「来週また出張なんだ」と夫が言った時、私は優しい笑顔を返した。「大変ね。頑張ってね」と。でもその心の中は、10年間の嘘と裏切りへの怒りで震えていた。私は、同じチームのママ友と信じていた女性が、実は夫の浮気相手だったことを知ってしまった。しかも夫は、息子の塾代すらその女性に送金していた。今週末、私はついに夫の嘘の現場を押さえる決心をした。夫はまだ、自分の人生がこれから崩れ落ちることに気づいてい…

「来週また出張なんだ」と夫が言った時、私は優しい笑顔を返した。「大変ね。頑張ってね」と。でもその心の中は、10年間の嘘と裏切りへの怒りで震えていた。私は、同じチームのママ友と信じていた女性が、実は夫の浮気相手だったことを知ってしまった。しかも夫は、息子の塾代すらその女性に送金していた。今週末、私はついに夫の嘘の現場を押さえる決心をした。夫はまだ、自分の人生がこれから崩れ落ちることに気づいてい...

「来週また出張なんだ。大変ね。あなたもこれから頑張ってね。」

私がにっこり笑ってそう言うと、夫は少し違和感を感じたように首を傾げたが、そのまま寝室へと歩いて行った。

10年間も浮気をしていた夫に、これから真実を突きつける。

ここでバレるわけにはいかない。

その時、夫がどんな顔をするのか、見てみたいものだ。

私の名前は田辺ゆみ子。40歳のパート社員。

夫の小太郎は44歳の会社員。仕事はそこそこに、自分のおしゃれや外見を一番気にするタイプの男だ。

結婚して15年になる。

翌年には息子の真事が生まれ、何事もなくここまで来られたら、どれほどよかっただろう。

実際は、結婚してから10年ほどの月日を、夫の嘘に振り回されてきた。

夫はふと気づくと、いつもスマホを気にしていた。

最初は仕事の連絡かと思っていたが、たまに文字を打っている。

通りすがりに覗いてみると、画面は誰かとのLINEだった。

当時はそれほど気にしていなかったが、後から振り返れば、確かに怪しい点は多くあった。

やがて夫は急に残業で遅くなり、週末の出張が増えていった。

数年前の夏には、5日間の出張と言って出かけたはずの夫が、真っ黒に日焼けして帰ってきたこともある。

「出張でスーツを着てたはずなのに、どうして日焼けしてるの?」

そう聞くと、夫は「取引先との接待で海水浴をした」と言い出した。

そんな馬鹿な話があるはずないと噛みついたが、この時は「接待と言いながら、一人で楽しく遊んできてずるい」と思うくらいで、どこか呑気だった。

そんな風に不在が多い夫は、「仕事だから」と言って、自分の両親の面倒も私に見させた。

義母は数年前に怪我が原因で足が不自由になり、月に2度の通院が必要だったが、夫は決して付き添おうとしない。

夫には有給があるはずなのに、義母が頼んでも平気で無視する。

仕方なく、私がパートを休んで病院に付き添うことになる。

義母は昔、生け花を教えていた先生だからか、人に厳しい。

私は割と大雑把なところがあり、よく注意される。正直、苦手なタイプで気が合わない。

夫には何度か通院について話してきた。

「来週のお母さんの通院は、あなたが行ってあげてよ。本当はお母さんもあなたの顔が見たいと思うわよ」

「行きたいけど、その頃多分社員旅行なんだよな」

「そんな旅行なんて聞いてないわよ」

「先週末決まったんだ」

夫は少し慌てた様子で言い訳した。

そんなに急に決まる社員旅行があるのか問い詰めたが、「急に決まった社員旅行だ」と言いくるめられ、私はまた義母に付き添って病院に行くことになった。

そんな夫が、週末に珍しく家にいた日があった。

夫を誘って、息子の試合を見に行くことにする。

小学5年生になった息子は、所属するサッカーチームで活躍するようになっていた。

子供の試合を観戦するどの親も、我を忘れて応援していた。

息子はチームメイトと上手く連携して試合を引っ張り、見事勝利を収めた。

試合の結果に、親も子供も大喜びだ。

私たち夫婦も久しぶりに手を取り合いながら喜んだ。

この試合の時、声をかけてくれたのが、同じチームメイトの母である石井さやかさんだ。

さやかさんはとてもサバサバした女性で親しみやすく、すぐに仲良くなった。

子供の悩みや家のことなどを報告し合うために、お互いの家を行き来することも多くなる。

その結果、夫とも親しくなった。

夫が帰宅した後もさやかさんが家にいても、むしろ喜ぶくらいに、夫婦の共通の友人として信頼を深めていった。

その輪は広がっていき、息子たちはもちろん、さやかさんのご主人も交えて、家族ぐるみでのお付き合いが続いた。

そんな楽しい交流が数年続いたある日、さやかさんが急にこんなことを言い始めた。

「小太郎さんってモテるんじゃない?」

「本当なの?」

私がそう聞くと、さやかさんはこう教えてくれた。

「実はこの間ね、小太郎さんにそっくりの人が、美人な女の人とすごく親しそうに居酒屋で話してるの見ちゃったの」

さやかさんは、居酒屋で夫と謎の女性がどのように過ごしていたか、詳細に話してくれた。

その目撃情報に驚きはしたが、いきなりの夫の浮気疑惑に、何をしていいのか分からない。

黙ったままの私に、さやかさんは「まず証拠を集めよう」とアドバイスしてきた。

「浮気してるだろうとふんわりした言い方で問い詰めてもダメだ。証拠を掴んで、問い詰めないと」

そう言い放ち、浮気の証拠を掴む方法をいくつか教えてくれた。

それ以降、私はどうしても夫を疑いの目で見てしまい、夫婦の仲はこれまで以上にギクシャクしたものになった。

この頃には息子も中学3年生で受験生となっていて、そのフォローや義母の病院の付き添い、パートの仕事、加えて家事、さらに夫の浮気の証拠探しまですることはかなり大変だった。

だが、夫が留守の時にスーツのポケットを探るくらい簡単なことは、常にしていた。

そんなある日のことだ。

寝室は何ヶ月も前に私たちは分けていたのだが、夫が留守の時は大きなベッドで大の字になって寝るのが好きだったので、そうしようと思い寝室に行った。

布団を変えてから自分の枕を設置しようと、夫の枕の位置をずらすと、枕の下から通帳が出てきたのだ。

夫のその通帳からは、毎月決まった金額が同じ人に振り込まれている。

その名前を確認すると、「石井さやか」と記されていた。

なんと夫は、友人のさやかさんに毎月4万円振り込んでいたのだ。

私は驚きつつも、そっとスマホで通帳の写真を撮る。

その翌週は、義母の病院に付き添う日だった。

「聞いてるのか」

気づくと、義母に呼びかけられていた。私は通帳のことが気になって、ぼーっとしていたようだ。

「ごめんなさい、よく聞いてなかったわ」

私が謝ると、義母は再度話した。

「小太郎がね、早朝に住宅街を歩いてるのを見たのよ」

義母が用事があったため友人の車に乗せてもらい、早朝の住宅街を車で走っている時、夫がその道を歩いていて、ある家に入っていったというのだ。

「誰かを尋ねる時間でもないし、なぜだろうと思った。何か知っているか?」

義母はそう聞いてきた。

これも浮気の証拠ではないだろうか。

私は義母に、夫が入っていった家の大体の住所を聞いておいた。

やがて息子の受験は追い込みの時期になった。

息子は毎日塾に通っている。

ある時、そんな塾から「塾代が2回続けて引き落としできなかった」と連絡が来た。

塾代は夫の口座から引き落としているので、私は夫に確かめてみた。

「息子の塾のお金が引き落としできないと連絡が来たわよ」

「後で渡すから、とりあえず私の方から入れておいて」

夫はどこか挙動不審だった。

本当はもっと問い詰めたいところだが、息子の受験前に揉め事は避けたかったので、大人しく私が一旦払っておくことで了承した。

ところが、次の月も同じことで塾から連絡があった。

今度こそと夫を問い詰めると、「ちょっと人に渡さなくちゃいけないお金があるんだ。来月は必ず支払うから」と言う。

しかし、来月はもう息子の入学試験が始まるので、塾は終わりなのだ。

それすら分かっていない夫に、私は失望した。

そんなこともありつつも、息子の受験は無事に終わり、息子は希望していたサッカーの強豪校へ入学できることになった。

しかし、同じ高校を目指していたさやかさんの息子である風也君は、不合格となってしまったらしい。

息子によると、滑り止めの私立へ行くだろうということだった。

ただ、受験が終わってからというもの、さやかさんの息子が学校に姿を見せなくなったらしく、本当のところは分からないという。

卒業式にも姿を見せなかったそうだ。

さやかさんにも連絡しづらくなってしまい、交流はそれ以降なくなってしまった。

夫の挙動不審な行動はいくつもあり、それは今でも続いている。

息子の高校生活も落ち着くにつれ、私はモヤモヤした心を一度すっきりしたいという思いが強くなり、本格的に夫を追い詰めてみようと思った。

まずは、いつからか連絡し合わなくなってしまったさやかさんと連絡を取った。

すると、驚きの事実を教えてくれた。

その後、夫に今週末の予定を聞くと、「週末は金曜から多分出張だ」と言った。

私はそれを聞いて、金曜日に夫の会社に電話した。

夫の妻だと名乗り、「連絡が取れなくなってしまったので、夫が出張で行っている宿泊先を知りたい」と問い合わせる。

すると、夫の会社の人から「今日出張している社員はいない」との返答が返ってきた。

私は「やはり」と納得しつつ、会社の人をごまかしながら電話を切る。

その夜、私はとある住宅地へ向かった。

確実な証拠を手に入れるために、私は必死だった。

夜明けすぎに、夫のような男と細身の女性がタクシーから降りて、その家に入る。

私はすかさず写真を撮った。

その写真を拡大すると、夫だということと、相手の女性の顔がはっきり分かるほど、うまく撮れていた。

少しずつ証拠を集めた私は、決行の日を決めた。

あの金曜日の出張から、夫が疲れた様子を見せて帰ってきた数日後のことだ。

「来週また出張がある」

「毎月毎月大変でごめん」

私はそんな夫の言葉にニヤリと笑って、こう言った。

「あなたも大変ね。頑張ってね」

夫は私の笑顔に相当な違和感を感じたようだったが、首を捻りながら寝室へと入ってしまった。

夫は、自分の身にこれから降りかかることを知らない。

私は、決行が楽しみになってきた。

翌日、私はまたあの住宅地に車で乗り込んだ。

そして今度は、夫が女性と入っていた家のチャイムを鳴らす。

「こんばんは。お邪魔していいかしら」

見知らぬ声に慌てて出てきた女性が、誰かと問いかけてくる。

「ここに夫が来てるはずなんですけど、知らない?」

そう言いながら、男性の靴を指差した。

すると女性は、「その靴は自分の夫のものだ」と言った。

それを聞いて、この人は人妻なのかと呆れる。

確かに、指差した靴以外にも男性の靴がある。

そんな時、こんな声が聞こえた。

「確保したわよ」

それはさやかさんの声だった。

実は、本格的に浮気を突き止めようと思った時にさやかさんと連絡を取り始め、一緒に行動してもらっていたのだ。

夫は私が来たことを察して庭から逃げようとして、それを捕まえたようだ。

夫と人妻に「これはどういうことなのか」と強く問いただすと、深夜だったのもあって周りの目を気にしたのか、家に入れてくれた。

リビングのテーブルには食事が用意されていて、まさに食事を始めたところのようだ。

「いつからなの?」

私が聞くと、夫は「12年ぐらいだから、そんなに長いわけじゃない」と言い出した。

2年も続いている浮気を「そんなに長くない」と訴える時点でおかしいと思いつつ、さらに問いただす。

「いや、10年でしょう。分かってるのよ。ずっと続いてるって。その人妻、会社の後輩なのよね」

私の言葉に「何の話だ」と言いながら、夫も人妻も顔を歪める。

それを見ながら、私は夫の会社に行って色々聞いて回ったこと、数年前に夫と人妻のことは会社で随分噂になっていたこと、私が「10年も夫に裏切られてるようだ」と言ったら、親切なみんなが色々な情報を教えてくれたことを、全て説明した。

「会社でそんな話をしてきたのか」

夫は声を震わせながら、目を泳がせている。

今後どうしたらいいか考えているようにも見えた。

私はそんな夫を見て、こう言ってやった。

「あら、あなた震えてるの?この程度で震えてたら、この後どうなるのかしら?」

私がそう言い終わるのと同時に、玄関のチャイムが鳴った。

はっとした人妻が玄関に向かったので、私も後からついて行く。

するとそこにいたのは、さやかさんの息子の風也君だった。

風也君を見て、さやかさんは驚いて目を丸くしている。

風也君は、両親が急に不仲になって理由がよく分からないまま別居してしまい、今はお父さんとこの近くで暮らしている。

一時は私の息子とも交流が途えていたが、つい最近再開したことで、風也君に相談を受けたのだ。

ここに風也君がいる理由を説明した後、私はさやかさんを見ていった。

「夫の2人目の浮気相手は、あなたよね。さやかさん」

さやかさんはうつむいた様子で私を見た後、息子の視線に気づき、それに耐えきれず下を向いてしまった。

人妻は驚きの表情をしている。

「私たち夫婦と出会ったことで関係が始まったのよね。私と仲良くするふりをしといて、2人して影で私を裏切っていた」

そして私は、さっと涙を拭ってから、さらに夫に事実を突きつけた。

さやかさんに毎月4万円も送金していたこと。

真事の塾代が払えなかったのは、さやかさんに送金してたからだということ。

そして、どのような気持ちで息子の塾代を自分の浮気相手に振り込んでいたのか、問いただした。

夫は驚きの表情をしながらも、何も言い返せずにいるようだ。

すると、代わりに答えるかのように風也君がこう言った。

「母さんもおじさんも、最低だな。こうやって家族を巻き込むなんて」

風也君はそう言って、2人を汚いものでも見るような目で睨んでから、帰ってしまった。

「あなたが悪いのよ。この女と付き合ってたことなんて分かってたんだから。本当はお金が欲しかったわけじゃないわ。お金で私をなめようとしたのは、あなたじゃない」

さやかさんはいきなり取り乱し、夫の胸を叩きながら号泣しつつ、そう訴えた。

夫はさやかさんと付き合いながらも、この人妻との関係をやめなかったらしい。

それに気づいて嫉妬を覚えたさやかさんは、私に浮気を匂わせて察してもらおうとしたというわけだ。

夫は人妻の視線も私の視線も意識しながらも、さやかさんをなだめている。

それを見て人妻は顔を赤くして怒っているようだが、私は自分がどんどん覚めていくのを感じた。

正直、だんだん馬鹿らしくなってきていた。

「みんな本当にバカね。この人が法的に責任を取らなくちゃいけない相手は、私だけなの。でもいいわ。私はもうこんな人いらないから、2人で好きなようにしなさい」

私はそう言うと、用意してきた離婚届を夫に渡し、「夫の荷物は全部実家に送っておく。着払いにするから、すぐ義母から連絡が来るだろう」と言って、さろうとした。

すると夫は「自分が悪かった。本気で大事にしてたのは私だけだ。助けてくれ」と、鬼のような形相で詰め寄る2人の女を引き離しながら、私に泣いてすがってきた。

それを見てだいぶスカッとした私は、「お母さんにでも助けてもらったら?」と笑いながら言って、悠然と玄関に向かった。

すると玄関で、見知らぬ男性に遭遇する。

見たところ人妻の夫のようだ。

「ああ、中にいる人たちに聞いてください」

そう言って玄関を出た。

帰宅の時間に帰ってきた人妻の夫を巻き込みながら、また一悶着あるのだろう。

私は大笑いしながら、この家を後にした。

その後、私たちは離婚した。

夫の長年の浮気が義両親、そして夫の会社関係者にも知られることとなった結果、夫は厳しい義母に相当叱られたようだ。

また、会社での信用も地に落ち、退職せざるを得なかったらしい。

浮気相手だったさやかさんも、別居していた夫に離婚を突きつけられ、息子も父親に取られてしまったようだ。

人妻の方は、あの日訪ねた家が売却されていることから、どこかに引っ越したらしい。

もしかすると離婚もしているかもしれない。

夫は、長きに渡った浮気の代償の大きさに、うなされながら過ごしていく人生になるだろう。

私の方は、資産を持っている義実家から、まとまった慰謝料を受け取ることができた。

息子に本当のことを話すことはとても勇気が必要だったが、私の今までの苦労話を真剣に聞いてから、「今後は何の心配もしないで生活できるように、自分も頑張る」と言ってくれた。

今はそんな息子と2人、穏やかに暮らしている。

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