結婚式の10分前、私は花嫁衣装のままLINEを見て固まった。「今日の結婚式だけど、やっぱ俺も両親も行かねえわ。お前が犯罪者だってバレたから。」私は何度も「別人だ」と説明したのに、彼も彼の母親も「ネットが全てよ」と聞く耳を持たなかった。挙げ句の果てに「ブスで犯罪者の女なんて誰が欲しいんだ」と言われ、式はドタキャンされた。でも、私は黙って引き下がるつもりはなかった。彼らが私の辛い過去を踏みにじっ…

結婚式の10分前、私は花嫁衣装のままLINEを見て固まった。「今日の結婚式だけど、やっぱ俺も両親も行かねえわ。お前が犯罪者だってバレたから。」私は何度も「別人だ」と説明したのに、彼も彼の母親も「ネットが全てよ」と聞く耳を持たなかった。挙げ句の果てに「ブスで犯罪者の女なんて誰が欲しいんだ」と言われ、式はドタキャンされた。でも、私は黙って引き下がるつもりはなかった。彼らが私の辛い過去を踏みにじっ...

結婚式の当日、私は花嫁衣装を着て待っていた。でも、彼からのLINEはこうだった。「今日の結婚式だけど、やっぱ俺も両親も行かねえわ。後の面倒は頼むな。」

私はすぐに電話をかけた。「行かないってどういうこと?今日が結婚式なのよ。」

「パパもママも、ブスが嫁は嫌だって。今日の式はなしだ。」

「ちょっと待って。なんでそんなことになるの?」

「おい、被害者面するなよ。俺たちはお前に騙されたんだ。被害者は俺たちだ。」

「何を言ってるの?」

「お前、少年院に入ってたんだろ。調べたんだよ。桜井美で検索したら、犯罪者がいたってSNSの投稿がヒットした。まとめ記事も見た。お前の実家が特定されてたし、あんなでかい家、見間違えるはずない。」

「それは別人よ。私じゃない。確かに同姓同名の人がいて、私も巻き込まれたけど。」

「嘘つけ。SNSに書いてあったんだから間違いないだろ。しかも中学まで晒されて、昔の不細工な顔まで流されてるとか、マジでキモい。」

「だから違うの。調べれば分かるはずよ。別の件で、その人とは年齢も違うわ。」

「必死だな。そんなに被害者面したいわけ?さすが犯罪者は考えが違うな。」

「話を聞いてよ。」

「犯罪者の言い訳なんて聞く価値もない。今回はお前が悪い。俺たちは被害者だから。お前が犯罪者って隠してたんだし。あと、犯罪者ってバレたらお前もう生きていけないだろ。だから円満に別れよう。慰謝料もキャンセル料も請求しないでくれよ。」

その直後、彼の母親からも電話がかかってきた。「ちょっと美咲さん、これ以上うちの息子に関わらないで。変なLINEまで送って、恥ずかしくないわけ?これだから犯罪者は。」

「お母さん、話を聞いてください。悠一さんは勘違いをしてるんです。」

「まあ、まだ言い訳するの?あなたは不細工な上に犯罪者で、さらには常識が悪いなんて、終わってるわね。言うことも聞かないんだから、捨てられて当然よ。」

「ネットの情報がそもそも間違いなんですってば。」

「ネットが全てよ。私も調べたけど、あなた、名前も住所も全部晒されてたじゃない。本当、私の勘は当たってたわ。あなた、まともじゃないと思ったのよね。」

「どういう意味ですか、それ?」

「あなた、結婚式の準備の時も本当に生意気だったし。私が『結婚式は私が仕切るわ。嫁は黙ってて』って言ったのに、『私たちの式だから』って断るなんて。義母を敬えないなんてありえない。嫁の分際で意見なんて生意気よね。息子も言ってたわよ。『あいつの友達、レベル低そう。恥ずかしいから呼ばないで欲しい』って。」

「悠一さんがそんなこと?」

「本当に生意気な嫁よね。そもそも、メーカーである我が家に不釣り合いなのよ。でも、これでさよならできるから、すっきりね。」

1時間後、彼からまた連絡が来た。「もうお前とは関わり合いたくないから、連絡してくるな。ゲストには言っといたから。花嫁は犯罪者で騙されましたって。」

「待って。誤解って何度も言ってるわよね。なんで信じてくれないのよ。」

「信じるも何も、お前、結婚したいからそんなこと言ってんだろ。そんな言葉、信じるかよ。」

「なんでそんなこと言うの?」

「お前みたいなブスで犯罪者の女なんて、誰が欲しいんだよ。それ分かってるから、俺にしがみつくんだろ。でも、やっぱ無理だわ。犯罪者とか恥ずかしい。犯罪者は他人に迷惑かけないよう、すみっこでひっそり暮らしてろよ。」

「いい加減にしなさいよ。ふざけないで。私は何度も説明したのに、あなたたちは全く聞いてくれなかったわね。そもそも、何?結婚してほしい?こっちだって結婚したくなかったわよ。」

「はあ?結婚したくなかった?嘘つけ。式の準備だってノリノリだっただろ。」

「ノリノリ?あれのどこがよ。結婚式の準備だって、私の意見を全部無視して。しまいには友達まで馬鹿にされたのよ。挙句の果てに私を犯罪者扱い。そんな人と結婚したいと思うわけないでしょ。」

「なら、なんで今の今までそれ言わなかったんだよ。」

「言ったわよ。話し合おうって言って。でも、あなた、冗談だろって言って聞かないし。それどころか、婚約破棄するなら慰謝料払えって言い出してきて。」

「あれはお前が変な冗談言うから。」

「冗談なわけないでしょ。明らかにモラハだったから、証拠集めようとしたら、あなたの母親に妨害されるし。」

「うるせえな。お前が変なことするから、母さんが警戒してただけだろ。」

「あのね、私は過去に同姓同名の犯罪者と間違えられて炎上したの。周りから勘違いされて、実家にも嫌がらせがあったわ。私じゃないって説明しても、誰も信じてくれなかった。本当に辛かったの。でも、家族が支えてくれて、証拠を集めて別人だって証明できた。ようやく平穏な生活が戻ってきたのに。」

「はあ。まだ言い訳すんのかよ。」

「言い訳じゃなくて事実よ。あなたたちは調べもせずに私を犯罪者扱いして、私の辛い過去をえぐった。許せない。絶対に許せない。」

「知らねえよ。お前が犯罪者なのは事実だろ。ネットにはお前の顔も名前も全部乗ってたし、母とか親のこととかも晒されてたじゃん。調べたら全部お前だって分かるのに、言い逃れしてるの、受ける。」

「そこまで言うなら、そうじゃないって証拠見せろよ。今ここで無理だろ。だってお前なんだし、犯罪者は。」

「分かった。もういいわ。一応、その誤解だけは解いておきたかったけど、どうやら無駄なようね。」

「分かったなら、さっさと消えろよ。」

「あのね、悠一。私、元々あなたと結婚したくなかったの。」

「はあ?まだそれ言うのかよ。負け惜しみ。」

「いいえ、事実よ。あなたのマザコンとモラハに我慢できなかった。啓子さんの高圧的な態度にも我慢の限界だったもの。でも、婚約破棄すると私が慰謝料を払わされる。それは絶対に嫌だったの。」

「だから結婚したかったって?」

「いいえ。結婚してからモラハの証拠を集めて、離婚するつもりだったの。」

「はあ?なんだよそれ。」

「つまり、私もあなたのことなんて愛してなかったのよ。あなたたちが結婚式をドタキャンしてくれたから、あなた有責で事を運べるし。だから、私の気持ちを伝えてあげる。結婚しないで本当に良かったってね。」

「は?」

「だから、本心を言うと、結婚式ドタキャンしてくれてありがとうって感じなのよ。これで全ての責任をあなたたちに負わせられるわ。」

「強がるなよ、ブス。どうせ泣いてるんだろ。」

「泣いてないわよ。むしろ嬉しいくらい。ああ、嬉しいわ。これでようやく我慢しなくて済むもの。言っとくけど、キャンセル料も慰謝料も、全部あなたたちが払うのよ。」

「は?なんでだよ。犯罪者のくせに。」

「犯罪者じゃないって言ってるでしょ。まあ、証拠はあるから、後で弁護士から連絡が行くわ。それじゃあね。」

その夜、私の専属メイドのり子さんが心配そうに尋ねた。「お嬢様、大丈夫ですか?結婚式が中止となったと聞きまして。」

「り子さん、ごめんね。なんかバタバタしちゃって。」

「何があったのですか?」

「悠一が結婚式をドタキャンしたのよ。私を犯罪者だって言ってさ。」

「まあ、あの炎上のことですか?」

「そう。また同じことが起こった。勘違いでまた偏見を持たれてさ。あの時と同じ。」

「お嬢様、結婚はしたくなかったから、結果はいいのでは?どうせ離婚するだろうと思ってたし、証拠集められれば離婚できるし。」

「でも、それとこれとは別だわ。無実なのに犯罪者扱いされたのは許せないもの。」

「大丈夫です。あなたは何も悪くありません。あなたは被害者です。私がお嬢様の無実を証明します。」

「り子さん、あの人たちは絶対に許しません。社会的制裁を受けるべきです。お嬢様を侮辱したのですから。」

「ありがとう。そこまで言ってくれて。さっきは強がって言い返したけど、本当は怖かった。また同じことが起こるんじゃないかって。何を言っても信じてもらえないって、やっぱり辛いからさ。」

「お一人で背負わないでください。私も大旦那様もいるのですから。」

「り子さん、手伝ってくれる?」

「もちろんです。お嬢様のためなら何でもします。」

「ありがとう。お一人で立ち向かうのは精神的にも負担が大きいから。」

「悠一とお母さんを絶対に後悔させてやる。私の辛い過去をえぐった報いを受けてもらうわ。」

「その意気です、お嬢様。」

数日後、り子さんが報告に来た。「お嬢様、証拠集めが完了しました。」

「本当に早いわね。さすがり子さん。」

「知り合いの探偵に依頼しました。慰謝料請求で必要なのは、お嬢様が炎上元になった人物とは別人という証拠です。そちらの証拠は全て揃いました。」

「ありがとう、り子さん。これでいつでも動けるわ。」

1週間後、私は悠一に会いに行った。「悠一、話があるの。」

「はあ?お前まだ連絡してくんのかよ。犯罪者は消えろって言っただろ。」

「犯罪者じゃないって言ってるでしょ。」

「なら、その証拠を出せよ。」

「ええ、持ってきたわよ、証拠。証拠を送るわ。これが私の戸籍謄本。これが少年院に入っていた人の投稿。実際は刑務所に入る年齢で、過去に少年院にも入っていたって後で分かったのよ。少年院に入る出来事の方が悪質だったから、そっちの方で炎上しただけ。見比べてみて。」

「え、なんだよ、この写真。見たことねえぞ。」

「この写真が出回ったのは炎上騒動のかなり後だもの。そして炎上ってね、悪い事件の方が燃えやすい。結果的にこの画像はあまり出回らなかったわ。もうネタとして消費された後だったから。」

「これ本物?」

「ええ、本物よ。よく見て。出身地も年齢も違うでしょ。信じられないなら、私の生年月日と記事の人の生年月日を見比べて。これはネットの炎上まとめサイトに載ってるでしょ?」

「ちょっと待てよ。それじゃあ何?これ別人?」

「そうよ。私は最初から別人だって言ってたわ。あなたが調べもせずに私を犯罪者扱いしたのよ。」

「うっ、あれは勘違いするだろ。」

「勘違いじゃなくて、あなたは決めつけてたわ。あのね、悠一。あなたは私を犯罪者だと決めつけて結婚式をドタキャンしたけど、実際はただの思い込みで、私は無実。つまり、キャンセルしたあなたが悪いんだから、キャンセル料も発生するわ。」

「ちょっと待てよ。悪気はなかったって。こんなの見たら誰だってそう思うだろう。投稿を見て勘違いしたのは仕方ないだろ。」

「ほら、でもその後調べもせずに私を犯罪者扱いして、『ブス』『誰も欲しがらない』『俺が結婚してやろうとしてた』っていうのは、完全にあなたが起こした行動よ。弁護士に相談したら、婚約破棄の理由にできるって。」

「理由になるからって、何だよ。」

「分からない?婚約破棄はあなたのせいってこと。つまり、慰謝料とキャンセル料、全部請求できるのよ。」

「全額?いや、待ってくれって。そんな金ないって。」

「それはあなたの問題よ。後日弁護士から連絡が行くから。それじゃあね。あなたも私と話したくないようだから。」

数時間後、彼の母親から電話がかかってきた。「あなた、犯罪者じゃなかったの?さっき悠一から聞いたんだけど。」

「私は最初から別人だって言ってましたよ。」

「でも、ネットでは…」

「それなんですけど、ネットでもきちんと後で同姓同名の別人だったという記事が出ています。でも、人の目にあまり触れなかったんですよ。だって炎上の方が人の興味を引きますから。」

「ああ、勘違いしちゃったのよ。ごめんなさいね。」

「いや、何言ってるんですか?もう遅いですよ。」

「え?だって、犯罪者と勘違いしたことと、私の容姿を侮辱して『捨てられて当然』というのは、また別の話ですよね。」

「さ、そう、それはその…」

「好き勝手言ってましたもんね。『不細工』とか、ああ、『生意気な嫁』とも言われました。」

「ひどいですね。本当に人にそんなこと言うなんて。」

「ちょっと待ってよ。私は息子から聞いただけよ。息子が美咲は犯罪者だって言ったから、信じただけ。」

「調べもせずに信じたんですよね。しかも、周りに犯罪者の嫁と言いふらしていたそうじゃないですか。ええ、調べましたよ。お母さんの行動。式が中止になったってゲストに連絡した時、悠一さんのゲストだけやたら反応が冷たかったんです。それで気になって調べてもらったら、お母さんが親戚や友人に『息子の婚約者は犯罪者だった』って言いふらしてたことが分かりました。証拠もありますよ。親戚の方から聞きましたし。これ、立派な名誉毀損です。」

「そ、そんな大げさな…」

「名誉毀損っていうのは、公然と事実を指摘して人の名誉を傷つけることを言います。つまり、社会的評価を低下させる行為を言うんです。」

「でも、今回は勘違いなんだし、誤解が解ければそれでいいんじゃない?」

「いいえ。この罪は、事実であるか虚偽であるかは関係ありません。つまり、嘘の情報を流しても適用されるんですよ。なので、お母さんを訴えます。」

「待ってよ。そんなことされたら…」

「ああ、お母さんが私を見下していたのって、ご自分がメーカーの生まれだからでしたよね。メーカーに傷がつきますね。訴えられたら。」

「うっ、そうよ。うちは長年続いてるメーカーなの。」

「うちもそれなりに大きいのはご存知では?そっちはポッと出の成金でしょ。」

「成金?」

「知ってるわよ。あなたのお家は商売しかしてないって。ここ数年の売上は落ちてるし。どうせたまたま当たっただけの一発屋よ。そんなのにでかい顔されたくないの。」

「当たり前。うちは代々続くメーカーなんだから。」

「あの、その代々続くメーカーっていうのは嘘ですよね。はい。さっきうちの実家を一発屋と言いましたが、それを言ったら、あなたのご実家こそ、いわゆる成り上がりじゃないですか。しかも、祖父の代から始まった会社ですよね。って、3代目くらいから行って、いい形…葉師でしたっけ?」

「な、何を調べてるの?プライバシーの侵害よ。」

「プライバシーの侵害?いえ、そんなつもりはないです。というか、調べるのは当たり前ですよね。」

「どこが当たり前よ。」

「だって、ちゃんとしたお家でしたから。どれくらいの歴史があるのか調べるものでしょう。私はお嫁に行くつもりだったのですから。お相手がどんなメーカーなのか調べないのは失礼ですし。」

「ああ、こう言って…」

「歴史で言えば、私の実家の方がありますよ。えっと、メーカーの人間は何言ってもいいんでしたっけ?」

「そんなことは言ってないわ。」

「あら、さっき自分で散々偉そうな態度取ってましたよね。お母さんが私の家を成り上がりと言ったのは、ここ最近の実績だけを見て、その部分だけで判断したのでしょう。言っておきますが、私の実家は江戸時代から続く商家です。あなたの実家より格上ですよ。家柄で言えば。そんな恥ずかしくないですか?」

「そ、そんなはずないのよ。こんなことって。」

「根拠もなく人を見下すのはやめた方がいいですよ。恥をかくのはお母さんの方なので。」

「な、何なのよ。私を見下すって言うの。生意気よ。」

「生意気も何も、事実を言ってるだけですし、メーカーだからと見下してきたのもそちらです。本当のメーカーはそんなことしませんけどね。恥を問われるので。」

1週間後、悠一が土下座してきた。「頼むって。慰謝料とキャンセル料、勘弁してくれよ。そんな金ないんだって。」

「それはあなたの問題よね。やったことの償いはするべきでしょ。」

「お前、俺のこと恨んでるのか?こんな追い込んで。」

「当然でしょ。絶対に許さないわ。私の過去の傷を蒸し返したのはそっちよ。でも、後日弁護士から正式な請求書が届くから。それじゃあ。」

2週間後、悠一が家に押しかけてきた。「出てこい。話し合おうって。こんなのおかしいだろ。」

り子さんが応対した。「これはこれは悠一様。お嬢様は現在手が離せない状態です。また、お会いしたくないとのことですので、お引き取りください。」

「誰だよ、お前。これ、あいつのアカウントだろ。」

「お嬢様から端末をお預かりいたしました。桜井家のり子と申します。」

「桜井家ごときに用はないんだよ。美咲を出せ。」

「申し訳ございませんが、それは対応しかねます。」

「うるせえ。さっさと出せよ。」

「出せません。それに、あなたがここに来る理由はないでしょ。近所迷惑ですので、叫ぶのもおやめください。」

「理由はある。美咲が俺に慰謝料を請求してるんだぞ。こんなのおかしいって。」

「おかしくありません。あなたはお嬢様を犯罪者扱いして結婚式をドタキャンしました。それに、ご友人にも嘘の情報を流し、結婚式の中止があったかもお嬢様に原因があると周囲に思わせたのです。こういった行為は名誉毀損に当たります。慰謝料とキャンセル料を払うのは当然です。」

「でも、俺は勘違いしただけだって。」

「勘違い?確かに勘違いは誰にでもあります。しかし、あなたの発言は勘違いの域を超えていますよ。あなたはお嬢様を犯罪者と勘違いした。では、だからと言って結婚式10分前にドタキャンをして良いのですか?花嫁衣装を着た女性を一人放置して、だんまりを決め込んで良いのですか?挙げ句の果てにキャンセルを押し付け、自分には何の責任もないと本気で思い込んでやっていいレベルのことではないのです。だから、今こうして責任を問われているのですよ。」

「うっせえな。他人には関係ないだろ。俺は美咲と話したいんだよ。」

「あなたに話す資格なんてありません。確かに私は他人です。ですが、あなたよりお嬢様のそばにいました。だからこそ、あなたのしたことを許せません。」

「なんだと?」

「お嬢様はあの炎上事件で辛い思いをされました。周りから勘違いされ、実家にも嫌がらせをされ、お嬢様がどれだけ苦しい思いをしたか。当時はまだ社会人になった頃でしたから、会社でも肩身の狭い思いをしたでしょうに。それでも無実を証明し、ようやく平穏な生活が戻ってきたんです。それなのに、あなたはお嬢様の思い出したくもない出来事を思い出させた。そして、それを理由にお嬢様を貶めたのです。それは、その、許されるわけがありません。お嬢様がどれだけ苦しんだか、私は全て見てきました。だから、あなたを絶対に許しません。どうかお引き取りください。」

「分かった。俺が悪かったよ。だから、せめて直接謝罪をしたいんだ。」

「謝罪?あなたのような人間…いや、あなたのような存在がお嬢様に謝罪?身の程知らずですね。」

「人間じゃないって?」

「そうです。人間ならば知性があります。ですので、調べたり確認を取ったり、言葉を使っての対話が成り立ちます。しかし、あなたはそのどれも怠った。むしろ、動物の方がマシです。動物はパートナーを大切にしますから。もうよろしいですか?もう二度とお嬢様に近づかないでください。次は警察を呼びますから。」

「ふざけんな。お前、桜井家の分際で何様だよ。」

「桜井家の分際?ええ、ただの使用人です。お嬢様のことを大切に思っている。ただそれだけなんですよ。それでは、もう話すこともありませんので、先ほど警察に通報いたしました。」

「ちょっと待てよ。」

「帰ってくださいと言ったのに、まだここにいますよね。迷惑行為に該当しますので。」

「分かったよ。帰るって。でも、覚えてろよ。」

「あら、それは脅迫ですか?それも記録しておきますね。」

「くそっ。」

数時間後、り子さんが報告に来た。「お嬢様、ありがとうございます。悠一を追い払ってくれたんだって。」

「はい。もう来ないでしょう。」

「本当にありがとう。り子さんがいなかったら、私はどうなっていたか。」

「お嬢様、あなたは何も悪くありません。あなたは被害者なのですから、堂々としていてください。」

「うん。り子さんのおかげで、やっと前を向けそう。」

「これからも見守らせてくださいね。」

「ありがとう、り子さん。」

その後、悠一は慰謝料とキャンセル料を支払うことになった。結婚式には職場の人間もいたため、不確定な情報で相手の名誉を傷つけたとして、会社でも肩身の狭い思いをしているそうだ。思い込みで話してしまうことやモラハをしていることもバレてしまったため、ほどなくして地方に左遷された。キャンセル料の支払いで貯金はほぼなくなり、質素な生活を送ることになった。

お母さんも名誉毀損で訴えたことで、親戚や友人から白い目で見られているそうだ。また、お母さんは代々続くメーカーと周りに自慢していたため、赤っ恥をかき、今は誰とも交流もできず、孤独な人生を歩んでいる。

一方、私はり子さんに支えられ、新しい人生を歩み始めた。過去の出来事はなかなか消えませんが、私は一人ではありません。それだけで十分幸せなのだと、今回の件で感じることができて良かったと思います。

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