「お母さん、今月の仕送りがまだ届いてないんですけど」——私がそう言うと、6年間仕送りをしてきた義母は、電話越しに吐き捨てるように言った。「中卒のあんたの金なんか、息子の稼ぎでしょ。さっさと振り込みなさいよ」 私はずっと我慢してきた。家族になりたくて。でも、先日の出産祝いで、病室の前でこう言われた。「あんたはダメ。中卒が選んだものなんて、赤ちゃんに触れさせたくないのよ」…

「お母さん、今月の仕送りがまだ届いてないんですけど」——私がそう言うと、6年間仕送りをしてきた義母は、電話越しに吐き捨てるように言った。「中卒のあんたの金なんか、息子の稼ぎでしょ。さっさと振り込みなさいよ」 私はずっと我慢してきた。家族になりたくて。でも、先日の出産祝いで、病室の前でこう言われた。「あんたはダメ。中卒が選んだものなんて、赤ちゃんに触れさせたくないのよ」...

「あいさん、今月の仕送り、まだ届いてないわよ。遅いのよ。毎回ちゃんとしてくれない?」

電話の向こうの義母の声は、最初から刺々しかった。私はすぐに謝った。

「すみません。今月は25日が土曜なので、月曜に振り込みになります」

「言い訳しないの? 中卒だから振り込みの仕組みも分からないの? 夫の稼ぎを振り込むだけの簡単な作業くらい、さっさとやってほしいわ」

「息子の会社でお手伝いしかしてないから、ちゃんとしたこともできないのよ。そんなんだから、集まりにも呼ばれないの。自覚ないのかしら?」

耳が痛かった。でも、私は耐えることに慣れていた。6年間、ずっとそうしてきた。

「それじゃあ、今年も」

「え?」

「正月は来なくていいから。近所に中卒の嫁がいるのがバレたくないのよ」

「……分かりました」

電話を切った後、私はしばらくその場に立ち尽くしていた。でも、数週間後には別の予定があった。義妹のみゆさんの出産祝いだ。

「あ、いい。今日、みゆさんの出産祝いに行ってくる」

夫のけ太さんに伝えると、彼は驚いた顔をした。

「ああ、例の件ね。あんた、この前も正月来るなって言われたばっかじゃん」

「うん。でも、赤ちゃんは関係ないし、お祝いくらいさせてほしいから」

「あんたは優しすぎるよ。自分のことを馬鹿にする人の子供なんて、私は祝えないな。そりゃ子供に罪はないけどさ」

「その辺りは割り切ろうと思って」

「まあ、何かあったらすぐ連絡しなよ。あんた、すぐ抱え込んじゃうから」

「うん。ありがとう」

3時間後、私は病院に着いた。

「お母さん、病院に到着しました。部屋番号を教えてもらえませんか? 受付で名前を記載しないといけなくて」

返信はなかった。30分後、もう一度連絡した。

「すみません。もう30分待っているのですが、夫も電話してますし。どこにいるんですか?」

ようやく返ってきた返信は、冷たかった。

「あら、やだ。本当に来たの? 出産祝いに、勝手に中卒夫婦が紛れ込んでるわ」

「え、お母さん。け太さんが招待されたんですけど」

「け太は家族だから入っていいわよ。でも、あんたはダメ」

「どういう意味ですか? 私も一緒に招待されたと思っていたんですが」

「誰があんたを招待したのよ。家族だけで祝うに決まってるでしょ」

「あの、赤ちゃんのお祝いだけでも渡させてもらえませんか? 一目見たら帰りますから」

「いらないって言ってるでしょ。中卒が選んだものなんて、赤ちゃんに触れさせたくないのよ」

「……分かりました。では、失礼します」

「さっさと消えろ」

私は病院の廊下を早足で歩きながら、涙を必死にこらえた。渡せなかったおくるみを抱えたまま、私はその場を離れた。

10分後、私のスマホに愛からの連絡が入った。

「ああ、よかった。ちゃんとお姉さん帰ったんだ。これで一安心。病室に来たらどうしようかとずっと気が気じゃなかったんですよね」

愛は、私と同じ施設で育った幼馴染で、今は探偵をしている。彼女にしてみれば、私は姉のような存在なのかもしれない。

「みゆさん、どうしてそんなことを?」

「正直、中卒の人に赤ちゃん触られたくなかったんだよね。汚い金を子供に移すな。私の可愛い赤ちゃんの目にも映したくないんで。お坊さんは帰って」

「そう……あなたもそういう態度なのね。よく分かったわ」

「は? 何それ? 上から目線?」

「お母さんが『出産祝い、置いて行ったみたいだけど、中卒が選んだものなんていらないから、母さんが捨てるって』って言ってたよ。そうですか。分かりました。好きにしてください」

翌日、義母から怒りの電話がかかってきた。

「昨日はよくもやってくれたわね」

「え、お母さん?」

「みゆに変なLINE送ったんでしょ? あの子は出産直後で疲れてるのよ。それなのに勝手に押しかけてきて。赤ちゃんだって生まれたばかりで免疫もないのに、あんたが来たせいでストレスかかったのよ」

「招待されたから伺ったんですけど、それに会わずに帰りました」

「け太を招待したの。あんたは呼んでないって、何度言わせるの? おかげでみゆも泣いてたわよ。せっかくのお祝いを台無しにされたって」

「台無し? 病室にすら入ってもいないですけど」

「入ろうとしたでしょ。全く空気読めないわね。これだから中卒は。あんたが余計なことをしなければ、昨日はみゆにとって最高の日だったの。今後はうちにも来ないでちょうだい」

「実家にもですか?」

「他人はこの家から出てけ。あんたはそれだけのことをしたのよ。それと、今月の仕送りまだよね。反省してるなら、早く振り込みなさい。詫びを入れて、少し多めに振り込みなさい。くっ、中卒のせいでこっちは大迷惑だわ」

電話が切れた。私は深く息を吐いた。

1時間後、愛に連絡した。

「あい、聞いてほしいことがあるの」

「どうしたの? なんかテンション低いけど」

「出産祝い、追い出されたの。中卒夫婦は他人だって。招待しといて追い出す。何様?」

「はぁ?」

「みゆにも『汚い金を映すな』って言われたわ。一生懸命考えた出産祝いの品は、捨てるって」

「ふざけんな。あんたがどれだけ気持ち込めて選んだか、向こうは知ってるんでしょ?」

「うん。何度も聞いてきたし、欲しいのはこれってリクエストまでしてきたのよ。それで、迷惑かけたからって、仕送りを増やすよう最速の連絡までしてきたわ」

「どんだけ図々しいのよ。中卒は他人だから出ていけ。でも金はよこせ。それ、人間として終わってるよ」

「だよね」

「てかさ、前から聞きたかったんだけど、なんで6年も耐えてたの? 優しいっていうには、ちょっとお人好しすぎない?」

「私、施設で育ったでしょ?」

「うん」

「だから、家族ってものに憧れがあったの。血の繋がった家族が欲しかった。け太と結婚して、やっと家族ができたと思った。お母さんもみゆさんも、いつか私を受け入れてくれるって」

「中卒だから見下されてるだけで、時間をかければ認めてくれるって信じてた。青いね」

「でも昨日分かった。6年間仕送りして、何を言われても笑って耐えて、出産祝いまで選んで持っていったのに、私は結局、人として見てもらえなかった。もう時間の問題じゃない。最初から認める気なんてなかったんだよね」

「そうだね。残酷だけど、そういうことだよ」

「あい、お願いがあるの」

「何?」

「お母さんの生活、調べてほしいの。仕送りがどう使われてるか。かなりの金額を振り込んでるの。それだけ必要って、少しおかしくて」

「本気?」

「本気。もう我慢しない。家族になれないなら、他人として向き合うわ」

「オッケー。そう来なくっちゃ。任せな。高信所探偵の腕の見せどころね」

1週間後、愛が調査結果を持ってきた。

「青い、調査終わったよ。結構やばいの出てきたわ」

「愛が『やばい』っていうのは、相当ね。教えて」

「まずお母さんね。近所には『亡き夫の遺産と年金で悠々自活してます』って言ってる」

「遺産? 夫のお父さんって、確か借金残して亡くなったはずだけど」

「そう。遺産なんてゼロ。遺族年金は月8万。つまり、あんたの仕送り25万がないと生活できないのよ。なのに近所では『息子夫婦が中卒同士で結婚した。恥ずかしいから付き合いないわ』って言いふらしてるみたい」

「お母さんならやりそうね。次は?」

「仕送り25万のうち、月10万を義妹のみゆに横流ししてた」

「……え?」

「みゆの出産費用50万円も、全部仕送りから出てる」

「出産費用まで……」

「みゆさんは、お母さんの貯金だと思ってるってこと?」

「そう。お母さんはみゆさんに『お母さんの貯金から出してあげるわ』って言ってた。全部あんたの金なのにね」

「つまり、私が稼いだお金で出産して、その出産祝いの場から私を追い出したってこと?」

「そういうこと。一周回って、笑えてきたわ」

「あともう1つ。これが一番やばい」

「まだあるの?」

「実はさ、翌日」

その日、私は義母のもとを訪れた。

「お母さん、仕送りの件でお伝えしたいことがあります」

「何? 仕送りのこと? ちゃんと振り込みなさいよ。金額を増やすっていう相談なら、受け付けるけど」

「今月から、仕送りを停止します」

「はぁ? 何言ってるの、あんた?」

「先日、お母さんは私たちを『他人』だとおっしゃいましたよね。家族だけで祝うから、他人はこの家から出てけと」

「それがどうしたのよ」

「では、他人に仕送りする義理はありませんよね」

「ちょっと待ちなさい。それとこれは話が違うでしょう。大体これは親子の話。嫁がしゃしゃり出てくるな」

「お母さんは勘違いされてますが、仕送りは私の給料から出しています。け太さんのお金じゃないんです」

「け太の口座から振り込まれてるわよ。大体、根に持っているようだけどね。出産祝いに来るなって言ったのは、みゆと赤ちゃんのためよ。産後で神経が過敏になってるのだから、守っただけ。それの何が悪いって言うの?」

「でも、お母さんは仕送りをもらう立場ですよね。それなのにあんな態度って」

「子供を守ると、そうなるの。でも仕送りは生活のこと。家族としての義務でしょう」

「出産祝いでは他人で、仕送りでは家族の義務ですか?」

「当たり前でしょ。都合がいいとか、そういう話じゃないの。息子が母親を養うのは当然のことよ。それに、あなたの給料から出してるって嘘ばっかり。25万もあなたが出せるわけないじゃない」

「会社の経営者は、私ですが」

「え?」

「ああ。以前、私が経営をしていると言っても、『中卒にそんなことできるわけない』って信じてもらえませんでしたっけ? 営業も契約も経理も、全部私がやっていますよ。仕送りはトラブル防止のため、夫の口座に毎月私が入金していました。6年間、合計1800万円ですね」

「嘘よ。中卒のあんたにそんな稼ぎがあるわけない」

「宅建もFPも、独学で取りました。中卒でも勉強はできるんですよ。信じないなら、振り込み記録をお見せしましょうか。夫名義の口座の入金履歴、全部残してますので」

「……そう」

「そんなお母さんが『他人』と追い出した人間が、6年間あなたの生活を支えていました。しかし、私は他人ですよね。だから、仕送りをやめるんです。夫も同意です」

「いいわ。なら、離婚させる」

「なんでそうなるんですか?」

「中卒の嫁なんかと別れさせてやるわ。息子は母親の味方よ。あんたが出て行けば、息子の稼ぎは全部うちに戻ってくるんだから」

「お母さん、随分都合のいい話ですね。そんなお母さんに、夫からの伝言があります」

「何よ?」

「『母さん。前に仕送りは青いが出してるって伝えたよな。あの時信じなかっただろ。今回の件で俺も愛想が尽きた。あとは自分で生きてくれ』——だそうです」

「そんな……け太が私より嫁の味方をするっていうの?」

「夫は何度も伝えようとしていました。でも、あなたは聞く耳を持たなかったんです。離婚はしません。むしろ、母さんとは距離を置くと言っています。分かりましたか? 私たちは本当に『他人』になるんです」

同時刻。みゆさんのもとには、愛が訪れていた。

「初めまして。青いの友人の愛って言います。探偵やってるものですけど」

「は? 誰? あの中卒女の友達?」

「いや、仕事っていうかなんというか。ちょっと質問したくて。みゆさん、お母さんに出してもらってますよね、生活費」

「そうだけど。お母さんの貯金からだし、何か問題でも?」

「じゃあ、お母さんが何で稼いでるか知ってる? 年金とか貯金とかでしょ? 遺族年金、月8万だよね。そこから生活して、あんたに月10万円援助して、出産費を50万も出せる? 大卒なのに、計算合わないのは気になりませんか?」

「何が言いたいの?」

「お母さん、あんたに嘘ついてますよ」

「嘘って、何の話?」

「いい? お兄さんの口座から、毎月お母さんに振り込まれてるお金がある。それがどこから来てるか、お母さんに聞いてみなよ」

「兄が母にお金送ってるなんて、聞いたことないんだけど」

「そりゃそうだよ。お母さんが隠してたんだから。あと、あんたが中卒のバカって追い出した相手が何者か、ちゃんと調べた方がいいですよ。大卒の肩書き、吹き飛ぶから」

「脅してるの?」

「事実を伝えてるだけですよ。私は探偵なんで。嘘は言わないですから。確かめるかどうかは、あんた次第ですけどね」

同日、みゆさんは義母に問い詰めた。

「お母さん、これどういうこと? 出産費用、お兄さんの仕送りから出てたって本当?」

「誰にそんなこと?」

「あの中卒の友達って探偵に言われたんだけど。私への毎月の援助も、全部仕送りだったの?」

「あ、あれはその……嘘ついてたの? 自分の貯金って言ってたのに」

「みゆ、落ち着きなさい」

「お母さんはあんたのためにそのお金を使ってたんでしょ? 青いさんが稼いだお金でしょ? 私がバカって言った相手のお金で出産してたってこと? 恥ずかしすぎるんだけど」

「黙りなさい。私だって好きでこんなことしてるわけじゃないわよ。お父さんが借金残して、遺族年金8万円で暮らせると思う? 息子に頭下げて仕送りもらうしかなかったの。でも、近所に『息子の仕送りで生活してます』なんて言えるわけないじゃない。大体、あなただって青いさんにあんな態度取ってたじゃない」

「私だってお母さんに20年間『ブスのくせに』って言われ続けたのよ。せめて中卒の嫁より上でいたかったの。それの何が悪いのよ」

「知らないわよ、そんなの。お母さんの見えのために、私まで恥かいてるじゃん。大体、お母さんが『中卒は家族じゃない』って教えたから、私もそう思ってたのに」

「あんただって、中卒の兄嫁をバカにしてたでしょ。『大卒大卒』って偉そうに言ってるけど、就職すらできなかったくせに」

「それは……大卒って肩書きしかないって、お母さんに言われたくない。就職できなかったのは、大学の成績も……中卒の兄嫁が会社経営してて、大卒の私は就職もできない。そんなの認めたくなかっただけよ」

2週間後。

「青いさん、お願い。仕送りを再開して」

「どうしてですか? 私は他人ですよね」

「言い過ぎたわ。認めるから」

「そうやって、いきなり泣きついてきたのは、お母さんにはカードローンがあるからですよね」

「な、なんでそれを……」

「調べてもらったんです。聞いた時は驚きました。カードローンの返済は毎月引き落とされるわけですが、仕送りが止まったら、払えないですよね。200万も借りているんですから」

「でも、あれは生活のためで……」

「審査の時、収入欄に何て書きました? う……それは、不動産収入って書きましたよね。『遺族年金と不動産収入』と偽って申告した。なんでそんなことまで?」

「私の親友は、とても優秀な高信所探偵なんです。ああ、ちなみに彼女も中卒ですよ。中卒に追い詰められちゃいましたね」

「こんなことって……」

「話を戻しますが、嘘の収入を書いたのなら、それは虚偽申告ですよ。銀行に知られたら、一括返済を求められますね」

「ま、待って。それだけは……」

「お母さんは中卒を馬鹿にしていましたが、その中卒のおかげで生活ができていたんです。それを、よく理解してくださいね」

数日後、今度はみゆさんから電話がかかってきた。

「青いさん、あんた、旦那に全部ばらしたわね」

「ええ、スクショを見せました。『このようにとても精神的に不安定ですので、どうぞ支えてください』と言ったまでです」

「あんたが変なこと言ったせいで、離婚切り出されたんだけど」

「そりゃ、人を平気でバカ扱いする人と家族をやるのは難しいと思いますよ。援助があるってこともバレて、『兄嫁の金で生活してたのに追い出したのか』って呆けられて、もう口も聞いてくれない」

「ご主人さん、まともな方ですね。あとはご夫婦で話し合えば良いのでは。あなたがきちんと反省していれば、旦那さんも許すかもしれません。まあ、無理でしょうけど」

「は?」

「元々実母があの人ですし、結婚するつもりはなかったんでしょう、旦那さん。……子供ができたことで無理に結婚を決めたそうですけど。相手側の親戚からも反対されていたなら、無理に婚姻関係を続けることもないですよね。それはうまく話し合えば、養育費は払ってもらえるんじゃないですか? その辺りの後始末くらい、自分でしてください」

数日後、義母から泣きつくような電話がかかってきた。

「青いさん、お願い。助けて。ローンは一括返済を求められて、みゆは離婚しそうで、近所には嘘がばれて居場所がないの。もう何もない。あんたしか頼れる人がいないの」

「お母さん、中卒の『他人』に助けを求めないでください」

「それは言い過ぎたって、認めてるでしょう」

「逆切れですか? 実際、中卒じゃない。学歴がないのは事実でしょ」

「私が中卒だったのは、両親が2人とも病気で亡くなって、施設に行き、頑張って働いてきたからです」

「その努力があるなら、実家を敬うくらいできるんじゃない?」

「ずっと努力してきたんですよ。結婚が決まった時、お母さんに認めてもらいたくて、料理教室に通いました。中卒だから、せめて家事くらいって、毎日お弁当の練習をしていました」

「そうだったの? ……初めてお母さんの家に行った日だって、好みが分からなかったから、け太さんに手土産の好みを何度も聞きました。でも、私が持って行ったら、包みも開けずに『こんな安物』って言われましたよね。それでも諦めなかった。一度でいいから『ありがとう』って言ってもらえたら、それだけで報われると思ってましたから」

「……あ、あんた、言ったわよ」

「いいえ、一度も言われませんでした。施設で育った私には家族がいなかったから、お母さんが初めてのお母さんだったんです。だから、何を言われても耐えられた。嫌われてるんじゃなくて、まだ認めてもらえてないだけだって、自分に言い聞かせてた。でも、出産祝いを渡した時に分かりました。赤ちゃんのためにって選んだおくるみを、『中卒が触ったものなんかいらない』と捨てられた。あの瞬間に、全部わかったんです。お母さんは最初から、私を家族にする気なんてなかったって」

「それは……」

「6年間の仕送りも、料理教室も、贈り物も、全部意味がなかった。だから、もう終わりにします。お望み通り、他人として生きていきます」

「お願いよ。それなら、せめて今回だけ。今回だけでいいから、仕送りよ」

「夫婦で話し合って決めたことです。そして、夫からの最後の伝言があります。『母さん、仕送りを再開する気はない。でも、学歴で人を見下すのをやめたら、いつか話くらいはする』。そう言っていました」

「するわ。もう見下したりしないから。ごめんなさい」

「その言葉、信じられません。だって、6年間お母さんが変わらなかったのは、見てきたので」

「……!」

「さようなら、お母さん。もう、お母さんじゃありませんけど」

数日後。愛が言った。

「青い、今度の休みに施設に顔出さない?」

「施設? どうして?」

「今年中学卒業する子がさ、進学せずに就職するんだって、不安がってるから。先輩として話してやってよ」

「うん。分かった。行くわ。私たちの話してあげたいな」

「でしょ? 中卒でもちゃんと生きていけって、あんたが一番の証拠だもん」

「愛もね。私はまあ、相変わらず地味に探偵やってるだけだけど」

「地味じゃないよ。愛がいなかったら、私はまだ我慢してたと思うから」

「当然でしょ。あんたと私、施設で一緒に育った家族じゃん」

「そうだね。家族って、やっぱり思い合っていくものなのね」

その後、義母はカードローンの200万円の一括返済を求められ、虚偽申告の件で銀行からブラックリスト入りした。遺族年金月8万だけでは家賃も払えず、家賃5万円のワンルームアパートに引っ越したそうだ。近所付き合いは全て途絶え、『遺産で悠々自活』と嘘をついていた人々からは、完全に無視されていると聞く。

みゆさんは夫から家計の嘘を理由に離婚を突きつけられた。養育費を多く払って別れたそうだ。就職先も見つからず、赤ちゃんを抱えてパートを掛け持ちする生活。お母さんに頼ろうにも、お母さんも生活が困窮し、「大卒なのに、どうして」と嘆いているのだとか。

一方、私たち夫婦は会社を順調に成長させ、穏やかな日々を送っている。愛とも定期的に交流しており、私たちは姉妹のように接している。家族は血の繋がりだけじゃない。それを、私たち2人が証明していきます。

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