「ねえ、もし自分の声が聞こえたら、どう思う?」
そう話しかけたのは、LINE劇場というチャンネルの運営者だ。2019年から7年近く、コメント欄だけで視聴者とつながってきた彼が、今回初めてライブ配信に挑戦した。
「実はね、運営者は男性なんですよ。でも、チャンネルを見てくれているのはほとんど女性で、ライターさんも女性が多いんです」
そう言って、彼は少し照れくさそうに笑った。視聴者からのコメントが次々と流れてくる。「無断天才っていう迷惑なチャンネルがたくさんあってね、もう100個くらい削除したんだけど、無限に出てくるんだよ」
彼の声には、長年運営してきた者ならではの疲れと、それでも続けたいという強い思いがにじんでいた。
「今日はね、みんなと直接話したくて配信したんです。コミュニティ投稿で774票も反応をもらって、8割以上の人が見たいって言ってくれたから」
視聴者との距離が、今初めて縮まった瞬間だった。
「これから30分だけど、一緒に新企画を考えられたら嬉しいです」
そう言ったとき、コメント欄に一通のメッセージが流れた。
「運営者さん、実は私、あなたの過去の話を聞きたいんです」
その言葉に、彼の表情がふと固まった。
「……過去の話、ですか?」
彼は少し間を置いて、ぽつりとつぶやいた。
「実はね、このチャンネルを始めたのには、ちょっとした理由があるんですよ」
その先を語ろうとしたとき、画面の向こうから何かが聞こえたのか、彼は急に言葉を止めた。
「あ、ちょっと待ってください。今、何か……いや、なんでもないです」
そう言ってごまかしたが、その目は明らかに何かを隠していた。
配信は続く。しかし、彼が語ろうとしなかった「過去」とは、一体何なのか。
そして、その過去が、このチャンネルの未来を大きく変えようとしていることには、まだ誰も気づいていなかった。



