「兄嫁が俺の子を妊娠した。離婚してくれ」——夫のLINEが目に入ったのは、いつもの夕飯の支度をしているときだった。三杯目の味噌汁をよそった手が震えた。私が問い詰めると、夫は「本物の愛を知らないんだな」と笑い、兄の家へ出かけていった。後を追って兄を訪ねると、彼は「自分の子が生まれる」と嬉しそうに祝杯を上げていた。夫も、兄も、誰が本当の父親か分からない。そして、DNA鑑定の結果を知ったとき、私は…

「兄嫁が俺の子を妊娠した。離婚してくれ」——夫のLINEが目に入ったのは、いつもの夕飯の支度をしているときだった。三杯目の味噌汁をよそった手が震えた。私が問い詰めると、夫は「本物の愛を知らないんだな」と笑い、兄の家へ出かけていった。後を追って兄を訪ねると、彼は「自分の子が生まれる」と嬉しそうに祝杯を上げていた。夫も、兄も、誰が本当の父親か分からない。そして、DNA鑑定の結果を知ったとき、私は...

「兄嫁が俺の子を妊娠した。離婚してくれ」

夫の言葉が、最初はまったく理解できなかった。頭の中が真っ白になって、ただ茫然と彼の顔を見つめることしかできなかった。

「意味がわからない。ちゃんと説明して」

「そのまんまの意味だよ。俺は責任を取る男だからな」

目の前の男が、まるで他人のように見えた。十年近く連れ添った夫が、平然とそんなことを言っている。私は三人の子供を産み、家族のために尽くしてきたのに。

「じゃあ、どうしろって言うのよ」

「まず兄貴には今から話しに行くところだ」

笑い事じゃない。兄の妻を妊娠させたことへの責任も覚悟も振りかざしているくせに、自分が産んだ三人の子供たちへの責任は私に丸投げする。養育費を要求すると、ふざけた顔で「1. 5人分でいいだろ」と言い放った。

「本物の愛を知らないんだな。哀れなやつだよ」

私は何も言い返せなかった。ただ、絶対に逃がさないと心に誓った。

二時間後、私は夫の兄の家を訪ねた。夫がすでに来ていると思ったからだ。

「お兄さん、大丈夫ですか?」

「ん?何が?」

夫の兄は、何も知らない顔で出迎えた。

「いや、夫が来たはずなんですけど…」

「ああ、弟か。楽しく飲んで、さっき帰ったところだよ。嫁が妊娠してな、そのお祝いに来てくれたんだ」

え?彼が言うには、妊娠したのは自分の兄の子だと言う。「うちの妻が妊娠して、そのお祝いに来てくれたんだ」と、兄は本当に嬉しそうに言った。

妊娠は本当だったのか。「うちの妻」という言葉に違和感を覚えたが、その場では何も言えなかった。

「実は妻が不妊治療を頑張っていてね。ようやく父親になれるんだ」

あまりの食い違いに、私はその場を取り繕うことしかできなかった。でも、帰り道、私は夫に問い詰めていた。

「何がどうなってるのよ!お兄さんと話したら、全然違うこと言ってるんだけど!」

「俺だって驚いたんだよ。本当のことを言おうと思ったのに、兄貴が自分の子が生まれるって喜んでて…適当に話を合わせるしかなかったんだ」

「お姉さんは何を考えてるの?」

「わからない。あみから聞いてくれないか?」

「は?なんで私が間に入らないといけないの?しかも私を裏切った相手でしょ」

「頼む。こっちは慰謝料も払う覚悟があるんだ。だから兄貴との離婚が成立しないと話にならないんだよ」

私は自分のために真実を確かめることにした。悔しくて、悲しくて、でもどうしても知りたかった。翌日、私は義姉のもとを訪れた。

「お姉さん、お久しぶりです。ご懐妊おめでとうございます」

「ありがとう。やっと授かれたわ」

義姉は穏やかに笑った。

「誰の子なんですか?」

「夫に決まってるじゃない」

私は夫が自分との子だと言っていることを伝えた。義姉は「絶対にあり得ない」と首を振り、それから夫が以前から自分に対して気のある態度を取っていたことを話し始めた。驚いたことに、義姉はDNA鑑定に応じると言った。

数週間後、結果が出た。夫と義姉の間には父子関係の事実は認められないという内容だった。義姉の話では、私が夫に実際に身体の関係があったと打ち明けられたことが信じられなかった。義姉のDNA鑑定の結果、彼女の夫の子であることは確実だと言う。「これで間違いなく夫の子よ」と、私は真実を見極めなければならなかった。

しかし、疑念は完全には晴れなかった。夫は「何度もホテルに行った。本当のことなんだ」と譲らない。

「お前が言うよりも、俺のほうが説得力があるだろう。俺が兄貴に話してくる」

「やめた方がいいと思う。ショックが大きいよ」

「何かを得ようとすると、必ず何かを失うのさ」

浮気しただけのくせに、格好つけやがって。

翌日、彼は兄にすべてを打ち明けた。義姉の背中の火傷の跡のことを口にしたのだ。室内に沈黙が流れた。

「お前、まさか本当に手を出したのか?」

「そうだ。兄貴に殴られる覚悟はできてる。でも、自分の子じゃないと分かったら、潔く身を引く」

兄は激怒しつつも、自分の妻に隠し子がいることを確かめるため、DNA鑑定を受けることを決意した。

一ヶ月後、また大変な結果が出た。夫の兄も、子どもとの父子関係が否定されたのだ。

「ちょっと待ってください。夫の子でもなく、お兄さんの子でもないなら、一体誰の子なんですか?」

そこで私は、あることに気づいた。胎児のY染色体を調べると、夫と夫の兄、そして夫の父親と同じY染色体を持っていることが判明したのだ。Y染色体は父から息子へと受け継がれる遺伝子。つまり、お腹の子の父親は、彼らと同じY染色体を持つ誰か…それは夫か、兄か、あるいは夫の父親。

夫は「まさか」と青ざめた。「お父さんが息子の嫁に手を出すなんて…」

私は夫に、「それはキモい。あなたのお父さんがなんて」と言った。夫も、自分と同じく弟にまで手を出したのは意味不明だと困惑した。

私たちは義姉を問い詰めた。すると、彼女はようやく白状した。

「ごめん。強く言い寄られて断れなかったの。不妊治療の効果もないし、このままではダメだと思って…」

「誰の子なんだ?」

「ネットで知り合った人と、一度だけ関係を持ったの」

「まだ嘘をつくのか!」

「本当なの!不妊治療が辛くて、自暴自棄になってたのよ」

それが本当なら、彼女の子供にはY染色体がなくてはおかしい。そこまで言われて、義姉はついに真実を語った。

「確かに浮気をしてたわ。でも、あなたたち兄弟の子じゃないわ。…あなたたちの父親、お義父さんの子よ」

「なに?」

「Y染色体検査で分かったはずよ。あなたたちとは違う男性のY染色体が検出された場合は…。結局、全ての嘘が露呈したのよ」

義姉は言った。「あなたたち3人、顔もよく似てるし血液型も同じ。だから鑑定なんてしなければ一生バレないと思ったのに。あなたに原因があるのかもしれないと思った。3人の男性と関係を持って、どれかで妊娠するつもりだったの」

「恐ろしい女だ…」

「お前のせいで家族は崩壊だ」

義姉は平然と言い放った。「お母さんが夜の相手を断ってたから、そうなるのは当然よ。あみも私の誘惑にまんまと引っかかったくせに。責任は取ってもらう。離婚は確定ね」

「構わないわ。種さえもらえれば、私の願いは達成したから」

彼女の本当の目的は、子供を産むことと、私の泣き顔を見ることだったという。私に対する嫉妬が、全ての暴走の原因だった。

夫の兄は父を責め、父は土下座して謝った。義母は夫を三発も殴った。三人の息子たちは、彼女の母と縁を切った。実家を頼った義姉も、噂が広がり、どこからも助けを得られず、出産直前に水商売で働きながら、生活のために必死だった。

夫も「私のところに戻りたい」と懇願してきたが、私は突き放した。

「好きな女ができた途端、簡単に家族を捨てて養育費の責任も放棄するような父親はいらない」

それぞれが慰謝料を請求した結果、義姉は総額500万円、夫と義父はそれぞれ300万円を支払うことになった。

私は子供たちを連れて実家へ戻り、母と一緒に暮らし始めた。家庭を壊された怒りは今も消えない。でも、笑っているママの姿を子供たちの記憶に刻めるよう、毎日を明るく生きていきたいと思う。

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