楓が三歳の頃、夫の琢磨が画面を見せながら言った。「そろそろ仕事、再開しないか?お金もかかるし、二人目を考えるなら、共働きで稼いだ方がいい」私は確かに楓に兄弟がいたらいいなと思っていた。しかし、一つだけ不安があった。「家事、どうするの?」私がそう尋ねると、琢磨は不機嫌そうに黙り込んでしまった。のこの家事分担の話は、そのまま立ち消えになってしまった. あれから四年、楓はすっかり大きくなって四歳になった。る日の夜、テレビで釣りの番組が流れていると、楓が目を輝かせて言った。「あの棒、お家にもある?」私にはすぐに分かった。琢まの釣り竿のことだ。嬉しくなって、私は琢磨に提案した。「家族で釣り、行ってみない?」しかし琢磨は、ソファーに寝転んだまま、スマホゲームから目を離さず、「楓にはまだ無理だよ」と一言。楓が「行きたい!」と駄々をこねて琢磨の上に乗ると、次の瞬間、琢磨が楓を押しのけて立ち上がり、大声で怒鳴った。「もううんざりだ!やることは増えるし、ガキはうざいし!キモいんだよ、バ!」その剣幕に、楓は泣き出し、私も言葉を失った。ち落ち着かせようと楓を抱きしめながら、「一体どうしたの?」と尋ねると、琢磨は堰を切ったように話し始めた。
れまでの趣味の話も、全部嘘だった。フットサルも釣りも、女性受けすると思って私の気を引くために並べただけ。本音は美少女ゲームにはまること。友人もいない。結婚式に呼んだ大勢の友人も、実はお金で雇ったスタッフだった。話しながら琢磨は完全に吹っ切れてしまったのか、さらには「結婚はいいものだ」という価値観に振り回された、と結婚そのものまで否定し始めた。「お前は嫁失格だ。れからは一人にしてくれ!」その言葉に、私は逆に頭が冷えた。んなに好きで結婚したわけじゃないのに、私だけが悪者みたいに言われている。れ以上、この男とやっていくのは無理だと思った。
私は楓を連れて、そのまま家を飛び出したリーゼントのままタクシーに乗り込み、実家へ向かった電話で事情を話すと、両親は驚きながらも温かく迎え入れてくれた。れから三日後、琢磨から電話があった。「いつ帰ってくるんだ?」詫びるでもなく、当たり前に帰ってくると思っているその言い草に腹が立った。「一人にしてほしいんでしょ?私の顔を見るのも吐き気がするんでしょ?」そう言うと、琢磨はようやく謝罪の言葉を口にしたが、その後すぐに続けた言葉に、私は完全に愛情が冷め切った。「早く帰ってきてくれよ。家の中が汚くて困ってるんだ」この人は、私を人間として見ていない。ゲームのキャラクターか何かだと思っている莆彼には、傷ついた心はリセットできないんだよと伝えた。
の後は、記入済みの離婚届けを郵送したことを告げた琢磨は慌てて「考え直してくれ」と懇願したが、私の心は微動だにしなかった最後に、皮肉を込めて言ってやった。「良かったじゃない。れからは、誰にも邪魔されず、思いっきりゲームに浸れるね」そう言って電話を切った。
その後、琢磨は何度も実家に押しかけてきたが、両親に全て門前払いされたようだ。れでも諦めきれず、楓の保育園の通園路で待ち伏せまでしたため、私が警察に通報し、琢磨には接近禁止命令が下りた。れでようやく観念したのか、琢磨は離婚を受け入れ、私は養育費に加えて、暴言に対する慰謝料も一括で請求した琢磨はマンションを売却して実家に身を寄せようとしたらしいが、私はすでに義母への根回しを終えていた。のの離婚の理由と、琢磨が義母を「クソバ」と呼んだことも伝えておいた怒った義母は、琢磨の出戻りを拒否したそうだ。の上、警察沙汰になったことが会社でも噂になり、琢磨は退職に追い込まれた。の後は、ネットカフェを転々とし、今では路上で生活していると、偶然会った父に泣いて訴えたらしい。
一方、私は楓の保育園の近くで就職が決まった実家で楓を可愛がる両親の姿を見ていると、心配をかけたことを反省するが、家族の温かさに支えられ、新しい生活を歩み始めている。
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