「お母さん、今月の仕送りまだ届いてないんだけど。あんた中卒だから振り込みの仕組みも分からないんでしょ。息子の稼ぎを振り込むだけの簡単な作業よ」――電話の向こうで義母が吐き捨てるように言ったのは、つい昨日のこと。それなのに今日、出産祝いを持って病院に行ったら、義母は言ったんです。「ケ太は家族だから入っていいわよ。でも、あんたはダメ。中卒が選んだものなんて、赤ちゃんに触れさせたくないの」。6年間…

「お母さん、今月の仕送りまだ届いてないんだけど。あんた中卒だから振り込みの仕組みも分からないんでしょ。息子の稼ぎを振り込むだけの簡単な作業よ」――電話の向こうで義母が吐き捨てるように言ったのは、つい昨日のこと。それなのに今日、出産祝いを持って病院に行ったら、義母は言ったんです。「ケ太は家族だから入っていいわよ。でも、あんたはダメ。中卒が選んだものなんて、赤ちゃんに触れさせたくないの」。6年間...

「今月の仕送り、まだ届いてないんだけど。どうなってるの?」

義母からの電話は、いつもこうだ。義務感と嫌味が混じった声で、私を最初から責めてくる。

「申し訳ありません。今月は25日が土曜日なので、月曜日の振り込みになります」

「言い訳しないでくれる? 中卒のあんたには振り込みの仕組みすら分からないんでしょ。夫の稼ぎを振り込むだけの簡単な仕事でしょ。さっさとやってよ」

その言葉に、私は何も言い返せなかった。

義母にとって私は、夫・ケ太の会社で「お手伝い」をしているだけの中卒の嫁。会社の経営者だなんて、信じてもらえた試しがない。実際、私は経営も営業も経理も全部一人でやっているのに、義母は「中卒にそんなことできるわけない」と笑うだけだ。

「それじゃあ、今年もお正月は行かなくていいからね。近所に中卒の嫁がいるってバレたくないのよ」

「……分かりました」

何年も続いたこの関係に、私はただ耐えていた。施設で育った私にとって、義母は初めての「お母さん」だった。家族というものが欲しくて、いつか認めてもらえると信じていた。嫌われているんじゃない。まだ認めてもらえていないだけだと自分に言い聞かせて。

数週間後、義妹のミユさんが出産した。

「今日、ミユの出産祝いに行ってくるね」

友人のアイにそう言うと、彼女は呆れた顔をした。

「またあんた、この前も正月来るなって言われたばっかりじゃん。よく行く気になるね」

「赤ちゃんは関係ないから。お祝いくらいさせてほしいの」

「あんたは優しすぎるよ。自分のこと馬鹿にする人の子供のために、そこまでする?」

「……割り切るしかないよ」

病院に着き、私は義母に連絡した。部屋番号を教えてほしいと。受付で名前を書かないといけないから。

30分待っても返事がない。夫からも電話してもらったが、無視されたまま。

ようやく届いた返事は、信じられないような内容だった。

「あら、やだ。本当に来たの? 出産祝いに、勝手に中卒夫婦が紛れ込んでるわ」

「え? お母さん、ケ太さんが招待されたから来たんですけど」

「ケ太は家族だから入っていいわよ。でも、あんたはダメ」

「どういう意味ですか? 私も一緒に招待されたと思っていましたが」

「誰があんたを招待したのよ。家族だけで祝うに決まってるでしょ」

「……せめて、赤ちゃんのお祝いだけでも渡させてもらえませんか? 一目見たら帰りますから」

「いらないって言ってるでしょ。中卒が選んだものなんて、赤ちゃんに触れさせたくないのよ」

「分かりました。では、失礼します」

「さっさと消えろ」

病院の廊下で、私は震えていた。涙が出そうになるのを必死にこらえた。

数分後、夫から連絡があった。

「ああ、よかった。ちゃんと姉さんは帰ったんだ。これで一安心。病室に来たらどうしようかとずっと気が気じゃなかったんだよ」

その言葉が、ミユさんが義母と一緒に私を追い出した張本人だということを教えてくれた。

「ミユさん、どうしてそんなことを?」

「正直、中卒の人に赤ちゃんを触られたくなかったんだよね。汚い金を子供に移すな。私の可愛い赤ちゃんの目にも映したくないんで。お坊さんは帰って」

「……そう。あなたもそういう態度なのね。よく分かったわ」

「は? 何それ? 上から目線」

「お義母さんは、出産祝いの品を捨てるって言ってたわ。中卒が選んだものなんていらないから、お母さんが処分するって」

「そうですか。分かりました。好きにしてください」

翌日、義母から怒りの電話が来た。

「昨日はよくもやってくれたわね。ミユに変なLINE送ったでしょ? あの子は出産直後で疲れてるの。それなのに勝手に押しかけてきて。赤ちゃんだって生まれたばかりで免疫もないのに、あんたが来たせいでストレスかかったのよ」

「招待されたから伺ったんです。それに、会わずに帰りました」

「ケ太を招待したの。あんたは呼んでないって、何度言わせるの? おかげでミユが泣いてたわよ。せっかくのお祝いを台無しにされたって」

「病室にすら入っていませんけど」

「入ろうとしたでしょ。全く空気読めないわね。これだから中卒は。あんたが余計なことしなければ、昨日はミユにとって最高の日だったの。今後はうちにも来ないでちょうだい」

「実家にもですか?」

「他人はこの家から出てけ。あんたはそれだけのことをしたのよ。それと、今月の仕送りまだでしょ。反省してるなら早く振り込みなさい。詫びを入れて、少し多めに振り込みなさい。中卒のせいでこっちは大迷惑だわ」

電話を切った後、私はアイに連絡した。

「聞いてほしいことがあるの」

「どうしたの? なんかテンション低いけど」

「出産祝い、追い出されたの。中卒夫婦は他人だって。招待しといて、追い出す。何様?」

「は?」

「ミユにも、汚い金を写すなって言われたわ。一生懸命考えた出産祝いの品は捨てるって。それで、迷惑かけたからって、仕送りを増やすよう催促の連絡までしてきたの」

アイは怒りをあらわにした。

「どんだけ図々しいのよ。中卒は他人だから出てけ。でも金はよこせ? それ、人間として終わってるよ」

「だよね……」

「てかさ、前から聞きたかったんだけど、なんで6年も耐えてたの? 優しいっていうより、ちょっと人好しすぎない?」

「私、施設で育ったでしょ? だから家族ってものに憧れがあったの。血の繋がった家族が欲しかった。ケ太と結婚して、やっと家族ができたと思った。お母さんもミユさんも、いつか私を受け入れてくれるって」

「うん」

「中卒だから見下されてるだけで、時間をかければ認めてくれるって信じてた。でも、昨日分かったの。6年間仕送りして、何を言われても笑って耐えて、出産祝いまで選んで持っていったのに。私は結局、金と人として見てもらえなかった。もう時間の問題じゃない。最初から認める気なんてなかったんだよね」

「……そうだね。残酷だけど、そういうことだよ」

「アイ、お願いがあるの」

「何?」

「お母さんの生活を調べてほしい。仕送りがどう使われてるのか。かなりの金額を振り込んでるの。それだけ必要って、少しおかしくて」

「本気?」

「本気。もう我慢しない。家族になれないなら、他人として向き合うわ」

「オッケー。そう来なくっちゃ。任せなさい。興信所探偵の腕の見せどころよ」

一週間後、アイが調査結果を持ってきた。

「蒼い。調査終わったよ。結構やばいの出てきたわ」

「愛がやばいっていうのは、相当ね。教えて」

「まず、お母さんね。近所には『亡き夫の遺産と年金で悠然自適に暮らしてます』って言ってるらしい」

「遺産? 夫のお父さんって、確か借金を残して亡くなったはずだけど」

「そう。遺産なんてゼロ。遺族年金は月8万。つまり、あんたの仕送り25万がないと生活できないのよ。なのに近所では『息子夫婦が中卒同士で結婚した。恥ずかしいから付き合いないわ』って言いふらしてるみたい」

「……お母さんならやりそうね」

「次。仕送り25万のうち、月10万をミユに横流ししてた」

「え?」

「ミユの出産費用50万も全部、仕送りから出てるのよ」

「出産費用まで?」

「そう。ミユはお母さんの貯金だと思ってるみたい。お母さんは『ミユ、お母さんの貯金から出してあげるわ』って言ってた。全部、あんたの金なのにね」

「つまり、私が稼いだお金で出産して、その出産祝いの場から私を追い出したってこと?」

「そういうこと。一周回って、笑えてきたわ」

「……あともう1つ。これが一番やばい」

「まだあるの?」

「実はさ、翌日……あんたが追い出された次の日、お母さんは近所の人にこう言ってたんだ。『中卒の嫁が来て、お祝いを台無しにされた』って」

私はそこで決意した。

翌日、義母に電話を入れた。

「お母さん、仕送りの件でお伝えしたいことがあります」

「何? 仕送りのこと? ちゃんと振り込みなさいよ。金額を増やすっていう相談なら受けてあげるけど」

「今月から、仕送りを停止します」

「はあ? 何言ってるの、あんた?」

「先日、お母さんは私たちを『他人』だとおっしゃいましたよね。『家族だけで祝う』『他人はこの家から出てけ』と」

「それがどうしたのよ」

「では、他人に仕送りする義理はありませんよね」

「ちょっと待ちなさい。それとこれは話が違うでしょう。大体これは親子の話よ。嫁がしゃしゃり出てこないで」

「お母さんは勘違いされていますが、仕送りは私の給料から出しています。ケ太さんのお金じゃないんです」

「ケ太の口座から振り込まれてるわよ。大体、根に持ってるようだけどね。出産祝いに来るなって言ったのは、ミユと赤ちゃんのためよ。出産直後で神経が過敏になってるんだから、それを守っただけ。それの何が悪いって言うの?」

「でもお母さんは、仕送りをもらう立場ですよね。それなのに、あんな態度」

「子供を守るとそうなるのよ。でも、仕送りは生活のこと。家族としての義務でしょ」

「出産祝いでは他人で、仕送りでは家族の義務ですか?」

「当たり前でしょ。都合がいいとかそういう話じゃないの。息子が母親を養うのは当然のことよ。それに、あなたの給料から出してるって嘘ばっかり。25万もあなたに出せるわけないじゃない」

「会社の経営者は、私ですが」

「え?」

「ああ。以前、私が経営をしていると言っても『中卒にそんなことできるわけない』って信じてもらえませんでしたっけ? 営業も契約も経理も、全部私がやっていますよ。仕送りはトラブル防止のため、夫の口座に毎月私が入金していました。6年間、合計1800万円ですね」

「嘘よ。中卒のあんたにそんな稼ぎがあるわけない。宅建もFPも、独学で取りました。中卒でも勉強はできるんですよ。信じないなら、振り込み記録をお見せしましょうか。夫の口座の入金履歴、全部残してますので」

「……そう」

「そんなお母さんが『他人』と追い出した人間が、6年間あなたの生活を支えていました。しかし、私は他人ですよね。だから仕送りをやめるんです。夫も同意です」

「いいわ。なら、離婚させる。なんでそうなるんですか? 中卒の嫁なんかと別れさせてやるわ。息子は母親の味方よ。あんたが出て行けば、息子の稼ぎは全部うちに戻ってくるんだから」

「お母さん、随分都合のいい話ですね。そんなお母さんに、夫からの伝言があります」

「何よ?」

「『母さん。前に、仕送りは蒼いが出してるって伝えたよな。あの時信じなかっただろ。今回の件で俺も愛想が尽きた。母さん、自分で生きてくれ』だそうです」

「……そんな、ケ太……」

「夫は何度も伝えようとしていました。でも、あなたは聞く耳を持たなかったんです」

「ケ太が私より嫁の味方をするっていうの?」

「離婚はしません。むしろ、母さんとは距離を置くと言っています。分かりましたか? 私たちは、本当に他人になるんです」

同時刻、ミユさんの元にアイが訪れていた。

「初めまして。蒼いの友人のアイって言います。探偵やってるものなんですけど」

「は? 誰? あの中卒女の友達?」

「いや、仕事っていうかなんというか。ちょっと質問したくて。ミユさん、お母さんに出してもらってますよね。出産費用とか」

「そうだけど。母の貯金からだし。何か問題でも?」

「じゃあ、お母さんが何で稼いでるか知ってる? 年金とか貯金とかでしょ? 遺族年金、月8万だよね。そこから生活して、あんたに月10万も援助して、出産費を50万も出せるの? 大卒なのに、計算合わないのは気になりませんか?」

「何が言いたいの?」

「お母さん、あんたに嘘ついてますよ」

「嘘って、何の話?」

「うん。お姉さんの口座から、毎月お母さんに振り込まれてるお金がある。それがどこから来てるか、お母さんに聞いてみなよ」

「お姉さんが母にお金送ってるなんて、聞いたことないんだけど」

「そりゃそうだよ。お母さんが隠してたんだから。あと、あんたが『中卒のバカ』って追い出した相手が何者か、ちゃんと調べた方がいいですよ。大卒の肩書きが吹き飛ぶから」

「脅してるの?」

「事実を伝えてるだけですよ。私は探偵なんで。嘘は言わないですから。確かめるかどうかは、あんた次第ですけどね」

ミユさんはすぐに義母へ電話した。

「お母さん、これどういうこと? 出産費用を、お姉さんの仕送りから出してたって本当?」

「誰にそんなこと聞いたの?」

「あの中卒の友達って探偵に言われたんだけど。私への毎月の援助も、全部仕送りだったの?」

「あ、あれは……その……」

「嘘ついてたの? 自分の貯金って言ってたのに」

「ミユ、落ち着きなさい。お母さんはあんたのためにそのお金をね…… 蒼いさんが稼いだお金なんでしょ? 私が『バカ』って言った相手のお金で出産してたってこと? 恥ずかしすぎるんだけど」

「黙りなさい。私だって好きでこんなことしてるわけじゃないわよ。お父さんが借金残して、遺族年金8万で暮らせると思う? 息子に頭下げて仕送りもらうしかなかったのよ。でも、近所に『息子の仕送りで生活してます』なんて言えるわけないじゃない。大体、あんただって蒼いさんにあんな態度取ってたじゃない。私だって、お母さんに20年間『ブスのくせに』って言われ続けたのよ。せめて中卒の嫁より上でいたかったの。それの何が悪いのよ」

「知らないわよ、そんなの。お母さんの見えのために、私まで恥かいてるじゃん。大体、お母さんが『中卒は家族じゃない』って教えたから、私もそう思ってたのに」

「あんただって、中卒の兄嫁をバカにしてたでしょ。『大卒大卒』って偉そうに言ってるけど、就職すらできなかったくせに」

「それは『大卒』って肩書きしかないって、お母さんに言われたくない。就職できなかったのは、大学の成績が悪かったからでしょ。中卒の兄嫁が会社経営してて、大卒の私は就職もできない。そんなの、認めたくなかっただけよ」

二週間後、義母から電話が来た。

「蒼いさん、お願い。仕送りを再開して」

「どうしてですか? 私は他人ですよね」

「言い過ぎたわ。認めるから」

「そうやって、いきなり泣きついてきたのは、お母さんにはカードローンがあるからですよね」

「な、なんでそれを……」

「調べてもらったんです。聞いた時は驚きました。カードローンの返済は毎月引き落とされるわけですが、仕送りが止まったら払えないですよね。200万も借りているんですから」

「でも、あれは生活のためで……」

「審査の時、収入欄に何て書きました? うーん、それは『不動産収入』って書きましたよね。蒼いの仕送りを不動産収入と偽って申告した。なんでそんなことまで?」

「私の親友は、とても優秀な興信所探偵なんです。ああ、ちなみに彼女も中卒ですよ。中卒に追い詰められちゃいましたね」

「こんなことって……」

「話を戻しますが、嘘の収入を書いたのなら、それは虚偽申告ですよ。銀行に知られたら、一括返済を求められますね」

「ま、待って。それだけは……」

「お母さんは中卒を馬鹿にしていましたが、その中卒のおかげで生活ができていたんです。それをよく理解してくださいね」

数日後、ミユさんからも連絡が来た。

「蒼いさん、あんた、旦那に全部ばらしたわね」

「ええ。スクショを見せました。『このようにとても精神的に不安定ですので、どうぞ支えてください』と言ったまでです」

「あんたが変なこと言ったせいで、離婚を切り出されたんだけど」

「そりゃ、人を平気でバカ扱いする人と家族をやるのは難しいと思いますよ」

「援助があるってこともバレて、『兄嫁の金で生活してたのに追い出したのか』って呆れられて、もう口も聞いてくれない」

「ご主人さん、まともな方ですね。あとはご夫婦で話し合えば良いのでは。あなたがきちんと反省していれば、旦那さんも許すかもしれません。まあ、無理でしょうけど。元々実母があの人ですし、結婚するつもりはなかったんでしょう? 旦那さん」

「へ……」

「子供ができたことで無理に結婚を決めたそうですけど。相手側の親戚からも反対されていたなら、無理に婚姻関係を続けることもないですよね。それはうまく話し合えば、養育費は払ってもらえるんじゃないですか? その辺りの後始末くらい、自分でしてください」

さらに数日後、義母がまた電話をかけてきた。

「蒼いさん、お願い。助けて。ローンは一括返済を求められて、ミユは離婚しそうで、近所には嘘がバレて居場所がないの。もう何もない。あんたしか頼れる人がいないの」

「お母さん、中卒の他人に助けを求めないでください」

「それは言い過ぎたって認めてるでしょ」

「逆切れですか? 実際、中卒じゃない。学歴がないのは事実でしょ」

「私が中卒だったのは、両親が2人とも病気で亡くなって、施設に行って、頑張って働いてきたからです」

「その努力があるなら、実家を敬うくらいできるんじゃない?」

「ずっと努力してきたんですよ。結婚が決まった時、お母さんに認めてもらいたくて、料理教室に通いました。中卒だから、せめて家事くらいできるようにって。毎日お弁当の練習をしていました」

「……そうだったの?」

「初めてお母さんの家に行った日だって、好みが分からなかったから、ケ太さんに手土産の好みを何度も聞きました。でも、私は……」

義母は黙った。

「お母さんは、私が差し出した手土産の包みも開けずに、『こんな安物』って言いましたよね。それでも諦めなかった。一度でいいから『ありがとう』って言ってもらえたら、それだけで報われると思ってましたから」

「……あ、あれくらい言ったわよ」

「いいえ、一度も言われませんでした。施設で育った私には家族がいなかったから、お母さんが初めての『お母さん』だったんです。だから、何を言われても耐えられた。嫌われてるんじゃなくて、まだ認めてもらえてないだけだって、自分に言い聞かせてた。でも、出産祝いを渡した時に分かりました。赤ちゃんのためにって選んだおくるみを、『中卒が触ったものなんかいらない』と捨てられた。あの瞬間に、全部わかったんです。お母さんは最初から、私を家族にする気なんてなかったって」

「それは……」

「だから、もう終わりにします。お望み通り、他人として生きていきます」

「お願いよ。それならせめて、今回だけ。今回だけでいいから、仕送りを……」

「夫婦で話し合って決めたことです。そして、夫からの最後の伝言があります。『母さん、仕送りを再開する気はない。でも、学歴で人を見下すのをやめたら、いつか話くらいはする』そう言っていました」

「するわ。もう見下したりしないから。ごめんなさい」

「その言葉、信じられません。だって、6年間お母さんが変わらなかったのは、見てきたので」

「蒼いさん……」

「さようなら、お母さん。もう、お母さんじゃありませんけど」

その後、私はアイと施設を訪ねた。

「今度の休みに、施設に顔出さない?」

「施設? どうして?」

「今年中学卒業する子がね、進学せずに就職するんだって。不安がってるから、先輩として話してやってよ」

「うん。分かった。行くわ。私たちの話をしてあげたいな」

「でしょ? 中卒でもちゃんと生きていけるって、あんたが一番の証拠だもん」

「アイもね。私はまあ、相変わらず地味に探偵やってるだけだけど」

「地味じゃないよ。アイがいなかったら、私はまだ我慢してたと思うから」

「当然でしょ。あんたと私、施設で一緒に育った家族じゃん」

「そうだね。家族って、やっぱり思い合っていくものなのね」

義母は、カードローンの200万円の一括返済を求められ、虚偽申告の件で銀行からブラックリスト入りした。遺族年金月8万だけでは家賃も払えず、家賃5万円のワンルームアパートに引っ越したそうだ。近所付き合いは全て絶え、『遺産で悠々自適』と嘘をついていた人々からは、完全に無視されていると聞く。

ミユさんは夫から家計の嘘を理由に離婚を突きつけられた。養育費を多く払って別れたそうだ。就職先も見つからず、赤ちゃんを抱えてパートをかけ持ちする生活。義母に頼ろうにも、義母も生活が困窮し、「大卒なのにどうして」と嘆いているのだとか。

一方、私たち夫婦は会社を順調に成長させ、穏やかな日々を送っている。アイとも定期的に交流しており、私たちは姉妹のように接している。

家族は、血の繋がりだけじゃない。それを、私たち2人が証明していく。

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