里帰り出産を終え4か月ぶりに帰宅すると、義姉が勝手に住み着いていた。義姉「この家は私のものよ。弟も承知済み」私「どうぞご自由に」――何も言わず私も好きにした数日後、義姉の笑顔が消えた。
第2部 タクシーの中で、私は防犯カメラの映像を確認していた。 画面の中には、私が置いていった鍵を握りしめ、満足そうに笑う明美の姿が映っている。 その横で健一が電話をしていた。 「母さん、うまくいったよ。あいつ、自分から鍵を置いて実家に帰った」 私はその声を聞いた瞬間、全てを理解した。 これは偶然ではない。 最初から計画されていたのだ。 「これで手続きが進められる」 その言葉が頭から離れなかった。 一体、何の手続きなのか。 嫌な予感が確信に変わった。 私は娘の小さな手を握った。 「大丈夫よ。お母さんが全部終わらせるからね」 実家に到着すると、兄の誠が待っていた。 兄は不動産関係の仕事をしていて、家を建てる時も土地や契約を全て手伝ってくれた人物だった。 「弓、これを見ろ」 兄が指差したテーブルの上には、一通の書留郵便が置かれていた。 差出人は弁護士事務所。 中身を確認すると、そこには信じられない内容が書かれていた。 離婚協議書。 財産分与。 そして――。 「妻は自宅の所有権を放棄する」 私は思わず笑ってしまった。 悲しいからではない。 あまりにも愚かだったからだ。 兄が書類を確認する。 「この弁護士事務所、存在しない」 「健一君は本当に浅はかだな」 私は静かに夫へ電話をかけた。 「書類、届いたわ」 電話の向こうの健一は自信満々だった。 「読んだか。専門家に作ってもらったんだ。現実を受け入れろ」 「現実って?」 私が聞くと、彼は怒った。 「あの家は俺の家だ。俺が長男なんだから」 私は録音ボタンを押した。 「でも、家のローンを払っているのは私よね?」 一瞬、沈黙。 そして健一は言った。 「お前はただ払っているだけだろ」 その言葉を私は確実に録音した。 彼は自分で認めたのだ。 家の支払いをしているのが私だということを。 さらに彼は続けた。 「早く実印を送れ。名義変更に必要なんだ」 私は目を閉じた。 やはり目的は家だった。 私が里帰りしている間に、家を奪うつもりだったのだ。 その夜、防犯カメラにはさらに恐ろしい会話が残っていた。 「実印なんて偽造すればいいじゃない」 明美の声だった。 「役所なんて何とかなるでしょう」 その瞬間、私は決意した。 … Read more