口座から約100万円が消えている。私は夫の克典に問い詰めた。彼は探偵を雇っていると白状した。浮気を疑う私に、彼は最初は否定した。しかし、私はホテルへ出入りする写真を掴んでいた。彼は言い訳を重ねたが、私は彼の車に仕掛けたボイスレコーダーの存在を明かした。盗聴だと怒る彼に、私は訴える覚悟があると言い放った。録音には、彼と女性の楽しげな声が確かに残っていた。
彼は謝罪したが、私は許さなかった。すると彼は、私にも原因があると言い出した。年を取ったからだと。私は反論した。彼は若い女に走ったことを認めた。私は離婚を告げた。彼は世間体や息子のことを理由に、自由な結婚生活の継続を提案したが、私は拒否した。実家に帰ると伝え、息子の陸太郎には彼に聞くよう言った。
陸太郎に浮気のことを伝えると、彼は意外な反応を見せた。父を擁護し、私を「母さんが悪い」と責めた。反抗期の延長のような、辛辣な言葉の数々。私はショックを受けたが、彼の選択を尊重することにした。荷物をまとめて家を出る際、陸太郎は父の側に残ると言った。私は離婚手続きを弁護士に任せると伝え、家を出た。
数日後、克典は新しい女性を家に住まわせていた。離婚も成立していないのに、と私は抗議したが、彼は慰謝料を払うのだから同じだと取り合わなかった。私は陸太郎の学費の支払いを止めると伝えた。彼は驚いたが、私はこれまでの生活費を切り詰めて貯めてきたのは自分だと告げ、財産分与の話を持ち出した。家と土地、預金は半分ずつだと。彼は反論したが、私は家を売って半分をくれれば預金は返すと言い、彼を怒らせた。
その後、克典から家の金を持ち出したと詰め寄られた。私は生活費の口座が空になっていること、新しい女性に財布の管理を任せたらどうかと皮肉を言った。彼は陸太郎の学費を心配したが、私は「あなたが選んだ道でしょう」と突き放した。彼は「悪かった」と謝り、私にもいい人が現れると言った。私はその言葉が空虚に響くことを伝えた。彼は「俺は幸せになってやる」と吐き捨てた。
しばらくして、陸太郎から連絡があった。新しい女性、野々花が「ママになって嬉しい」と言っていると。彼は彼女とデートすることになり、私に「大学を休めるか」と聞いてきた。私は彼の選択を止めなかった。
数日後、事態は急変した。克典が陸太郎を問い詰めていた。野々花とホテルに行った写真を掴んだという。陸太郎は無実を訴えたが、克典は信じなかった。陸太郎は「父さんより女を取るのか」と問い、克典は「お前のことなんて1ミリも可愛いと思ったことはない」と言い放った。陸太郎は家を追い出され、学費も自分で稼げと言われた。彼は私に電話をかけてきた。泣きそうな声で、「俺を見ててくれたのは母さんだけだった」と。
私は彼に実家へ来るよう伝えた。彼は謝罪した。実は、父の味方をするふりをして、父の本性と野々花の正体を見極めるために家に残っていたのだと。私にひどいことを言ったのは、私を怒らせて家を出させるためだったと。彼は子供の頃から、父が母に感謝の言葉をかけないこと、家事を手伝わないことをおかしいと思っていた。反抗期が長引いたのは、感謝を口にできない自分が嫌で距離を取っていただけだったと。
私は驚きと感動で言葉を失った。彼は野々花との会話を全て録音し、ホテルでは何もしていない証明のために動画も撮っていた。野々花は複数の男性に結婚を匂わせて金を引き出していた。彼女を厳しく叱っていたスナックのママは、実は大事なお客さんを守るために厳しくしていただけで、彼女の素行調査を探偵に依頼していたのはスナックの常連客だった。
私は陸太郎と共に、克典と野々花の関係をすべて把握した。克典が謝罪し、再婚を申し込んできたが、私は離婚届をすでに提出済みだと伝えた。彼は「1億のダイヤをもらってもあなたとは一緒になりません」と私は言い放った。
その後、私は浮気の証拠をもとに克典と野々花の両方に慰謝料を請求し、支払わせた。財産分与では、土地の価値が高騰していたため、預金だけでは清算できず、結局家と土地も売却することになり、克典は住む場所まで失った。克典は野々花に使った金を返せという裁判を起こしたが、当然取り返せるはずもなく、弁護士費用を無駄にしただけだった。野々花には他にも複数の男性がいて、全員に結婚を匂わせて生活費を引き出していた。被害に遭った男性たちがつながり、彼女の手口は業界内で噂になった。彼女は新しい相手を探して店を渡り歩いているが、陸太郎曰く「言うほど美人ではなかった」らしく、新しい相手探しにも苦戦しているという。
私は今、実家で父と母、そして息子の陸太郎と4人で新しい暮らしを始めている。財産分与のおかげで生活費の心配もなく、陸太郎と笑い合える毎日が戻ってきた。夫の存在は私にとって重荷だったのだろう。今は驚くほど心が軽い。不器用で反抗的だった陸太郎は、別人のように素直で、感謝をまっすぐ伝えてくれる立派な青年になった。この自慢の息子が社会に育つまで、あと少し。貴重な時間を大切に、一日一日を過ごしていこうと思う。


