朝、インターホンが壊れるんじゃないかってくらい連打されて、ドアを開けたら、そこには義理の姉の子供たち三人が立ってたんだ。私は臨月の妊婦だ。医者からは切迫早産の可能性があるから絶対安静って言われてる。なのに義理の姉は子供たちを実家に置き去りにして「今日も彼氏とデートだから」って、あっけらかんと言い放ったんだ。「面倒見ません」って断ったはずなのに、私の母にまで預けやがった。私が児童相談所に連絡す…

朝、インターホンが壊れるんじゃないかってくらい連打されて、ドアを開けたら、そこには義理の姉の子供たち三人が立ってたんだ。私は臨月の妊婦だ。医者からは切迫早産の可能性があるから絶対安静って言われてる。なのに義理の姉は子供たちを実家に置き去りにして「今日も彼氏とデートだから」って、あっけらかんと言い放ったんだ。「面倒見ません」って断ったはずなのに、私の母にまで預けやがった。私が児童相談所に連絡す...

「まかさん、本当に困ります。これから妊婦健診なのに、今から子供たちを見ろだなんて。」

「何よ。義理の姉の言うことが聞けないわけ? 玄関先までならOKってことでしょ? 」

「いやいや、私が何か言う前に置いていきましたよね。許可なんて出してません。」

「だったらもっと早く言えばいいじゃん。今さらそんなこと言われても困るわよ。もうショッピングモールに着いちゃったんだから。」

そう言い残して、義理の姉・まかさんは自分の三人の男の子を私に押し付けたまま、彼氏とのデートへと消えていった。

私は臨月間近の妊婦。お腹の子はもうすぐ生まれるというのに、暴れまくる三人の面倒なんて見られるはずがない。

医者からも切迫早産の可能性があるから安静にと言われている。

それなのに夫の正木は言った。

「まさ、パチンコから帰れない? 」

「なんで?

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今やっといい台を見つけたところなんだけど。」

「まかさんにまた子供の面倒を押し付けられて、さすがにしんどいからちょっと手伝ってくれないかな。」

「そういや、頼むとかなんか言ってたな。姉ちゃんの子供三人、今日も頼むな。」

「練習? 今はそれどころじゃないの。切迫の可能性があるから安静にって先生からも言われてるんだよ。」

「妊娠は生理現象であって病気じゃないんだぞ。だから保険適用外なんだよ。」

「なんか論点ずれてない? 私は安静にしたいって話をしてるんだけど。」

「だから病気じゃないからダラダラすんなよって話。俺の母さんも妊娠中は普通に畑仕事してたぞ。」

「個人差あるから比べようがないよ。」

「でも調べてみたらみんな結構動いてるぞ。スクワットしたり、階段登り降りしたり、床掃除したり。お前は甘えすぎ。」

「それは臨月に入って出産を促すための動きでしょ。」

「あのなあ、何も完璧にやれって言ってるわけじゃないんだ。ただ必要最低限のことだけはやってくれないか。」

「最低限の家事はやってるつもりだけど。」

「どこが飯は冷食とかスーパーの惣菜だし、洗濯だって俺が着たいと思った服、洗ってないし。」

「切迫になりそうな状況なんだよ。今ぐらい目をつぶってほしいな。」

「いやいや、もう少ししっかりしてくれよ。お前は俺の稼ぎで生きてる専業主婦なんだからさ。」

「それはそうだけど。」

「それにさあ、出産費を出すのは俺なんだよ。あんまり俺やみんなを困らせるようなら、金は出せない。」

「でも本当に切迫の診断をもらってるの。子宮収縮抑制剤の薬も飲んでる。」

「もうそろそろ生まれてきても問題ないだろう。」

「36週以降がリなんだよ。今はまだ35週だし、37週になるまではお腹にいた方がいいんだって。」

「たった2週間しか違わないじゃん。」

「でも早く生まれたら肺の機能が未発達でNICUに入れられることになるんだよ。正木は自分の子供を危険にさらしてまでパチスロを優先するの? 」

「お、今当たりそうだからまた後で。」

ブツッと切れた電話に、私は絶望した

仕方なく私は母に電話をした。母は車で一時間かけて駆けつけてくれた。

「全く、私の娘にこんな思いをさせて。」

母は正木に説教してやると言い、電話をかけた。

「まさ君、聞いたわよ。娘にお姉さんの子供の面倒を押し付けてるんですって。」

「輝がやりたいって言ってたんですよ。俺は止めたんですけどね。」

「もちろん無理させるつもりはないですよ。」

「ならどうしてパチンコなんかに行ってるのよ。」

「輝が息抜きしておいでって言ってくれたんで。用事があればすぐにでも帰りますよ。」

「なら今すぐ帰ってきなさい。輝は困ってるわ。」

「え、本当ですか?

輝、俺の前では本音で話してくれないんですよね。」

「ちゃんと助けを求めていたはずよ。あなたが輝の声に耳を傾けなかっただけ。」

正木はそれでも「当たりが出ちゃったんで弾出し尽くしてから帰りますね」と、のんきに言い放った

その夜、私は正木に言った。

「明日も彼氏とデートだからよろしく。」

「さすがにもう無理です。今日の妊婦健診の結果、無理は金末絶対に安静にって先生に言われました。なのでもう絶対に面倒見ません。」

「深刻に受け止めすぎ。見てるだけでいいんだって。」

「見てるだけで済まない暴れっぷりですよ。お気に入りのマグカップやテレビだって壊されました。」

「それはごめんって。もう弁償したんだから許して。てか外で遊ばせればいいじゃん。」

「それはそれで泥だらけになって家に上がり込むので、結局家中汚くなって掃除するはめになるんですよ。」

「あの子ら泥遊びが好きだからね。」

「三人も子供を産んだまかさんなら妊婦の大変さ分かりますよね。」

「私そこまでひどくなかったよ。輝ちゃんが気にしすぎなんじゃないの? 神経質な人は坐骨も重いらしいよ。坐骨神経痛なのもそのせいなんじゃない? 」

「同じ女性なのに分かってくれないんですか? 」

「とにかく明日もよろしく。」

「無理です。」

翌朝、正木は言った。

「朝、まだ帰らないの?

「今から検診に行くところだよ。」

「今度は何? 」

「何って? 今日の妊婦健診の結果、赤ちゃんは順調だけど子宮頸管がギリギリだって。要するに絶対安静にしなさいってこと。今まで以上に家事ができなくなるから、正木にも協力してほしいの。」

「はあ。家事は女の仕事だろう。男にそんなことさせられてたまるか。」

「正木、変わっちゃったね。付き合っている時の正木はそんなんじゃなかった。」

「そうだっけ? 」

「付き合っている時は一緒に家事してくれたし、生理の時は温かい飲み物や痛み止めも用意してくれた。そんな正木だから結婚したのに。」

「それな、おかしいって気づいたんだよ。」

「へ?

何がおかしいの? 」

「姉ちゃんに結婚生活はどうかって聞かれてさ、家事の協力は当たり前で、家計も俺が全部出してるって答えたんだ。そうしたら『男のくせに旦那にそんなことさせられてんの? 』って言われてさ、よく考えたらそうだよなと思って。」

「前は輝も働いてたから目をつぶってたけど、今は会社やめちゃったじゃん。」

「育休取ろうとしたらいい顔されなかったからね。」

「今は専業主婦なんだからちゃんと家のことやらないと。」

「もちろんそのつもりだよ。でも妊娠中は自分だけの体じゃないからどうしても思い通りにはならないの。だから協力して欲しいってお願いしてるんだよ。」

「姉ちゃんなら絶対にそんなこと言わないんだけどな。」

「それはあくまでまかさんの考えでしょ。」

「まさ、一貫性ないんだね。」

「はあ、どういう意味。」

「正木は人に言われて簡単に価値観を変えるんだよ。それって自分の考えがないってことだよね。」

その日から、私は我慢するのをやめた。

「これからは我慢しないことにしたの。今後一切、まかさんの子供たちの面倒は見ません。家事も無理はしないことにします。」

「おかしいよ、専業主婦なのに何もやらないって宣言するなんて。」

「私は協力して欲しいってお願いしてるだけ。今この大変な時期だけでもいいから。」

「そんなこと言うなら出産費用は出さないからな。」

私は母に相談し、里帰り出産を検討し始めた。

そんなある日、実家のインターホンが連打された。

出てみると、そこにはまかさんの子供たちが立っていた。

まかさんは、私が実家にいることを知りながら、子供たちを置いていったのだ。

私は母に言った。

「この件、児童相談所に相談させてもらいますから。」

するとまかさんからは「育児の大変さが分からないのね」と、とんでもない返信が来た。

三時間後、母から電話が来た。

「正木君、輝が入院になりました。」

「え、輝に何かあったんですか? 」

「今日もあなたのお姉さんに子供たちを押し付けられてね、面倒を見ている最中に出血があったのよ。」

「子宮頸管が4cmも開いてた。まだ35週だから切迫早産で入院になったの。」

私が病院に連れて行ったのは、実家の近くの産婦人科だった。

正木に連絡し、入院セットを持ってきてもらおうとしたが、正木は言った。

「ああ、そんなの知りませんよ。輝が自分のことは全部自分でやるって俺に協力させてくれなかったので、すみませんけどそっちで買い揃えてください。」

「あなたね、それでも夫なの?

「協力したいのは山々ですけど、本当に知らないんで。」

「なら輝から鍵を借りてお邪魔するわ。」

「いやいや、俺今仕事中なんですよ。俺がいない時に勝手に上がり込まないでください。不法侵入です。」

「輝の許可は得てるし、緊急事態だから。」

「家主は俺なんで、もういいですか? 俺忙しいんですよ。」

正木は非協力的だった。

私の母はまかさんの子供たちの面倒も見ていたが、その日はもう見ていられないと伝えた。

「夕方までに迎えに来ないなら児童相談所に連絡も考えます。」

正木はまかさんに連絡した。

まかさんは「私、夜まで帰るつもりないよ。なんならこのまま彼の家に泊まりたいんだけど、代わりにあんたがい行ってくんない? 」と言った。

正木も「仕事終わりはパチチンコなんだよ」と断った。

夕方、誰も迎えに来なかったので、母は児童相談所に連絡した。

子供たちは保護された。

その夜、正木に伝えた。

「誰も迎えに来なかったので児童相談所に連絡しました。これまで何度も面倒を押し付けられたことも報告して、子供たちは児童相談所に連れて行ってもらいました。」

「何でそんなことしたんだよ! 姉が知ったらただじゃ済まないぞ。」

「ただじゃ済まないのは、あなたのお姉さんの方よ。」

翌日、まかさんは児童相談所で暴れたらしい。

職員や警官にも危害を加えたとして、その場で逮捕された。

正木は言った。

「仕事中に何かと思ったらどうでもいいよ、そんなこと。」

「実の姉が逮捕されたんだよ。何とも思わないの?

「知るかよ、あんな人。」
それから正木は、私への不満を並べ立て始めた。
「掃除も洗濯もしないとか主婦失格だろ。」
「俺の世話一つしてくれないの。」
「何もしてないのに体調崩して入院っていいご身分だな。」

私は正木を見て、決心した。

「分かった。じゃあ陣痛が来ても、子供が生まれても、もう正木には何も報告しない。」

「そうしてくれ。その方が仕事とパチンコに集中できて助かる。」

一週間後、退院した私は、実家に帰った。
すると正木からは「まだ帰ってこないの? 」と、妊娠の経過を心配するでもなく、ただ帰宅を促すようなLINEが来た。

私が無事に37週になったと伝えると、正木は言った。

「そこに私の居場所はもうないよね。」

「正木、彼女がいたんだね。」

「何言ってんの? 」

「お母さんが入院セットを取りに行った時、あったんだって。全く知らない女の人に。」

正木は不貞を認めた。私は弁護士に相談し、離婚を決意した。

まかさんには執行猶予付きの判決が下り、彼氏には振られ、子供たちは実家に引き取られた。

正木とは弁護士経由で離婚し、慰謝料を請求した。

正木は会社を辞め、借金してパチスロに通い詰める地獄のような日々を送っているらしい。

そして私は、無事に38週で子供を出産した。

長時間の陣痛に耐え、体はボロボロだったが、無事に生まれ、出会えた幸せは何者にも代えがたい。

これから先、どんなことがあっても、私が守るからね。