が回復して全てを話してくれたの,サンドバックにされた日々のことをね。」
「何の証拠があって言ってんだ? 」
「そう,肝心のそれがないの,あゆみは警察に行ったけど証拠が足りなくてあなたは不起訴になった。」
「当たり前だ,俺は何もしてねえ。」
「悪いことしたよね,あゆみを傷つけたでしょ。」
「してないって言ってんだろ。」
「それを確かめるために私があなたの妻になったのよ。」
「は,偶然で会ったと思ってた。」
「そうだろ,行きつけの居酒屋が同じで,全部計算よ,あなたの好みの女を演じて近づいたの,ニコニコして男に尽くして従順な私。」
「どうだった?
」
「嘘だろ? じゃあ俺と結婚したのは? 」
「あゆみの復讐,それだけのためよ,当然,あゆみは知らないし,こんなことを望んでない,でも私の気が収まらなかった。」
「そんなことのために自分の人生棒に振ったのかよ。」
「親友の人生を奪ったあなたを地獄に落とさないとバランスが取れないじゃない。」
「だからってここまでやるか。」
「私たちは一緒に笑って一緒に泣いてきたの ,そんな存在が突然消えて再開した時には壊れてた ,どうやって許せというの? 」
「あゆみはあゆみ,お前はお前だろ,割り切れ。」
「そうはいかない,もう民事不介入なんて言わせないわ,確実に実刑にするためには決定的な証拠となる被害が必要だった。」
「そのためにずっと耐えてたのか。」
「ルミおばさんには命に関わるからやめろって反対されたけどね,でもあゆみの無念を晴らすには私が犠牲になるしかなかった。」
「狂ってやがる。」
「あなたが切れてくれたおかげで証拠のストックがどんどん増えてったよ ,極めつけは全治3ヶ月の重症,これでもう言い逃れはできない。」
「ちょっと待ってくれ,一旦話し合おう。」
「私もう十分すぎるほど耐えたと思う ,最後のも痛かったけど ,これで終わりだと思ったら自然に笑みがこぼれたわ。」
「だからあの時笑ってたのか。」
「あなたは今日から容疑者になる ,裁判は原則公開だから氏名も公表されるわ。」
「嘘だろ。」
「これだけの証拠があれば不起訴になることもない ,あゆみの時みたいに行かないわよ。」
「待ってくれ,ごめん,悪かった,調子に乗ってただけなんだ。」
「今更謝るくらいならあんなことするんじゃないわよ。」
「もっと早く止めてくれてたらやめてた。」
「ん?
私言ったよ ,何度もやめて欲しいって。」
「あれじゃ弱すぎたっていうか。」
「最初の頃は泣きながら言ったこともあった ,なんで泣いてたか分かる? 」
「痛いからだろ? 」
「違う ,あゆみがこんな目に会ってたのかと思ったら悔しくて悲しくて泣けてきたのよ。」
「もう分かった ,いくら払えば大事にしないかと聞いてる。」
「100兆円。」
「ふざけるな ,現実的な額を言え。」
「本気よ ,国家予算規模のお金じゃないと納得しない。」
「金じゃないってことか。」
「心の底から反省しなさい ,そして2度と誰も愛さず1人で孤独に朽ちて ,それが私とあゆみの願いよ。」
「そこまで恨み言われんのか ,俺の自由だろ。」
「やっぱりさっきの謝罪は上辺だけだったのね。」
「調子に乗んな ,優秀な弁護士つけて逃げ切ってやる。」
「私たくさんの証拠動画持ってるでしょ ,なんかおばさんが言ってたな ,そのコピーを全てルミおばさんに送ったの。」
「あっそ ,どうせ親戚に見せて俺を非難するんだろ ,身内から縁られるってことなら上等だよ。」
「身内だけで済めばいいけど。」
「どういうことだ? 」
「ルミおばさんが言ってた ,データもらったのはいいけど ,スマホとかパソコンとかよく分かんないから流出したらどうしようって。」
「嘘つけよ ,バリバリパソコンで仕事してんじゃねえか。」
「私に言われても困る ,まあ ,将来あなたの大事な人がその動画を見ないことを祈るしかないわね。」
「一生残るってことか ,それはちょっとまずいな。」
「まあ ,78年後のことを今心配しても仕方ないけど.
»
「何の話だよ ,驚かすなよ. »
「過去の判例よ ,あなたは悪性があるし ,反省の色もない ,実刑は免がれないわね. »
「嘘だろ ,無理だ ,刑務所なんて行けるかよ. »
「大企業の社長だって悪いことをすれば兵の中よ.
»
「助けてくれ ,俺が悪かった ,何でもするから. »
「悪いけどサンドバック係はもうやめたの. »
「頼む ,人生も人間も1からやり直すから助けてくれ. »
「無理よ ,あなたが蹴り飛ばしたのは私じゃなくて自分の人生だったのね ,そんな本当に哀れな男 ,ダサいしキモいし ,あなたに使った時間返して欲しいわ.
»
「リッカ頼む ,怖いよ. »
「情けない ,今まで散々偉そうなこと言ってたけど ,中身は大したことなかったわね. »
「ごめんなさい ,プライドも捨てる ,生まれ変わる. »
「あなたのプライドなんて所詮薄っぺらかったわ ,丸めて捨てて2度と視界に入れたくもない ,ブロックするわ.
»
「おい ,リッカ ,今の暴言は許すから返事してくれ. »
数分後、ケトはルミおばさんに縋った。「ルミおばさん助けてくれよ ,リッカからブロックされて俺の声が届かない. »
「何をどうして欲しいか言ってみ. »
「警察だけは勘弁して欲しいんだ.
»
「はい ,アウト ,は ,最後の最後まで欲深いんね ,呆れても言えないわ. »
「だって私なら家族を失わないで済むよう全力を尽くす ,だって最後に寄り添ってくれるのは家族しかいないから. »
「そうだけど ,あんたが出てきた時誰もいないのよ ,その道をあんたは今選んだの. »
「だってリッカは離婚するって言うし ,母さんだって怒ってるんだろ ,もうどうしようもないじゃんか.
»
「それでも本当に反省して心を入れ替えたら1人くらいは待っててくれる人がいたかもね ,今更そんなこと言われたってさ. »
「問題です ,道を歩いていたあんたは買ったばかりのスマホを排水溝に落としました. »
「はいきなり何なんだ? 」
「そういう時あんたならどうしますか?
」
「何の質問? 心理テスト? いいから答えなさい. »
「そりゃ大事なもんだし必死にどうにかして取るよ.
»
「落としたらどんな気持ちになるかしら? 落とさないようにちゃんと持ってればよかったなとか後悔したり反省もすると思うよね ,でも今のあんたは排水溝にスマホを落としたまま ,それを人に知られない方法ばかりを考えてる ,そんなことしたってスマホは戻ってこない ,格闘してる間に浸水してデータも消える ,やるべきことは決まってるのに排水溝の前に座ってずっと文句を垂れてるだけの無能なのよ. »
「壊れたらまた買えばいいだけだ ,スマホはそうね ,でも人間は違う ,修理も交換もできない ,そのくらい分かってるよ. »
「だったらどうしてスマホ以下の扱いができたの?
リッカは壊れないと思ってたんだ. »
「あんたが覚えておくべきことは1つだけでいい ,お前ごときが傷つけていい人間はこの世に1人もいない. »
「そこまで言うか. »
「私あの子の明るい笑顔大好きなの ,いいお嫁さんと一緒に慣れたねって嬉しかった ,でも復讐の鬼に変えたのはあんたよ.
»
「俺はどうすればよかったんだ? 」
「教えてあげる義理はないわ ,子供の頃から可愛がってきたあんたはもうない ,排水溝の中に沈むスマホをずっと眺めてなさい. »
「おばさん ,あら ,大変 ,何? 親戚の小さい子が遊びに来てるんだけど ,あんたの動画をアップロードしちゃったみたい ,やだ ,どうしましょう?
消し方が分からないわ. »
「すぐに消せ ,削除ボタンだ ,どこ? どこ? 全然わからない.
»
「わざとだろう ,ふざけんな ,あんなもの出たら終わりだ. »
「消し方分からないからこのままにしとくわね. »
その後元夫の転落劇は予想通りとなりました。親戚だけに送ったはずの動画がご操作により拡散してしまったのです。特定犯によって彼の過去の悪行まで全てさらされることになりました。高徳寺社長から正式に懲戒解雇を言い渡され、退職金も0。さらに傷害罪で逮捕され8年の求刑となりました。是非受刑者のサンドバックにしていただきたいと思います。
出所後もDV男のレッテルは一生消えず、まともな職にはつけないでしょう。義両親は真実を知ってショックを受けていましたが、息子とは縁を切るからあなたは幸せになってと涙ながらに謝罪してくれました。
私は今おばさんや社長さんのサポートを受け新しい生活をスタートさせています。あゆみも退院を目指して頑張っています。ケトが傷害罪で兵の向こうにいると言ったら安心したように笑っていましたが、私のことを言えば怒るし苦しむので墓場まで持っていきます。心と体の傷も癒え、今は本当に心から笑えています。
男らしさって力を誇示することではなく、大切な人を守ることだと思います。そんな当たり前のことに気づけない男に明るい未来なんて来るはずありませんよね。
最近キックボクシングを習い始めました。である人物の顔を浮かべると力が自然と入り、いい蹴りだねとトレーナーから褒められています。
ご視聴ありがとうございました 動画の評価とチャンネル登録もよろしくお願いします それでは次回の動画でお会いしましょう。