結婚式の披露宴で、夫が突然立ち上がった。
「お前、これはどういうことだ?」
私は何のことか分からず、ただ首をかしげるしかなかった。すると夫は、私の席に置かれた一枚の書類を指さした。
「サプライズだ。驚いたか?娘の結婚式でお前に離婚を宣告するのが、俺の夢だったんだ。席に置いた離婚届を見たろ。今日でお前とは終わりだ。」
「ふざけないでよ。どうしてこんなことをするの?」
「離婚される理由はお前にあるんだ。それが分からないのか?」
「いきなりこんなことをされる理由なんて思いつかないわ。」
「偉くぶち切れてるじゃねえか。いきなり離婚を切り出されて焦ってるんだろう。」
「違うわよ。こんなタイミングで離婚の話を出してきたことに怒ってるのよ。あの子の結婚式で、どうしてこんなことをするのよ。」
「何を親みたいなことを言ってるんだ。お前は俺たち家族のために働いていただけの、ただの下僕だったんだよ。」
「何よ、わけのわからないことを。」
「お前はよく仕事を頑張って稼いでくれた。そのおかげで優香はいい暮らしができたよ。ただ、母親面するのはよくないな。お前はただ俺たちのために働いていただけの下僕なんだよ。」
「私のことを利用したってこと?」
「そうだよ。貯金だって投資だってやってたのに。」
「そうでもしないと、お前に価値なんてないだろう。」
「私たちは夫婦じゃないの?」
「違う違う。俺はそんな風に思ったことはない。ずっとお前が俺と対等な感じで接してきてたのが、むかついてたんだよ。女は男に従えよな。」
「いつの価値観で話してるのよ。あんたって、ちょいちょいそうやって女の人を下に見るところがあるよね。私は何度もそういう考えはやめた方がいいって注意してたのに。」
「俺に注意していいわけがねえだろ。でも本当に今日という日を迎えられてよかったぜ。」
「優香がかわいそうよ。」
「安心しろ。あいつもこのことは知ってる。俺はお前と違って、優香のことをちゃんと考えてる。だから事前に話は通してあるんだ。あいつは喜んで許可してくれたぜ。」
「嘘よ。なんで優香まで…」
「優香もお前のことが嫌いだったんだよ。」
「ちょっと優香と話をするわ。」
「あいつは式に集中してるんだ。邪魔するんじゃねえ。」
「すぐに終わらせるわよ。」
私は式場の控え室に向かい、優香を呼び出した。
「優香、離婚のこと、あなたも知ってたの?」
「当たり前でしょ。お父さんから教えてもらって、開き直っておいたわ。どう?娘の式で離婚を宣告された気分は最悪でしょ。」
「でしょうね。あんたって、私たちに嫌われてるって自覚がなさそうだったもんね。」
「本当に嫌ってたのね。」
「当然でしょ。あんたなんて、母親だと思ったことないわ。」
「私はあなたにとって立派な母でありたいと思ってた。」
「知らないわよ。それに、なんか最近は秀に色目を使ってたでしょ。秀が男前なのは分かるけど、娘の結婚相手に言い寄るなんてありえないわ。そんなことをするやつだから、こっちから縁を切ってやろうと思ってるのよ。」
「誤解よ。そんなことは全く思ってないわ。秀君は同じ業界にいるから、色々と仕事の相談に乗ってるだけ。私の息子になる人だから、彼にも幸せになってもらいたいと思ってるのよ。」
「嘘つけ。ババアが色気づいて気持ち悪いのよ。それならパパと離婚してから他の男に行け。」
「そんなに私のことを嫌ってたのね。」
「だからあんたとはもう縁を切るわ。ただ、今まで育ててくれた恩はあるから、式にだけは参列させてあげる。そこで好きなだけご飯を食べて、お酒を飲みなさいよ。それが私たちとの最後の晩餐だから。でも迷惑をかけるようなことをしたら、すぐにでも追い出してやるわ。」
「分かった。とりあえず式には参列させてもらうわ。」
私は式場の外に出て、母に電話をかけた。
「リカ、もうすぐで式場に着くんだけど、入り口で待っておいてもらっていいかしら?」
「分かった。じゃあ私が待ってるから。」
私は母と合流し、式場の入り口で待った。
「かわいい孫の式に参列できて、本当に良かったよ。お父さんも連れてきてあげたかったけどね。きっとお父さんも天国で見てくれてるわ。」
「そうね。きっと敬一さんのご両親も、孫の晴れ姿を見たかったでしょうね。」
「かもね。お二人とも優香が小さかった時に亡くなっていたから、私はこうして参列できただけ幸せだよ。」
「うん。そうだね。」
「お母さん、今日式が終わったら、一緒に帰っていい?今日は実家に行こうかなって思ってるの。」
「うちに?どうして?優香たちと一緒にいてあげた方がいいんじゃない?」
「いえ、もうそんなことはできないみたい。」
「どうして?何かあったの?」
「私、どうやら娘に嫌われてたみたいでさ。」
「そうなの?」
「母親だとは思ってくれてなかったみたいだわ。」
「何もわざわざ式の当日に言わなくても。それに敬一は離婚まで突きつけられたし。」
「離婚?嘘でしょ?」
「本当よ。私も信じられないんだけどね。」
「そんな、あなたは家族のために頑張ってたのに。」
「結局私はきちんとした親にはなれなかったみたい。本当に情けないよ。」
「あなたは何も悪くないわ。そんなことを言ってくる二人がおかしいのよ。お母さん、そんな式、参列しなくていいわ。それよりも私と一緒に美味しいものを食べましょう。」
「ありがとう。でも式だけは見ていくわ。」
「そんなことしなくていいのに。」
「私は参列させてもらうわよ。」
「うん。ごめん。でもやっぱり見守っていきたいと思ってるから。」
「分かったわ。」
式が終わり、披露宴が始まった。私は夫の隣に座っていた。
「おい、それで離婚は受け入れてくれるんだろうな。」
「いつから離婚のことを考えていたの?」
「なんだよ、それ。今する話か。」
「自分の中で決着をつけたいのよ。」
「離婚を考えたのは、10年くらい前からだよ。」
「そんな前?」
「そうだよ。お前が調子に乗り出したからな。」
「どういうこと?」
「転職して今の大手に入っただろ。しかもそこでも結果を残して出世しやがった。その結果、俺の何倍も稼ぐようになった。そんなことをして許されると思ってるのか?」
「何を言ってるのよ。私たちで力を合わせて家計を支えましょうって、結婚前に約束をしたでしょ。」
「物には限度ってもんがあるんだよ。俺よりも稼いでどうするんだ?」
「私はただ家計を支えるために頑張ってただけなのよ。」
「どんな理由があっても、俺を超えるなんてあってはいけないことなんだよ。だから俺はお前のことを切ろうと思ってたんだ。」
「じゃあなんで15年も離婚しなかったのよ。」
「それは家族のためだよ。できるだけお前に働かせて、娘にそれなりの生活をさせてあげようと思ってたんだ。だから俺は親としてぐっとこらえていたんだ。」
「何それ?偉そうなことを言っておきながら、結局私の稼ぎを当てにしてたってことじゃない?」
「娘のためだって言ってるだろ。俺のプライドはズタズタなんだよ。」
「そんなの知らないわよ。」
「俺はこの気持ちをいつも優香に吐き出していた。そうやってなんとか自分を保っていたんだが、いつの間にかあいつも心からお前のことを憎むようになったんだ。」
「あんたの仕業だったのね。」
「もちろん、お前があいつに無駄に厳しく接してたのも悪いんだぜ。子供の気持ちを酌み取って、言葉をかけてやればよかったんだ。」
「私はできるだけのことをやったつもりよ。」
「反省することもできなくなったら終わりだぜ。」
「でも、あなたと話すことができてよかったわ。自分の中で決着をつけることはできたから。」
「そうかよ。それじゃあ離婚ってことになるな。財産分与もちゃんとやってもらうから。」
「分かってるわよ。」
「正直、財産分与にしてやる。お前が稼いだ額の半分が俺のものになるからな。」
「あんたって、言ってることとやってることが全然一致してないのね。私が稼いでることに怒ってるくせに、私の稼ぎを当てにしてるなんて。」
「うるせえ。一緒に住んでやってたんだから、その分の報酬としてもらってやるって言ってんだ。」
「誰もそんなの頼んでないわよ。あの家だって、俺は出ていくからな。お前の住んでたあの家に、これ以上住んでられるか。ちゃんと家の分まで考えて財産分与をしろよな。こっちは現金が必要なんだよ。」
「そう。好きにしたらいいじゃない。」
「それじゃあ俺たちは今日で終わりってことで。」
「ありがとう。最高の日よ。」
「強がるなよ。」
2週間後、私は夫に連絡をした。
「離婚についての話し合いをしましょうよ。」
「話し合いする必要はあるか?俺たちはもう終わり。財産分与で共有財産を半分にして終わりだろう。」
「残念だけど、そんな簡単な話じゃないのよ。あんたが私を裏切っていたことが分かったから。」
「裏切り?」
「そう、そのせいで半分にはできそうにもないわ。」
「おい、変な言いがかりはよせ。もしかして、そうやって離婚を先延ばしにするつもりか?惨めなことをするのはやめろよ。」
「バカねえ。こっちは本気で言ってるのよ。」
「じゃあなんでそんなことを言ってくるんだよ。」
「貯金額を確認しようと思って、共有の口座を見たのよ。あなたも確認はできるでしょ?」
「当たり前だ。結構溜まってたよな。」
「そうね。将来の二人のために貯めてたのよ。」
「形はどうあれ、お互いのために使えるんだから、別にいいだろう。」
「でも、それ以外に口座があったでしょ。」
「ああ、投資用に証券口座を作ったじゃないか。」
「あったな。」
「あなたが言ってくれたのよね。二人の将来のために、ただ貯金をするだけじゃなくて、投資での運用をした方がいいって。もうそれも何年も前の話だったから忘れてたの。私の給料から決まった額をそっちの口座に振り込むようにしてて、そのお金をあなたが運用してくれるって話だったじゃない。そっちもたくさん溜まってるんだろうなって思って確認したの。そうしたらびっくり。何にもお金が残ってなかった。」
「しょうがないだろう。投資ってのはリスクがあるんだ。」
「リスク?毎月私が振り込んだお金を、勝手に引き落として使ってただけでしょ。投資になんて1円も使ってなかったじゃない。あなたは私を騙してお金を取ってたのよ。」
「それが何だって言うんだよ。」
「そんなことをする人間と、財産を半分になんてできないわ。」
「マジかよ。」
「あなたがすでに使っていたその額に関しては、財産分与の取り分から引かせてもらうからね。」
「お前、何言ってるんだ?」
「それだけの額をあなたは使い込んでたのよ。しかもこんな騙すような真似をして。」
「俺は本当に増やそうと思ったんだよ。」
「何に使ったの?」
「いや、競馬とか競艇とか。」
「そんなのは単なるギャンブルでしょ。そんなことをして許されると思ってるの?どうせそれでお金が増えても、自分のために使ったでしょ。」
「くそ、マジか。」
「それと、今回のことであなたには慰謝料と損害賠償を請求させてもらうから。」
「おい、何言ってんだ。」
「あんたのせいでこっちは多大な損害を受けたし、心にも傷を負ったのよ。その分はしっかりと支払ってもらうからね。」
「ふざけるな。そんなことしたら俺の取り分が…」
「人のお金を勝手に使おうとするから、こんなことになるのよ。それが嫌なら、私になんて頼らずに自分で稼げばよかったのよ。じゃあせめて家を俺に…」
「家はいらないって言ったのはそっちでしょ。あの家は私が買ってローンを払ったものでもあるの。それなのにあんたに住ませるわけがないでしょ。」
「マジかよ。お前と別れていい暮らしができる予定だったのに。」
「また1から考え直したら?でも、あんたの考えることなんて、大抵はうまくいかないと思うけどね。」
1週間後、家に帰ると、夫が玄関に立っていた。
「びっくりしました。まさかあんたが連絡してくるなんて思ってもなかった。」
「別にいいでしょ。」
「いいとか悪いとか、そんな話じゃないわよ。私のことを切るとか言っておいて、なんで連絡なんてしてくるのよ。」
「今からそっちに帰ろうかなって思って。」
「は?何を言ってるの?」
「実は秀から家を追い出されたのよ。」
「追い出された?」
「私があんたたちを切ったってのを、秀が聞いて激怒してたの。」
「どうして秀君が知ったの?私はそんな話はしてないわよ。」
「私が話したのよ。お母さんも家に呼んでホームパーティーをしようって秀が提案してきたから、もう縁を切ったってね。」
「それで秀君が怒ったの?」
「うん。縁を切ったことよりも、結婚式の日に離婚届を渡すなんて非常識なことをしたのが信じられなかったみたい。」
「それは確かにそうね。私も今でもあんなことをするなんて思ってるもの。」
「それに秀はお母さんのことをすごく尊敬してて、そう言ってくれてたわ。だからそんなお母さんを切り捨てたのが嫌だったみたいね。一応色々と秀君の相談にも乗ったりしてたから。秀君、仕事があまりうまくいかなくて悩んでたのよ。」
「え、そうなの?」
「あなたにはそんな面は見せなかったのね。きっと心配をさせたくなかったからでしょう。でも私なりにアドバイスをさせてもらった。それで仕事がうまくいくようになったって、すごく感謝をしてくれてたの。きっとそういうのもあったから、あなたたちのやったことが許せなかったんでしょう。家を追い出されちゃって、このまま婚約解消になると思うわ。」
「そう、それは残念だったわね。」
「だから、そっちの家に戻らせてよ。」
「なんでよ。お父さんは別のところに住んでるでしょ。そっちに行きなさいよ。」
「お父さんはボロいアパートに住んでて、あんなところには行きたくないよ。部屋だって1つしかないって言ってるし。」
「私とはもう縁を切ったんでしょ。それならこの家に戻ることは不可能よ。それは分かってるはずよ。」
「待ってよ。もう許してくれてもいいじゃん。」
「許す?」
「だって、お母さんは私のことを考えてくれてた。嫌われても仕方ないことをしてたよね。家にもあんまり帰ってこないし、私に対しても厳しいことを言ってた。そんなんだから私は嫌いになったのよ。」
「仕事を頑張ってたのは、家計を支えるためよ。お父さんは仕事を頑張ってたけど、景気が悪くて給料がどんどん下げられちゃったの。」
「え、そうなの?」
「そうよ。それで今のままではあなたを満足に生活させてあげられないと思った。だから私は1年前に大手だった今の会社に転職することにしたの。それも大変だったけど、前の会社にいたままならどちらにしても生活は苦しくなってた。だから転職をしたのよ。そうしたら全てがうまくいって、生活できるようになった。それもこれも全て家族のためだったの。私だけでも働いていれば、あなたたちを支えられると思って頑張ってたわ。でもそれがお父さんは気に食わなかったみたいね。」
「だけど、いつも私に厳しくて…」
「小学生の時に、あなたが万引きをして、私とお父さんで店に呼び出されたことがあったでしょ。」
「あったね。」
「あの時、あなたはずっと自分は悪くないって言い訳をしてたわ。友達に言われたからやっただけだってね。」
「実際そうだったから。」
「確かに他にもお友達はいたし、みんなでやったんでしょう。だとしても、やったのはあなた自身なのよ。それは事実なのに、あなたはそれを認めようとしなかった。お父さんは『仕方ないね』と許してくれた。でも私は、そんな考えじゃ本当に痛い目を見ると思って、厳しく言わないと思ったの。」
「そうだったの?」
「お父さんはあなたを基本的に優しく受け入れていた。だったら私が厳しくしないと、あなたのためにならないと思ったの。それで私のことを嫌いになるのは仕方ないわ。私はそれでもいいから、あなたに不幸になって欲しくなかったのよ。だから厳しく接していたの。」
「お母さん…」
「私はあなたの将来のことを思って、投資用の口座も作った。でもその口座からお父さんはお金を抜き取っていたわ。」
「嘘。」
「残念だけど、あなたの信じた人はそういう人間だったの。でもあなたが選んだのはそっちだった。私はもうあなたの母親ではないわ。頼るのなら、お父さんの方に行きなさい。」
「待ってよ。私はお父さんに命令されて…」
「お父さんもそんなことを言ってたわ。小さい頃からあなたに私の悪い部分を言い含めてね。」
「そうよ。私は騙されてたの。」
「そうやって人のせいにするのはやめなさい。あなたはずっと私と一緒に生活してたでしょ。私がどういう人間か、あなた自身が判断できたはずよ。それでもあなたは私を切り捨てたの。それをどうこう言うつもりはないわ。でも今更めずらしく近づいてこないで。私はもう新しい人生を歩んでいるの。自分の行動の責任くらい、自分で取りなさい。」
10分後、私は祖母に電話をかけた。
「おばあちゃん、今からそっちに行ってもいい?」
「他人がどうして私の家に来るんだい?」
「おばあちゃんまで私のことを見捨てるの?」
「どの口がそんなことを?あんたが私の大切な娘を捨てたんだろ?あの子はあんたのために身を粉にして仕事をしてきた。情けない話だけど、私たちはあの子を大学に行かせることができなかった。そのことで社会に出て苦労してたんだ。そんな思いをあんたにさせないために、あの子は頑張って仕事をしてたんだよ。」
「高卒なのは知ってたけど…」
「でも私は勉強が本当にできなくて…」
「そんな話をしてるんじゃない。あんたはそんなリカの頑張りを見てたのに、平気な顔して切り捨てたんだ。そんなことをする奴は、私の孫でも何でもない。縁切りだよ。」
「家がないと生活できないの。」
「だったら自分でお金を稼いでなんとかすればいいだけだ。私に甘えてくるのはやめなさい。あんたとはもう縁を切ったんだ。赤の他人が慣れ慣れしく連絡なんてしてくるんじゃない。」
1週間後、私は警察に通報した。
「警察には通報しておいたから。」
「は?警察?」
「知らばっくれても無駄よ。勝手に家に侵入したくせに、何を言ってるの?」
「そっちこそ何を言ってるんだよ。」
「家の中に物色された形跡が残ってたわ。」
「それだけで俺を疑うのか?」
「もちろん監視カメラをつけてたからね。それにばっちり、あなたが侵入するところが映ってたわ。」
「監視カメラ?」
「ええ、あなたは必ずうちに来るって思ってたから。うちの鍵を持ってるのも知ってたしね。」
「こうなることを見越してたのか。」
「そうね。来ないなら来ないでも良かったんだけど。ちなみに、来たから分かったと思うけど、私はもうあの家では生活してないから。さっきも言ったように、あんたが来る可能性もあったし、1人で住むには広すぎるからね。」
「鍵を変えればよかっただろう。」
「そんな出費はしたくないわ。もう売るつもりだったし。」
「そうなのか。」
「当たり前よ。あんたたちとの思い出の詰まった家なんて、誰が住み続けたいと思うもんですか?売ってお金にした方が何倍もいいよ。それで俺が来るのを待ってたのか。罠に俺が引っかかって嬉しいかよ。」
「嬉しくも何ともないわ。だってこうなるって分かってたから。」
「お前…」
「警察にはもう通報してるから、ちゃんと反省をして。2度とこんなバカなことはしないようにね。」
「俺に説教するな。お前なんかに説教される筋合いはねえ。俺は一家の大黒柱なんだぞ。それなのに…」
「何それ?」
「うちの実家は、父親が絶対の家だったんだ。一番稼いで家計を支えて、家族全員の憧れの存在だった。俺はそんな父のようになりたかったんだ。でもお前が俺の理想をぶち壊した。俺よりも勝手に稼ぐようになりやがった。お前のせいで俺は父のようにはなれなかった。」
「だから私を逆恨みして、離婚しようとしてたのね。」
「そうだ。」
「くだらないわ。そんなに父親が偉いというのなら、それだけの行動を示したらよかったのよ。稼ぎがそんなに重要なら、あなたも稼げるように仕事を変えたり、自分で何か事業を始めたりとか、何かやってみればよかっただけじゃない?そんなこともしないで、ふんぞり返るなんてできるわけないでしょ。私はただ家庭を支えるために頑張ってたの。あんたみたいに見えやプライドとか、そんなものは捨てて頑張ったのよ。」
「俺が悪いのかよ。」
「そうよ。あんたは自分のやったことを反省しなさい。娘に取り入って私を孤立させるような真似をしたり、情けないことしかしてないんだから。まずは窃盗と侵入の罪を、警察で反省しなさい。」
「そんな…」
「手続き関係とかであんたと連絡を取るためにブロックしてなかったけど、いよいよそんなことにならないから、もうブロックをさせてもらうわ。これで本当にあんたとの縁も切れるわね。」
「嬉しいかよ。」
「そうね。人生最高の日よ。言っとくけど、これは強がりじゃないから。」
その後、夫は警察に逮捕されました。刑務所行きは免れたものの、実際の生活はそれは大変だったそうです。給料はずっと低く、1人で生活していくのでギリギリだったとのこと。だからこそ財産分与のお金を当てにしていたそうですが、それも私への慰謝料の支払いでほとんどなくなり、優香に泣きつこうと電話をしたそうですが、優香はその電話に出ることはなかったそうです。優香からも縁を切られてしまって、今は闇金でお金を借りて、一発逆転を狙ってギャンブルをしているそうです。そんな生活をしてどうなるか、本人は分かってると思いますが、そんなことも考えたくないんでしょうね。
ちなみに優香は婚約解消となり、1人で生活をしているとのこと。とにかく玉の輿に乗りたい一心で婚活パーティーに積極的に参加しているそうですが、わがままな性格が災いして、誰からも相手にされていないみたいですね。ただ、振られた時に相手が見る目がないのだと逆ギレして、相手の男性をSNSで晒してしまったことは、本当に良くなかったと思います。結果、そのせいで相手から慰謝料と損害賠償を請求されて、その支払いのために苦しい生活を送っているみたいです。他者思考が治らない限り、幸せにはなれないでしょうね。
一方の私は、1人での生活を始めました。家族と長く住んでいたので、急な1人での暮らしは寂しいと感じることが多いです。でも、あの2人に利用されていた人生と比べたら、はるかに今の方がいいと思えています。ずっと家族のために生きてきましたが、これからはもっと自分のことを大事にして、後悔のない毎日を重ねていこうと思っています。



