「今度の法事、あのブス嫁も連れてくるの?」――義母が私の存在を消そうとした最初の一言はこれだった。結婚して初めての法事、私は廊下に薄い布団を敷かれ、バスタオル1枚で凍える夜を過ごした。夫は酔って眠っていた。翌朝、私は始発で黙って家を出た。夫に真実を話した時、彼は言った。「親か妻かという2択しかないなら、俺は迷わず君を選ぶ」。そして私は、あの義母に仕返しを頼んだ。2週間後、義母から悲鳴のような…

「今度の法事、あのブス嫁も連れてくるの?」――義母が私の存在を消そうとした最初の一言はこれだった。結婚して初めての法事、私は廊下に薄い布団を敷かれ、バスタオル1枚で凍える夜を過ごした。夫は酔って眠っていた。翌朝、私は始発で黙って家を出た。夫に真実を話した時、彼は言った。「親か妻かという2択しかないなら、俺は迷わず君を選ぶ」。そして私は、あの義母に仕返しを頼んだ。2週間後、義母から悲鳴のような...

「今度の法事、あのブス嫁も連れてくるの?」

母のその言葉に、俺は思わず声を荒げた。

「母さん、いい加減にしてくれ。俺が選んだ人なんだ。そんな風に言うなよ」

「だって嫌いなんだもん。なみの何がそんなに気に入らないの?」

「気が強そう。料理下手そう。昔遊んでそう」

「全部想像じゃんか」

「私の勘って当たるのよ。近所でもあの夫婦は離婚するなって分かっちゃうし」

「何の自慢にもならないから。なみも母さんと距離があるって気にしてたぞ。話しかけてもそっけないって」

「だってまともに話したら、ケちょんケちょんに言いたくなっちゃうでしょ。そしたらかずが悲しむと思って」

「その気遣いをなみに向けてくれないかな。母さんが悲しいと俺も悲しいんだよ」

「あなただってずっとピーマン嫌いでしょ。嫌なものはどうしたって嫌じゃない?」

「もう食べられるよ」

「え、そうなの?大人になったのね」

「子供扱いしないでくれ。……歩み寄ってくれてありがとう」

「私もピーマン嫌い克服してみるわ」

「なみをピーマンと同列にしないで欲しいけどな」

「頼んだよ」

数日後、法事の当日。

「なみさん、何時頃到着する予定?」

「今、母さんの運転で向かってるので、あと1時間くらいだと思います」

「亭主に運転させて、隣で口開けて寝てるの?楽で羨ましいわ」

「起きてますが」

「冗談よ。今日は親族の集まりだし、ゆっくりしてってね」

「かずさんのおじい様の13回忌なんですよね。お手伝いが必要かと思いますので、私も手伝います」

「あら、結構よ。お皿運ぶだけならファミレスのロボットに頼んだ方がまだましだもの。冗談よ」

「今回は初めての法事参加でしょ。あなたには奥の和室を用意してあるから、そこで映画でも見て時間潰してくれたらいいわ」

「いえ、結婚式以来ですので、親戚の皆様にもご挨拥をさせていただきたいのですが」

「人前に出せる顔ですか?」

「はい。……冗談ですよね?」

「母さん、冗談にすれば何でも言っていいと思かってませんか?」

「何が?」

「私はかずさんの妻として恥ずかしくない働きをしたいと思っています。親戚付き合いも妻の勤めだと思っていますので」

「まあご立派でびっくりだわ。猿と思ってたらチンパンジーだったくらい驚っちゃった。あの、冗談」

「とにかく一泊ですがお世話になります」

数分後、なみはスマホで旧友のマイクに連絡を取った。

「マイク、久しぶり。今沖縄なんだね」

「そうさ。広島のお好み焼き屋で修行してる時、間違ってマヨネーズを画面にかけてごめんね」

「別にいいよ。夫も爆笑してたし。かずま、いいやつ。前食ったらあの後何件も奢ってくれるんだもん。翌日二日酔いで新幹線乗ったのもいい思い出だよ。また飲みたいね」

「うん。ところでマイク、広島で会った時さ、なんか『スレスレのLINEでストレスかける』とかそんな話してなかったっけ?」

「もう追い詰めやね。ブランチャーみたいなもんさ」

「今、義家に向かってるんだけど、義母から早速先制パンチ食らっててさ」

「ああ、ジャパニーズ義母は本当にそこに居るんだな。いい人もいると思うよ。僕の友達も義母に苦しめられたやつたくさんいる。息子が可愛いが故の行動なんだろうけどね」

「でもその息子が愛した女だ。……うちの夫もそう言ってくれてる」

「いい男捕まえたな」

「ありがとう。で、僕は何をすればいい?」

「今のところ何も起きてないけど、もし今回の件で何かあれば依頼したい。お金ならちゃんと払うから」

「ノー。JSAに関してはお金もらわない」

「何の略?」

「地味なストレス与えちゃう。で、JSA」

「ああ。毎回めんどくさいから名前つけた。周りからの評判は結構悪い」

「分かりやすくていいと思うよ」

「そうか。なみ優しい」

「でもマイクと話せて安心した。今、夫に言うと引き返しちゃうかもしれないし。ちょっと愚痴りたかったんだ」

「何かあったら任せろ。これで安心して義実家行けそうだよ。何も起きないかもしれないしね」

「そうだね。忙しいのにごめん」

「大丈夫。今は琉球ガラスの師匠と昼から飲んでるところだから」

「へえ。飲食店ばかりだって聞いてたから意外。……早起きそばの師匠とは喧嘩したんだ」

「なんで?」

「話すと長くなる。大丈夫なの?」

「なんくるないさ」

「またゆっくり話聞かせて。またね」

「どういう意味?」

「またねってこと」

数時間後、なみは大量の酒を買わされていた。

「ちょっと、買い出しすぎるわよ」

「さすがにウイスキー5本、焼酎5本は持てないので、タクシーを待っているところです」

「まあセレブね」

「車で行きたかったんですが、お父さんにお酒を進められて飲んでしまったので」

「あ、今うちの夫、終わるものにした。そうじゃなくて、飲んでしまったのは自分ですし、誰のことも攻めていません」

「まあ、奥の和室をせっかく用意したのに、この子が出てくるから飲まされるはめになったんでしょ。せっかく来たのに奥に引っ込んでる方が不自然だと思うんですが。あの女、お父さんがすぐに呼びに来られましたし」

「あなた、うちの夫に色目使ったわね」

「そんなことしません。する意味がありません」

「まあ、夫には男の魅力がないって言いたいの」

「その揚げ足取りやめてくれませんか?会話が成立しないので」

「私をバカ扱いするなんてひどいわ。これでも一生懸命生きてるのに」

「あ、すみません。私が悪かったです」

「かずも久しぶりにいこたちと飲んで、よっぽど楽しかったんでしょうね。飲み疲れて寝ちゃったわよ」

「そうですか。あまり強くないから無理しないよう言っておいたんですけどね」

「は、うちの酒が悪酔いするって言いたいの?」

「違います。今日は何人か泊まっていくって言ってるの?」

「そうなんですか」

「それであなたの寝る部屋がないのよ」

「いや、かずさんと一緒でいいですけど」

「だから親戚を私の部屋に寝かせて、私はかずと一緒に寝ることになるでしょ」

「なぜそうなるのか、ちょっと理解が追いつかないのですが」

「嫁の布団は廊下の床に敷いた。そこで寝なさい」

「はい」

「みんなほとんど寝ちゃったから音立てないでね。……はい、分かりました。あの飲み物はもういらないわ。さっさと戻ってきなさい」

「早く帰ってこないからこうなるのよ。ざまあ見さらせ」

翌朝、なみは始発で家に帰るため駅に向かいながらマイクに電話した。

「マイク、もう無理」

「どうした?どうした?」

「必要のないお酒を大量に買いに行かされた。挙げ句、廊下に薄い布団敷かれてさ。まだ夜は冷えるのに、バスタオル1枚で寝かされたの」

「えぐいな。嫁いびりって話には聞いてたけど、実際に食らうと結構ダメージ来るね。大丈夫?」

「腰は痛いし頭も痛い。まだ義実家にいるのか?」

「うん。始発で帰ろうと思って、今駅まで歩いてきたところ」

「ハズバンドはどうしたの?」

「昨日飲みすぎたから寝かせてあげたい。一応LINEはしておいた。『母、許すまじ』」

「すごい言葉知ってるね」

「好きな日本語さ」

「不思議だね。マイクと話してると、なんか笑っちゃうし元気が出るよ」

「なみの本当のスマイルを取り戻す」

「何をどうするつもり?」

「平気。内容は知らなくていいってことさ」

「わかった。全部マイクに任せる」

「イエス。夫の弟さんが来年くらいに結婚を予定してるの。その奥さんが私と同じ目に会わないようにしてあげたいんだ」

「任せろ。早起きそばの具にしてやるさ」

数時間後、夫のかずから電話がかかってきた。

「なんで黙って帰ったの?」

「よく寝てたから起こさなかった。ごめんね、先に出て。昨日結構飲んでたみたいだけど大丈夫?」

「頭痛い。3連休だしもう1泊してきたらいいよ」

「でも私はもう家に着いたから」

「電車で帰ったの?」

「うん」

「……何かあったんだな。俺が酔いつぶれてしまったばかりにすまない」

「かずは悪くないよ。親戚と楽しそうに飲んでるの見れて私も嬉しかったし」

「何があったか教えてくれないかな」

「それを言ったらお母さんに言うでしょう」

「もちろん。あなたが自分の母親と距離ができたり、最悪嫌いになったりしたらどうしようかなって迷いもあるの」

「それは俺が決める」

「私も公務員になれっていう親に反発して家を出たまま、しばらく会ってないでしょ。結婚式にも来てくれなかったもんな。すごく頑固な父親なの。母はそれの言いなり。それでも親に会えないのは辛いよ。あなたにはそうなって欲しくない」

「でも親か妻かという2択しかないなら、俺は迷わず君を選ぶんだけど」

「ありがとう。かっこよすぎて好きすぎる」

「そう言われると思っていった。それでも嬉しい。俺も今日帰るよ。すぐに会いたい」

「かず、1つだけ許可が欲しい」

「何?」

「お母さん、ここからしばらく小さなストレスを抱えることになると思うの」

「あ、もしかしてマイク?」

「そう、2人で広島行った時に会ったマイク」

「あれ本当にやってたんだ?」

「どうなるかわからないけどお願いしたの。廊下に寝かされて黙ってるほど私も人じゃないから」

「そんなことしたのか。我が親とはいえ許すまじ。すぐに帰る」

「マイクと同じこと言ってる」

翌日、なみは義母に正式なクレームを伝えた。

「翌日黙って帰るなんて音知らずね」

「廊下が硬くて寒くて眠れなかったので、始発で帰らせていただきました」

「嫌み?」

「いえ、正式なクレームです。冗談では済まされないLINEとか、昭和の嫁いびりにこれ以上耐えるつもりはありません」

「生きてりゃ人に嫌なこと言われたりとかよくある話でしょ。気にしすぎじゃないの?」

「そうでしょうか」

「あんたが近寄らなくなるのはどうでもいいのよ。かずだけでももう1泊すると思ったのにがっかり。どうせあなたが何か言ったんでしょう」

「はい。廊下で寝かされたことを伝えました」

「はあ。なんで言っちゃうの?」

「ダメでしたか?」

「ダメでしょ。事実なのに」

「事実だからよ。すみません。うちは隠し事しない夫婦なんです。お母さんみたいに」

「何よ」

「お父さんや親戚の前ではいい姑を演じてますよね」

「当然よ。正直に言うアホがいるもんですか」

「まあいいです。とにかくこれからしばらくは色々と大変なこともあるかと思いますが、自業自得だと思って堪えてください」

「どういう意味?」

「ドラマも映画も予告で終わるからドキドキできると思いませんか?」

「はあ」

「マイクとエージェンツの本気をどうぞお楽しみに」

「日本語喋りなさい。意味がわかんないのよ」

2週間後、義母からなみに電話がかかってきた。

「助けて」

「どうかされました」

「あなたの仕業かと思ったけど、どう考えても無理なことばかりだし。何が一体どうなってるのやら」

「何があったんです?」

「必ずスマホを充電器にさして寝るのに、朝起きたら必ず抜けてて。毎朝5%なのよ。他には洗濯物を干して取り込むと、必ず私の服にだけ亀虫がくっついてる」

「それだけですか?」

「ランチに行くと私のコップだけ臭いし、自転車のサドルが毎回1番上まで上げられてるし、どのスーパーに行っても同じインド人の男が私を見てニヤニヤ笑うの。もう耐えられない」

「気にしすぎじゃないですか?生きてたらそれくらいあると思いますけど」

「ひどい。私はこんなに苦しんでるのに」

「私に同じこと言ったの忘れたんですか?私もくだらない夢に苦しんでいました。そんな時に寄り添ってくれましたっけ?」

「それは無理ですよね。当事者でしたもんね」

「これ、あなたの仕業じゃないわよね」

「私には充電器をいじったり亀虫を操ったりすることはできません」

「じゃあどうして」

「因果応報って言葉ありますよね。それじゃないですか?」

「え、やったことは帰ってくるって言うじゃないですか」

「だとしてもなんであんたにやったことをインド人が返しに来るのよ」

「確かに。もうやだ。本当に辛い」

「このくらいで終わるといいですね」

「何?まだ続くの?」

「さあ、分かりません。では失礼します」

数分後、なみはマイクに電話した。

「ねえ、マイク、一体何がどうなってるの?」

「因果応報。うん、分かってるけど、充電器とか家に入らないとできないことは説明がつかないよね。まさか不法侵入とかしてないさ」

「じゃあどうして」

「1つだけ教えてやろう。義父もエージェントなのさ。新入りだけどね」

「どういうこと?」

「なみがいびられてることを耳にぶっ込んだのさ。そしたら『是非協力させてくれ』と言ったんだ」

「じゃあお父さんが毎日充電器を抜いてるの?」

「イエス」

「最高すぎるんだけど」

「実は義母の周りをうろちょろしてるインド人から報告が入ったんだけどさ、ちょっと笑えない事実が分かった」

「え、何?」

「あいつは病気だ」

「何?何?何?」

「日本語に翻訳した報告書を、居住にメールしておく。分かった。お願いね。それを見てハズバンドと話し合った方がいい」

「うん。マイクありがとう」

翌日、かずは実家に帰り、母と対峙した。

「母さん、大事な話がある」

「あら、かず、また近いうちに帰ってきてよ」

「それはもうないと思う」

「え?なんでそんなこと言うの?」

「絶望したよ」

「何の話?あ、もしかしてなみさんのこと?それだったら、色々やり合ったりはしてるけど、喧嘩するほど仲がいいって感じだから」

「それもあるけど別のことだ」

「なんだろう。心当たりがないわね」

「実家に帰るたびに、近所の誰々さんが離婚したとか嫁が出ていったとか、そういうゴシップを毎回楽しそうに話してたよね」

「うん。別に楽しくはないけど。ワイドショーみたいなものよ」

「俺もそう思ってた。最初は他人のことだし、話題にするくらいは別に何とも思ってなかったよ」

「でしょ」

「でもそれが母さんの仕業だったとしたら話は別だ」

「え?何のこと?」

「山本さんちは奥さんの不倫がバレて離婚だったよね。そうよ。でも実際は不倫なんてしてなかったらしい。証拠もないのに離婚になるなんて変だと思うけど、世間の好奇の目とかひそひそ話に追い詰められることもあるんだろうな」

「私に言われても困るわよ」

「母さんが噂の出所で、そこから尾ひれがついて山本さんの奥さんを追い込んだんだよな」

「やだわ。私のせいにしないでよ」

「田中さんちの件もそうだろ。お嫁さんが懸命に義父の介護をしてるのは、遺産をもらって浮気相手と逃げるためだというデマを母さんが流したんだよな」

「信じられない。何を根拠に言ってるの?」

「ターゲットを決めてどんなデマを流すか。それを詳細に書いたノートがあるのは分かってる」

「え?」

「父さんが押し入れの収納の中から見つけた」

「嘘」

「最初は街中に広まった噂の出所を、ある人が突き止めたら母さんだということが分かった。それを知った父さんが何かないかと家の中を探してくれたんだよ」

「なんであの人がそんなことするのよ」

「そんなことはどうでもいい。人を不幸に落とし入れて、それを見て笑ってたのか」

「違う」

「最低だな。こんな親から自分が生まれたなんて信じたくもないよ」

「かず、私じゃないわ」

「じゃあ、あのノートは何なんだよ。あれは近所のゴシップを書き留めてるだけだとしたら、書き方がおかしいよな。『田中家の嫁、浮気プラス遺産狙いということにする』。いや、『ということにする』ってのがありえないんだよ」

「分かった。ごめんなさい。でもこれって犯罪じゃないでしょ。ちょっとした遊びっていうか、子供だってよくやるじゃない」

「あんたは子供か。60年近く生きてる大人じゃないの?」

「ごめんなさい」

「なみに対してもそうだ。冗談で済むと思って好き放題言ってたな。あれでなみの心が壊れていたらどうしてくれるんだよ」

「あの女は大丈夫よ」

「全く反省してないんだな」

「いや、してるわ」

「俺の決意は変わらない。もう母さんと会わないから。結婚する弟夫婦にも関わらないでやってくれ」

「やだ、かず、待ってよ」

数分後、義母は絶叫した。

「お前のせいだ!地獄の底からおたけびが聞こえるわ!かずに絶縁されたじゃないの!」

「懸命な判断だと思います。さすが私の夫」

「ここまでする必要あった?ちょっとだけそこ意地が悪くて、ちょっとだけやんちゃなストレス止めてだけでしょ」

「自己評価が高すぎます」

「だってこの世にはもっとひどい姑がいるわ」

「だから何ですか?卵を万引きするのと宝石を盗むのは違うでしょ?何が言いたいのか分かりませんが、盗むという行為は同じですよ。そこが分かってないから絶縁されたんじゃないですか」

「あんたの不気味な予告から変なことばかり起きるし。夫で取り込まれるなんておかしいわ」

「周知ゲームなので詳細は言えませんが、まともに生きていたらあんなにストレスがかかることは頻繁には起きません。息子たちやご主人から絶縁されることもないんですよ」

「夫がどうしたの?絶縁は息子だけじゃないの?」

「離婚するです」

「なんで?」

「恥ずかしくて町を歩けないからですよ」

「やったのは私よ」

「そうですね。でも加害者の家族も生き地獄を味わうことになるんですよ。田中さんや山本さんのお嫁さんが世間から好奇の目で見られてしまったように、お父さんやかずもそういう風に見られるんです。そこまでは考えていなかったの?」

「それがダメなんですよ。普通のまともな人ならその予測ができるんです」

「偉そうに」

「私の言葉なんて響かないのは分かっています。でも今のあなたに苦言や説教であろうと言葉をかけてくれるのは私で最後ですよ」

「本当にみんな離れていくの?」

「そのようです」

「あなたと田中と山本に謝って、全員が許してくれたらどうかしら?」

「やってみたらどうですか?確実に1名は許さないと思いますけど」

「あんたでしょ?」

「いいえ、違います。田中さんです」

「なんで」

「出ていった奥様のその後、知らないんですか?」

「知るわけないじゃない」

「精神を患って入院してるんです。今も」

「え」

「ほんのずる賢さだったかもしれません。でもそれが誰かを追い込むこともあります。私だってあのまま続いていたらどうなっていたか分かりません」

「あんたは大丈夫でしょう」

「夫に伝えておきますね。全く反省もしてなければ謝罪の言葉もなかったって」

「いや、待って、ごめんね」

「受け取りません」

「なんでよ」

「それと田中さん、山本さんには詳細が共有されました。今後民事で慰謝料請求などされると思いますので、就職先を見つけておいた方がいいと思います」

「はあ。無理に決まってんでしょ」

「逃げるんですか?」

「そうだ。財産分与があるわね。でも慰謝料に消えるのはもったいないわ」

「お父さんはすでに息子2人に生前贈与しています。よって与する財産はないそうですよ」

「嘘でしょ?そんなのあんまりよ。ちょっと本当にやばい気がしてきたわ。どうしましょう?なみさん、お願い、助けて。生まれ変わるし何でもするわ」

「もう母さんたら、またいつもの冗談ですか?もう信じませんからね」

「本当なの?信じて」

翌日、なみはマイクに礼を言った。

「マイク、色々ありがとう。真実突きつけて、言いたいこと言ってすっきりしたよ」

「そうかい。そうかい」

「なんでインド人の方は義母が噂の根源だって分かったの?」

「主婦議員」

「そうでした。亀虫はどうやったの?」

「うん。それはいいか。洗濯物にくっつけただけだよね。私にもできそう」

「今年は亀虫大量発生。なみも気をつけろ」

「うん。もう我慢するな。ハズバンドのママだからとか、誰かが傷つくかなとか、そういうのなし。自分がどうしたら笑っていられるかを考えろ」

「ありがとう。発言がイケメンすぎてキュンとした」

「かずまに行ってやろうか」

「別にいいよ。うちら2人ともマイク好きだし」

「照れるじゃん。てかなんで早起きそばの師匠と喧嘩したの?」

「言いたくない」

「教えてよ」

「ピンクレディのケイちゃん派とミーちゃん派で揉めた。僕は絶対にケイちゃんなんだ。でも師匠がミーちゃんだって譲らなかった。それで大喧嘩さ」

「あ、ほら、心配して損した」

「なんで大事なことだろう。ジャパニーズアイドルの原点であり頂点だ」

「そうかもしれないけどさ。師匠と仲直りしてね」

「もうしてる。今からカラオケ行ってピンクレディメドレー歌うのさ。男2人で」

「そうだよ。なんか悪いか?」

「楽しんできて。マイクありがとう」

「なんくるないさ」

その後、義母は田中さんと山本さんの両家から慰謝料請求をされた。田中さんに至っては入院までしているので、相当長くなるのではないだろうか。夫は早々に離婚して町を出ていった。別れ方も徹底していて、義母の手元には1円玉1つ残らなかった。引っ越すお金もないため元の家にそのまま住んでいるそうだが、今度は自分が好奇の目を向けられる側になったようだ。「嘘つき」「虚言女」などという言葉を投げかけられる毎日だという。おそらくそんなことをするのは、田中さんや山本さんを攻撃していた人たちと同じなのかもしれない。義母も確かに悪かったとは思うが、調子して拡散に協力する人も同罪なのかもしれない。

夫婦の結婚式で久しぶりに再会した父は元気だった。可愛いお嫁さんも義母の悪意に触れず、幸せな結婚生活を送って欲しいと思う。近々マイクに会いに沖縄へ行く予定だ。美味しい早起きそばを食べて、朝まで飲んで、赤い琉球ガラスのコップを買って帰る。

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