義母に呼び出されたのは、義妹の内定祝いの高級寿司店だった。 テーブルには家族の分の寿司が並び、私の前にだけ、小さなガリの皿が置かれた。 「お母さん、どうして私だけガリなんですか?」と聞けば、彼女は涼しい顔でこう言った。 「部害者のあんたには寿司は食べさせないから」と。 結婚して五年、ようやく家族になれたと信じていたのは、私だけだったらしい。 ​その場で義母は言い放ったのだ。…

義母に呼び出されたのは、義妹の内定祝いの高級寿司店だった。 テーブルには家族の分の寿司が並び、私の前にだけ、小さなガリの皿が置かれた。 「お母さん、どうして私だけガリなんですか?」と聞けば、彼女は涼しい顔でこう言った。 「部害者のあんたには寿司は食べさせないから」と。 結婚して五年、ようやく家族になれたと信じていたのは、私だけだったらしい。 ​その場で義母は言い放ったのだ。...

「お母さん、なんでこんな嫌がらせをするんですか?」

私はスマホの画面を見つめながら、震える指でそのメッセージを送った。 さっきまで私たちは家族で高級寿司店にいたはずだった。 なのに、私の目の前にはお茶とガリの小皿だけが置かれている。

「あらあら、何よ。席を外したと思ったらLINEなんかでしてきて。言いたいことがあるなら面と向かって言いなさい」

返信はすぐに来た。 冷たい言葉が画面に並ぶ。

確かに、こんな話は直接すべきなのかもしれない。 でも、彼女が私に直接話すことを拒んだから、私はLINEを選んだのだ。

「そんなことしたら店に迷惑がかかるでしょう。だからLINEをさせてもらってるんです」

「そうなの? それで何が言いたいのよ? 」

「どうして私にはガリしか食べさせてくれないんですか? 」

一呼吸置いて、私は核心を突いた。 今日は義妹の美重が内定を獲得したお祝いの席だった。 家族全員で高級なお寿司を食べに来たのに、私の前に出されたのはガリだけ。

義母は何も言わずに、私だけを除外したのだ。

「何?

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もしかして寿司を食べたいの? 」

「せっかく高級なお寿司屋さんに来たんですから食べたいですよ。でもそれよりもこの周知の方が気になります」

「そもそも今日は三重の内定祝だっていうのは分かってる? 」

「もちろんそれは理解してますし、私もお祝いしたいという気持ちで来させてもらいました」

「私はこういう会をとても大切にしているのよ。美重は有名企業から内定を取ることができたんだからね。しっかりとお祝いをしたいわ」

「だからこそいいお店で家族水らずで過ごしたいと思ってるのよ」

「今日は三重の内定祝みで寿司を食べましょう」

私たちの会話は、永遠に平行線を辿るかのようだった。

私が何を言っても、義母は私を家族として扱おうとはしなかった。

私にとって、この食事会は美重を祝福する大切な場だった。 それなのに、義母にとって私は最初から邪魔者でしかなかったのだ。

「その会に来たのは鉄郎じゃなくあんただったのね」

「鉄郎はすぐにこっちに来ますよ。仕事で少し遅くなるってお伝えをしたはずです」

「だとしても部害者にいられるのはすごく嫌なのよ」

「へのお祝いに過去つけて高級なお寿司を食べようなんていじ汚いにも程があるわ」

「そんな気持ちはないですよ。お寿司を楽しみに来ましたけど、それよりもみえちゃんのお祝いをしたかったですから」

「来年の春からちゃんと同じ会社で働けるなんてとても嬉しいですからね」

「随分と自慢げに言ってるけど。あんたは初詮職組でしょ。新卒入者の重と一緒にしないで」

「いや、どちらが偉いとかそんなのはないですよ」

「どんな手を使って転職したか知らないけど、これ以上うちででかい顔はさせませんからね」

「そんなことは一切してませんよ」

「とにかく部害者のあんたには寿司は食べさせないから」

義母の言葉は、容赦なく私を切り裂いた。 部害者という言葉が、何度も何度も私に降り注ぐ。

私はこの家に、家族になるために嫁いできたのに。

「私のことを部害者呼ばわりするのはやめてください」

「私の中であんたは部害者なのよ。それを受け入れなさい」

「どうしてですか? お母さんおかしいですよ。結婚した最初の頃は仲良くやれてたじゃないですか」

「うるさい。最初からあんたのことなんて好きでも何でもなかったのよ」

「そんな席に戻るのは好きにしていいけどあなたにはガリだけね」

「他人に寿司はなしよ」

「そんなのひどいです」

「私はみんなと家族になれてとても嬉しかったのに」

「えちゃんにだって先輩として色々と教えたいと思ってたんですよ」

「これは約束しなさい」

「えには絶対に近づかないこと」

「あんたが親族だってバレたら重のキャリアに傷がつきかねないわ」

義母の要求は、私の存在そのものを否定するものだった。 美重に近づくな?

私は彼女の兄の妻だというのに? 「私のことを何だと思ってるんですか? 」

「転職組なんてそういう立場なのよ」

「不害者のお母さんがうちの会社の何を知ってるんですか? 」

「黙りなさい」

「とにかく約束よ」

その時、夫の鉄郎からLINEが届いた。

「ごめん。もう少し仕事で遅れそうなんだ」

「そうなんだ。大変だね」

「ちょっとミスが発覚したから、その対応をみんなでしてるんだよ。終わったらすぐにそっちに行くからって母さんたちに言っておいてくれるか」

「私じゃなくてお母さんに直接LINEした方がいいと思うよ」

「いや、なんかうるさく言ってきそうじゃん」

「あの人三重が採用されたことにめちゃくちゃ浮かれてたからさ」

「遅れたら許さないとまで俺に言ってきたんだぜ」

「こんなんで怒られるの嫌だしかナが言っておいてくれよ」

私はため息をついた。 やはり義母は、夫にもプレッシャーをかけていたのだ。

「それは分かるけど、私の話は聞いてくれないと思う」

「なんでなんかあったのか?

「私のことを部害者ってお母さんが呼ぶの」

「部害者? 」

「そう」

「それで私にはガリだけ食べさせてきて」

「なんでそんな嫌がらせを母さんがするんだ? なんか喧嘩とかした? 」

「うん。してないよ」

「別々に暮らしてるからそんなに接する機会もないしね」

「確かにこの間正月に会った時は冷たくなったなって思ってたけど、どうしてそんな風にされたのか理由は全くわからないわ」

「でもかナと三重は同じ会社で務めるんだから仲良くしておいた方がいいに決まってるだろう。会社でも絶対に口聞くなって」

「あの人は本当によくわからないな」

「前から思い込みが激しい人だとは思ってたけど、何か原因はあるはずよね」

「見えに聞いてみたらどう?

そうしたら分かるんじゃない? 」

「そうね」

「聞いてみようと思う」

「父さんや美重は何も言わないの? 」

「なんかみんな嫌な感じなんだよね」

「そうか」

「じゃあなるべく早く仕事を切り上げて俺もそっちに合流するから辛い思いさせてごめんな」

「お願いね」

私は美重にLINEを送った。

「えちゃん、お母さんが私に対してすごく怒ってるみたいなの」

「え、そうですか? そんなの分かりませんけど」

「嘘よ」

「ずっと私だけガリしか食べさせてもらってないんだから」

「確かにそうですね」

「どうして怒ってるのかわかる?

「いや、さすがにそれは分かりませんよ」

「お姉さんが何か嫌なことをしたんじゃないですか? 」

「何の覚えもないわ」

「いきなり部害者だって言われて驚いてるのよ」

「でも部害者は部害者じゃないですか? 別に何も変なことは言ってませんよね」

美重の返信は、私の心を凍りつかせた。 まさか、彼女まで私を部害者だと思っていたとは。

「私は家族でありたいと思ってるけど」

「それはさすがにキモすぎますって」

「兄と結婚したからって家族に入れるなんてそんなの意味わからないですよ」

「いくらお姉さんに家族がないからって」

「そんな甘えられても困ります」

「親を早くになくしてることをそんな風に言うのはやめて」

「今でも辛い気持ちがあるのよ」

「私は事実を言ってるだけですって」

私は親を早くに亡くしていて、子どもの頃から家族に飢えていたところがある。

鉄郎と出会って、やっと本当の家族が持てると思ったのに。

「家族みたいにすり寄られてもこっちは困ります」

「それって結局自分の利益のためにやってるんでしょ? 」

「利益?

どういうこと? 」

「私が新卒入社をしてエリートカドを突っ走しるから、それのおこぼれでいい思いをしたいってことよね」

「仕事を頑張って出世をしようというのはとても素晴らしい心きだと思うわ」

「でも出世するのが確定してるみたいに言うのは間違ってると思う」

「そりゃ転職組のあなたはそうでしょうけど、新卒入者の私はエリーって決まってるのよ」

「お母さんに変なことを吹き込んだのはあなたね」

「変なことじゃないのよ」

「ネットに実際そうやって書かれてあったんだから」

「そんなのを信じて」

「でもうちって大手なのにあなたのような中途の人間を採用してるなんておかしいわ」

「全員新卒のみにするべきだと思う」

「上の人の考えだからあなたに同行する権限はないと思うわよ」

「だったら私が偉くなったら転職組は全員首にする」

「やれるもんならやってみればいいわ」

「適当に言ってるって思ってる」

「もちろん」

「残念だけど実際にもう動いてるんだから」

「どういうこと? 」

「同じ大学の仲間とか同学年の知り合いたちをたくさん採用してもらうようにするの」

「そしたら私たちは1万岩になって動くことができるわ」

「ずれ私たちは大きな派閥を作って会社を動かすのよ」

「あなたの仲間が多く採用される見込みはあるの? 」

「大丈夫よ」

「後期試験がまだ残ってるから」

「まだ就活をしてる子たちには私が受けた採用試験の内容をこと細かに伝えてある」

「なんですって?

「そうしたら傾向と対策を狙えるでしょ」

「他の奴らよりは有利に試験を進められるはずだわ」

「あなたなんてことを」

「そうなったら真っ先にあんたのことを首にしてやる」

「他人のくせに家族らされてうざかったのよ」

美重の本性は、私が想像していたものとは全く違っていた。

彼女は最初から、私のことを他人として見下し、いつかは排除しようと考えていたのだ。

「そんなことして許されるわけないでしょ」

「は、首になるのが嫌なら私たちの前から消えてよね」

「あんたに家族らされるのマジでうざかったんだから」

私は振り返って義母の元へ戻った。

すると義母は、私が席に戻るなりこう言い放った。

「ちょっとあんたいつまでここにいるつもり? ガリも十分食べ終えたでしょう」

「だったらさっさと帰りなさいよ」

「麺と向かって切れられる前に私の忠告を聞きなさい」

「お母さん、今はそれどころじゃありません」

「みえちゃんがとんでもないことをやってました」

「今すぐ手を打たないとまずいです」

「はあ」

「わけのわからないことを言うんじゃない」

「そうやって私たちに取り入ろうとしても無理よ」

「あんたの話なんて聞くだけ時間の無駄」

「もう少ししたら鉄郎も来るんでしょ」

「だったらあんたは出ていきなさい」

「これからは大事な家族の時間になるから」

「そんなに私が邪魔ですか? 」

「うえう」

「そうね」

「本当に鬱陶しい存在だわ」

「哲郎もどうしてこんな人が良かったのかしら」

「性格最悪のどうしようもない女なのにね」

「どうしてそんな風に思ったのか説明をしてください」

「悪いところがあったら謝りますから」

「そんなことしても意味ないわ」

「あんたの存在自体が私のストレスだから」

「なんなら哲郎とも別れて欲しいくらいよ」

「私たちの関係まで口出しをされるんですか? 私は哲郎の親よ」

「そんなの当たり前じゃない」

「わかりました」

「もういいです」

「それじゃあさっさと私たちの目の前から消えて」

「あんたがいなくなってからが内定祝の本番だから」

義母の言葉で、私は何かを悟った。

​この家族は、最初から私を受け入れるつもりなどなかったのだ。

「じゃあえちゃんの内定は取り消しということで」

「お前にできるか?

「確かに私にはできませんよ」

「あんた何を言ってるの? もう気持ち悪いわ」

「いいからさっさとここから出ていって」

「それとえには絶対に関わらないようにしてね」

「わかりましたよ」

一週間後、私の会社に美重から電話がかかってきた。

「ちょっとこれはどういうことよ? なんで私が内定取り消しなんてされないといけないの? 」

「どうしてそんなことを私に聞くの?

私は企画部の人間よ」

「人事に聞くのが普通じゃない? 」

「聞いたけど詳しい内容は言えないとしか帰ってこないの」

「あら、そう」

「それじゃあ自分の胸に聞いてみたら」

「内定取り消化粧されるような覚えはない」

「そんなのあるわけないでしょ」

「やっぱり何の罪悪感もなかったんだね」

「どういうこと? 」

「あなたが内定取り消されたのは試験情報の留出をしたからよ」

「え? あれってダメなことだったの?

「ダメに決まってるでしょう」

「試験情報は公害しないってのは基本ルールよ」

「採用試験を受ける前にその説明はされているって人事の人は話していたわ」

「てことはこれを告げ口したのはあんたね」

「そうね」

「なんでこんなことをするのよ」

電話越しの美重の声は、怒りに震えていた。

「私のことを貶しめるような真似していいと思ってるの」

「だって不正は見逃しておけないわ」

「黙れ」

「家族だったらかおうとかするものよ」

「私たちは家族じゃないでしょ」

「赤の他人でしょ」

「いや、それはそれなら私は会社の利益を守る方を選ぶわ」

「だって会社の人たちは仲間だもの」

「赤の他人と仲間ならどっちを守るかは聞かなくても分かるわよね」

「守るってそんな大げさな」

「あなたのやったことで試験が平等に行われない可能性があるの」

「その結果、本来合格するはずだった優秀な人材を我が社が取れない可能性がある」

「これは会社にとって大きな損失よ」

「それを防ぐために人事部の人に全てを伝えたわ」

「そのおかげで採用試験の内容を大きく変えることになった」

「本当に多くの人に迷惑をかけたのよ」

「確かに試験の内容が全然違ったってクレームを言われたわ」

「そもそも不正方法で採用を勝ち取ろうなんて人間はうちの会社には不要よ」

「どの口が言ってるのよ」

「何があんたみたいなしょうもない中小企業の人間がどうして大手に転職できるのよ」

「あんたこそ不正なやり方をしたんでしょう」

「そんなことするわけないでしょう」

「どうだかね」

「確実に言えるのはあなたのやったことは許されることじゃないってこと」

「だからあなたは内定が取り消されたのよ」

「これ以上のクレームは受け付けられないからさっさと諦めて次の就職先を見つけたら」

「今募集をしてるところなんて全部しょうもない企業」

「大手はどこも採用は終わってるんだから」

「だとしてもううちは諦めるしかないからね」

「本当にあんたは最低のことしかしないわね」

「それ自分に向けた発言よね」

三十分後、今度は夫の鉄郎のスマホに義母から電話がかかってきた。

」電話の向こうから、義母のヒステリックな声が聞こえてくる。

「哲郎。あんたの嫁がとんでもないことをしてくれたわ」

「何がだよ」

「美重が泣いて取り消しをされたのよ」

「それもこれも全てあんたの嫁がやったことなの」

「俺だって詳しい話は聞いてるよ」

「悪いのは全部見えだから」

「カナを攻めるのはお角違いもいいところだよ」

「あんたまさか嫁の味方をするつもりなの? 」

「今回の件はどう考えてもそうだろ」

「重のことを擁護できないって」

「社会人としてあるまじきことをやったんだからな」

「母さんも親なら俺たちに文句言うんじゃなくて見えのことを起こるべきだよ」

「どうしてそんな冷たいことを言うのよ」

「あの女は自分の立場を守るために見えを排除したのよ」

「どういうことだよ」

「えが会社に入ったら家族内で言れなくなるでしょ」

「はあ」

「意味が分からないよ」

「大手に入っていり散らすことができなくなるのよ」

「だからあの女は見えをしめるようなことをくだらない」

「そんなわけないだろ」

「カナはそんなことを考えるようなやじゃない」

「あんたは恥ずかしくないの? 自分よりも嫁が偉い立場になってるのよ」

「屈辱だと思ってないの? 」

「俺はカナのことを誇らしく思ってるよ」

「仕事ぶりが認められて今の会社にヘッドハンティングされたんだ」

「それだけ優秀な人が自分の奥さんだってことが何よりもの自慢だよ」

「ヘッドハンティングされたの?

「そうだよ」

「だから今の会社で働けているんだ」

「なかなか普通に中途作用を受けても難しいよ」

「枠自体もほとんどないって聞いてるしね」

「ちなみに仕事でも今は責任あるポジションを任されるようになったみたい」

「え、新卒入者でもないのに」

「それは見えの思い違いだよ」

「どんな入り方をしても車内では実力のある人が出世をしていくんだ」

「そしてカナにはその実力があるんだよ」

「そうだったの? 」

「それじゃあこれで話は終わりだろう」

「悪いけどもう俺たちに関わらないでくれるか? この連絡先もブロックさせてもらうからな」

「はあ」

「なんでそんなことをするのよ」

「あんたはカナのことを他人呼ばわりしただろう」

「それで内定祝でガリだけしか食わせなかった」

「それが何よ」

「俺はカナの夫だから」

「カナの他人ってことは俺にとっても他人ってことだよ」

「ちょっと待ちなさいよ」

「どうしてそんなことを言うの? 私たちは家族のはずよ」

「俺にとってはカナダって大事な家族だよ」

「その家族を内がし代にするようなやは家族だなんて思わない」

「俺はもうあんたたちと絶縁する」

「そんな」

「考え直してよ」

「私がかナさんに厳しくしていたのはあなたのメンツを潰されたからよ」

「私はあくまであなたのためを思って厳しくしていたの」

「そんなものが嬉しいわけあるか?

もし本当にそう思ってるのならカナに負けないように仕事を頑張れって俺に言えよ」

「なんでカナの足を引っ張るような真似をするんだ」

「その時点であんたは間違ってるんだよ」

「でも絶縁なんて悪いがこれはもう決めたことだから」

「あんたたちとはもう親子でも何でもない」

「2度と俺たちの前に現れないでくれよ」

二週間後、私は美重からLINEを受け取った。

」どうやら彼女は、私からのブロックを解除し、連絡を取ってきたようだ。

「えちゃん久しぶりね」

「何よ? ブロックしてたんじゃないの? 」

「どうしても話しておきたいことがあって解除したの」

「手身近に話をしてくれる? 」

「こっちも色々と忙しいのよ」

「就活はうまくいってるかしら?

「うるさい」

「あんたには関係ないでしょ」

「そうね」

「それじゃあ本題に入りましょう」

「何よ? 」

「あなたのことを名誉を競損んで訴えることにしたから」

「はめよ孫」

「何それ? 」

「あなた私に関しての嘘をSNSを使って拡散したでしょう」

「どういうことよ」

「知らばっくれないで」

「私の知り合いから教えてもらったんだけど、私のことを言ってるアカウントがあったのよ」

「そこには私が中途採用試験に関して体を使って採用を勝ち取ったって書いてあったわ」

「それで今大手で働けてるってね」

「すぐにこのことを会社に報告したら会社が動いてくれて開示請求をしてくれたのよ」

「それであなたのアカウントだってことが分かった」

「だから私を訴えるっていうのね」

「そうよ」

「当たり前でしょ」

「でも私は間違ったことは言ってないわ」

「だってあんたみたいな奴が大手に中途都採用されるなんて変だもの」

「大した大学も言ってないくせに変よ」

「私はヘッドハンティングされたの」

「それが体を使ったってことでしょ? 」

「違うわよ」

「私はとある会社とのコンペで企画を提出したの」

「それを今の会社の人が高く評価してくれてうちで働かないかって言ってくれたのよ」

「そんなの私は知らないわ」

「知らないから嘘をついてもいいって」

「あなたって本当に子供みたいな性格をしているわね」

「そうやって言われると私が今までやってきたことを全て否定されたようで本当に気分が悪いの」

「自分がやれることをやった結果今があるのよ」

「ずるいことしか思いつかないようなあなたにはこの気持ちは分からないかもしれないけどね」

「水分と言ってくれるじゃない」

「これが私の正直な気持ちよ」

「あそ、別に好きにしたら名を競損んでも何でも訴えたらいい」

「慰謝料も請求させてもらうからね」

「どうぞ」

「それとうちの会社もあなたのことを訴えるって言ってるから」

「え、会社が?

「そうよ」

「だってあなたのSNSのせいでうちの会社の信用が損われたわ」

「その分の損害賠償請求をするって言ってるから」

「言っておくけど、こっちの額は私の請求とは桁が違うからね」

「大手企業としてった損害はすごく大きいものだから」

「ちょっと待ってよ」

「そんなの無理に決まってるわ」

「無理かどうかなんて関係ない」

「大人なんだからやったことの責任は取らないとだめよ」

「ちょっとそこはお姉さんがなんとか言って止めてよ」

「私が反省してるからって伝えて」

「いやよ」

「そんなこと私がするわけないでしょ」

「お願いよ」

「妹の私を助けて」

「家族らするのはやめてよね」

「これからはあなたなりのエリート道を突っ走しりなさい」

「険しく荒れた道だと思うけど頑張ってね」

それからというもの、美重からは連絡が一切来なくなった。

そして、私は彼女のその後の顛末を、第三者から知ることになる。

」美重は、私と私の会社からの損害賠償請求と慰謝料請求を受け、莫大な借金を背負うことになった。

」さらに、訴えられたという事実が就活活動に大きな影を落とし、彼女は新卒採用の時期をすべて逃してしまった。

」今では定職に就けず、アルバイトを掛け持ちしながら、かろうじて生活しているらしい。

」かつて彼女が自慢していた大学時代のネットワークも、今では誰も彼女に協力しようとしない。

派閥を作って会社を動かすと言っていた彼女の夢は、結局、脆い人間関係の上に築かれた砂上の楼閣に過ぎなかったのだ。

」義母たちも、美重の支払いを肩代わりしなければならなくなり、生活は一変したという。

」かつては高級寿司店で食事をするのが当然だった家族が、今ではスーパーのお寿司すら買えない状況に陥っているらしい。

」あの日、私だけにガリを食べさせた義母のことを、私は決して忘れないだろう。

あの高級寿司店で食べたガリの味を、私は今日も覚えている。

それは、私がこの家族から初めて与えられた“家族の一員”としての待遇だったのかもしれない。」 それと引き換えに、私は今、鉄郎と穏やかで幸せな生活を送っている。

会社では順調に成果を上げ、周囲からも頼られる存在になれた。

美重の一件の後、会社の上司たちは心のケアにも気を遣ってくれた。

私は心から、この会社に来て良かったと思っている。

これからも、この会社に貢献できるよう、精一杯働いていきたい。

先日、私は鉄郎と、結婚五周年を迎えることについて話し合っていた。

「ねえ、あの時行った高級寿司店、もう一度行かない? 」

「もちろん」

「今回は、ガリだけじゃなくて、ちゃんとお寿司も食べようね」

鉄郎は優しく微笑み、私の手を握った。

」あの日、私に与えられたのはガリだけだった。

」しかし今、私の手の中には、この上ない幸せがある。

あの高級寿司店のガリの味は、いつまでも私の心に残り続けるだろう。

」そして、その味を胸に、私はこれからも自分の人生を歩んでいくのだ。