3年ぶりに連絡してきた兄の第一声は「800万貸してくれ」だった。しかも、病気の娘の治療費だと言う。私は信じたかった。でも、医者である夫がその診断書を見て「偽物だ」と一言。兄は私を騙して金を奪おうとしていた。それだけじゃない。彼は自分の娘まで利用していた。私は静かに証拠を集め、親戚の集まりで姉にこう言った。「娘さんの手術代はなしということで」。あの瞬間、姉の顔が凍りついた。でも、これで終わりじ…

3年ぶりに連絡してきた兄の第一声は「800万貸してくれ」だった。しかも、病気の娘の治療費だと言う。私は信じたかった。でも、医者である夫がその診断書を見て「偽物だ」と一言。兄は私を騙して金を奪おうとしていた。それだけじゃない。彼は自分の娘まで利用していた。私は静かに証拠を集め、親戚の集まりで姉にこう言った。「娘さんの手術代はなしということで」。あの瞬間、姉の顔が凍りついた。でも、これで終わりじ...

「あや、800万貸してくれ」

3年ぶりに連絡してきた兄・大輔の第一声がそれだった。私は耳を疑った。

「お兄ちゃん、頭でもおかしくなったの?」

「ちょっと前に母さんたちから聞いたぞ。お前、家を建てたんだってな」

「え?建てたけど」

「てことは金はあるってことだよな。なら800万出してくれ」

「いや、なんでそうなるの?うちは旦那の給料がいいだけで。てか、よく私にそんなことを頼めたね」

「どういう意味だよ」

「忘れたんだ。私が中学でいじめられて不登校になった時、お兄ちゃんとお姉さん、2人して馬鹿にしてきたでしょ」

「それは昔の話だし」

「昔?普通になる3年前までずっとだったよ。『中卒だのバカ女だの寝ぐら女だの』って。だから私は2人が大嫌い」

「ごめん。悪かった」

「悪いと思ってたら800万なんて言えないでしょ」

「こっちにも事情があるんだよ」

「事情って、どうせお姉さんが散財して借金できたとかでしょ。昔から2人揃って金遣いが荒かったもんね」

「そうじゃない。ここが病気にかかったんだ」

「へ?」

「珍しい病気らしくて、海外じゃないと直せない。もう入院してるけど治療費が…。それで800万頼む。昔のことはいくらでも謝る。だから俺の娘を助けてくれ」

事情は分かった。ここは私にとっても可愛い姪っ子だし、あの子も私にはよく懐いてくれていた。お金で助けられるなら、夫に相談して出してもいいと思った。

「けど、条件がある」

「条件?」

「ここの診断書を見せて」

「診断書?そんなものを見て一体何の意味が?」

「お兄ちゃんへの信頼がないの。本当にここが病気だって証拠がないと、お金を渡せない」

「お前な、この緊急事態に…」

「私だって本当にここが病気なら助けたい。800万って大金を出す以上は、納得して出したいの」

「分かった。今日の夜、そっちに診断書を持っていく」

「お願い」

「それと、このことはリカ子には黙っててくれ」

「このって、800万のこと?お姉さんに聞かれたら何かまずいの?」

「お前に助けてもらったなんてリカ子が知ったらどうなる?性格から考えて、800万自体受け取らないかもしれない」

「確かにお姉さんの性格なら…でも娘の命がかかってるんだよね。なら…」

「そういうやつだって、お前も知ってるだろう」

「分かったよ。ここを助けたいだけで、感謝して欲しいわけじゃないしね。便に住むならそれでいいよ」

「来週、親戚の集まりがあるだろう。そこで母さんたちにもこのことを説明するから」

「はい。また後でね」

翌日、夫の匠が言った。

「あやか、昨日は帰れなくてごめんな」

「休憩が入ったんでしょ?お医者さんなんだから仕方ないわよ」

「それはそうだけど、お兄さんがうちに来てたんだろ」

「お金のことでね」

「俺、お兄さん夫婦には会ったことないからな。挨拶するいい機会だと思ったんだけど」

「しょうがないよ。お兄ちゃんたちは3年前から音信不通だったし。私と匠が結婚したのは2年前だからね。私たちの結婚式にも来てないもん」

「今回の…その、めいっこちゃんの顔も知らないし」

「ここねちゃんね」

「ん?ここ?」

「そうよ。あれ、言ってなかったっけ?」

「なあ、初めて聞いたけど」

「ごめん。あ、そうだ、お兄さんの苗字って何だっけ?」

「え?急にどうしたの?」

「いいから、いいから」

「な、何なのよ。私の旧姓と同じだけど」

「ってことは上原か。ここちゃんの年齢は10歳。確か今は小学4年生のはず。誕生日は…えっと、8月2日だったかな。というか、これ何?何の質問?」

「もしかしてなんだけどさ、ここちゃんってピアノを習ってる?」

「うん。まあ3年前は習ってただけで、今は知らないけど。何?って、エスパー?」

「エスパーじゃなくて、多分本人に聞いた」

「へ?本人?」

「診察の時にちょっとした会話でな」

「診察の時って…それって、つい数日前だったかな。くっそ健康体だったぞ」

「まあ、あくまで『かもしれない』ってだけだけどな」

「でも偶然にしては…ああ、ちょっと共通点多すぎるとは思う」

「ねえ、匠」

「どうした?」

「今度の親戚の集まりでさ、ちょっとお願いしたいことがあるの」

1週間後、親戚の集まり。

「中卒のあんたが親族の集まりに来るとか、図々しいのよ」

ビールが頭からぶっかけられた。

「ビール頭からぶっかけられて、立場理解したなら帰れ」

「誰のせいでお風呂入ってると思ってるんですか?」

「あんたが来たのが悪いんでしょ?」

「それで言うなら、私はいつも集まりには来てます。むしろ珍しいのはそっちですよね」

「まあね。3年ぶりくらい」

「ですよね。で、その3年ぶりの人に頭からビールぶっかけられて、その上帰れとまで言われる筋合いはありませんが」

「私が不快だったから」

「は?中卒の元引きこもりニートがいたんじゃ、写真が漏れないでしょ。邪魔」

「親戚の集まりの写真って、最初から漏れないんじゃ…。本当に悪い意味で変わってませんね」

「あんたもね。相変わらず芋感全開って感じ」

「ドキ女感全開って感じで、痛くて見てられません」

「はあ。てか、あんたの旦那何なの?」

「匠が何か?」

「私に向かってぶち切れてきてたじゃん。医者だかなんだか知らないけど。何様?」

「私の旦那様ですけど。わけわかんない理由で嫁がビールぶっかけられたんです。当然の反応ですよね」

「一応、義とはいえ私が姉なんですけど」

「姉らしさがないからでしょ。尊敬して欲しいなら、尊敬できる言動をしてください」

「あんた、いつから私にそんな口聞けるようになったわけ?私と大輔のパシの分際で」

「不登校だった私を、兄と2人で『可愛がって』くれましたよね。しかも大人になった後もずっと」

「大輔の妹があんたみたいな寝ぐら女とかありえないから」

「高校生の頃からですよね。本当に進歩のない人。義の妹として恥ずかしいです」

「あんたね…」

「まあ安心してください。すぐに帰りますよ。用事も終わりましたし」

「用事?」

「ただ…」

「何よ?」

「帰る前に謝罪してください」

「はあ?私があんたに?冗談でしょ」

「私じゃなくて、匠にです」

「あんたの旦那?息子?なんで私が…」

「私には何をしても構いません。子供じゃないですからね。笑って流しますよ。けど、匠まで馬鹿にしたことは許せません」

「バカにって、あんたの旦那が逆らうのが悪いんでしょ?ネクラの陰キャと結婚したバカ男。その息子だって同類だから」

「謝る気はないんですね」

「ない、ない。あるわけないから」

「そうですか。では、娘さんの手術代はなしということで」

「あ?娘の手術代?何言ってんの?」

「ここちゃんの手術代800万。あれ、私が払うことになってたんですよ」

「はあ?なんであんたが?大輔はそんなこと一言も…」

「黙っててくれって言いながら頼んできました」

「そんなバカなことあるわけ…」

「今日は兄は来てませんでしたね。本人に直接確認してみては?今日のことを知ったら頭を抱えるでしょうけどね」

1時間後。

「リカ子、お前、やってくれたな」

「大輔、そっちこそどういうこと?なんでここの治療費をあんな中卒女に頼ってんの?」

「お前が散財ばっかりして貯金がないからだよ」

「はあ?私のせいって言いたいの?」

「実際そうだろうが。あんた、大企業のエリート社員でしょ。800万くらいすぐに用意してよ」

「バカ言うな。800万なんて大金、貯金もなしに用意できるか」

「じゃあせめて銀行に借りるとか…」

「どんだけ彩かに借りを作りたくないんだよ」

「当たり前でしょ。彩佳は学生の頃から私のパシなのに」

「そのパシに借りを作るとか…お前のせいで銀行から借りれないんだぞ」

「え?お前、俺に隠れて借金作ってるだろう」

「なんでそのこと…」

「ちょっと口座見れば分かる。300万も借りやがって」

「でも、それは大輔の稼ぎならすぐ返せると思って…」

「それができないからこうなってんだろう」

「ねえ、ちょっと待ってよ」

「なんだよ」

「もし彩佳から800万借りられなかったら、ここの手術は…もう入院してるんでしょ?エ、か、追加で借金だな。そんなどうすんのよ」

「そんなことになったら、外聞悪いなんてレベルじゃない。お前のSNSも終わるんだろうな。SNS上ではお前はいい母を演じてたから」

「そんなの無理。今のフォロワー数にするのに、私がどれだけ苦労したか」

「こうなったのもお前のせいだろうが。とにかく彩かに謝るしかない」

「はあ。私が嫌よ」

「お前な…そもそも彩佳はここと仲良かったでしょ。なんだかんだ言って払ってくれるんじゃない?」

「それはそうかも…。あの子、昔から甘いところあるし。ここを見殺しにするのかって言えば…」

「そんなのは分かってる。もう一度俺から連絡入れてみるわ。罪悪感とか刺激すれば、払わないってことはないだろう」

「だよね。よかった。お前はこれ以上余計なことすんなよ。現れなかったら本気でまずいんだからな」

「分かってるわよ。さっさと彩佳に連絡して、治療費引っ張ってきて」

翌日。

「あやか、ごめん」

「やっぱり忙しいのにごめんね。ありがとう」

「これくらいは別にいいよ。それよりも、こんなことになってるなんてな」

「そういう人たちなのよ。娘のことよりも自分優先。昔から何も変わってない」

「同じ親として思うところはあるけど、それよりもこれからどうする?」

「証拠は揃ったからね」

「あとは被害届けを出して…医者として証言できるからな。必要だったらいつでも言ってくれ」

「うん。頼りにしてる」

1時間後。

「あやか。今すぐ治療費を入金してくれ。早くしてくれないとここが…」

「お断りします」

「リカ子のことか。それだったら謝る。あいつが失礼なことをした。本当にごめん」

「今更謝られても遅いよ」

「だからってお前、このままここを見殺しにする気か。お前が払ってくれないとここが…」

「ねえ、お兄ちゃん、その臭い芝居もやめにしない?」

「あ?」

「ここちゃんが病気って嘘なんでしょ?」

「いや、はあ?お前何言って…」

「海外での治療も入院も全部嘘」

「何言ってんだよ。お前にも見せたろ。ここの診断…」

「あの診断、私の夫に見せたの」

「夫?お前の夫って…医者?」

「え?医者。一目で分かったって言ってたよ。偽装診断書だって」

「いや、それは…」

「ぶち切れてた。最近はAIだの画像編集なので素人でもできる。こんなバカなことに使われるのは許せないってね」

「本職に見られたら、それはバレるか…」

「私がさ、この間の親戚の集まりに行ったの、なんでか分かる?」

「はあ。急に何を…」

「確認したいことがあったの。まず、リカ子さんがこのことを知っているかどうか」

「リカ子が…」

「リカ子さんは知らなかったみたいだね。本当にここが病気だと思ってた。でも、そうなると変なとこがあるよね」

「変って、何が?」

「もう入院してるって言ってたよね。けど、病気が嘘なら、ここは今どこにいるの?」

「それは…」

「山内のおじさんの…。この間の親戚の集まりに唯一来てなかった。山内のおじさんは毎回絶対に参加してたのに。会いに行ってきたよ」

「じゃあ、ここでは…」

「今はお父さんとお母さんが預かってる。お兄ちゃん、山内のおじさんにお金握らせたんだって。数ヶ月の間、ここを預かって欲しいって」

「あのじじい、簡単に吐いたのか」

「800万を借りるために、こんな大げさなことをするなんて」

「いや、返す気なんて最初からなかったんでしょ。私からお金を奪うのが目的だった」

「仕方なかったんだ」

「仕方なかった?何が?」

「リカ子のバカが勝手に借金作って、その返済に金が必要だったんだよ」

「リカ子さんの借金は300万でしょ。800万も必要ないよね」

「なんでお前が…」

「お母さんたちに相談したんでしょ。けど、300万もポンと渡せないって断られた」

「そうだよ。母さんたちは俺たちを見捨てたんだ。だから俺は…」

「ねえ。それって800万の説明になってないよね」

「いいだろ、それは」

「自分で言わないなら、言ってあげようか。お兄ちゃん、400万の借金があるんでしょ?」

「なんで…?いや、山内のおじさんか」

「800万を手に入れたら100万を渡す。完全に味方にしたと思って、ペラペラ喋ったのが失敗。お兄ちゃんのやろうとしたことは全部バレてるよ」

「ふざけんな。どうしろって言うんだよ。お前から800万がもらえないと、俺たちは…」

「そんなの自分で考えたらいいでしょ。あ、でも大丈夫だよ」

「何が?」

「すぐに分かるよ。もう全部終わってるから」

翌日。

「おいおいおい。これ一体どういうことだよ」

「あれ?お兄ちゃん、なんでまだLINEできてるの?」

「うちの会社に警察が来て、急いで逃げてきたけど、あれお前のせいだよな」

「被害届け出したからね。というか、逃げない方がいいと思うけど」

「被害届け?一体何の?」

「詐欺未遂」

「詐欺って、俺がか?」

「へ?自覚なかったの?病気だって嘘ついて、お金を騙し取ろうとしたよね」

「したけど…でも、あんなの家族間の問題だろ?」

「いや、関係ないから。あと、診断書の偽造、あれも立派な犯罪だからね」

「こんなバカな話があるか。頼むよ、彩佳。警察には適当なことを言ってごまかしてくれ」

「なんでそんなことしないといけないの?」

「俺だって本当はあんなことしたくなかったんだよ」

「私を騙そうとしたこと?」

「そうだ。前も言ったろ。リカ子が借金作ったせいなんだって」

「いや、お兄ちゃんの借金は…あれだって、元はといえばリカ子のせいなんだよ」

「どういうこと?」

「あいつの借金を返そうと思って、株とか色々手を出したんだ」

「呆れた。それで失敗したってこと?」

「しょうがなかったんだよ。俺が踏ん張らないと家族が…。そのためなら娘を出しに使ってもいいって。実の妹を騙してお金を奪ってもいいって。ふざけてるのはどっちよ?」

「だから俺だってやりたくはなかったんだ。仕方ないだろう」

「しょうがない。仕方ない。そんな言い訳が通用すると本気で思ってるわけ?」

「言い訳じゃない。俺は本当に仕方なく…」

「結局さ、お兄ちゃんって昔から何も変わってないんだよ」

「なんだと?」

「私を見下してた学生時代のまんま。自分のためなら娘も妹も平気で利用する。そういう腐った性根が1番問題でしょ」

「お前に何が分かるんだよ。俺が必死で働いてんのに、リカは浪費ばっかして、なのにいざとなったら俺にどうにかしろ。ふざけんな」

「知らんけど。私は、ここを利用する前にやることがあったでしょ」

「やることって、何をだよ」

「本気でここが大事なら、離婚するべきだった」

「それは…」

「離婚できないくらいお姉さんが大事なら、本気で向き合って浪費をやめさせるべきだった」

「そんなこと今更言われても…」

「どっちもせずに、ここと私を利用した時点で、お兄ちゃんはただ逃げてただけじゃない。自分で解決することから逃げて、楽な道を選んだだけ。そんな人が『家族のため』とか、笑わせないで」

「そんなこと言わないでくれよ。このまま捕まったら、一家全滅だぞ。これからどうやって生きていったらいいんだよ」

「そんなの自分で考えなよ。中卒のバカ女よりはいい答えが出せるんじゃない?出せなかったら捕まるんだろうけどね」

数日後、大輔が逮捕された。この病気が嘘だって…。

「したみたいですね」

「ま、こちらから渡した証拠もあったんで、時間の問題だったと思いますけど」

「何よ、言いみたいに。こんなことになったのは全部あんたのせいじゃない?」

「なんでそうなるんですか?私は被害者で、兄が加害者です。逆恨みですよ」

「それ…ふざけんじゃないわよ。夫が逮捕とかありえないでしょ」

「お姉さんのSNSも荒れてますね」

「私の友達が勝手に投稿しやがったの。おかげで私まで犯罪者呼ばわりで、フォロワーも全員なくなった。どれだけ苦労したと思ってるのよ」

「そんなに大事ですか?」

「大事に決まってるでしょ。フォロワーを集めるために、いい母親まで演じてたの。何年もかけてコツコツ築き上げてきて。それが一瞬でパーよ。パー」

「だからって感じですね。しかも借金も300万まるまる残ってる。一体これからどうしたらいいの?」

「さっきから聞いてれば、自分の心配だけですか?」

「はあ?この状況なんだから当然でしょ」

「いや、母親ならここの心配はしましょうよ」

「そんな余裕はないの。今はあの子に構ってる暇なんて…」

「そんなだから、兄の嘘にも気づけないんですよ」

「なんですって?」

「そもそも最初からおかしかったでしょ」

「何がよ?」

「兄の言い分です。被害者である私はともかく、一緒に暮らすお姉さんが気づかないことあります?」

「私はここが病気だって言われたから…」

「娘が病気と言われて『はい、そうですか』とはならないでしょう。病院に説明を受けに行ったりはしなかったんですか?」

「してない」

「入院してるって聞かされたんですよね。なら、会いに行きませんか?普通」

「それは海外だって聞いてたから…」

「だとしても行きますよ。私は息子の優馬が同じ状況なら、必ず行きます」

「だったらなんだって言うの?仮に私が会いたいって言っても、大輔が合わせようとするはずないじゃない。私を騙してたんだから」

「もちろんそうですけど、そうなったらその時点で違和感に気づけたはずです」

「だから気づいたら何だって言うのよ」

「違和感に気づけたなら、こんなことになる前に兄を止められたかもしれません」

「それは…」

「そうすれば今も今まで通り生活できてたでしょうね」

「お説教のつもり?中卒のバカ女の分際で」

「その中卒のバカ女が気づけたことに気づけなかった。お姉さんは何なんですか?小卒ですか?」

「あんたね…」

「似た夫婦だったってことですよ」

「は?」

「兄もあなたも、自分のことしか考えてなかった。だから気づけることにも気づかず、こんな目に会う」

「私は悪くないでしょ。大輔が勝手なことするから、こんなことに」

「その原因を作ったのはお姉さんじゃないですか」

「だからって…」

「引きこもりニートでしたか?」

「え?」

「私のことをそう言って馬鹿にしてましたけど、自分の世界に引きこもってたのはそっちでしょ」

「そんなわけ…」

「認めたくないならどうぞご自由に。好きなだけ自分の世界に引きこもってください。私は…それにここも、外に出て、あなたたちとは違う明るい未来に進みますから」

その後、逮捕された兄は詐欺未遂で実刑判決が下りた。娘の病気を偽り、診断書を偽装した悪質性。800万という大金かつ計画性もあり、初犯ながら悪質性が高いと判断されることとなった。結果として、懲役2年、執行猶予4年とのこと。

一応面会には行ったが、兄は「俺は悪くない。仕方なかったんだ」と、ずっとそう言い訳を繰り返していた。結局、あれが兄の本質であり、その本質が今回の原因だったのでしょう。

お姉さんに関しても似たり寄ったりだ。300万という借金を抱え、余裕がなくなったお姉さんは、今は昼も夜もなく働きながら借金を返済している。ここを迎えに行くこともなく、うちの両親に押し付けて。まあ、実際問題として、ここにとってはこれで良かったのかもしれない。SNSが炎上し、多額の借金を抱え、友達も家族も失った母。そんな人と2人で暮らすよりは、祖父母の元で幸せになる方がいいでしょう。

皮肉なことに、ここは両親がいなくなったことを一切気にかけていないそうだ。元々、家族としての時間もほとんどなかったみたいね。むしろ祖父母と暮らす今の方が、家族の温かみを感じているのかもしれない。

私も、ここのおばとして、彼女へ家族の温かみを与えていきたいと思う。

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