「お前1人でどうにかしろ。俺は視聴で忙しいんだから分かるだろう。」
夫のケトはそれだけ言って電話を切った。自分の母親が危険な状態だと言われて、まさかこんな態度を取るなんて。絶望した私は覚悟を決めて、ある人と今後のことを話し合った。夫が出張から戻ってくるまであと数日しかない。できることは全部やるつもりだ。
私の名前は園田みな子。自分で言うのも悲しいが、異性にモテるタイプではなく、若い頃から蝶がつくほど奥手だった。それでも20代前半くらいには恋人がいたが、その後は縁に恵まれず、1人寂しくテレビ相手に頷く日々を過ごしていた。お金も時間も自分のためだけに使えると思えば幸せでも、やはりふとした瞬間に漠然とした不安が襲ってくるものだ。
しかしそんな私に天気が訪れる。気持ちが貧しくならないようにと好きなことをして独身貴族を謳歌しつつも仕事に真面目だった私は、現在の夫であるケトに認められたのだ。ケトは私よりも10歳も年下で取引先の営業担当だった。どうしてこんなに素敵な人が私なんかを、という気持ちはもちろんあるものの、エリートでうちの女性社員からもモテていた彼が自分を選んでくれたことは純粋に嬉しかった。
私たちは順調に交際を重ね結婚に至った。他の夫婦よりも年の差は大きいかもしれないが、私の両親も義両親も2人の結婚を祝福してくれて、きっと幸せな結婚生活が始まると思っていたし、最初はうまくいっていたと思う。
結婚後のケトは1人暮らしの時よりも生活環境が整って仕事に打ち込めるようになったのか、しばらくすると会社で大出世した。それも同期の中で1番などという程度ではなく、先輩さえも追い越した大抜擢だ。ケトは自信に満ち溢れていて、この調子ならまだまだ上を目指せるだろう。
私は夫の成功を一緒になって喜んだが、同時に少し不安もあった。どうも最近私への態度が冷たいというか、ないがしろにされていると感じている。今までは休日に2人で料理をしたり、何でもない日に私が好きそうだったからとプレゼントをくれていたのに、最近はめっきりなくなった。結婚してしまえばそんなものかもしれないが、やはり寂しさは拭えない。
さらにケトは、以前は疎遠だった義母と良い友人関係を築きながら、今は何でも自分で決められる自由な毎日を享受している。
その電話の後、私はある決断をした。夫が出張から戻ってくるまでに、すべてを終わらせるつもりだ。



