五年ぶりに元夫から電話がかかってきた。第一声が「母さん、明日の結婚式場代、1000万円ありがとう」だった。私は一瞬、何を言われているのかわからなかった。だって、私は一銭も払っていない。浮気を繰り返し、私たちの貯金を使い果たした男が、私の名前を勝手に使って「お前は役に立つ」と言ってのけた。そして、彼の息子からは、かつて自分に会わせていた「新しい母親候補」の話まで聞かされた。その時、私は彼の隠し…

「母さん、明日の結婚式場だ。1000万円、ありがとう。お前も役に立つじゃないか。父さんも感謝してたぞ」 電話の向こうで元夫が得意げにそう言った。五年ぶりにかかってきた電話の第一声が、これだった。 「え…何を言ってるの? 私、何か間違ったことした?」 「何を意味のわからないことを言ってるんだ。俺が感謝してやってるんだから、素直に受け取れよ」 「ちょっと待って。あなた、結婚したの?」 「そうだよ。相手はある会社の社長令嬢だ。俺にふさわしいお嬢様なんだ」 「そう…もうあなたも結婚する年になったのね」 「もう27だからな」 「あなたと離ればなれになってから、もう5年も経つのね…」 「あんたは順調にババアへの階段を登ってるって感じだな。この5年でずいぶん口が達者になったな。一緒に住んでた時は、まともに口も聞いてくれなかったのに」 「当たり前でしょ。あなたと私は赤の他人なんだから」 「結婚したんだから、一緒に住むのは当然よ。まあ、お父さんが再婚して、あなたは前の奥さんとの間にできた子供だから、混乱するのも当然だとは思うけどね」 「あんたは俺の前ではいい母親を演じてたけど、俺はあんたのことを母親だなんてこれっぽっちも思ってなかった」 「演じてたわけじゃないわ。私は心からあなたの母親でありたいと思って接してたのよ」 「そういうのがマジで気持ち悪かった。あんたみたいな地味でつまらないババアが母親だなんて、考えたくもなかったね。俺の母さんはもっと美人で、自慢できる存在だったから」 「そうなんだ…できるだけ最初はあなたと仲良くなれるように頑張ったけど、結局最後まで無理だったわね。あなたとは親子にはなれなかったと思ってる」 「そりゃそうだよ。それでもあんたは式場を払ってくれたんだな。まあ、かなりの物好きだよ。でも俺は感謝してるぜ。母親とは思わないが、使い勝手のある存在だと認識を改めてやるよ」 「いいえ、それはしなくていいわよ」 「は?せっかくの申し出を断るのか?」 「別に使い勝手のいい存在だと思われたくもないし。それに、私はあなたに感謝されるようなことはしてないわ」 「何を言ってるんだ? 式場を払ってくれただろうが」 「払ってないわよ」 「はあ?」 「他人の式場なんて払うわけないでしょ。しかも1000万円。今もらってる給料じゃそんなの無理よ」 「そういや会社を辞めたんだってな。父さんと同じところで働いてたのに」 「そうよ。経理部長であるあんたのお父さんと会社で顔を合わせるのが嫌だったから、自主退職したのよ。給料は下がったけど、自分がやったことを後悔はしてないわ。ただ、1000万円なんてお金を払える余裕はないわよ」 「マジか…でも父さんがそう言ってたぞ。友則が払ったって」 「うん…ちょっと待ってて。私が直接話を聞いてみる」 「連絡は取れるのか?」 「ブロックはしてたけど、さすがにこんな嘘をどうして言ったのか気になるから、連絡してみるわ」 10分後。 「友則、結婚式の話はどういうことなの?」 「おいおい、いきなり連絡してくるなよ。こっちは今バタバタしてるんだから」 「そんなの知らないわよ。いきなり私を変なことに巻き込まないで」 「義母さんから聞いたのか?」 「そうよ。いきなり感謝されて、びっくりしたわ」 「あいつ…なんでそんなことを?」 「それはこっちのセリフよ。なんで私が友則の式のお金を払ったことになってるのよ」 「それで、お前に何か不利益があったのか? はあ。別に、お前が払ったってことにしておけばいいだろう。何の問題もないんだし」 「嫌よ。気持ち悪いわ。しかも1000万円でしょ。意味がわからないわ」 「お前の顔を立ててやったんだけどな。そんな俺の気遣いもわからないのか?」 「つくづく、お前と離婚してよかったよ」 「それはこっちも同じ気持ちよ。あんたと別れて、今とっても幸せだから」 「はっ、言えよ。会社も辞めて、たった一人でつまらない人生を歩んでるだけだろ。それのどこが幸せなんだよ」 「勝手に人の人生を決めつけないでくれる? それよりも、あの1000万円ってのは何なのよ。そもそも、式に1000万円もかけたの?」 「当たり前だろ。相手は社長令嬢だぞ。とんでもないVIPたちも式には来るんだ。それなのに、恥ずかしい式なんてやってられない。だから、あいつなりに色々と頑張ってたんだ」 「でも、1000万円なんて、どうやって…」 「俺が稼いだものに決まってるだろう」 「5年前まで私たちは夫婦だったのよ。あなたの給料だって私は知ってるわ。それなのに1000万円なんて払えるわけがない。ただでさえ、あなたは金遣いが荒いのに」 「お前にはわからないだろうな。こっちは子供のためなら何だってできるんだよ。金なんて、その気になればいくらでも稼げるんだ」 「だとしても1000万円はさすがに大きすぎるわ。それに、どうして私の名前を出したのよ。普通に自分で出したって言えばよかったじゃない」 … Read more

29 August 2026

母は私に言った。「お前はクズの女が産んだガキだ。まともに育つか」と。それが、私が生まれた直後に、実の父が母に放った言葉だった。25年間、母は真相を隠し続け、私はそれを26歳の誕生日に初めて知った。結婚式を控えた私は、復讐のためだけに父を式に呼ぶことを決めた。あいつが今度は私の人生を終わらせる番だと。しかし、彼が私の結婚式から逃げ出した翌日、私は予想もしない事実を知ることになる。あいつを尻尾を…

「お父さんが私を捨てて、若い学生と再婚したって本当?」 母が突然そんなことを言い出したのは、26歳の私が何気なく父親の噂を尋ねた夜のことだった。 「なんで急にそんなこと言うの?」 「知り合いから聞いたの。もう25年も前の話よ」 「私、離婚したとしか聞いてない」 母はしばらく間を置いて、重い口を開いた。 「ごめん。あまりにも胸くそ悪くて言えなかった」 「分かるけど、もう私も26歳だし。覚悟はあるよ」 「そうね。もう立派な大人だもんね。……知りたいの?」 「うん」 「覚悟はいい? いい思い出ではないから」 「いいよ。どうぞ」 母は深呼吸をして、25年前のあの日を話し始めた。 「『ババアのくせにお前が産んだガキがまともに育つか』って、そう言われたの。あなたを産んだ直後に」 「は?」 「41歳での高齢出産だったし、あなたの父親は医者だったから、どんなリスクがあるかは分かってたんだと思う」 「だとしてもだよ」 「そうね。夫が妻に言う言葉じゃないわ。でも問題はその次よ。『医学部の学生が妊娠した。その子を大事に育てる』って言われた時は、人生で初めて白目を向いたわ」 実の父は、母が私を産んですぐに、若い医学部の学生に乗り換えていた。 「研修中の女を妊娠させたなんて、病院内でも結構噂の的になったらしいけど、若い女に浮かれてたのか平然としてたみたい」 「誰に聞いたの?」 「お父さんの友達。共通の友人だったからね」 「へえ」 「ね。お母さんは何か言い返さなかったの?」 「私が黙って『はい。そうですか』って言うと思う?」 「思わない」 「今でも忘れないわ。『覚えてろよ』ってだけ言って、離婚届にサインした」 「かっけえ」 「で、生物学上の父親はなんて言ったの?」 「『覚えられるかよ』って鼻で笑ってたわ」 なるほど、確かに子供の頃に聞いてたらショックだったかもしれない。 私がその話を聞いた「知り合い」とは、遠藤先生という私のかかりつけの医者だった。遠藤先生は、母と父の医学部時代の同期で、三人でよく遊んでいたらしい。本当に偶然なことに、その遠藤先生が私の主治医だったのだ。 「でも、勝手に娘に言わないで欲しかったわ」 「私が言ったんだよ。母ははっきり言わないけど、父は私のことを愛してないから捨てたんだと思うって」 母は首を振った。 「それは違う。あの人は高齢出産がどうとか色々と理由をつけて、ただ若い女が良かっただけなの」 「今更どっちでもいいけど、クズはクズだね」 「うん。でもクズから天使が生まれたから、プラマイゼロどころかプラスの人生よ」 「お母さん、そのせいであんなに苦労したんだね」 「大変だったけど、楽しかった。女手一つで大学まで行かせるなんて、なかなかできないよ」 「そう言ってくれるだけで嬉しいわ」 そして私は決めた。この胸のざわつきを、母にだけ抱えさせておくわけにはいかない。直接、あの男に会いに行こう、と。 数日後、私は遠藤先生に頼んで、父に連絡を取ってもらった。 「お前、くつになった?」 「26歳」 「そうか。大きくなったなあ。今は何やってるんだ?」 「普通に働いてるよ。もうすぐ結婚するの」 「おお、そうか。女は若いうちに結婚して子供を産むべきだ」 私はこみ上げるものを抑えて、核心を突いた。 「1つだけ聞いていい?」 「なんだ?」 「お母さんと離婚したのはどうして?」 父は一瞬眉をひそめ、少し間を置いてから、こう言った。 「いや、実はお前を妊娠してからお母さんは人が変わってしまった。神経症になって毎日怒鳴り散らかしてたんだよ」 「それは大変だね」 … Read more

29 August 2026

「お前、捨て山って知ってるか?」夫は定年退職したその日に、笑いながらそう言った。30年連れ添った妻の私に、だ。「退職金を半分持っていかれるくらいなら、山に捨ててやろうかと思ってな」半分冗談だと信じたかった。でも次の瞬間、彼は本気だった。「お前はもう必要ない。出ていけ」家事も子育ても、全て私がやってきたのに、彼は「お前じゃなくてもよかった」と言い放った。私は何も持たずに家を出た。しかし、数日後…

「お前、捨て山って知ってるか?」 夫が突然、笑いながらそんなことを言い出した。昔は年寄りを山に捨てに行ったという、あの話だ。私は半分呆れて聞き流していたが、次の言葉で固まった。 「今、お前を捨てられそうな山を探しているところだ。とはいえ冗談だがな。離婚となれば財産分与で半分持っていかれるんだろう? だったら山に捨てた方がマシだと思ってな」 「何言ってるのよ。あなた、退職金目当てで今まで結婚生活を続けてきたんでしょ」 「そんなわけないじゃない」 「本当か?」 「そりゃあ、あればありがたいけど、そんな目的でやってきたわけじゃないわ。家族として、お互いに支え合ってきたつもりよ」 夫は鼻で笑った。 「お前が何したって言うんだ? 家で飯作って、ちょっと掃除してただけだろ」 「ちょっと待ってよ。それがどれだけ大変なことだと思ってるの?」 「ほざけ。その程度のことは俺にもできるわ」 「じゃあ、やってみなさいよ」 「やってやるよ。だから出ていけ」 私は驚いて言葉を失った。夫は続けた。 「お前と30年も結婚生活して、もううんざりなんだ。お前はもう必要ない」 「さっき、退職金目当てじゃないと言ったな。じゃあ、退職金は全額俺のものだ。離婚して出ていけばな」 「本気で言ってるの?」 「もちろん。お前が俺の退職金を我が物顔で使うと思ったら、吐き気がするんだよ」 長年連れ添った相手とは思えない言葉の数々だった。私は家事と子育てに人生を費やしてきたのに、夫はそれを「何もしていない」と切り捨てた。 「私だって、あなたの仕事を支えてきた自負はあるのよ」 「家で飯作ってただけの女が何を偉そうに」 「ひどいこと言うのね。自分だって子育てに何も協力しなかったくせに」 「俺の稼ぎであいつらは立派な大人になったんだ」 「それは分かってるわ。でも、私が何もしなかったってことはないでしょ」 「お前じゃなくてもよかった。どの女を選んでも、お前くらいの働きはしたよ」 私の堪忍袋の緒が切れた。 「そこまで言うなら、出ていくわ」 夫は意外なことを聞いてきた。 「心配するわけじゃないが、行くところはあるのかよ」 「ないわね」 「息子夫婦の邪魔だけはするなよ」 「分かってるわ。お世話になりました」 私はその日、30年住んだ家を出た。 それから3日後、息子から夫に電話があった。息子は私と連絡が取れないと心配していたが、夫はこともなげに答えた。 「あいつは出ていった」 「は? なんで?」 「老後までじいさんの面倒を見たくないんだとよ」 「そんなこと言ったの?」 「ああ、ひどい話だろう。おかげでまともに飯も食えてないよ」 息子は警察にでも捜索願を出したらどうかと提案したが、夫は「自分の意思で出ていったんだぞ。失踪したわけでもあるまいし」と取り合わなかった。 息子はさらに食い下がった。 「でも母さん、どこで何してるか分からないんだよ。電話も電源入ってないし」 「そりゃそうだが、あいつの意思なんだから、ほっとけ」 夫は息子の心配を「お前が母さん母さんと言うからだ」と逆ギレして受け流した。 それからさらに数日後、息子が夫のもとを訪ねた。夫は焦っていた。 「母さんと連絡取れたか?」 「いや、まだ折り返しもない。何度もかけてるがつながらない」 「どうにかして見つけろ。大変なことが起きたんだ」 「どうしたの? 急に焦って」 「あいつが俺の退職金を持ち出したんだ」 「はあ?」 … Read more

29 August 2026

夫と3年目、念願のタワマンに引っ越せると聞いて本気で喜んでいた私。ローンの保証人になるのも、名義を夫にすると言われても「夫婦だもん」と疑わなかった。でも内覧会で担当者が放った一言が、すべてを崩した。「旦那さんといらしてたのは妹さんですよね?」。夫には妹なんて存在しない。私はあえて何も言わず、準備を始めた。振り込みが終わった翌日、夫から一通のLINEが届いた。「タワマンのローン一括返済ありがと…

「タワマンに住みたいな」 妻のミキに突然そう切り出したのは、結婚して3年目のことだった。 「そろそろ俺たちも次のステージに行ってもいいんじゃないかなって。それがタワマンに住むことなんだ」 ミキは小さな会社の社長だ。若い頃から起業して、今ではちゃんと軌道に乗せている。 「芸能人でも、無理して高い家賃のところに住むことでさらに売上が上がったりするらしいぞ。駅前に立ってるタワマン、あそこまだ空きがあるんだって」 ミキは嬉しそうに「見に行ってみようか」と言ってくれた。 実は俺はもうモデルルームを見に行っていた。 「名義はもちろん俺でいいよ。支払いだけ手伝ってくれたら」 「もちろん協力して払うよ」 ミキは何も疑わずに頷いた。 その日の夜、俺はリオにLINEを送った。 「タワマン買えそうだよ」 「え、本当?」 「あいつアホだからさ。ちょっとおだてたら買おうか。だってちょろすぎて笑い止まらんわ」 リオは俺の愛人だ。ミキとは絶対にバレてはいけない関係だった。 「契約したら即、離婚してやるんな。あの銭逃げ女がごねたら無理じゃない?」 「大丈夫だって。ああいう女はプライドが高いから泣きついたりすがったりしないもんなんだよ」 俺たちは完璧な計画を練っていた。ミキの貯金は3億ある。1億のタワマンを買っても痛くも痒くもない。LINEの履歴は必ず消す。写真もだ。タワマンの鍵をもらうまでは、会社以外ではミキに合わせない。もし探偵でもつけられたら、すべて終わるからだ。 数日後、俺はミキとマンションギャラリーに行った。 「地方のタワマンって8000万くらいなんだね。1億ちょいじゃなかった」 「それなら最上階しかないだろう。でも、忘れ物したら30回まで戻るのだるくない?」 「3階が空いてたからそこにしようかと思うんだけど」 「はあ? そんなのタワマンでも何でもないだろう」 「2階は駐車場だし、将来子供が走り回っても気を使わなくていいし。良くない?」 「いやいやいや。なんで勝手に決めるんだよ」 「ごめん。でも1億超えたらさすがに賞の名義でローン通らないっしょ。8000万でギリギリだって言われたよ」 「マジか」 「私の名義にしとく」 「あ、言うな。そんなの男のプライドが許さない。ちょっと考えるわ。また連絡する」 その夜、またリオにLINEを送った。 「どうしよう。あのアホ女がタワマンの3階とか言い出した」 「はあ。そんなのそこら辺のアパートと変わんないじゃん」 「だろ? マジでケチりやがってさ。最上階がいいよ。じゃないとタワマンの意味ないもん」 「でもぶっちゃけ俺の年収だと8000万くらいが限度なのは本当っぽいんだ」 「そうなの? 年収1000万もあるのに」 「そうなんだよ。8000万のローンを組んだら月々の支払いが25万を超えるんだ。手取りが色々引かれて50万ちょいだから、半分も払うことになる」 「そんなんじゃ生活できないじゃん」 「だからあいつにマンション代を全部払わせるってわけ」 「そんなにうまくいくかな?」 「任せろって。俺には完璧な計画があるんだから」 リオは「し君と一緒ならどこでもいい。地下でも水中でもついていくよ」と言った。可愛すぎる。俺は一生この女を大事にしようと思った。 3週間後、ローンの本審査が通った。 「よかった。ミキが保証人になってくれたからだ。ありがとう」 「夫婦だもん。当然だよ」 ミキは保証人になってくれた。知らないだろうが、これもすべて計画通りだ。俺はミキに、リオが言ってくれた言葉をそっくりそのまま送った。 「俺は見えを張るためにミキと結婚したんじゃない。最上階の憧れはあったけど、俺が欲しいのはミキとの生活だから」 ミキはすごく喜んでいた。ああ、ちょろいわ。ちょろすぎて引くわ。 「ちょっとやめてよ。私が送った言葉をよそで使うなんてひどい」 リオにそう言われても、中身の入ってない空箱だからいいだろうと思った。 入居は1ヶ月後だった。俺はリオに、確実に離婚してから引っ越そうと言った。浮気がバレる奴らは本当に短絡的で頭が悪い。俺たちは賢く行く。 1ヶ月後、タワマンの鍵をもらった。そして、ミキに切り出した。 「悪いんだけど、離婚してくれないかな」 … Read more

29 August 2026

息子の誕生日会で、呼んでもいない義母が現れた。私は友人たちとの飲み会を邪魔されたくなくて、本音のLINEを誤送信してしまう。「赤の他人が紛れ込んでるといまいち盛り上がらないんですよね」──その一言が、すべての始まりだった。義母は黙って帰ったが、翌日から夫が何かおかしい。義母への態度を責める夫に、私は言い返した。「お祝いの額で付き合い方を変えるの?」そして3ヶ月後、義母の母が亡くなり、葬儀の香…

「ごめんなさい。母にLINEしたつもりが、間違えてお義母さんに送っちゃって」 そう言って、私は慌てて取り消そうとした。でも、もう遅かった。 画面の向こうで、義母・リサさんが既読をつけていた。 「そうなのね。さすがにそんな風に思われてるなんて、ショックだわ」 「すみません……でも、本音なんで」 息子の誕生日パーティー。私は20人近い友達や親戚を呼んで、盛大にやるつもりだった。庭にはすでに大勢の客が集まっている。なのに、主役の息子は駅まで自分の母を迎えに行っていて、いない。そこに、呼んでもいない義母がのこのこと現れた。 「勝手に来られると、盛り上がらないんですよね」 「随分とたくさんの『赤の他人』が来てるようだけど。庭にも人が溢れてるわよ」 「友達とか親戚ですから。赤の他人とは違います」 「どうしてこんなに盛大にしたの?」 「プレゼントがもらえるからに決まってるじゃないですか」 「そんな理由で?」 「何か文句あります?」 「いや、別に」 義母は呆れたようにため息をついて、帰り際にプレゼントを差し出してきた。 「お誕生日おめでとう。いつも子育てご苦労様」 「ああ、プレゼント何買ってきたんですか?」 「1歳の男の子が遊びそうなおもちゃとか、絵本を選んだの」 「マジか。もういらないんで、持って帰ってください」 「せっかく夫と選んだのよ。はる樹君は気に入ってくれるかもしれないじゃない」 「ゴミになるだけなんで」 「ひどすぎるわ」 「優しい方だと思いますよ。会話してあげてるだけマシでしょ」 「もういいわ。じゃあ帰るわね」 「やった」 翌日、夫の裕二がキレていた。 「お前、なんであんなことしたんだよ。母さんがすごく落ち込んでたぞ」 「なんで話しかけてくれないのよ。ずっとビール飲んでたじゃん」 「リサに言われたんだよ。『義母が来ても無視してろ。そうすれば居心地悪くなって5分で帰るだろ』って」 「何なのよそれ。だったらどうして呼んだの?」 「お祝い目当てに決まってるじゃん。でもおもちゃとか本だろ。リサががっかりしてたぞ」 「あなたはリサさんの言動に対して何も思ってないの? プレゼント次第では1時間くらいならいさせてやってもいいって言ってたのよ」 「何だったら満足だったの? 現金じゃね?」 「それはあなたたちが嬉しいだけじゃない。私は孫が喜ぶものを渡したかったのよ。それこそエゴじゃないか。自分たちがはるきに好かれたいだけだろ」 「あなた、どうしちゃったのよ。結婚する前は優しい子だったじゃない」 「別に変わったつもりはないけどな」 「親を無視するなんてありえないでしょ」 「でもさ、リサのお母さんはちゃんと現金で10万円くれたよ」 「お祝いの額で付き合い方を変えるっていうのね」 「庭付きの家を買って俺らが苦労してることくらい分かるだろう」 「そういう気遣いの話をしてんだよ」 「そうね。気が利かない親で悪かったわ」 「ふて腐れんなって」 「そっちがそのつもりなら、それでいい」 「どういう意味?」 「今後関わらないってこと?」 「まあ俺たちは困らないけど。孫に会えない老後でいいのか? 会うためには多額のお布施が必要なのよね。まあ10万くらいもらえたら嬉しいけど」 「そんなことをするつもりはない」 「あっそ、分かった。じゃあそういうことで」 3ヶ月後、リサさんのお母さんが亡くなった。 「今夜が通夜で、明日が葬儀だ。お父さんと行くから、会場だけ教えて」 「分かってるよな?」 … Read more

29 August 2026

「私、婚約者を妹に寝取られました。」そう伝えたら、姉はにっこり笑ってこう言ったんだ。「おめでとう。純平のことはよろしくね。」婚約者の子供を妊娠した妹が、私の婚約者を奪ったのに、姉がそんなふうに返すはずがない。私は何も言い返せず、その場で立ち尽くした。でも、妹はこれで終わりじゃなかった。私への慰謝料まで要求してきたんだ。「200万、しっかり払ってね。」その時、私は気づいてしまった。この妹が、私…

「あか、さっき送ってきた写真。あれ何?」 「あ、お姉ちゃん見てくれたんだ。純平さんの願望、すっごく可愛くなかった?お姉ちゃん相手だと見せないよね。」 「一体何考えてるのよ。」 「見たままだけど。お姉ちゃんの婚約者、寝取ってみたみたいな。」 「ふざけないで。いくら何でもこれは──」 「ああ、そうそう。私、純平さんの子供妊娠しちゃったから。」 「は?冗談よね。」 「ガチガチ。後で検査の結果とか見せてあげる。奪っちゃってごめんね。私、純平さんと幸せになるから。お姉ちゃんの婚約者、いただきまーす。」 その日から、私の妹・愛花は本当にそうなった。私の婚約者を奪い、妊娠を告げ、私の前で幸せそうに笑った。 「本当に純平の子なの?他の男の子って可能性は?」 「いや、グイグイきすぎ。最近は純平さん以外とは関係持ってないから確定だよ。ってか、お姉ちゃん、脳破壊されてるじゃん。」 「…そう。おめでとう。よかったね。」 「え?いいの?ガチでやばくない?」 「自分から報告してきて、その言い草はないでしょ?」 「それはそうなんだけど、そのリアクションは違うっていうか。泣き喚いたら納得行くの?『よくもじぺよ』って言えばいい?」 「…はいはい。脳破壊、脳破壊。これ、ダメだわ。」 「ふざけないでよ。純平さんは私みたいな可愛くて愛嬌ある子が好きなの。だからお姉ちゃんを捨てたの。わかる?捨てられちゃった。ピエー。」 「あ、そう。そうやって強がってんだ。私よりもブスだからしょうがないもんね。男取られるのも当然っていうか。」 「お母さんに連絡入れたら、明日はお式典だって。なんで?」 「とにかくありがとう。愛花のこと大好き。純平のことはよろしくね。」 その時はまだ、私はただ惨めだと思っていた。でも、2週間後。事態は思ってもみない方向へ動き始めた。 「まさみ、お前の婚約者、相当やってるみたいだぞ。」 「お、さすが。仕事が早い。やっぱり弁護士の先生は違うね。」 「チッ、すかすな。ってか、瞬って呼ぶのやめろ。今はお前の雇った担当弁護士だぞ。もうただの近所の兄ちゃんじゃねえんだ。」 「はいはい。俊介先生。」 「お前に先生とか呼ばれると落ち着かないな。知らないよ。ってか、純平が相当やってるって何?愛花だけじゃないの?」 「俺も驚き通り越して呆れたんだが、愛花ちゃんを含めて不倫相手は4人だ。」 「4人?私を入れて5人?なんていうか、ここまで来ると一周回って尊敬するわ。しかも今まで証拠を掴ませなかったんだから。愛花のおかげでようやく証拠掴んだと思ってたら、まさかの4人って。」 「不倫はしてるだろうって、お前言ってたもんな。」 「それはうん。結婚してから2年になるけど、明らかに帰りも遅いし、スマホのパスワードも変えてて怪しかったもん。」 「なんでパスワード知ってんの?怖くね?」 「いや、前は私の誕生日だったの。そういうことね。でも、今まで探偵使っても証拠が出なかったよね。」 「だな。不倫のプロだわ、お前の婚約者は。嬉しくないけど。」 「なんでそれが急に一気に判明したの?」 「それは愛花ちゃんのお手柄。お前に妊娠暴露したんだろ?純平も愛花ちゃんの妊娠を焦ったんだろうな。さすがに逃げられないってことで、他の不倫相手を切ろうとして雑になった。そこを探偵の連中が写真でパシャリ。ついでに言えば、俺も動けるようになったしな。」 「どういうこと?」 「愛花ちゃんのおかげで不倫が確定したろ。妊娠した宣言から妊娠検査の結果まで送ってきたからね。そうなると、弁護士として開示請求ができるんだよ。銀行やら携帯キャリアやらクレカやら、色々な。それで証拠を掴んだってことか。」 「やるじゃん。なんか本物の弁護士みたい。」 「弁護士なんだよ。本物の。でも、これでようやく肩の荷が降りるわ。私も婚約破棄の前に、きっちりと落とし前をつけたかったし。」 「あとはこっちに任せとけ。この状況で負けるなら、弁護士引退してやるよ。」 「期待してる。愛花には本当に感謝。後でお礼に行っとこ。」 「いい性格してんな、お前。」 「ありがとう。褒めてないから。じゃ、あとはよろしくね。」 数日後。愛花からLINEが来た。 「あ、もう幸せすぎ。今、純平さんのために晩御飯作ってます。愛弁当。」 「愛じゃないでしょ。結婚してないんだから。」 「はい。負け惜しみ。お姉ちゃんとは別れて結婚してくれるって言ってたよ。私の婚約破棄は本当ね。おめでとう。」 「良かったね。…そんなつまらないことなら返信しなくてもいいけど。私、今日も残業で忙しいんだ。」 「うわ、忙しいアピールですか?キモ。仕事できる女感出してきてうざい。私みたいに顔よし、スタイルよし、愛嬌よしが結局は最強なわけ。顔室、スタイル普通のブスにはわかんないか。」 「そうですか。じゃあ最強の愛花ちゃん、何?」 「慰謝料払ってくれるよね。」 「は?慰謝料?」 「不倫した挙げ句、妊娠でしょ。当然だから。200万ね、しっかり払って。」 「200万?嘘でしょ?マジ?」 「マジなんですよね。純平さんってかなり稼ぎいいし、お願いすれば払ってくれるでしょ。ああ、それは無理。なんで?純平はそれどころじゃないから。私を含めて4人から慰謝料請求されるから。」 … Read more

29 August 2026

高級寿司店での義母の内定祝いの席。出てきたのは私の前の小さな皿にだけ、ガリだけだった。私が「どうしてですか?」と尋ねると、義母は顔も上げずにこう言った。「あんたは部外者よ。最初からあんたのことなんて好きでも何でもなかったんだから。」夫はまだ来ていない。美重は笑顔で寿司を頬張り、義父は黙ったまま。私はその場で夫のための義母の嘘と、同じテーブルに座る義妹が会社で作ろうとしている不正の話を聞かされ…

「お母さん、どうして私にこんな嫌がらせをするんですか?」 「あら、何よ。席を外したと思ったらLINEなんかで。言いたいことがあるなら面と向かって言いなさいよ。そんなことしたらお店に迷惑がかかるでしょ。」 「だからLINEで伝えているんです。どうして私にはガリしか食べさせてくれないんですか?」 私は結婚して3年になる。夫の鉄郎の母、美重の母でもある義母は、今日、美重の内定祝いのために高級寿司店を予約した。鉄郎は仕事で遅れると言い、私が先に店に来ていた。 「何?もしかして寿司が食べたいの?」 「せっかく高級なお寿司屋さんに来たんですから、食べたいですよ。でもそれよりも、この扱いの方が気になります。」 義母は冷たい目で私を見た。 「今日は美重の内定祝いよ。私はこういう会をとても大事にしているの。美重は有名企業から内定をもらえたんだから、しっかりお祝いしたいわ。」 「だからこそ、いいお店で家族水入らずで過ごしたいのよ。」 「その会に来たのは鉄郎じゃなくて私だった。鉄郎は仕事で少し遅れると伝えたはずです。」 「だとしても、部外者がいるのはすごく嫌なのよ。美重へのお祝いにかこつけて、高級なお寿司を食べようなんて、いじ汚いにもほどがあるわ。」 「そんな気持ちはありません。お寿司を楽しみに来ましたけど、それよりも美重ちゃんのお祝いをしたかったんです。来年の春から、私もちゃんと同じ会社で働けるなんて、とても嬉しいですから。」 「随分と自慢げに言ってるけど。あんたは転職組でしょ。新卒入社の美重と一緒にしないで。」 「どちらが偉いとか、そんなことはないですよ。」 「どんな手を使って転職したか知らないけど、これ以上うちででかい顔はさせませんからね。とにかく、部外者のあんたには寿司は食べさせないから。」 「私のことを部外者呼ばわりするのはやめてください。」 「私の中であんたは部外者なのよ。それを受け入れなさい。」 「どうしてですか?結婚した最初の頃は、仲良くやれていたじゃないですか。」 「うるさい。最初からあんたのことなんて、好きでも何でもなかったのよ。席に戻るのは好きにしていいけど、あなたにはガリだけね。他人に寿司はなしよ。」 私は信じられなかった。同じテーブルに座り、美重たちには次々と寿司が運ばれてくる。私の前には、小さなガリの皿だけ。 「そんなのひどいです。私はみんなと家族になれて、とても嬉しかったのに。美重ちゃんにだって、先輩として色々教えたいと思っていました。」 「これは約束しなさい。美重には絶対に近づかないこと。あんたが親族だってバレたら、美重のキャリアに傷がつきかねないわ。」 「私のことを何だと思っているんですか?」 「転職組なんて、そういう立場なのよ。部外者のお母さんが、うちの会社の何を知っているんですか?」 「黙りなさい。とにかく約束よ。」 その時、鉄郎からLINEが来た。 「ごめん、もう少し仕事で遅れそうなんだ。」 「そうなんだ。大変だね。」 「ちょっとミスが発覚して、その対応をみんなでしてるんだよ。終わったらすぐにそっちに行くから、母さんたちに言っておいてくれるか。」 「私じゃなくて、お母さんに直接LINEした方がいいと思うよ。私の話は聞いてくれないと思うから。」 「え?なんで?なんかあったのか?」 「お母さんが私のことを部外者って呼ぶの。それで、私にはガリだけ食べさせて。」 「部外者?なんでそんな嫌がらせを母さんがするんだ?なんか喧嘩とかした?」 「してないよ。別々に暮らしてるから、そんなに接する機会もないしね。確かにこの間お正月に会った時は冷たくなったなとは思ってたけど、どうしてそうなったのか理由は全くわからないわ。」 「でも、カナと美重は同じ会社で務めるんだから、仲良くしておいた方がいいに決まってるだろう。会社でも絶対に口聞くなって。」 「あの人は本当によくわからないな。父さんは?なんで止めないんだよ。」 「なんかみんな嫌な感じなんだよね。でも、美重に聞いてみたら何か分かるかもしれない。」 「そうか。じゃあ、なるべく早く仕事を切り上げて俺もそっちに合流するから。辛い思いさせてごめんな。」 私は美重にLINEを送った。 「美重ちゃん、お母さんが私に対してすごく怒ってるみたいなの。」 「え、そうですか?そんなの分かりませんけど。」 「嘘よ。ずっと私だけガリしか食べさせてもらってないんだから。どうして怒ってるのか分かる?」 「いや、さすがにそれは分かりませんよ。お姉さんが何か嫌なことをしたんじゃないですか?」 「何の覚えもないわ。いきなり部外者だって言われて驚いてるのよ。」 「でも、部外者は部外者じゃないですか?別に何も変なことは言ってませんよね。私は家族でありたいと思ってるけど、それはさすがにキモすぎますって。兄と結婚したからって家族に入れるなんて、そんなの意味わからないですよ。いくらお姉さんに家族がいないからって、そんな甘えられても困ります。」 「親を早くになくしていることを、そんな風に言うのはやめて。今でも辛い気持ちがあるのよ。」 「私は事実を言ってるだけですって。家族みたいにすり寄られても、こっちは困ります。それって結局、自分の利益のためにやってるんでしょ?」 「利益?どういうこと?」 「私が新卒入社してエリート街道を突っ走るから、そのおこぼれに預かっていい思いをしたいってことよね。」 「仕事を頑張って出世するのは素晴らしいことだと思うわ。でも、出世するのが確定してるみたいに言うのは間違ってると思う。」 「そりゃ転職組のあなたはそうでしょうけど、新卒入社の私はエリートって決まってるのよ。お母さんに変なことを吹き込んだのはあなたね。」 「変なことじゃないの。ネットに実際そうやって書かれてあったんだから。」 「そんなのを信じて。でも、うちって大手なのに、あなたのような中途の人間を採用してるなんておかしいわ。全員新卒のみにするべきだと思う。」 「上の人の考えだから、あなたに口出しする権限はないと思うわよ。」 「だったら、私が偉くなったら転職組は全員首にする。」 … Read more

29 August 2026

「おい、なんでお前がここにいるんだよ。誰かと思ったら、俺に捨てられた不妊女かよ」 4年前に何の説明もなく離婚届を置いて家を出て行った元旦那に、保育園の入り口で偶然出会ってしまった。再婚して幸せに暮らしていたのに、彼は子供を連れて同じ保育園に通っていた。家に帰ろうとした私に、彼は「お前が別のところに行きたくなるようにしてやるからな」と脅してきた。…

保育園の送り迎えの時間は、いつも穏やかだった。それが、ある日突然、地獄の始まりになった。 「おい、なんでお前がここにいるんだよ」 その声を聞いた瞬間、全身の血が凍る思いがした。振り返ると、そこには4年前に私を捨てた元夫、たけしが立っていた。 「どうして連絡なんてしてくるの?もう私たちの関係は終わってるはずよ」 「お前がガキと保育園に来てるところを見かけたんだよ。誰かと思ったら、俺に捨てられた不妊女かよって笑っちゃったぜ」 その言葉に、4年前の記憶が鮮明に蘇ってきた。ある日突然、何の予告もなく離婚届を突きつけられて、家から消えた男。私は今でもあの日のことを忘れていない。 「捨てたっていう意識はあるのね。いきなり離婚届けを突きつけて家からなくなったもんね」 「そんな感じだったっけ?もう4年も前のことだから忘れちまって」 この男は、自分がしたことを何とも思っていない。それなのに、なぜ私の前に現れて、私を傷つけるようなことを言うの? 「でもなんか楽器を連れてきてたよな。あれは何だ?」 「私の子供に決まってるでしょ」 「あのガキは俺の子か?まさか妊娠してたとはな。てっきりお前は不人の出来底損ないだと思ってたぜ」 あまりの侮辱に、怒りで体が震えた。そんな私を見て、たけしはさらに追い打ちをかけるように言った。 「でも俺に似てたぜ。もし俺の子供だったとしても認知はしねえからな」 「気持ち悪いことを言わないで。あの子は私と今の夫との間にできた子よ」 「再婚はしてたんだな。でもめんどくせえな。お前うちと同じ保育園なんだな」 思いもよらない偶然に、私は言葉を失った。たけしにも子供がいて、同じ保育園に通っているという。 「悪いけど、他のところに行ってくれるか?」 「は?待ちなさいよ。勝手なことを言わないで。この辺りはどこもいっぱいでなかなか通わせることも難しいんだから」 「黙れ。ここの保育園には俺の方が早く通わせていたんだ。後から来るなんて許されるわけないだろう」 「何よ、そのわけのわからない理論は」 「ここは俺たち家族が使うもんだから。お前らは別のところに行けって言ってるんだ」 別に顔を合わせなければ問題ないはずなのに、たけしは頑として譲らない。 「俺が気持ち悪いんだよ」 「私だって気持ち悪いわよ。お前が近くにいるってだけで不快な気持ちになるんだ」 「よくもそんなことが言えるわね。いきなり離婚して私の前から消えたくせに。そのセリフを言えるのは私の方でしょ」 「そんなの関係あるか。とにかく別のところに行け」 「保育園を見つけるのも簡単じゃないのよ」 「だったらお前が別のところに行きたくなるようにしてやるからな」 そう言い残して、たけしは去っていった。私は立ち尽くしたまま、どうしていいか分からなかった。 家に帰って、夫のかゆに話すと、彼は驚きつつも冷静に受け止めてくれた。 「たけしって元旦那の?」 「そうそう。どうやら向こうも再婚をして子供ができてたみたい」 「でも入園式の時には会わなかったよな」 「うん。向こうは私たちよりも早く預けていたみたい」 「え、待って。それって計算上おかしくない?俺たちだって再婚してかなり早くに妊娠したじゃん。それよりも向こうが早かったって変だよ」 「いや、変じゃないよ。連れ子だと思うから」 確かに、かゆの言う通りだった。たけしは私たちより早く再婚して、前の関係の子供を連れてきている可能性が高い。それを考えると、たけしが再婚相手と出会ったのは、私たちが離婚する前になる。 「それでたけしから連絡が来て保育園を変えろって言われてるの」 「そんなの聞く必要ないよ。気まずいのはこっちだって一緒だし。顔を合わせるのが嫌なら俺が送り迎えに行ってもいいしね」 「でもそれだとかゆが大変だわ」 「全然気にしないでいいよ。ゆうとの時間が取れるのは嬉しいことだから」 ありがたいことに、かゆはいつも私の味方でいてくれる。でも、この問題はそう簡単には解決しない気がした。 1週間後、保育園に知らない女性が現れた。 「初めまして、さち子です。さなえさんですよね」 「え、どちら様でしょうか?」 「たけしの妻です」 ああ、これがたけしの再婚相手か。私は嫌な予感がした。 「それで何かご用ですか?」 「夫があなたに忠告したのを忘れましたか?早くうちの保育園から出て行ってくださいよ」 「別にあなたの保育園じゃないですよ。私の息子だって通う資格があるはずです」 「夫がすごく困ってましたよ。元嫁に突きまとわれて困ってるってね。捨てられたというのにまさか保育園を一緒にしてまで会おうとしてくるなんて」 さち子は私を責め立てるが、自分から会おうとしているのはたけしのほうだ。 「あなたもたけしもどんな脳みそをしてるんですか?そんなことするわけがないでしょ。それに私はストーカーじゃないです。再婚して夫がいますから」 「ああ、なんかそんなこと言ってたかしら。あなたの生活には興味ないから流しちゃってた」 … Read more

28 August 2026

私たちは新居を買った。頭金は、亡き祖母が私のために残してくれた遺産二千万円。それなのに完成当日、義母が笑いながら言った。「この家の名義は息子よ。だから嫁のあんたに出ていく権利がないのではなく、住む権利がないの。さっさと消えなさい」夫は何も言わず、うなずいた。三年間、私は彼の母親に何を言われても我慢してきたのに。でもその日、私は静かに笑った。まだ言っていないことがあったから。「分かりました。で…

「あの新居、名義は匠でしょ。だったら嫁のあんたに住む権利はないわよ」 義母に突然そう言われたのは、新居が完成する少し前のことでした。匠と一緒に買った家。頭金には、私が祖母から受け継いだ遺産二千万円を全て使いました。それなのに、義母は平然と言い放ったのです。 「私も同居することにしたから。息子のそばにいたいの。あなたの部屋は私が使うから、あんたは出ていきなさい」 「私も費用を出しています。それでも出ていけと言うんですか?」 「嫁が家に貢献するのは当然でしょ。それが嫁の役目よ。文句があるなら匠に言いなさい」 匠に電話をしました。泣きそうになりながら、義母が同居すると言っていること、部屋を奪おうとしていること、私に出ていけと言っていることを伝えました。 「ああ、それなんだけどさ。母さんずっと一人だったから寂しかったんだと思う」 「驚かないのね。もしかして、同居するって話を聞いてたの?」 「まあ前から言ってたし。いつかはそうなるかなってくらいにしか思ってなかったけど」 私はこの家を、あなたと一緒に暮らすために買ったんです。あなたの母親と住むための家じゃない。拒否権もなく勝手に決められて、私だけが我慢しろと言われて。それでも匠は「母さんを傷つけたくない。一人にしておけない」と繰り返すだけでした。 数日後、義母が新居にやってきました。間取りを見せてほしいと匠に頼んでいたようです。 「南向きの部屋は日当たりがいいわね。私の部屋にするから、開けておいて」 「その部屋は私が書斎として使う予定です」 「書斎? 嫁に書斎なんて必要ないでしょう。掃除でもしてなさい。働いてないんだから、もっと家に尽くしたらどう?」 私はパートで働いていましたが、義母には無職も同然に見えているようでした。リビングのカーテンを写真で見たとも言われ、「趣味が悪い。センスがない」と一方的に選び直すと言い出しました。もちろん費用は私持ちで。 「口答えするの? 嫁が出すのが当然でしょ。それに、あの家は息子の家。母親である私にも所有権があるのよ」 匠に話しても、義母の肩を持つばかり。私はもう、自分の気持ちを飲み込むことにしました。しかし、一ヶ月後、新居が完成した日。義母は笑顔で言いました。 「今日から私も住むから。荷物運んでおいて。部屋はもう決めてあるから」 「だから、勝手なことをしないでください」 「何度も言ってるけど、この家は息子の名義。嫁に住む権利はない。私は同居するから、あんたの部屋はない。邪魔だから出ていきなさい」 匠に確認しました。すると匠は「母さんと二人で暮らすことになったんだ」と認めました。 「私が出ていくことに同意しているんですね」 「母さんを大事にするのは、いい子だものね。さあ、さっさと消えなさい。今日中に荷物をまとめなさい」 私は言われた通りにしました。ただ、その前に一つだけ言いました。 「手続きはきちんと行いますので」 「手続き? 何の手続きよ。さっさと出ればいいだけでしょう」 義母は嘲笑うように言いました。 私は何も言い返さず、友人で司法書士の愛に連絡しました。新居の名義とローンの契約書、全てを確認してほしいと。翌日、愛から連絡が来ました。 「青い、もらった書類、全部確認したよ。面白いことになってる」 「何が分かったの?」 「まず、新居の所有者の名前を見てみな。青い、あなたの名前よ。匠の名前はどこにもない」 私は頭金を出しただけでなく、ローンも自分の名義で組んでいたのです。収入が私の方が多かったから。だから登記名義も私になっていました。義母の言っていた「名義は息子」というのは、匠が義母に本当のことを言っていなかっただけでした。 「つまり、法的にその家は青いのもの。旦那に権利は一切ないわよ。ローンも青いの口座から毎月二十六万円、引き落とされてるよね?」 「うん。そういう設定にしてるから」 「じゃあ、青いが入金をやめたら、来月には残高不足になるってことよ。匠の年収は三百万ちょっとで、月二十六万円の返済は不可能だからね。生活できないでしょうね」 そう。その通りです。私は、法的手続きを進めることにしました。 退去して三日後、義母から電話が来ました。 「もう家を出たのね。早かったじゃない。嫁は従順な方がいいのよ」 「お母さん、私は出ていきました。その代わり、大事な話があります。ローンのことですが、来月から引き落とし口座の変更手続きが入ります」 「だからなんだって言うの? そんなの匠が払えばいいでしょう。息子の家なんだから」 「そうですね。では、匠さんに任せます」 匠にも同じ話をしました。すると彼は言いました。 「青い、ありがとう。助かったよ。母さんがすごく喜んでた。これで二人で暮らせるって」 「お母さんと二人で、これから頑張ってね。大変だろうから」 「え、どういう意味?」 「そのままの意味よ」 翌日、匠から電話が来ました。慌てた様子です。 「青い、やっぱり戻ってきてほしい。考え直したんだ」 「どうしたの? 急に」 「母さんが家事を全然やってくれなくて、何もしないんだ。俺も仕事あるし、正直きつくて。青いがいてくれたら助かるんだよ。料理も掃除も青いの方がうまいし」 … Read more

28 August 2026

ハワイの空港で私を置き去りにして離婚した元夫から、3か月ぶりにLINEが届いた。 「お前の実家を潰してアパートを建てたぞ。儲けの1割やるから管理は俺に任せろ」 私は冷たく返した。「私に実家なんてないけど」 すると彼は、祖母の家だと言い張る。でも祖母の家は10年前に売却済みで、今は他人の土地。 勝手に他人の土地を更地にして建物を建てたのだ。それも、私が知らない間に。…

「お前の実家を潰してアパートを建てたぞ。儲けの1割をやるから、管理は俺に任せろ。いいな?」 ハワイの空港で私を置き去りにして離婚した元夫・浩司から、3か月ぶりに届いたLINEは、これだった。 「はあ? 何言ってるの? 私に実家なんてないけど」 「田舎の古屋があっただろ。祖母の家って言ってたじゃん」 「祖母は10年前に亡くなったわ。家は売却済みで相続放棄してる。今は別の人の土地のはずよ」 「え、そうなの? 一体どこの話をしてるわけ?」 私は業者名と取り壊した家の番地を聞き出した。彼は得意げに答えた。 「LINE市場庁1位の業者だぞ。契約書も全部俺名義だ。建設も佐々木工事でちゃんとやってる」 「そう。詳しくありがとう」 その日、私は同じ時刻に、義母からも連絡を受けていた。彼女は言い放った。 「嫁の実家を活用してあげたのに、お礼くらい言いなさいよね」 「お母さん、お礼を言うのはおかしいですよ。私に実家はありません。祖母の家は売却済み、つまり他人の土地です」 「どういうことよ。浩司はあなたのためにわざわざ動いてあげたのよ」 「他人の土地に無断で建物を立てたんです。これはかなり大事ですからね」 「大げさな子ね。そもそもあなたって結婚前からろくな実家もなかったんでしょ。うちの息子が好きだって言うから、仕方なく認めてあげたけど、私はずっと反対してたのよ」 「もう他人ですので」 「あなたはうちの息子のお嫁さんだったのよ。それだけで十分でしょう」 「もう家族ではありません。3か月前に籍を抜きました」 義母はヒステリックに喚いた。婚姻中の家計を自分が管理してあげていた、援助してやったと。でも、通帳も領収書も残っていると伝えると、彼女は一瞬怯んだ。 「過去のことはいいです。何を言われても感謝しませんので。それより、お母さんは事の重大性を分かっていらっしゃらないようですね。こちらは弁護士に相談しますので」 「弁護士? 大げさにしすぎよ。これ以上噂になって恥をかきたいわけ?」 「噂? 何の話ですか?」 「ご近所の方にあなたのことは話してあるわ。貧乏な家の出なのに図に乗ってる子だって。私のお茶会の会長とは仲がいいのよ。それを踏まえてよく考えなさい」 私は通話を切った。そして、同じ日の午後、親友の美咲にすべてを話した。 「ちょっと助けてほしい。浩司が他人の家を勝手に取り壊してアパートを建てたって連絡してきたの」 「は? 何それ?」 「私の実家だと思ってたみたい。義母も同じ勘違いをしてる」 美咲が送ってきた住所を見て、私は凍りついた。 「みさ、これ、うちの祖母の家の住所なんだけど」 「え? 私が3年前に相続したやつ? 土地自体は5年前に買ったって言ってたわ。もちろん売ってもない。今も名義は私一人だけだし。誰かが勝手なことをしてるはずない」 「嘘でしょ? 結構大きな家だったはずよ。おばあちゃん、よく友達を呼んでお茶会とかしてたから。それを工事がさら地にして、アパートまで建てたっていうの」 「ありえない。おばあちゃんちが亡くなったのね」 「なんで浩司の名前で土地が売れたんだろう。名義は私のはずなのに」 「多分、ブローカーが偽造書類を用意したんだよ。移転登記も印鑑証明も偽物で、正規の所有者になりすましたんだと思う。つまり、私名義の土地に、私の許可なく勝手に建物を建てたってことよ」 「それ、全部犯罪じゃない?」 「ええ、完全にアウトよ。詐欺、文書偽造、住居不法侵入、挙げたらきりがないわ。業者の名前は聞いてるんだよね?」 「うん。あまり聞いたことない名前だったけど」 業者名を伝えると、美咲は冷たい声で言った。 「ああ、ここはね、分かったわ」 「え、知ってるの?」 「実は別の仕事でずっと追ってたの。いろんなところから訴えられてるからね、ここ。まさかあんたの元旦那がここに手を出すなんてね。何かしでかすとは思ったけど、さすがに祖母の家だとは読めなかった」 私は小さく呟いた。 「ねえ。おばあちゃんが植えた樹齢80年の桜。毎年2人で見に行ってたやつ。あの木、まだ立ってると思う?」 「多分、ないと思うわ。土地を買った時に一緒に植え替えてたの。敷地もさら地になってるでしょうし」 「そう。少しだけ時間をくれる?」 「もちろんいいわ。私も色々整理したいし」 … Read more

28 August 2026