帰宅すると、玄関に大きなスーツケースが二つ。嫌な予感しかなかった。リビングには、最も会いたくない人物がいた。姉だ。「今日から私とメイも一緒に住むから」。「は?何言ってるんですか」。「ヤの許可は取ってあるから」。2週間のつもりが、1年が過ぎた。姉は働かず、なぜか毎月きっちり生活費を置いていく。その金の出所がずっと引っかかっていた。姪のメイは週に一度、大きなカバンを持って友達の家に泊まりに行く。…

帰宅すると、玄関に大きなスーツケースが二つ。嫌な予感しかなかった。リビングには、最も会いたくない人物がいた。姉だ。「今日から私とメイも一緒に住むから」。「は?何言ってるんですか」。「ヤの許可は取ってあるから」。2週間のつもりが、1年が過ぎた。姉は働かず、なぜか毎月きっちり生活費を置いていく。その金の出所がずっと引っかかっていた。姪のメイは週に一度、大きなカバンを持って友達の家に泊まりに行く。...

家に帰ると、玄関に見慣れた大きなスーツケースが二つ並んでいた。嫌な予感しかしない。リビングへ足を踏み入れると、そこには私が最も会いたくなかった人物がソファに座って足を組んでいた。姉だった。

「ゆうな、家誰もいないんだけど」

「お姉さん、仕事中ですから。って、え?うちに来てるんですか?」

「そう。今日から私と娘のメイも一緒に住むから」

「意味が分かりませんよ」

「あ、ゆうなってバカなの?こんな簡単なことも理解できないとか受けるんだけど」

「受けません。というか、本当に何なんですか?」

「実はさ、旦那と離婚しちゃって行く当てがないんだよね。小実家に帰ったらいいじゃないですか。無理無理。私、両親から勘当されてるから」

「だからって、こんな急に来られても」

「まあまあ、いいじゃん。お、窓開いてる。こっから家の中入っとくね」

「だめです。やめてください。不法侵入ですよ。ヤの許可は取ってあるから大丈夫」

「へ?ヤが許可したんですか?」

「うん。2週間くらい同居させてって言ったら、OKって」

「2週間?」

「次の家が見つかるまで、だってさ。ってことで、よろしく」

「ちょっと、何考えてるのよ。私は反対ですから」

姉は肩をすくめて、子連れで行く当てがない私がかわいそうだと思わないのかと聞いてきた。思わない。そもそも、あんたは何を平然としているんだ。昔、私とヤが実家で同居していた頃、自分が何をしたか覚えていないのか。

「あ、なんかしたっけ?」

「私の私物を勝手に売り払ったんですよ。しかも何回も」

「あー、思い出した。でもあれ、そっちも悪いよね。名前書いてなかったし。リビングに置いてあったんだからしょうがないじゃん」

「小学生みたいな理屈が通るとでも?私のバッグも服も勝手に売っといて」

「はいはい。ごめんごめん」

「いいから、さっさと帰ってください」

「帰るとこないって言ってんじゃん。人の話はちゃんと聞いた方がいいよ。社会人の常識だから」

「ならそっちも聞いてください。私は帰れって言ってるんです」

「てか、悪い話じゃないでしょ。どこがですか?宮で子宮全摘してんでしょ?メイが一緒に住むとかラッキーじゃん」

「あなたって人は、どこまで馬鹿にする気なんですか?」

「はいはい。怒んない。てかこの話もうめんどいから終わりね。部屋1個もらうわ。メイは廊下とかでも寝れる子だから気にしないで。じゃ、これからよろしく」

その日から、姉と姪のメイは私の家に居座ることになった。姉は何も働かない。それなのに、毎月きっちり生活費を置いていく。どこからそんな金が出てくるのか、私はずっと疑問だった。

1年が経った。姉は「仕事で遅くなる」と言って出ていき、「また彼氏と別れた」と帰ってくる。その繰り返しだ。最初は2週間だけの予定だったのに、もう1年も同居している。何かの拍子に彼氏と暮らすからと出ていって、数日後に喧嘩して帰ってくる。姉の気まぐれに、私はもう振り回されていた。

「お前が姉貴と喧嘩ばっかだからって、メイを巻き込むなよ」

夫のヤがそう言った。私はメイのことが気になっていた。小学4年生の姪は、1週間に1回は友達の家に泊まりに行く。頻度が高すぎる。しかも、1日だけしか泊まらないのに、毎回大きなカバンを持っていくのだ。

「メイちゃんって、荷物少ないじゃない?ランドセルと教科書、あとは服くらい。なのに持ってたのよ。ゲームソフト」

「ゲーム機もないのに?」

「変だと思うでしょ」

「お前が姉貴を嫌いだから、メイも色メガネで見てるんだよ」

「私の私物を平然と使うのよ。この前もデート行くって言って、勝手に私の服を着てった。このままにしてたら、また売られるわよ」

「分かったって。とりあえず落ち着けよ。明後日には帰ってくるんだぞ」

「いや、ダこ拒否します。これ以上お姉さんに振り回されたくない」

「メイはどうするんだ?メイまで家から追い出すっていうのか?」

「それは……そういうことだ」

「どうせすぐにまた彼氏と復縁したとか言って出ていくでしょう。その時は、また数日で帰ってこないことを祈っとくわ」

翌日、姉が帰ってきた。荷物を抱えて、また別の男と別れたと笑っている。私は覚悟を決めて、話を切り出した。

「お姉さん、お話があります」

「ああ、何?てか仕事は?」

「今日は用事があって、半球をもらったんです。それよりも、うちから出ていってくれませんか?」

「出ていってって。今日の朝に来たばっかなんですけど」

「数ぶりの帰宅ですね。彼氏さんと別れたんだとか」

「そうそう。聞いてよ。あいつもマジで最悪でさ」

「ああ、そこら辺は興味ないんでいいです」

「あ、冷たい。女同士の会話は共感が大事って知らないの?共感できないといざって時の味方減るよ」

「残念ですけど、人のものを平気で売ったり使ったりする人には共感できません」

「はいはい。そうですか。で、出ていってくれませんか?」

「私が出ていくってことは、メイも家なくなるんだけど。かわいそうだと思わないの?」

「思いますよ。なので、メイちゃんはそのまま家にいてもらいます」

「は?何言ってんの?私だけ追い出すってこと?」

「それが理想ですね」

「嫌に決まってんじゃん。てか、彼氏と別れたしさ。この際だからずっとここにいてもいいかな」

「ずっと?」

「ヤも前から言ってくれてんのよ。行く当てないなら、別にいいぞって」

「ああ、そうなんですか。だからあと10年はここに住ませてね。嫌ならヤと離婚して出ていけば?」

「呆きれますね」

「別にいいでしょ。家の表札はヤの苗字だし。つまり私の名前が書いてあるのと一緒」

「まあ、お姉さんは離婚してますし、当然では」

「なら、家は私のものってことじゃん」

「いえ、大家さんのものですよ」

「細かいことはいいの?」

「良くないでしょ。まあいいです。そこまで言うなら、私が出ていきます」

「あら、ラッキー。いいの?」

「ええ、どうぞご自由に。10年でも20年でも住んでください」

「なんかよくわかんないけど、サンキュー」

姉が出ていこうとした時、私は思い出したように言った。

「そういえば、お姉さんたちが彼氏さんの家にいた時、メイちゃんのお友達のお母さんが来られましたよ」

「え?それって誰だった?」

「さきちゃんの、お母さんだったと思います」

姉の顔色が変わった。さき。メイが言ってた友達の名前だ。

「ねえ、何言われたの?あんた、そいつの話聞いた?」

「何焦ってるんですか?やましいことでも?」

「あ、はあ、違うけど。単純に気になっただけだし。で、何言われたの?」

「安心してください。お姉さんたちはいなかったんで、帰ってもらいました」

「そうなんだ。よかった」

姉はほっとした顔をして、そのまま出ていった。

1時間後、メイが帰ってきた。私は彼女をリビングに呼び寄せた。

「メイちゃん、さきちゃんのお母さん、許してくれたよ。事情を話したら理解してくれたみたい。他のお友達のとこにも事情を説明してきたわ」

メイの目が潤んだ。「ゆうなさん、ありがとうございます。それと、今日は本当にごめんなさい。私のせいで仕事まで休んじゃって」

「半球だから気にしないで。溜まってた有給を使ういい機会になったよ。でも、さすがに驚いたけどね。メイちゃんが万引きで捕まったって言われた時は、頭真っ白になったもん」

「ごめんなさい。ママに連絡したらきっと怒られるから」

「いや、なんでメイちゃんが謝るの?」

「え?」

「謝るのはお姉さんでしょ。謝っても許す気ないけど。メイちゃんも、だからね」

「私も?って、何が?」

「許しちゃだめだよ」

「でも……」

「あのね、何を勘違いしてるのか知らないけど、あなたのママがやったことは許されちゃいけないの。親だからとか子供だからとか関係ないよ。あなたは被害者なんだよ」

「被害者?」

「じゃあ聞くけど、やりたくてやってたの?」

「そんなわけありません」

「言えたじゃない。やりたくなかったんでしょ。嫌だったんでしょ。なら、それが素直なメイちゃんの気持ちだよ」

「私の……気持ち?」

「私はメイちゃんじゃないから、細かいことは分かんないよ。けど、これだけは言える。自分の気持ちは大事にしないとだめだよ」

「気持ちを大事に……そんなこと、初めて言われました」

「今までは大事にできない環境だったのかもしれない。でもね、これからは大事にできる環境を私が作るよ」

「ゆうなさん……」

「子供が自分の気持ちを言えないなんて、悲しいでしょ」

メイは涙をこぼした。「私、本当はあんなことしたくなかった。友達だってみんな離れてって、辛かった」

「うん」

「なんで私ばっかり?なんで私だけこんなことしないといけないのって。ママのとこになんて帰りたくないよ」

「よし、分かった。ずっと私と一緒にいなさい」

「え?いいんですか?」

「私さ、ずっと子供が欲しかったんだよね。けど、私って子供を産めないの」

「そうなんですか?」

「若い頃の病気が原因でね。急に言われてもリアクションに困るよね。ま、そういうわけだから、私はウェルカム。むしろ可愛い娘ができて最高」

「でも、ママがなんて言うか……」

「それは任せなさい。ここから先は大人の仕事よ」

翌日、姉が血相を変えてやってきた。

「メイはどこ?あの子、連絡もつかないんだけど」

「メイちゃんだったら、私の実家にいますよ」

「やっぱり。さっさと帰ってくるように言って」

「すみません。帰りたくないって言ってるんで」

「それが何?私は母親なんだけど。メイは私のものだから」

「え?違いますよ」

「はあ?」

「だって、名前書いてなかったですよね」

「名前?ふざけてんの?」

「いやいや、大マジです。書いてありました。メイちゃんのお姉さんの名前」

「子供に名前なんて書くわけないじゃん。頭おかしいんじゃないの?」

「じゃあ仕方ないですね。名前が書いてなかったんで、私がいただきました」

「はあ?」

「お姉さんが放置していたんで、いらないのかと思って」

「あのさ、親に無断で連れてくとか犯罪だから。誘拐。この犯罪者、通報されたくなかったらさっさと返せ」

「犯罪者はあなたですよ」

「は?私?」

「先日、さきちゃんのお母さんが来たと言いましたよね。その時に聞きました。メイちゃんがさきちゃんのゲームを盗んだって」

「いや、それは……てか、あんた何も聞いてないって言ってなかった?」

「私は帰ってもらったと言っただけです」

「はあ。それから少しして、メイちゃんが万引きで捕まったんです。ママに言ったら後で怒られるから、って私に連絡してきたみたいですよ」

「あのガキ、私に黙って何勝手なことしてんのよ」

「その時に聞いたんです。どうして友達のゲームを盗んだり万引きしたのか。メイちゃん、言ってました。ママにやれって言われたって。これは犯罪教唆。立派な犯罪です」

「ち、違うって。メイが勝手にやったことでしょ。私は関係ないから」

「お姉さん、うちに毎月生活費入れてましたよね。働かずにどうやって払ってるのか気になってたんです。娘に盗ませて、フリマアプリで売ってましたね」

「だから私は何も知らないって」

「さきちゃんのお家から、ゲーム以外もなくなってます。さきちゃんが幼い頃、お母さんのお友達がくれた指輪。その指輪はお友達の手作りだそうです。規制品じゃないんですよ。世界に1つだけの一点物です。さきちゃんのママがフリマアプリで見つけたそうです。売ってたアカウントは、あなた」

「いやいやいや、ちょっと待ってよ。それは……メイが売りたいって言うから代わりに売ったの。盗んだものだなんて知らなくて」

「ねえ、何よ。さっきから聞いてたら、何?メイちゃんが悪い。勝手にやった?ふざけんじゃないわよ」

「いや、だって、メイちゃんはね、泣いてたのよ。もうあんなことしたくないって。友達がいなくなったとも言ってたわ」

「だからそれは私には関係ないし」

「関係ないわけないでしょ。小さな子供が、ママのとこに帰りたくないって言ったの」

「そんなこと言ってたの?あのガキ」

「まだ10歳よ。親に守られる立場の子供に、こんなことを言わせるようなことをさせてたんでしょうが」

「うっさいわね。何を偉そうに。鍵を育てたこともないくせに」

「だから何?子供を育てたことがなかったら、守ったら負けないの?」

「子供を産めない女には、私の気持ちは分かんないから」

「分かんないわよ。私が欲しくてたまらない子供を授かったのに、なんでこんなことするのか理解できない。理解したくもない。大変なのよ、母親ってのは。ガキがいるだけで、彼氏とは喧嘩するし別れるし、仕事の選択だって減るんだからね。いいことなんて何もないの」

「だったら、私にちょうだいよ」

「は?」

「あなたよりも愛情を注ぐし、メイちゃんのために仕事が邪魔なら転職もするわ」

「意味分かんない。なんでそこまでするの?あんたの娘じゃないじゃん」

「分かんないでしょうね。子供を産めるあなたには、子供の気持ちを大事にできないあなたには。子供を産めない私の気持ちなんて、何よそれ」

「分からなくて結構ですよ。警察に通報しました。あとはそちらでやってください」

「ちょっと待って。警察?私、捕まるの?」

「子供を利用して犯罪をさせてたんです。当然のことでしょ」

「そんなの嫌。お願い、助けてよ」

「あなたとは共感できない。そう言いましたよね。私はあなたの味方には、一生なりませんよ」

数時間後、ヤが家に飛び込んできた。

「ねえ、ゆうな。これ、一体どういうことだよ。姉貴が警察に連れて行かれたんだけど」

「あなたにも、すぐにお迎えが来るわよ」

「あ?俺にも?どういうことだ?」

「ヤ、あなた、知ってたわね」

「知ってたって、何が?」

「お姉さんがメイちゃんにやらせてたことよ」

「いや、俺にはさっぱりだけど」

「そうなら、小遣いって何?」

「は?小遣い?」

「お姉さんがメイちゃんとのLINEで口走ってたわ。スクショも取ってある」

「生活費とは別に、お金を受け取ってたの?」

「いや、ユナに黙ってたのは悪かったと思ってる。確かに小遣いはもらってた。けど、それは家に置いてあるマージみたいなもので、メイが盗んだものを売った金とは知らなかったんだよ」

「へえ、そうなの?」

「これは本当だ。信じてくれ」

「じゃあ、なんで知ってるの?」

「は?」

「私は一言も、お姉さんが逮捕された理由は言ってないわよ。メイちゃんが盗んだって、どこで聞いたの?」

ヤは口ごもった。「あ、いや、その……これは」

「どちらにしろ時間の問題でしょう。お姉さんが黙ってるはずがない。あの人の性格なら、絶対にあなたも道連れにするわ」

「言うな。なあ、俺たち夫婦だろ」

「離婚します。これで他人ね」

「バカ、まだ口だけで離婚できるか?お前だって、夫が逮捕されたとか困るんじゃないか。仕事にだって影響が」

「ヤ、私が子宮を全摘した時、言ってたわよね」

「何を?」

「子供が産めないなんてどうでもいい。お前が無事ならそれでいいんだって、言ってくれたわ」

「あ、ああ、そうだったな。確かに言った」

「あの当時、私は何度も自分の境遇を呪ってた。なんで私だけ?私ばっかりって。けど、あなたの言葉に救われたわ」

「そうだよな。だったら、離婚なんて言わずに俺を助けて」

「けど、今は産めなくてよかったと心から思ってる」

「へ?」

「子供を食い物にするような人を父親に持つ子を、産まないで済んだ。そんな嫌な思いをさせずに済んだ。私、産めない自分の体に初めて感謝してるの」

「そんな寂しいこと言うなよ。子供なんていなくたって、俺たちは2人だけでも幸せに」

「ええ、2人で幸せになるわ。私とメイちゃんの2人でね」

「は?」

「さようなら、ヤ。色メガネを外してみたら、あなたは最低最悪のクズだったわね」

1週間後。メイが宿題を終えて、リビングに飛び出してきた。

「メイちゃん、宿題終わった?」

「うん。今日はもう終わったよ。新しい学校、宿題少なめなんだよね」

「良かったじゃない」

「前よりも笑うことが増えたし、それだけで、ねえ、ゆうなさん」

「うん。どうしたの?」

「ママ、どうなったのかな?」

「警察に捕まったのは知ってるよね?今は書類送検。簡単に言うと、まだ判決は決まってないよ。ただ、何回もメイちゃんにやらせてたし、そのことがあるから、多分数年は刑務所の中だと思う」

「そっか……拓おじさんは?」

「あっちはそこまでの罪じゃないよ。けど、拓も刑務所行きは間違いないってさ」

「私は……これからどうなるんだろう。ママがいなくなって、このままここにいていいのかな?パパだって私には興味ないだろうし」

「いていいんだよ。真剣って言っても分かんないか?私ね、メイちゃんのお母さんだよって認めてもらえるの。今すぐにじゃないけど。そうなる予定」

「そうなんだ」

「後悔してる?」

「環境変わって、ママもいなくなって、学校も変わって。ママのことは許してないから大丈夫。けど、今までのことが全部なくなったみたいで」

「そうだよね」

「でもね、新しい友達ができたんだよ。給食の時に隣の子が話しかけてくれて」

「おお。まだ転校して2、3日でしょ。やるじゃん。よ、コミュ力お化け」

「頑張りました」

「あ、そうだった。メイちゃん、少し話があるの」

「どうしたの?」

「あのね、さきちゃんのお母さんから連絡があったの。お母さんがさきちゃんに事情を話してくれたみたい。さきちゃん、メイちゃんのことは怒ってないって。また仲良くしたいって」

「でも、私、さきちゃんのゲーム盗んだし、他にも……」

「それ、さきちゃんが決めることでしょ?」

「そうだけど……」

「じゃあ、メイちゃんはどうしたいの?さきちゃんと仲直りしたい?」

「したいよ」

「なら、会ってきなさい。自分の気持ちは大事にする。約束したでしょ?」

「分かった。ちゃんと会って、ごめんなさいっていう」

「その時は私も一緒に行くわ。けど、辛い部分もあるかもしれないわよ」

「悪いことをしたんだって、私も分かってる。だから、やったことからは逃げないよ。それが今の私の気持ち」

「なら、その気持ちを私も大事にするわ。これから、一緒に乗り越えていきましょうね」

その後、姉には実刑判決が出た。上昇性と悪質性の高さが重く見られ、懲役4年だそうだ。義両親が面会に行った際、姉は取り乱した様子で「こんなはずじゃなかった。なんで私だけ」と何度も繰り返したと聞いた。

けど、なんで私だけ、その言葉をメイに言わせたのはお姉さんだ。メイはまだ子供で、事情を抜きにしても実刑判決を受けることはありません。けど、その罪悪感を一生抱えて生きていくことになる。10歳の子供に背負わせるには、重すぎる罪悪感だ。なんで私だけ。それを言う資格は、お姉さんにはない。

ヤとは、離婚手続きのために1度だけ会った。前よりも小さく見えて、言い訳ばかりのヤ。そんな彼を見て、私は不思議と何も感じなかった。ああ、この人はもう私の人生には必要ない人なんだな。そう、実感してしまった。

一方で、私は実家でメイと両親と4人で暮らしている。正式に親権も得て、立場上はメイのお母さんになった。宿題を見たり、一緒にご飯を作ったり、何気ない日々だけど、私にとっては何よりも大切な時間だ。

これから私は、メイの母親として彼女の罪悪感も一緒に背負っていく。それがきっと、本当の母親への一歩になると信じている。

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