「あんたはもう用なしなの。次期社長は明日からこの人よ。」 妻がそう言い放った時、隣には私の部下が立っていた。6年間、必死に会社を育ててきた。なのに妻は私の努力をすべて父のコネのせいだと決めつけ、愛人の男を社長に据えようとしている。私が築いた家から追い出されるはずだったあの夜、私は弁護士に一通の電話をかけた。彼らには全く知らされていない、ある証拠を握っていたからだ。…

「あんたはもう用なしなの。次期社長は明日からこの人よ。」 妻がそう言い放った時、隣には私の部下が立っていた。6年間、必死に会社を育ててきた。なのに妻は私の努力をすべて父のコネのせいだと決めつけ、愛人の男を社長に据えようとしている。私が築いた家から追い出されるはずだったあの夜、私は弁護士に一通の電話をかけた。彼らには全く知らされていない、ある証拠を握っていたからだ。...

「私ね、あんたと離婚したいの。たくや、あなたはもう用なしなの。」

目の前で妻のあゆみが得意げな顔でそう言い放った。隣には愛人の高田が薄ら笑いを浮かべている。

「は? 何言ってるんだ?」

俺は冷静に事態を確認するように尋ねた。すると彼女はさらなる爆弾を投げ込んできた。

「そうよ。あんたはもう用なしなの。次期社長も明日からこの人よ。」

あまりにも馬鹿げた発言に、俺は一瞬言葉を失った。

俺、篠原拓也は36歳という若さで三星商事のCEOの座に就いた。それは会長の娘であるあゆみと結婚したことが大きかったと思う。しかし俺はそのコネに甘えることなく、入社以来資源分野で会社の業績を大きく伸ばし、その手腕を認められてきた。CEO就任の際にも、あゆみの父親でさえ「篠原拓也の方がふさわしい」と後押ししてくれたほどだ。

あゆみとの出会いは6年前。父親の取引先から持ちかけられたお見合いだった。俺は仕事に集中していて結婚に興味はなかったが、相手が業界で有名な三星商事社長の娘だと聞いて少し興味を持った。実際に会ってみると、彼女は経済やビジネスの話に明るく、一緒にいて退屈しなかった。

「父のことは知っていますよね。私たちが結婚すれば、あなたももっと大きなことができるかもしれませんね。」

そう言って彼女は微笑んだ。当時の俺はそれを自信や支えと受け取った。悪くないな、と思い、数ヶ月後には結婚を決めた。

結婚生活は最初は順調だった。温泉に行ったりドライブに行ったり、一緒にいる時間を大切にしていた。だが、月日が経つにつれて彼女の態度に違和感を感じ始めた。

「あなたが社長になれたのも父のおかげなのよ。」

彼女は何度もそう言って俺を見下すようになった。夫婦として過ごすことも減り、あゆみは用事を作っては出かけていくようになった。俺は家庭を大事にしたい気持ちもあり、表向きは流していたが、今思えばあの頃から彼女の本性は見え隠れしていたのかもしれない。

結婚して5年が過ぎ、会社の業績は倍に成長した。俺が三つ星商事を引っ張ってきたからこその結果だ。しかしあゆみは俺を敬遠し、いまだに父親の影響力がすべてだと思い込んでいる。最近では家にいる時間が極端に減り、電話で話す相手を妙に隠すようになっていた。直感で何かがおかしいと感じた。

そしてある日、会社で噂を聞いた。あゆみが俺の部下である高田孝太と親密な関係にあるというのだ。高田は営業部の若手で、成績は悪くないがどこか信用できない男だった。あゆみは父親がまだ会社に影響力を持っていると勘違いしている。高田はそれを利用して彼女に近づき、財産か地位を狙っているに違いない。バカな話だ。

俺は黙ってその事実を受け入れ、冷静に証拠を集めることにした。

そして迎えたその日。家に帰ると、あゆみが妙に上機嫌で笑顔を浮かべていた。何かを企んでいるかのようだ。俺が不穏な予感を感じていると、突然玄関のドアが開き、高田が入ってきた。

「私ね、あなたと離婚したいの。たくや、あなたはもう用なしなの。」

そう言ったあゆみに、俺は冷静に尋ねた。

「何言ってるんだ?」

「そうよ。あんたはもう用なしなの。夫も、次期社長も明日からこの高田さんよ。」

俺は一瞬言葉を失った。高田を社長に? それが彼女の本気の考えだとは信じられなかった。

「社長にするって、誰が?」

俺が苦笑いしながら問い返すと、彼女は自信満々に言い放った。

「私よ。だって私の父がこの会社を築いたんだから。あなたなんて、元々父のおかげで社長になれたんでしょ。だから父の力で高田さんを次の社長にするのよ。」

俺は内心呆れ果てたが、その場では笑みを浮かべることにした。

「それで俺と離婚ね。分かったよ。じゃあ離婚しようか。」

俺は何の感情も表に出さず淡々と答えた。あゆみは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに高田と手を取り合った。

「いいわ。早く手続きを進めましょう。明日から高田さんがこの家に住むから、あなたは出ていってね。」

完全に自分たちの勝ちだと思っているようだ。だが俺は、その場で彼女と高田を家から追い出すことに決めた。

「バカ言うな。お前ら二人が勝手をするのは勝手だが、出ていくのは俺じゃなく、お前らの方だ。」

そう言って二人に出口を差し示した。彼女は状況を理解していない。高田も戸惑いながら俺を見つめている。

「え? なんで? 私の家でしょ?」

「出ていけって言ってるんだよ。ここの家の名義は俺だ。俺の家なんだよ。お前らに住む権利はないんだ。今すぐ出ていけ。」

そう言い放つと、二人は呆然とした表情を浮かべた。だが、彼らがどう感じようと関係ない。俺は二人を家から追い出し、そのままドアを閉めた。

バカげた話だ。

あの二人とは完全に縁を切る。あゆみと高田の浮気は明らかだったが、それだけじゃない。俺はすでに弁護士と相談し、二人に対する法的措置を着々と進めていた。彼らがどんなに自信を持っていても、この状況は彼らの思い通りにはいかない。

数日後、俺はあゆみを弁護士事務所に呼び出し、離婚の話し合いを始めた。もちろん、浮気相手の高田にも同席してもらっている。彼らは三つ星商事を手に入れる気満々の様子でテーブルについた。

「ほら、サインしてあげるわよ。さっさと離婚届を出しなさいよ。」

テーブルを叩きながらあゆみが高圧的に言う。俺はその姿がいつまで続くのか楽しみでしょうがない。

「妻の不倫が原因での離婚なんだ。だから二人には慰謝料を請求させてもらう。そちらにもサインをしてもらうからな。」

俺が差し出した慰謝料請求書には、相場より多めの8桁の金額が記載されている。その金額を見たあゆみは一瞬目を見開いたが、すぐに強気な姿勢を見せた。

「慰謝料ぐらい払ってあげるわよ。高田さんが社長になったら、そんなのすぐに取り戻せるんだからね。」

「高田さんもいいわよね。」

「ああ。」

高田もそれに頷き、二人は慰謝料請求に同意のサインをした。彼女はまだ自分の立場を理解していない。俺は笑いたくなるのを必死に抑えながら書類を確認し、弁護士へ手渡した。

さあ、反撃の時間だ。

「では次に、この書類に目を通してほしい。」

そう言って俺は一冊のファイルを取り出した。それには、高田が会社の金を横領している証拠が記されている。

「嘘よ。高田さん、一体どういうことなの?」

高田は気まずそうに目をそらし、押し黙った。額には大粒の汗が浮かんでいる。

「最初は食事や買い物を接待だと偽って落とすところから始まり、味を占めたのか、最近じゃ取引先から集金した金を着服していたみたいだな。証拠は全部揃っているし、これは会社として刑事告訴させてもらう。」

そこまで言うと、高田はガタガタ震え出し、その場で土下座した。

「すみません! あゆみとのデート代を捻出したくて、つい出来心なんです! 使ったお金は弁償しますので、見逃してください!」

今更土下座したところで、時すでに遅しだ。横領についてはすでに社内調査が行われ、証拠は十分に揃っている。高田はあゆみに近づいたのだって、彼女を本気で愛していたわけじゃなく、彼女が用意する地位が目当てだったんだろう。高田は床に額を押し付けたまま、何も答えられない様子だ。

焦ったのはあゆみだった。

「嘘よ! 私のこと好きだって言っていたじゃない! 愛してるって言っていたじゃない!」

ロマンチックな言葉を間に受け、あゆみは泣き崩れていた。甘い言葉に騙され、社長にしてあげると安易に約束してしまった自分に気づいたのだ。

「あゆみ、社長になるのだって父親の意向だけじゃどうにもならない。株式会社である以上、役員たちの承認が必要だ。会社の株式にだって大きく影響する。ただの社員関係だけで社長の座を手に入れられるほど、世の中は甘くないんだ。」

あゆみは高田にすがりつき、涙を流しながら何度も問い詰めた。だが高田は完全に動揺しており、答えることもできない様子だった。

「現実を見ろ、あゆみ。お前が信じていたそいつの誠実さは、全て幻想だったんだよ。高田が社長になるなんてありえないし、そもそもそんな立場に立つ資格なんて彼にはない。」

あゆみはショックを受けたように泣き続けていたが、俺はもう情けをかけるつもりはなかった。

「弁護士がここにいるから、もう一度確認しておこう。離婚の手続きはすでに完了し、慰謝料の支払いも確定している。それから高田への訴訟も進行中だ。お前たちはこれから全ての責任を取ることになるんだ。」

あゆみは震える声で「お願い、許して」と呟いた。

「許す? 冗談はやめろよ。お前が愛人を連れてきて俺を裏切り、浮気をしていた時点で全ては決まっていたんだ。もう二度と戻ることなんてない。」

その後、俺は書類に目を通し、最後の手続きを弁護士に任せた。高田もあゆみも、これから彼らが選んだ道を歩んでいくしかない。それが彼らの報いだ。

「さあ、俺はもう行くよ。これで終わりだ。」

そう言い残して俺は弁護士事務所を後にした。外の空気は爽やかで、俺は深呼吸をして次の一歩を踏み出した。もう過去に縛られることはない。これからは俺の力でさらに三つ星商事を成長させ、自分自身も新しい未来に向かって進んでいくつもりだ。

それから数週間が過ぎた頃、ふと電話が鳴った。画面には彼女の名前が表示されている。俺は驚くこともなく無視をした。だが数日後にも同じように着信があり、その後も何度も彼女から電話がかかってきた。

仕方なく電話に出ると、震える声であゆみが訴えてきた。

「たくや、お願い戻ってきて。私は間違ってたの。あんな人と関わったことを後悔しているわ。私、あなたの力が必要なの。」

その言葉を聞いた瞬間、俺は何も感じなかった。むしろ彼女の甘い考えに呆れた。あゆみが今更俺に頼ってくる理由は明白だった。唯一頼りだった父親にも今回のことで見放され、頼るものを失ってしまったからだ。

「あゆみ、もう俺たちは終わったんだ。お前が選んだ道を、お前自身で歩め。」

俺は感情を抑えてそう言い放った。彼女が泣きながら何かを言い返してきたが、俺はそれ以上聞く必要はなかった。静かに電話を切り、そのまま連絡を絶った。

俺は再び自分の仕事に集中し、会社の成長をさらに加速させていった。三星商事は新たな事業にも進出し、俺の指揮の下で着実に成果を上げている。社員たちも俺を信頼し、共に未来を築いていくことを誇りに思っているようだ。

あゆみとの過去はもう過去だ。これからは俺自身の力で、さらなる成功と幸せを掴んでいく。

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