「この家の名義は息子の匠よ。嫁のお前に住む権利はない。だから出ていきなさい」—義母は新居が完成したその日にそう言い放ち、私の部屋まで奪おうとした。3年間、私は家族になろうと必死に努力してきた。大好きな夫は、そんな義母の味方ばかり。私が泣いても、ただ「母さんは1人で寂しいんだ。我慢してくれ」と言うだけ。でも本当は、この家のローンも頭金2000万円も、すべて私が出していた。夫が名義人になれなかっ…

「この家の名義は息子の匠よ。嫁のお前に住む権利はない。だから出ていきなさい」—義母は新居が完成したその日にそう言い放ち、私の部屋まで奪おうとした。3年間、私は家族になろうと必死に努力してきた。大好きな夫は、そんな義母の味方ばかり。私が泣いても、ただ「母さんは1人で寂しいんだ。我慢してくれ」と言うだけ。でも本当は、この家のローンも頭金2000万円も、すべて私が出していた。夫が名義人になれなかっ...

新居の完成が近づいた頃、義母が突然、私にそう告げた。

「あの家名義は匠でしょ。法的には匠の家なら嫁に住む権利はないわよ」

「夫婦だからこそ住む権利はあると思いますが」

「でもあなたは住ませてもらっている。だから私も住むことにしたの。私は息子のそばにいたいから」

「同居ということですか?」

「そうよ。当然でしょ。私の部屋が必要だから、あなたの部屋をもらうわね」

私は頭が真っ白になった。この家は2人で暮らすための約束で建てたものだ。それなのに、義母が自分の都合だけで部屋を奪い、私に出ていけと言う。

「私も費用を出しています。頭金も含めて。それでも出ていけということですか?」

「費用?嫁が家に貢献するのは当然でしょう。それが嫁の役目なんだから」

私はその夜、夫の匠に話した。

「お母さんが新居で同居するから、私に出ていけって言ってるの」

「ああ、それなんだけど、母さんずっと1人だったからさ。寂しかったんだと思う」

匠は驚く様子もなく、淡々とそう言った。

「もしかして同居するって話、聞いてたの?」

「まあ、前から言ってたし。いつかはそうなるかなってくらいで」

私は夫を信じていた。優しくて、私を大切にしてくれる人だと。なのに、いざというとき、彼は母親の味方をした。

数日後、義母が新居の間取りを見に来た。

「南向きの部屋は日当たりがいいわね。私の部屋にするから開けといてね」

「その部屋は私が書斎として使う予定です」

「書斎に書斎なんて必要ないでしょう。掃除でもしてなさい。大体嫁は家事に専念すればいいのよ。部屋を持つなんておこがましいわね」

「静かな場所で本でも読みたいと思って用意した部屋なんです」

「本?暇なのね。働いてないんだから、もっと家に尽くしたらどう?」

そして義母はリビングのカーテンを「趣味が悪い」「センスがない」と否定し、費用を私持ちで張り替えると勝手に決めた。

私はその日も匠に話した。でも彼の答えは決まっていた。

「母さんも1人で寂しいんだよ。俺たちが我慢すれば丸く収まるから」

「夫婦の部屋があるだろう。2人で使えばいいじゃないか。母さんだってもうそんなに長くないんだ。俺たちが我慢すればいい」

私はその言葉に何も返せなかった。私の気持ちより、お母さんの気持ち。3年間、ずっとそれだった。

親友の愛には、こう言われた。

「いい年して母親優先?何ソレ、マザコン?」

「私も分かってるの。頭では分かってるの。でも怖い。1人になるのが」

「あんた、1人じゃないでしょう。私がいるじゃん。だから限界が来たら、いつでも動けるように準備だけはしときな」

新居が完成した1ヶ月後、義母は私にこう言った。

「今日から私も住むから荷物運んどくわ。もう部屋決めといたから」

「だから勝手なことをしないでください」

「何度も言ってるけど、完成した新居は息子の名義。嫁に住む権利なし。私も同居するから、お前の部屋はない。邪魔だから出てけ」

「匠さんに確認しました。私が出ていくことに彼も同意しています」

「当然じゃないの。息子は私の味方よ。息子は私を選んだの」

「じゃあ、出ていきます」

私は荷物をまとめ、家を出た。でも、ただ黙って出ていくつもりはなかった。この家の名義が本当は誰にあるのか、私は知っていた。私が頭金2000万円を出し、ローンも私の名義で組んでいたのだ。匠の年収では審査が通らず、夫の代わりに私が名義人になった。義母が「名義は息子」と言い張っていたのは、匠が義母に黙っていたからだ。私はそれを知っていたのに、言わなかった。夫のメンツを潰したくなかったから。

「行動で伝えよう」そう決めた私は、愛に依頼して書類をすべて確認してもらった。

「あんたが入金をやめたら、翌月には残高不足になるわよ。匠の年収380万で月26万の返済は不可能」

「そういうこと」

3日後、義母は私にこう言った。

「もう家を出たのね。早かったじゃない。嫁は従順な方がいいのよ」

「お母さん、私は出ていきました。そのため大事な話があります。ローンの引き落とし口座の件で、来月から変更手続きが入ります」

「だから何だって言うの?匠が払えばいいでしょ?息子の家なんだから」

「そうですね。では、匠さんに任せます」

私はその日、匠に最後の連絡をした。

「今日、対去しました」

「ありがとう。母さんがすごく喜んでた。これで2人で暮らせるって」

「お母さんと2人で、これから頑張ってね。大変だろうから」

翌日、匠から電話が来た。

「青い、やっぱり戻ってきてほしい。考え直したんだ」

「どうしたの?急に」

「母さんが家事とか全然やってくれなくてさ。何もしないんだ。正直きつくて。お前がくれたら助かるんだよ」

「私が便利だから戻ってこいってこと?それって嫁としてじゃなくて、家政婦じゃない?」

「そういうわけじゃないけど。とにかく頼む」

「分かった。何か勘違いしてない?私が分かったのは、我慢しても無駄だなってことよ。お母さんと勝手にやって。でも家に住むなら、お金は払わないとね」

その翌月、義母が慌てて匠を責めた。

「銀行から電話が来たの。口座残高不足でローンが払えてないって。どういうこと?名義はあんたでしょ?」

匠はそこでようやく真実を話した。

「この家の名義は蒼いなんだ。俺は審査が通らなかった。年収が足りなくて、蒼いに頼んだんだ」

「じゃあ頭金の2000万円も?」

「蒼いのおばあちゃんの遺産で出した。全部」

構わず義母はこう叫んだ。

「なんで言わなかったの?最初から言いなさいよ」

「母さんに知られたら、男のくせにってバカにされると思ったんだ」

義母は息子を責めた。

「笑い話にもならないわ。恥ずかしい」

その後、義母は私に泣きついてきた。

「蒼いさん、ローンのこと、もう少し待ってもらえないかしら。家のことで話し合ってなんとかするから」

「お母さんは私に『さっさと消えろ』とおっしゃいましたよね。私はその言葉通りに動いただけです」

「でもあんたがいなくなったら、私たちはどうなるの?」

「それはあなたと匠さんで解決してください。私の問題ではないので」

そして数週間後、匠から最後の話し合いを求められた。

「もう一度話し合いたい。家のことも、俺たちのことも」

「それならあの日、どうして止めてくれなかったの?」

「それは母さんが…」

「母さんがじゃなくて、あなたはどうしたかったの?」

「俺は…青いにいてほしかった。一緒にいたかった」

「結局、どちらでもなかったんでしょ。私は3年間ずっと耐えてきた。あなたが、1度でも守ってくれると信じて。でも、1度もなかったわよね。お母さんに部屋を取られても、追い出されても、家政婦として戻れとしか言われなかった。あなたはいつもお母さんの味方だった」

「青い、ちゃんと怒ってるんだよ。今まで飲み込んできた分、全部」

「ごめん。本当にごめん」

「もう無理だよ。離婚してください。弁護士から正式に連絡がいきます。慰謝料と、出ていかないなら頭金の返還請求も進めます」

数日後、義母が今度は懇願した。

「私だって息子に騙されていたのよ。私も被害者なの」

「笑わせないでください。3年間、私はお母さんに何をされましたか?私は家族がいませんでした。親もいなくて、おばあちゃんだけが家族でした。だから匠さんと結婚した時、やっと家族ができると思ったんです。お母さんのことも、お母さんと呼べる日が来るかもしれないと思って、ずっと家族になろうとしてきた。でも私は、お母さんの家族には1度もなれませんでした」

その後、匠さんはローンの支払いができなくなり、家を追われることになった。義母の遺族年金でも返済は不可能で、借金の末に自己破産。慰謝料の支払いは消えず、給料のほとんどを差し押さえられているという。義母も息子の家で老後を過ごすという夢が崩れ、親族からも「嫁を追い出して自滅した」と見放された。

一方、私は家を取り返し、今は親友の愛と2人で暮らしている。最初は断られたけれど、「せっかくなら家族と暮らしたい」と言うと、愛は照れ臭そうにしながら承諾してくれた。今、私はとても幸せだ。認めてもらおうと無理に頑張るのではなく、お互いを認め合い、支え合える家族と一緒に暮らしている。

Thumbnail