「うちの駐車場に、紫のファー敷きでぬいぐるみ山盛りの車が無断で止まってた。ママ友の義姉の車だ。3日間張り紙しても無視されて、ようやく電話で話をつけたと思ったら、『身内なんだから私が優先されて当然じゃないの?』って開き直られた。しかも半年後、今度は旅行中にまた止められて、車の上には毎朝ゴミが置かれるようになった。ママ友は『もう限界』って泣きそうだった。私はある決心をして、彼女の義姉に電話をかけ…

「うちの駐車場に、紫のファー敷きでぬいぐるみ山盛りの車が無断で止まってた。ママ友の義姉の車だ。3日間張り紙しても無視されて、ようやく電話で話をつけたと思ったら、『身内なんだから私が優先されて当然じゃないの?』って開き直られた。しかも半年後、今度は旅行中にまた止められて、車の上には毎朝ゴミが置かれるようになった。ママ友は『もう限界』って泣きそうだった。私はある決心をして、彼女の義姉に電話をかけ...

私の駐車場に、派手な紫色の車が止まっている。ダッシュボードにはファーが敷かれ、後部座席にはUFOキャッチャーのぬいぐるみが山のように積まれている。あの車は、私のママ友の義姉のものだ。

ママ友のしおりさんに駐車場を貸したのはいいが、契約も済ませてお金も払ってもらっているのに、その車が止められないのはおかしい。2日は我慢したが、3日目にさすがに連絡を入れた。

「本当にごめん。2日は我慢したんだけど、さすがに3日目はあんまりだと思って」

「え、そんなに止められてたの?」

張り紙をして移動を促したが、その紙は破り捨てられていた。

「犯人は分かってるし、すぐに移動させるから待って」

「お願いね。止められなかった分は保証してもらうから」

「コインパーキング使ってたから助かった。本当ごめん。すぐ動かすから」

しおりさんは何度も謝ってくれた。私は「うちは止められたらそれでいいから、あんまり気にしないで」と返した。すると数秒後、しおりさんから電話がかかってきた。

「お姉さん、うちの駐車場に車止めてますよね」

「はあ?何を根拠に言ってるのよ」

「証拠もあります。契約したお客さんから駐車してる車の写真ももらいました」

「止めてないけど」

「紫、ファー、ぬいぐるみ。この令和の時代にその特徴をモロに持つ車はお姉さんしか乗ってません」

「友達にもいるわ」

「それは類が友を呼んでいるからです。車をどかしてください」

「無理よ」

「順番って分かりますか?」

「馬鹿にすんじゃないわよ。私のママ友が先に契約をしてお金も払ってます。でもお姉さんはただで無断で止めてますよね」

「それが何?身内なんだから私が優先されて当然じゃないの?」

「だったら先に契約したいと言えばよかったじゃないですか」

「身内が経営してる駐車場でラッキーって思って、たまたまいたから止めたことの何が悪いの?」

話が通じない。私は「お兄さんに言いますよ」と告げた。

「どうぞ。あの人ならもういないわ」

「なんでですか?離婚したの?」

「え、聞いてないんですけど」

「聞かれてないし、別れたのは3日前だし。マンションも追い出されちゃって、車止めるところもなくなっちゃったからお願い」

「事情は分かりましたけど無理です。私のママ友だって困ってるんですよ」

「身内優先とでも言っといて」

「いい加減にしてください」

「実家も止めるスペースないし無理なの」

「警察呼んでいいですか?」

「呼べば。私、前なんかの動画で見たんだけど、民事不介入ってやつで取り合わないらしいよ」

「民事不介入です。どう変換したらそんな意味不明な単語になるんですか?」

「うるさいわね。中卒だからってすぐそうやって見下す」

「誰もそんな話してないじゃないですか。私は車を移動してくださいと頼んでるだけです」

「だから無理だって言ってんでしょ」

「レッカーします。レッカー代も請求しますからね」

「は、やめてよ」

「期限は今日です。それ以上は待ちません」

「分かったわよ。移動すりゃいいんでしょ」

数時間後、しおりさんから連絡が来た。

「ごめんね。迷惑かけたけど、今移動させるから」

「ありがとう。もしかしてあれってお姉さん?」

「うん。そうなの?大変だね。というか厄介極まりないよ。幼稚園の運動会でもすごく目立ってたもんね」

「うん。あれ、何ていう服だっけ?」

「特攻服ね」

「そうそう。すごい刺繍だった。私たち呼んでないのに来たんだよね。義夫婦は子供いないから運動会とか見たいのかなとは思ったけど、自分が目立ちたかっただけっていうのがあからさまだった。応援もすごかった」

「あれ応援じゃないよね。一緒に走ってたじゃん」

「他人のふりしたくてもうちの子の名前呼ぶしさ、本当地獄だったよ。話聞くくらいしかできないけど、またランチ行こう」

「ありがとう。本当いいママ友持ってよかった。じゃ、駐車場止めさせてもらうね」

「うん。迷惑おかけしました」

半年後、しおりさんから連絡が来た。

「あのね、旅行から帰ってきたんだけど」

「あ、軽井沢行くって言ってたね。どうだった?」

「それは楽しかったんだけどね。また駐車場が埋まってて。1週間開けてたから不在だと思われちゃったのかも。だからってありえないでしょ。なんであの人こんなに常識が通じないんだろう」

「ちょっと家からは遠くなるけど、別の駐車場探してみるよ」

「いや、ちょっと待って。しおりさんがそんなことする必要ない。これは貸した私の責任だから」

「でも何度もこういうことが続くと困るのだよね。実は今回だけじゃないんだ」

「え、今までに何度かあって、どうして言ってくれなかったの?」

「私が責めるのも違うんだけど、花さんを困らせたくなかったから。お姉さんとはいえ身内でしょ。摩擦は少ない方がいいかなと思ってさ」

「気使わせちゃってごめん。何か具体的な解決策がない限りはおそらく今後も続くと思う。私が言うのも失礼だけど、口で言って通じる人じゃないし」

「あったの?」

「夫が駐車場でずっと待ってて、戻ってきたところを捕まえてくれたんだけど、なんていうかすごくて」

「何?教えてほしい」

「簡単に言うと脅しって言うのかな。例えば『仲間呼んでくるぞ』とか『家族どうなってもいいのか』とか。最低すぎる」

「だから怖くて私に言えなかったの?」

「それもあるかな?言えば絶対にお姉さんの耳に入るし、何するか分からないから。ごめん」

「夫も駐車場探してくれてるんだけど、ここら辺人気で本当に空きがなくてさ」

「そうだよね。とにかくすぐに今からレッカー呼ぶから、数時間だけ待ってくれるかな」

「そんなことしていいの?」

「あと半年分の保証もさせてもらう。旦那さんにもちゃんとお詫びしに行く」

「そこまでしなくていいよ」

「いや、だめだよ。ルールを守らない義姉が悪いし。そこは絶対にちゃんとするから」

「うん。分かった。じゃあお言葉に甘えるね。本当にすみません」

「私は花さんのことは大好きなんだ。それだけは分かって」

「私もだよ。だからこんなことでギクシャクしたくない」

「大丈夫だよ。花さんには怒ってないから」

「そう言ってくれると救われるよ。旅行で疲れてるところ本当にごめんね」

数分後、私はしおりさんの義姉に電話をかけた。

「おい、非常識すぎるだろ」

「はあ?お前は誰だ」

「意味不明なんだけど」

「お前には脳がないのか。記憶する機能がない。お前と同じだろうがよ」

「あんたね、めちゃくちゃ言うじゃない」

「駐車場使うなって言ったよな」

「別に開いてる時に借りただけじゃん。半年間ただで止めさせてくれてサンキュー。得した」

「35歳にもなってどれだけ非常識なんだよ。ゴミ以下だな、てめえは」

「あんた誰に向かって口聞いてるか分かってんの?」

「さっき言ったよな。非常識すぎるババアだよ」

「その言い方やめなさい」

「あんなクソダサい車捨ててしまえ」

「ひどい。あれは私の宝物なんだから」

「だったら大事にしろよ。もうすぐ劣化してスクラップ工場行きだけどな」

「は?駐車場に看板があんだろ。目玉ついてんのかよ」

「そんなもの見ないし」

「レッカー代と違約金3万円ってしっかり明記してあるからな」

「たかが身内から金取るの?」

「身内だったら何でもやっていいと思うなよ。こっちにも我慢の限度ってもんがあるんだよ」

「あんた、その口調何?もしかしてあんたも元ヤンだったら」

「だったらなんだよ」

「どこに所属してたの?」

「姉がな」

「は?あの伝説の?」

「らしいな。私は5代目早朝だけど」

「すごい。あんたは?」

「私は別にどっかに所属してたとかはなくて」

「チョロいのかよ」

「憧れてはいたんだけど、入る勇気も根性もなくて。でも本物に会ったのは初めて。早く教えてよ。だったらもっと仲良くなれたのに」

「黙れ」

「マジでかっこいい」

「今すぐ車動かせ」

「はい。すぐにやります」

「2度と止めんなよ」

「分かりました」

数分後、しおりさんに連絡した。

「助かった。事前にお姉さんの情報聞いておいてよかった」

「そうだった。姉が名前出した瞬間に態度変わったよ」

「だろ?姉貴のヤンキーへの憧れは異常だからな。所属してないのに特攻服作るとか相当だよね。俺の貯金箱から金盗んでまで作ったからな。あの恨みは今でも忘れてない」

「ずっとあんな感じだったの?」

「中学までは普通に学校行って勉強もまあまあできてたんだ。でも彼氏に振られてから急におかしくなった」

「ええ、ここら辺って結構いい学校も多いし、教育熱心な家庭も多いじゃん」

「そうだね。その中で1人だけ金髪ロングスカートで昭和のレディースやってたから相当浮いてたよ。憧れをこじらせたんだね」

「その時に雑誌で見たのが姉が憧れてたレディース。すっごいはまってたな。初代早朝の霊下さんって人の切り抜きを壁に張ってたぐらいだ」

「そうなんだ。まあ、花には無縁の世界だよな」

「でも姉の5代目早朝って設定にしたら態度変わったからナイス情報だったわ。ヤンキーっぽくできてたかは謎だけど、役に立ててよかった」

「亡くなったから引き継いだ駐車場経営だからさ、ちゃんとやりたいんだ」

「うん。父は駐車場のゴミを拾ったりしてたの。私そこまでできなくて。だからお姉さんが止めてるのも気づけなかった」

「今後は俺も手伝うよ。何より俺の姉が迷惑かけてごめんな」

「うん。ありがとう。お姉さんとあなたは別の人間だから。そこは申し訳なく思う必要ないよ」

「一応父さんと母さんにも言っとくけど、姉貴の話すると不機嫌になるからさ。実家からも縁を切られてるらしくって」

「どうしてそんなことになってるの?」

「実家の庭に自分の車止めようとして、父さんの車と衝突してぶち壊したんだって」

「お父さん毎日磨くほど大事にしてたのに。かわいそう」

「自分さえよければ人の迷惑を考えないんだよな」

「離婚して家も失くして、今どこにいるんだろう」

「さあ、友達も少ないしよくわかんない」

「かわいそうな人ではあるけど、いい年なんだしそろそろ気づかないとだめだよね。本当に我が家の恥なんだ。これで大人しくなってくれるといいんだけど」

1週間後、しおりさんから連絡が来た。

「花さん、何度もごめんなさい。やっぱり駐車場解約させてもらうね」

「え、どうして?もう紫の車は止まってないでしょ」

「うーん。そうなんだけど、毎日ボンネットにゴミが置いてあるみたいなの」

「は?風で飛んできたのかなと思ったんだけど、他の車にはないし、明らかにうちだけみたいで」

「嘘」

「夫が毎朝仕事行く時にゴミを捨てなきゃいけなくて、もう限界だって」

「申し訳なさすぎる。お姉さんとは話がついたって聞いてたし、2、3日は平穏だったから安心してたんだけど、2日くらい前からゴミが置かれるようになっててね」

「次の駐車場はもう見つかったの?」

「うん。少し金額も上がるし距離も遠くなるけど、夫が見つけてきてくれた」

「そこにかかる初期費用と半年分の料金は私が出す」

「いや、大丈夫だって。どっちにしろ発生する料金なんだし」

「これだけは飲んでもらわないと私の気が済まない。トラブルが長引いたのも義姉の暴走を止められなかったのも全て私の責任だから」

「そんなのいいのに。本当にごめんなさい。そしてこんなに迷惑かけたのにも関わらず、それでも仲良くしてくれてありがとう」

「花さんがやったわけじゃないでしょ。しおりさんのそういうところにいつも救われてる。幼稚園で1人で浮いてた私に最初に声かけてくれたのもしおりさんだった」

「こっちこそいつもよくしてくれて嬉しいよ。改めてお詫びさせてください。一旦あの元ヤン、どうにかしてくるわ」

「無理しないでね」

数分後、私はしおりさんの義姉に電話をかけた。

「おい、なんだよ」

「約束はどうなったんだよ」

「何がだよ」

「嫌がらせでゴミ置いただろ」

「知らねえよ」

「防犯カメラ見れば分かるからな。てかお前が嘘つくからいけないんだろ」

「は?何が姉の5代目だよ。昔の雑誌引っ張り出してみたら、5代目早朝はお前に似ても似つかない人だったんだよ」

「へ、弟に聞いたんだろう。すみません」

「そういえば大人しくなるとでも言われたか?」

「はい、言われました」

「姉の名誉を傷つけた上に、しおりさんの名を語るなんて、やっていいことと悪いことがあんだろ」

「それは悪かったと思ってます。でもそうでもしないとお姉さんは私の話なんて聞こうともしないじゃないですか」

「だって仕方ないだろう。親や弟からもずっと煙たがられて、やっと結婚した旦那にも『昭和の化石みたいで痛々しい』って捨てられて」

「それだけで離婚になったんですか?」

「いや、旦那の髪を寝てる間に金髪にしようとして、ぶち切れさせちゃったの」

「何やってるんですか?お兄さんはサラリーマンですよ」

「だってその方がかっこいいと思ったんだもん」

「自分を貫くのはいいことだと思います。好きなものも自由です。でも人様に迷惑だけはかけちゃいけないんじゃないですか」

「私だってどうしてこうなったのかわかんないの」

「それは言い訳です。ご両親も常識的な方ですし、同じ親を持つ夫も至って普通の人間です」

「私ね、社畜生活してるの。行くところも頼れる人もいないのよ」

「大変そうですね」

「え。そこは良かったらうちに来ませんかっていうところじゃない」

「それは無理です」

「なんで?」

「今の話だって道場破りしようとしてるの見え見えだし。うちの子の髪の毛まで染めちゃいそうだし」

「そんなことしない。どうして信じてくれないの?」

「人の信頼は積み重ねだからです。お姉さんは人の信頼を裏切り続けたという実績しかないんですよ」

「うるさい。このまま駐車場は借りるから」

「私のママ友は新しい駐車場を借りるはめになりました。人に損害を与えて責任を追わずに済むと思わないでくださいね」

「黙れ。嘘つきケチケチ女」

翌日、しおりさんから連絡が来た。

「半年分の使用料と新しい駐車場の初期費用、あと迷惑料として少しだけ今振り込みました」

「そんな迷惑料なんていいのに。実際に止めてた期間もあったんだから、全部じゃなくて良かったんだよ」

「うん。これだけは譲れない。受け取ってください」

「わかった。ありがたくいただきます。ありがとう」

「本当に義姉は話が通じないのよ。あれ以上止めてたら何するかわからないし。悪いけど新しい場所に移ってよかったかも」

「そうだね。今のところちゃんと駐車できてるし。それが普通なんだけどね」

「私が姉という集団の5代目早朝だって嘘ついたのがバレちゃってさ。もうマジ切れされて大変だったわ」

「なんか本当はしおりって人みたいで、私とは似ても似つかないんだって。適当な嘘つくもんじゃないね」

「そうだね。そういえばしおりさんと同じ名前だわ」

「うん。まさかの同一人物だったりして」

「そのままだったりするかもね」

「は、マジ?若気の至りだったの」

「しかもなんか流れで霊下さんの話もしたんだけど」

「すごい」

「すごくないって。完全に私の黒歴史だから内緒だよ。夫も知らないの?」

「もちろん言わないよ。ああ、でも1つだけ手伝ってほしいことがある」

「何?」

「義姉に会わせてやりたい」

「どうするの?」

「お家にお邪魔していいかな?」

「いいけど」

「ありがとう」

翌日、私はしおりさんの家を訪ねた。義姉が玄関に出てきた。

「お前が花ってやつか」

「誰だ、てめえ」

「姉の5代目早朝のしおりだ」

「はあ。いやいや、ありえない。またうちのアホ義姉が成りすましてんだろ」

「アイコン見てみろ。若干老けたけど、あの頃の面影はあるだろ」

「確かにしおさんに似てると言えば似てるけど」

「ほら、これが証拠だ。当時の写真。これ、右は霊下さん」

「そう。引退後にちょくちょく様子見に来てくれてた。この写真は私しか持ってない」

「すっげえ超レアじゃん。これで分かったか?」

「はい。私の大事な友達が花さんだ」

「え、うちのケチケチ義姉とお知り合いなんですか?」

「そうだよ。でもこの写真って18年前で、義姉まだ」

「私は36歳。年は離れてるけど仲良くさせてもらってる」

「私の2つ上。そうですね。当時しおさんは17歳で私が中学生でしたから」

「彼女の言うことを真面目に聞いてほしい」

「何のことでしょうか?」

「知らばっくれてんじゃねえよ。私もある程度は花さんから話は聞いた。どうひいき目に見てもあんたが間違ってる。そんなうちらだってあの頃は人様にいっぱい迷惑かけたよ。爆音鳴らして道路走って夜中まで騒いでさ。あの時代は伝説であり伝統でした。ただ後悔はしてないけど反省はしてるんだ」

「私の青春なんです」

「霊下さんに合わせてやろうか」

「本当ですか?」

「花さんの許しを得たらな。霊下さんは今独立して会社をやってる。なんなら働かせてもらえるよう頼んでやってもいい」

「マジですか?行きたいです。会いたいです」

「じゃあまずはてめえのケツを吹いてからだ」

「吹きます」

数分後、義姉は興奮していた。

「すごい、すごい、すごい。しおりさんから連絡来た。あんた知り合いなの?マジすげえじゃん」

「落ち着いてください」

「とにかくあんたの言うことを全部聞く」

「助かります。では損害賠償送りますね」

「え、お姉さんが邪魔した半年分の駐車場代と、ママ友が新しく借りた駐車場に関する初期費用、ゴミを置いたことでついた車の傷の修理代。それと諸々の迷惑料で100万円お願いします」

「はい」

「先ほどおっしゃった言うことを聞くというのと、損害賠償の方は、義実家のグループラインの方へ送っておきました」

「なんで?」

「義両親や夫にも周知してほしいので」

「高すぎるでしょう。駐車場だけだったら10数万で済みましたよ。でも修理費用が結構かかったみたいで。何の物をガンガン投げつけて車の窓にも傷ついてるし、やってることめちゃくちゃすぎますって」

「無理。払わない」

「しおりさんに言っていいですか?いや、霊下さんとも繋いでもらえるんですよね」

「そうなんだけど」

「憧れの人に根性を叩き直してもらって生まれ変わりましょう。このままじゃダメだって自分が1番分かってますよね」

「うん。霊下さんと一緒なら頑張れるかも」

「よかったです。では賠償の方はしおりさんを経由して霊下さんの方にも送らせていただきます」

「なんでそんなことすんの?」

「給与天引きにしてもらおうかと思って」

「このどケチ義姉」

「じゃあお支払いお待ちしてます」

1ヶ月後、しおりさんに聞いた。

「しおりさん、うちの義姉どうなったか知ってる?」

「すでに2度逃げ出そうとしたらしいよ。霊下さんって大したんだね」

「そうなの。当時の彼と起業して、今じゃ従業員50人を抱える建築会社なんだって。親と旦那さんの世話だけかじってきたような義姉が肉体労働なんてできるのか心配だったけど、案の定逃亡を図ったか」

「でも寮はあるし、車を止める駐車場もついてるんだよ。贅沢言ってらんないよね。本当ありがたい話だよ。今日早速初回の入金があったし。霊下様、頼りになるわ」

「昔からかわいがりには厳しい人だったからね」

「しおりさんには迷惑かけたのに、最後は助けてもらっちゃったな。私の過去が今更役立つなんて思いもしなかったけど、久しぶりに文字だけとはいえ言いたいこと言えてすっきりした。今後も敵に回さないようにします」

「やめてってば。駐車場もまた貸してもらって助かってるの。やっぱり徒歩5分より1分の方が便利だし。今後は心を大きく持って止めちゃってください」

「ありがとう。あ、霊下さんからLINE来た」

「なんて?」

「『あいつまた逃げた。締め上げる』だって」

「ざまあみろ」

その後、霊下さんの会社で働き始めた義姉は、約1年ほどかけて損害賠償を完済した。ただし完済後もやめることはできなかった。霊下さんが調べたところ、義姉には他にも複数の借金があったことが判明したからだ。離婚後に頼った消費者金融や友人への借金の総額は300万円を超えていたそうだ。ここで働けば確実に返せると霊下さんに諭された義姉は、結局1年以上経った今でも現場仕事を続けているそうだ。

あの紫の車は、車検代も払えないため、霊下さんの駐車場でナンバーを外されたまま放置され、最終的に廃車になったそうだ。義両親には借金の全容が知られ、実家への出入りも禁じられている。霊下さんを筆頭に厳しい上下関係の世界にいるせいか、少しずつ人間らしくなってきているとか。会う機会があるかどうか分かりませんが、何よりです。霊下さん曰く「体を動かすと余計なことを考える暇がなくなるからね」とのことだった。

私はといえば、しおりさんと変わらず仲良くさせてもらっている。亡き父の駐車場はおかげさまで経営が続いている。掃除と管理を怠らず、大事に守っていきます。

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