「こっちはあなたに竜二という息子を差し上げたはずよ。その対価として考えなさい」――義母が高級寿司屋を営む私に、8人分の20万円の食事代を「家族なんだから」と踏み倒して言い放った言葉です。予約もなく押しかけ、他のお客様の予約をずらしてまで席を作り、職人さんたちには残業までさせたのに、お会計はゼロ。しかもこれで3回目。損害は60万円を超えているのに、夫に伝えても「家族なんだから当然でしょ」と笑う…
お母さん、もういい加減にしてください。 あら、何よ、いきなり。 母から聞いてびっくりしましたよ。お母さん、また予約なしで8人も連れてきたんですって。 それが何? 何か問題でもあるの? 問題だらけですよ。うちは予約制の店なんです。普通は1ヶ月待ちなのに、予約もなしにいきなり来られて。 でもゆみさん、席を用意してくれたわよ。 母が他のお客様に電話をして、予約時間を変更してもらったんです。急な事情で申し訳ありませんって、何度も頭を下げてお詫びにサービスまでつけて。それなのに、お母さんたちは3時間もいて、お会計もせずに帰ったんですって。 もしかして私から金を取る気でいるの? 私たちは家族じゃないの? 家族でも限度があります。予約を変更してもらったお客様へのお詫びのサービス代。閉店時間も2時間伸ばして発生した職人さんたちの残業代。それで8人で20万円分も食べて、お金も払わないなんて。 20万。そんなに食べたかしら。だけど、お金のやり取りなんてよそよそしいわ。 よそよそしいどころじゃないです。これで3回目ですよ。毎回お詫びのサービスをして残業代も払って、実質的な損害は60万どころじゃないんです。職人さんたちも限界なんですよ。 でも家族なんだから、そこはサービスしてよ。 それはこちらが言うことですよ。どうして施される側のお母さんがそんなことを言うんですか? こっちはあなたに竜二という息子を差し上げたはずよ。その対価として考えなさい。 差し上げた? 結婚は私たちが決めたことですよ。 だとしても、認めてあげたのはこっちよ。別にあの子は他の人と結婚させても良かったんだから。あなたの魅力も感じないあなたと結婚をさせてあげたんだから、そのことに感謝をしなさい。 なんでそこまで言われないといけないんですか? そっちがぐちぐち言ってくるからでしょ。 お願いですから。もうこれ以上は店に迷惑をかけないでください。 別に迷惑なんてかけてないわよ。少なくともあなたのお母さんは毎回受け入れてくれてるからね。 あなたが強引に店に来るからでしょ。いきなりやってきて、店先で揉めたくないから入れてるだけですよ。 とにかく、これからも私は行かせてもらいますからね。私はここの店の味を高く評価してるのよ。嫁の実家が高級寿司屋で超ラッキー。今度またうちの家族を全員連れていくからね。 お金はちゃんと払ってもらいますよ。 会社のあんたがそんなの決めていいわけないでしょ。勝手なことを言ったらだめよ。竜二にもこのことは言っておくからね。 お好きにどうぞ。 10分後。 お母さん、今連絡をしておいたから、どうだった? 全然気にしてる感じはなかったわね。 やっぱりそうなんだ。別に来られるのが嫌ってわけじゃないのよ。でも、その度にお客様に迷惑をかけちゃうし、うちの職人さんたちにも負担をかけちゃってるの。そこら辺を配慮してもらえるとありがたいんだけど。 無理だよ。何にも考えてないって。家族なんだから当然でしょって言ってたもの。店の人がどれだけ苦労してたかとか、全然分かってないよ。経営的なところで言うと、本当に良くないとは思う。 それにより、お父さんたちが不便な感じがして。 お父さんはなんて言ってるの? 娘がお世話になってるからいいだろって。 うん。まあ、お父さんならそう言いそうだよね。あんまり気にしてないっていうか。でも、さすがに売上的に大変でしょ。 売上の問題はもちろんだけど、何より今後もこれが続くと思うとやりきれなくてね。 分かるよ。あの人はきっと図に乗るタイプだと思うし。秋でダメだったら、どうすればいいんだろう。 竜二に私の方から行っておくよ。厳しく注意をしてもらうから。 そうね。でも、もし […] そうなの? うん。まあ、気にしすぎかもしれないけどね。とにかく竜二には私の方から行っておくから。 うん。お願いね。 3日後。 お姉さん、ちょっとお願いがあるんだけど、いい?