昨日の朝、リビングでコーヒーを飲んでいたら、健太が突然「悪いけど、やっぱり離婚してくれ」って言い出したの。今日が結婚式なのに。頭が真っ白になって問い詰めても、彼は「結婚ってめんどくせえなって。今のうちに片付けたいんだよ」の一点張り。式まであと三時間、招待客はもう会場に集まり始めてる。なのに彼は署名済みの離婚届を差し出してきた。「気づいてなかったのはお前が鈍感だからだろ」「財産分与とか面倒だし…

昨日の朝、リビングでコーヒーを飲んでいたら、健太が突然「悪いけど、やっぱり離婚してくれ」って言い出したの。今日が結婚式なのに。頭が真っ白になって問い詰めても、彼は「結婚ってめんどくせえなって。今のうちに片付けたいんだよ」の一点張り。式まであと三時間、招待客はもう会場に集まり始めてる。なのに彼は署名済みの離婚届を差し出してきた。「気づいてなかったのはお前が鈍感だからだろ」「財産分与とか面倒だし...

結婚式当日の朝、リビングでコーヒーを飲んでいた私に、健太が信じられない言葉を投げつけてきた。

「悪いけど、やっぱり離婚してくれ。」

「え、ちょっと何言ってるの? 今日が結婚式よ? 」

「いや、考えたんだけどさ。結婚ってめんどくせえなって。今のうちに片付けたいんだよ。」

「片付けるって、私たちの結婚のことを? 」

「そう。今日離婚届を出せば一番早いだろ。」

式まであと三時間。招待客はもう会場に集まり始めているというのに、彼は離婚届を差し出してきた。しかも、すでに自分の欄には署名済みだという。

「冗談でしょ?

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「マジだって。本気で言ってる。」

「どうして急にそんなこと言うの? 何かあったの? ちゃんと説明してよ。」

「色々考えたんだ。俺たち、合わないと思う。このまま結婚生活を続けても、お互い不幸になるだけだ。」

「合わない? 今まで何も言わなかったのに、急に?

「気づいてなかったのはお前が鈍感だからだろ。」

「なんで今なのよ。式まで三時間しかないのに。」

「早く決断した方がいいと思って。結婚してすぐなら、お互い失うものも少ないだろう。財産分与とか面倒だしな。」

「失うもの? 私たち、式の準備に半年かけたのよ。もうすでにたくさんのものを失ってるって、分からない? 」

「まあ、そういう細かいことはいいじゃん。」

「細かいことですって? 」

私は頭が真っ白になった。式場のキャンセル費用はどうするのか、お祝いをくれた人たちへの対応はどうするのか、すべてを問い詰めたが、健太は「なんとかなるって」「適当にやればいいって」と繰り返すだけだった。

「つまり、式場にいる私に全部丸投げして、あなたは何もせず逃げるっていうの?

「平謝りしとけばいいじゃん。お前が考えすぎなんだよ。」

私は深く息を吸った。もう何を言っても無駄だと分かった。

「本当に後悔しないの? 」

「全然。むしろすっきりした。俺はもう決めたからさ。お前も早く決断してくれよ。」

「……分かった。」

私は携帯を取り出し、親友のちひろに電話をかけた。

「ちひろ、どうしよう。健太が急に離婚したいって。」

「え? 離婚? どういうこと?

結婚式、今日でしょ? 」

「式当日の朝に、いきなり離婚してくれってLINEが来たの。しかも離婚届はもう書いてあるから、私も書いてくれって。」

「ありえないんですけど。何それ、最低すぎる。理由は何だって言ってたの? 」

「合わないから、早めに決断した方がいいって。今まで何も言ってなかったのに。」

「そりゃショックだよ。本当に何考えてるんだろうね。もしかして、他に好きな人ができたとか? 」

「そうかもしれないね……私、何か悪いことしたのかな。」

「ひなは悪くないよ。健太さんがおかしいだけだ。」

「でも、本当に私が至らなかったのかもしれない。」

「違うって。ひなは十分頑張ってたよ。それより、もう一度話し合ってみたら?

「……そうする。やっぱり好きだから。一度だけ、もう一度聞いてみる。」

三十分後、私はもう一度だけ健太に問いかけた。

「もう一度だけ聞くけど、本当に離婚でいいの? 」

「しつこいなあ。もう決めたって。お前だって俺と一緒にいても幸せじゃないだろ。」

「私はそんなこと思ったことなかったけど。」

「まあいいじゃん。離婚届、書いてくれよ。早くしないと面倒なことになるし。」

「面倒なこと? 」

「うちの親も離婚する時、財産分与で揉めたんだよ。結婚生活が長引くと、お互いの金の持ち分が曖昧になるからな。泥沼になるんだよ。俺はそれを見てきたから、トラウマなんだよ。」

「確かに、あなたのご両親が相当揉めたのは聞いてたわね。」

「だろう? だから俺たちは早く別れた方が傷が浅いんだよ。」

「それならそもそも、なぜ結婚なんて考えたのよ。」

「お前とはいい感じになれるかと思ったんだが、なんかダメだなって。」

「その『ダメだな』っていう具体的な理由を一つも言わずに、離婚したいって言うのはわがままだと思わない?

「これはお前のためでもあるんだよ。俺、優しいだろ? だから今のうちに離婚届を出そうぜ。」

「……意味が分からない。でも、分かった。あなたの気持ちは変わらないし、私もこんな身勝手な人とは一緒にいたくない。離婚届、書くわ。」

「お、やっと分かってくれたか。さすが話が早い。」

私は離婚届に名前を書いた。その瞬間、胸のどこかで何かが静かに冷めていくのを感じていた。

その頃、ちひろから連絡が来た。

「ひな、大丈夫? 話し合い、どうだった? 」

「結局、離婚することになった。」

「え、マジで?

健太さん、最低じゃん。」

「なんか、もう疲れちゃった。離婚は私のためだとか言い始めてさ。本当に信じられない。」

「ねえ、ひな。私、確か式場に着いてるんだけど。話を聞いてあげたいから、控え室に行くわ。」

「ごめんね、無理させて。」

「いいってことよ。私も参考にさせてもらうからさ。」

「参考? 」

「もしかしたら今彼と結婚できるかもしれないから。もし浮気されたらどうするか、予習みたいなものよ。気にしないで。すぐそっち行くから。」

「ありがとう。」

三十分後、ちひろは私と会ってから、健太に電話をかけていた。

「健太、ひなと会ってきたよ。」

「は? 何してんだよ、一体。俺たちの関係がバレたらどうすんだ。」

「だって、話を聞いて欲しいって呼び出されたら、親友として行かないわけにはいかないでしょ。」

「怪しまれなかったか? 」

「完全に落ち込んでてさ。全然気づいてないみたい。ちょろいよね。」

「まじか。それならいいか。約束してくれて助かったよ。」

「当たり前でしょ。責任は取るって言ったからね。にしても私って天才かも。演技力、すごいでしょ?

ひなは私のこと完全に信じてるし。」

「あいつばっかだよな。俺たちの関係に気づかなくて。」

「あとは離婚届を出すだけね。楽しみ。」

「俺もお前と堂々と一緒にいられる。やっと俺たちの時代が来るな。」

「うん。待ってたよ、この日を。」

翌日、健太は離婚届を出してきた。

「離婚届、出してきたぞ。これでお互い自由だな。」

「そうね。ところで、一つ確認したいことがあるんだけど。」

「何だ? 」

「離婚届の婚姻日、見た? 」

「婚姻日? 何それ?

「結婚した日よ。法的にね。」

「え? そんなの昨日だろ? 」

「式をあげる予定だったのは昨日。でも私たち、一年前に婚姻届を出しているわよね。式はちゃんとしたいからって、入籍だけ先にしたの。忘れちゃったの? 」

「……え?

何それ? 聞いてないけど。」

「一緒に区役所に出したのに、忘れるなんてひどいわ。でもそういえば、あなたは『結婚式をあげて初めて夫婦だ』とか言ってたわね。籍だけじゃ結婚した感じがしないって。それで忘れてたのかしら。」

「じゃあ、俺たち……法的には一年間、完全な夫婦だったってことか。」

「ええ、そうなるわね。あなたは離婚する時、結婚期間が長いと面倒だから早く終わらせたかったんでしょ? でも残念。書類上はきちんと夫婦だったのよ。そして私はそのことを覚えていたのに、あっさり離婚届にサインした。おかしいと思わなかった? 」

「は?

どういうこと? 」

「ごめんなさいね。私もあなたに嘘をついてたの。実は私も同じだったのよ。早く離婚したかった。だからあなたが離婚を言い出してくれて、ちょうど良かったわ。」

「何がどうなってるんだ……お前、本当に離婚を考えてたのか? 」

「そうよ。私の演技力、すごかったでしょ? 一応最後の情けで、本当に大丈夫かって聞いたけど、あなたが『大丈夫』って言うから、そのまま進めたの。式場のキャンセル費用とか慰謝料のことは心配だったけど、大丈夫そうで安心したわ。」

「ちょっと待てよ。式場費用は折半じゃないのか?

「折半? 誰がそんなこと言ったの? 私は一度も了承してないわ。あなたが勝手に決めただけよ。結婚式が中止になったのは、あなたが一方的に離婚を言い出して、式場にすら来なかったから。誰がどう見てもあなたが悪いわ。式場もあなたにキャンセル料を請求するって。」

「いや待てよ。金はお互い折半だったんだぞ。ならキャンセル料も折半じゃないとおかしいだろう。」

「今さらあなたの意見なんて聞くつもりはないわ。先にそうしたのはあなたでしょ。あなた、私のことを何だと思ってたの? 『合わない』『不幸になる』って、全部あなたの都合じゃない。私の気持ちは一度も聞かなかったわよね。結婚式当日の朝に離婚要求とか、普通の人間ならしないわよ。どれだけ私を舐めてたの?

どうせ泣いて引き止めるとでも思ってた? 」

「そんなつもりじゃ……お前なら納得してくれると思って。」

「それが甘えなのよ。ふざけんじゃないわよ。私はあなたみたいなことはしない。徹底的にやるから。これから式場費用と慰謝料、全部請求するわ。弁護士さんが計算してくれたけど、合計で八百万円くらいかしら。」

「八百万? そんな金、俺にあるわけないだろ。」

「知らないわよ。あなたが勝手に決めたことの責任は、自分で取ってね。早い方がいいんでしょ? 早く払ってもらえると助かるわ。」

「待ってくれ。せめて分割で……」

「弁護士さんと相談してね。私はもう関係ないから。」

「お前、本当は最初から全部知ってたのか?

「当たり前じゃない。まさか式当日に離婚要求してくるとは思わなかったけど、あなたは内心ヒヤヒヤしてたでしょう。なんせ私が浮気相手を招待してたから。」

「な、何言って……? 」

「ああ、彼女に弱みを握られてたのも全部演技だったから、本気にしないでね。私が『何が悪かったんだろう』って泣いてみせたら、あなたに報告してたでしょ? 」

「まさか……バレてたのか? 」

「さあ、それもそのうち分かるわよ。それじゃあ、私は浮気相手とお話ししてくるわ。でも、そうね。あなたがいくつか情報をくれたら、もしかしたら慰謝料を減額してあげるかもしれないわよ。」

「本当か?

「話す気になった? 」

「話す。全部話すから。」

「それじゃあ、こんなに急いで離婚したがった本当の理由も、もちろん教えてくれるわよね。」

「……あいつが妊娠したって。結婚しないと下ろすって言われて。」

「へえ。そうなの。他には? 」

「浮気はどこで会ってたの? 」

「三ヶ月前から週に二回くらい。駅前のホテルとか、あいつの家とか……」

「なるほどね。今の発言、全部録音したから弁護士さんに渡しておくわ。これで『浮気してませんでした』なんて言わせないわよ。」

「くそっ。お前、騙したのか?

一時間後、私はちひろと会っていた。

「ちひろ、ありがとう。色々相談に乗ってくれて。」

「どういたしまして。元気出た? 」

「うん。おかげですっきりしたよ。」

「よかった。ところで、一つ聞きたいことがあるんだけど。」

「何? 」

「親友の私を裏切って、私の夫と浮気してた理由。教えてくれない? 」

「は?

何言ってるの? 勘違いじゃない? 」

「とぼけなくていいよ。探偵さんに調べてもらったの。あなたと健太がホテルに入るところ、全部証拠として抑えてあるわ。」

「そ、それは誤解よ。何かの間違いだわ。私が浮気なんてするわけないでしょ。」

「五回。三ヶ月前から週に二回、駅前のホテルに入ってたのが五回。結婚式の準備を手伝ってくれてた時も会ってたわよね。『用事がある』って断った日も、一緒にいたんでしょ。」

「なんで……? 」

「私が弱ってたのも、全部演技だったのよ。泳がせてただけ。あなた、『ひなは悪くないよ。私が味方だから』って言ってくれたわよね。親友でしょ、と思ってたのに。でも裏では私の夫と会ってたわけだ。私が『もう一度やり直したい』って言った時、どう思った?

内心で笑ってたんでしょ? 『気づいてないなんてバカだな』って。」

「違う。そんなつもりじゃ……」

「健太に報告してたわよね。さっき、彼のLINEを全部見せてもらったから。あなたが慰謝料に釣られて、彼を売ったのよ。」

「なんで……」

「そういう男なのよ、あいつは。それにしてもひどいわね。親友に対して『完全に落ち込んでてさ、全然気づいてないみたい。ちょろいよね』なんて、よく言えるわね。さすがにそこまで性格が悪いとは知らなかったわ。」

「やめて。お願い。」

「やめないわよ。私は不思議だったの。健太はそこまでバカじゃない。少なくとも結婚式当日に離婚なんて馬鹿げたことをするのが。だから理由を聞いたけど、ひどいわね。子供を盾にするなんて。」

「仕方ないじゃない。赤ちゃんには父親が必要だもの。」

「けど、あなたは本当は妊娠してないでしょう。先週、SNSでお寿司を食べてるのを見たわ。生魚は食べちゃダメなのよね。」

「違う。本当に妊娠してるの。生魚も少しはOKで…… 」

「そう。でも決定的な証拠もあるわよ。あなた、今日素敵なドレスを着てるけど、妊婦さんはそんなにお腹を締め付けるようなデザインのドレスは着ないわよ。」

「あ……」

「こんな嘘をついても、どうせそのうち『お腹の子は天国に行きました』って言い逃れするつもりだったんでしょ。そうじゃないなら、母子手帳を見せてほしいんだけど。」

「それは個人情報だから見せられないわ。」

「だって嘘だもんね。」

「はあ……私のこと、本当に親友だと思ってたのよ。結婚式の準備も手伝って、嬉しかった。でも、全部嘘だったんだね。」

「違う。そんなつもりじゃ……私は親友よ。」

「じゃあ、どんなつもり? 私の幸せを壊して、何が楽しかったの? 」

「だって……ひなはいつも私より幸せそうだったから。高校の時も、私が好きだった人をひなに取られたし。」

「あれは自然に付き合っただけでしょう。私があなたの好きな人を知ってたとしても。」

「でも、今回くらい……私がひなから奪ったっていいでしょ。悪いけど、健太は私を選んだんだから。」

「選んだ?

健太はあなたに脅されたから離婚しようとしただけよ。それって『選んだ』って言うの? その切り札がなかったら、彼は私と結婚してたのよ。最低ね。もういいわ。慰謝料を請求するから、覚悟しておいて。式場費用の半分と、精神的苦痛に対する慰謝料で、合わせて五百万円くらいかしら。」

「そんな金額、払えるわけないでしょ……! 」

翌日、健太から電話が来た。

「お前のせいで全部終わった。式場費用三百万、慰謝料五百万。お前との遊びに使った金も返せって言われてる。親からは勘当寸前だ。」

「は? 私のせい?

離婚したいって言い出したのはあなたでしょ。私は妊娠してるって言っただけじゃない。」

「妊娠も嘘だったくせに。お前が変なこと吹き込むから……」

「私は『離婚しないと下ろす』なんて言ってないわよ。あんたが勝手に焦っただけじゃない。」

「お前が妊娠してるって言ったからだろ! 」

「それで私のせいにするの? 勝手に信じた方が悪いんじゃない。」

「ふざけんな。お前も慰謝料五百万請求されてるんだろ。」

「だから何? あなたと一緒にしないで。もう連絡してこないでくれる?

数ヶ月後、健太は再び私に電話をかけてきた。

「頼む。慰謝料を減額してくれないか。式場費用と合わせて八百万。もう払えないんだ。」

「弁護士さんと相談してください。私に言われても困るわ。」

「会社でも噂になって、左遷された。給料天引きになってるから、バレるのも当然だろうけど……親からも『顔も見たくない』って言われて。ちひろも俺を責めるだけで、助けてくれない。」

「全部、自業自得よ。」

「俺が悪かった。本当にすまなかった。でもな、俺だって騙されてたんだよ。ちひろがあんなに積極的にアプローチしてこなければ……あいつが俺を誘惑してきたんだ。」

「最低ね。人のせいにするなんて。」

「違うんだ。最初は断ってたんだよ。でもちひろが『二人だけの秘密』って何度も……俺も気が弱くて。」

「あなたが浮気を選んだのよ。ちひろさんがどうとか、関係ない。」

「お前だって分かるだろ。ちひろがどれだけ計算高い女か。地球上のグレードアップも、全部ちひろの希望だったんだぞ。」

「私には関係ありません。俺が悪かったのは認める。でもちひろにも責任があるはずだ。だから少しでも減額してくれ……」

「ふざけないで。全部、あなたの責任よ。」

「頼む。せめて分割の期間を伸ばすとか……」

「弁護士さんと話してください。慰謝料はきちんと払ってね。」

翌日、今度はちひろから連絡が来た。

「お願い。許して。友達みんなが私を避けるの。職場にもバレて首になったのよ。」

「あなたの同僚も式に来てくれてたからね。本当に二人とも、今後のことを考えないで動いてたのね。自業自得すぎるわ。」

「でも、私だって被害者なの。だって健太が『ひなとはうまくいってない。もう気持ちは覚めてる』って言ったから、私も騙されてたのよ。」

「それで浮気していいことになるの? 」

「違うの。あいつが積極的で、断りきれなくて……」

「その言い訳、健太からも聞いたわ。二人とも同じことを言うのね。自分で選んだんでしょ? 」

「SNSでも特定されて、どこにも行けないの。親からも勘当されて、家にも帰れない。ここまで追い詰められてるなら、健太に助けてもらえば? 」

「あいつももう私を見捨てたわ。ひな、あなただけが頼りなの。お願い。」

「私はもう関係ないわよ。自分で自分の尻拭いをしなさい。」

「私も反省してるの。少しだけでいいから、せめて連絡だけでも……」

「するわけないでしょ。だって、優しい親友の演技をしていたのは私だもの。どう?

あなたより演技うまかったでしょ? あなたのことは大嫌いだったけど、全然気づかなかったし。そんなに騙してると私を見下してたけど、騙されていたのはあなたの方よ。まあ、今さら気づいても遅いけどね。」

その後、二人には高額な慰謝料請求が来て、それぞれ親にも職場にも助けてくれる人は誰もいなくなった。孤独な状況で仕事に集中できなくなった健太は、職場で大きなミスを連発し、給料天引きで手元に残る金はほとんどなくなり、極貧生活を強いられた。ちひろは借金をして慰謝料を返したが、返済のために夜の仕事をしているという。うまくいかず、苦しい生活の中で誰にも相手にされず、孤独に過ごしていると聞いた。

私を見下してバカにしていた二人には、お似合いの末路だろう。

一方、私はと言うと、これまで通り穏やかに暮らしている。あの騒動の後、本当にたくさんの友人が私を心配してくれた。「大丈夫? 何かあったら、いつでも連絡してね」って。中には泣きながら「辛かったよね」と抱きしめてくれた子もいた。その時、初めて気づいた。本当の友情ってこういうものなんだと。ちひろとの関係は、最初から間違っていたんだと。

今は毎日が穏やかで、特別なことがあるわけではない。でも、信頼できる人たちに囲まれて、誰にも裏切られない日々。それがどれだけ幸せなことか。あの結婚式があったからこそ、今の私がある。本当の友達を見つけられて、本当に良かった。そう思いながら、私は前に進んでいこうと思う。