夫が酔って帰ってきて、開口一番「お前とは離婚する。本気だからな」と言った。驚いて理由を問いただすと、「マッチングアプリで知り合った27歳のゆいちゃんとハワイに行く」と、平然と浮気を認めた。新婚旅行だって国内にしたのに、浮気相手にはハワイだなんて。悔しくて涙が止まらなかった。でも、翌日、私は彼を地獄に突き落とす計画を思いついた。仕掛けた「両親の葬儀」という嘘に、彼はまんまと引っかかった。自慢の…

夫が酔っ払って帰ってきたのは、深夜のことで、私はまだ起きていた。 「お前とは離婚する。本気だからな」 リビングに入るなり、彼はそんなことを言った。酔っていることはすぐにわかった。私はため息をついて、冷たいお茶をコップに注いだ。 「何酔ってるの?」 「彼女と決着をつけてきたんだよ」 「彼女? 浮気してるの?」 「ああ、めっちゃしてる」 彼は笑いながら、マッチングアプリで知り合ったという「ゆいちゃん」の話を始めた。二十七歳で、付き合って半年になるところだと言う。今日はホテルに泊まると言い、私は怒った。 「ふざけんな」 「怒らないでよ。僕ちん、早く帰ってこいよ、なんて言われたら、やっぱ行くしかないだろ」 「じゃあね」 彼はそう言い残して、また出ていった。 翌朝、彼は頭が痛いと言いながら実家に帰っていた。私は彼にLINEの履歴を見るように言った。昨夜の酔った勢いのメッセージが、そこには残っていた。 「これは俺じゃない」 彼は言い張った。 「会社の人のいたずらだろ。AIで何でもできるから怖いよな」 私は彼に写真を見せた。彼が女性と二人で写っている写真が、送られてきていた。 「加工だな」 「そうやって言い訳するんだ? 酔ったら本音が出るタイプだもんね。昨日の言葉は全部本心なんでしょ?」 「覚えてない」 「嘘つかないで。正直に言ってよ」 「ああ、そうだよ。だったらなんだよ。お前より若くてナイスバディの女なんだよ。お前は負けたんだ」 彼は開き直った。私は、勝ち負けは試合が終わるまでわからない、と言った。 「私は両親に、正しく生きていれば必ず報われると教えられて生きてきた」 「それが何だよ」 「悪どい人間が幸せになることはないとも言われた。それを証明してみせる」 「あそ。じゃあ頑張って覚悟しなさい。慰謝料だろ? 相場じゃ二人で三百万くらいらしい。そのくらいで今後の幸せが得られるなら払ってやるよ」 「では遠慮なくいただきます」 そう言って、私は彼に話を続けた。 「来週からの出張だけど、あれ嘘なんでしょ?」 「浮気旅行だよ。驚くなよ。ハワイ旅行だ」 「私との新婚旅行でさえ国内にしたくせに、随分と奮発するのね」 「当たり前だろ。お前は国内で十分だが、彼女はハワイレベルってこと」 彼は煽ってくる。私は実家の母に電話をした。 「お母さん、聞いてください。かやがめっちゃ浮気してるんです」 「は? しかもその相手とハワイ旅行に行くんですよ。ひどくないですか?」 「串焼きにしてやりましょう」 「竹串じゃ刺さらないですよね」 「じゃあ丸焼きよ」 「私なんか国内旅行で十分だって言うんです」 「私だって母さん行きたかったの? 許せない。海に沈めてやりましょう」 「海が汚れます」 「じゃあ山ね」 「土壌汚染が心配です」 「だったら木に吊るすわ」 「それでお願いします」 冗談を言っている場合じゃない。私はハワイ旅行を阻止したいと母に話した。 「やっぱり行かせましょう。金をドブに捨てさせるのよ。私が事故にでもあったことにすればいいじゃない」 「そんな不謹慎な嘘、つきたくありません」 「本人がいいと言ってるんだからいいのよ。両手両足と頭蓋骨折くらいの設定にしましょう」 「生きてる方が不思議じゃないですか」 「それで帰ってこなかったら親子の縁を切るわ。そんな嘘が通用しますかね」 母は楽しそうだった。 ハワイ旅行当日、彼は愛人と最高だと投稿してきた。私はこう返信した。 「今すぐ帰ってきて」 … Read more

29 August 2026

「みゆの学費、全額使ったから。不倫相手と店を始めるための資金だ。あ、みゆにはお前から謝っといて」…

「大地のLINEに『今日は残業で遅くなる』って来たのは、午後9時すぎだった。 10分後、私はスマホを握りしめたまま震えていた。 友達が偶然見たと言った。大地が知らない女とラブホテルに入っていくのを。 「飲み会で酔ったから、休ませてもらってただけだ」 「残業じゃなかったの?」 「飲み会も残業みたいなもんだろう」 私は怒りよりも先に、冷たい現実が胃のあたりに落ちていく感覚を覚えた。 「男女でラブホに入って、何もないと思ってるの?」 大地は鼻で笑った。 「そこまで分かってたのかよ。もったいぶった言い方しやがって」 開き直っていた。 「大地、あなたね。私と再婚してまだ3年よ」 「だから?」 「たった3年で不倫って。しかもみゆちゃんが大学合格したばかりなのに」 「みゆは関係ないだろ」 「ついこの間、家族でお祝いしたばかりじゃない」 「みゆだって18だろ。この程度のことでガタガタ言わないって」 私は努めて冷静に言った。 「年頃の女の子が、父親の不倫を知ったらどう思う?」 「あー、はいはい。お前には分かんないか。まあ、初婚じゃないしな」 「どういう意味?」 「みゆはこれくらい慣れっこだってことだよ。俺がみゆの母親と離婚したのも、不倫が原因だしな」 心臓が止まるかと思った。 「何それ。私には教育方針の違いだって言ったじゃない」 「そんなの嘘に決まってんだろ。不倫して離婚しましたって正直に言ったら、お前は俺と結婚しなかっただろ」 私は言葉を失った。 「そういうことだよ」 大地はスマホをいじりながら、何気ない調子で続けた。 「てか、みゆで思い出したわ」 「今度は何?」 「みゆの学費。不倫相手と店をやるための資金に使ったから」 「は?」 「学費の支払い、もうすぐだろ。俺とあいつの夢の店だから、理解してくれよ。あ、みゆにはお前から謝っといて」 私は膝が抜けそうになった。 「ふざけないで。あのお金は私が独身の頃から貯めてたお金よ。夫婦共有の通帳に入れてたから共有財産だっていう理屈?」 「そうだな」 「そんな話が通るわけないでしょ。店だって私とやるって言ってたじゃない」 「あー、俺は最初からお前とする気なかったけど」 私は目の前が真っ白になった。 「へ?」 「あ、そうそう。お前が一生懸命作ってたレシピももらってくから」 「そんな──」 大地は立ち上がって、玄関に向かった。 「じゃあ俺は今日からそっち帰らないから。後のことはまるっと任せたぞ」 ドアが閉まる音がした。 私はしばらく、その場で立ち尽くしていた。 ──10分後。 スマホに着信が入った。みゆからだった。 「ゆかさん、バイト終わった?」 「今さっき終わったとこ。……みゆ、ごめんなさい」 「何? 急に謝って。どうしたの?」 私は震える声で言った。 「みゆの大学の学費、なくなったの」 「……え、それ、やば」 … Read more

29 August 2026

私は弁護士。夫は年収600万円のサラリーマン。家賃も光熱費も生活費も、全部私が払ってきた。 ある日、義母が突然言い放った。「あんたの貯金5000万で、二世帯住宅を買ったわよ」。 しかも契約済み、もう手遅れ。私が「それは預かり金で、私のお金じゃない」と説明しても、義母も夫も聞く耳を持たない。…

「あんたの貯金、5000万円で家を買ったわよ。」 義母が、まるで今日の晩ご飯の報告でもするかのように言った。私は一瞬、何を言われたのか分からなかった。 「さすが弁護士さんね。結構溜め込んでたじゃない。驚いちゃったわ」 頭の中が真っ白になる中で、私は必死に言葉を探した。 「…もしかして、勝手に通帳を見たんですか?」 「ちょっと目に入っただけよ」 「ありえないんですが。通帳は常に私のカバンの中に入れて、持ち歩いてるんです」 「そうだったかしら。廊下を歩いてたら落ちてたわよ」 また、カバンを漁ったのか。いや、そもそも「また」じゃない。この人は何度も私の私物を覗いていた。用事もないのにふらっと家に来ては、部屋の中を物色する。それに気づいていながら、私はずっと黙っていたのだ。 「それより、そんな大金を持ってるのに、息子や私に黙ってたことを詫びなさい」 「謝る必要はありません」 「だったら家族のために使わせてもらうわ。息子の名義で家を買ったのよ。たったの5000万円でね」 「しかも二世帯住宅よ。今まで別々に暮らしてたけど、これで息子と一緒に暮らせるわ」 私は頭を抱えたくなった。勝手に私の貯金を使う前提で、しかも二世帯住宅。私が一軒家を望んでいるかどうかも聞かずに。 「勝手に決めた上に、人の金を当てにするなんて…おかしいですよ」 「どうして?あんたも住めるんだからいいじゃないの」 「私はマンション派です」 「え?絶対に一軒家の方がいいわよ」 私は夫に状況を説明し、彼を呼び出した。すると夫は、義母の行動をまったく気にしていない様子だった。 「お母さんが見た通帳の5000万円は、私のお金じゃないんだが」 「は?どういうこと?」 「あれは弁護士用の預かり金口座なんだよ」 義母は当然、その言葉を理解できなかった。私は法律の話を簡単に説明した。 「弁護士は依頼者から預かったお金を、自分の事業用口座とは明確に分けて保管する義務があるんです。そこから手数料を引いて、依頼人に振り込んだりするための口座でした」 「え…知らなかったわ」 「なのであのお金は、手数料を引いたら依頼人に返すお金なんですよ。二世帯を買うほど残りません」 「まさか…」 義母の顔色が変わった。しかし、次の瞬間にはまた開き直っていた。 「まずいわ。もうハウスメーカーも決めて契約しちゃったのよ」 「嘘でしょ?」 「内見もしたわ」 「それすら私が知らないってどういうことですか?」 「着工前にあんたが来たら邪魔してきそうだったから」 良くないことだと分かっていたから、隠した。そう認めたも同然だった。 「でも完成すれば喜んでもらえる自信はあるのよ。場所はどこですか?」 「都内よ」 「…2 3区(にじゅうさんく)内ではなく“都内”ですか?」 「2 3区(にじゅうさんく)は高いからね。緑も多くて自然豊かで静かなところよ。あんたの職場まで電車とバスで1時間半もあれば着くわ」 「待ってください。1時間半って本気ですか?」 「太陽は頑張って通って張り切ってるわよ。若いんだからやればできる。どんまい」 「いりませんし、すみません」 家のローンは夫の収入だけでは通らなかった。義母は言った。 「太陽の収入でギリギリローンは通せたけど、あんたの助けもないと今後払っていけないのよ」 なるほど、これが理由か。今時、2 3区(にじゅうさんく)内で5000万円で買える家なんてほとんどない。だから“都内”の遠い場所を選んだのだ。私の通勤時間を犠牲にして。 「通勤に時間をかけるのが嫌なんです」 「気ってんじゃないわよ。本読んだり映画見てれば、1時間半なんてあっという間でしょ」 「それってお母さんが言う言葉ですか?本人が嫌だって言ってるのに、興味もない本と映画を押し付けるんですか」 「とにかく決定事項なの」 数分後、夫が私に言った。 「お母さんから連絡があった。一軒家買ったって本当?」 「将来的には買うつもりだったし、別にいいだろ」 「そんな話したことないよね」 … Read more

29 August 2026

「次もこんな弁当だったら叩き出すからな。寄生虫が」 13年間、身を削って義母の介護と家事を全部一人でやってきたのに、夫は給料を入れているだけで自分が偉いと思っていた。そんな夫に、私は静かに言った。 「あなたの嫁は今日で終了よ」 すると夫は笑いながら言った。 「うちから出て行って、お前が生きていけるわけないだろ」…

「ちょっと、今日の弁当なんだよ。昨日の残りじゃん。手抜きすんなよ」 夫の和真が弁当箱を開くなり、そう言った。 「そんなこと言われても、昨日の夜もお母さんの吸引機の音で寝られなかったんだよ」 「はあ? 痰が詰まっただけだろ。なんでそんな大騒ぎするんだよ」 「痰が詰まって息ができなくなったんだよ。命に関わることもあるんだよ。なんでそんな無責任なこと言えるの?」 「母さんの介護はお前の仕事だろ。俺は関係ないし」 13年間、夫はずっとこの調子だった。介護も家事もすべて私に押し付けて、自分は働いて金を入れているからそれでいいと思っている。 「文句あるなら出ていけよ。誰のおかげで飯が食えてると思ってるんだ」 「私が家事と介護をやってるから生活が成り立ってるんでしょ」 「俺は外で働いて生活費を稼いでる。お前は一円も稼いでないだろ。俺に逆らっていいと思ってるのか?」 私は黙って謝った。期待していた自分がバカだったと、心の中で思った。 「次もこんな弁当だったら叩き出すからな。寄生虫が。立場をわきまえろ」 翌日、お母さんがLINEで聞いてきた。 「あなた、昨日なんで泣いてたの? 私の介護してる時に」 「何でもないです。目にゴミが入っただけですから」 「あなたはこの13年、本当によくやってくれたわ。私の介護が辛いなら、もう施設に入ってもいいのよ。あなたの負担になりたくないから」 「そんな寂しいこと言わないでください。私には両親がいません。お母さんが本当の母親なんです」 お母さんは少し間を置いて、こう言った。 「さおりさん、あなたは今から嫁終了よ。和真と離婚しなさい」 翌日、また弁当のことで怒られた。朝5時に起きて唐揚げも卵焼きもきんぴらごぼうも手作りしたのに、彩りが悪いとか言い出した。 「お前と同じ主婦がもっと綺麗な弁当作ってるんだぞ」 「お弁当作ってすぐに介護があるから、そこまで時間かけられません」 「それは手抜きのための言い訳だろ。俺のためにもっと努力しろ」 「努力? 『頑張ってるとか関係ない』って言ったのはあなたの方でしょ」 「それはお前の話だ。お前の頑張りは一円にもならない。俺の頑張りは給料になるんだよ。前も言ったよな。次くだらない弁当だったら叩き出すって」 「オッケー。じゃあ出ていくね」 「ふざけてるのか。うちから出て行ってお前が生きていけるわけないだろ」 「それはやってみないとわからないでしょ。あなたの嫁は今日で終了よ」 「ああ、そう。やれるもんならやってみろ。泣いて謝るまで許さないからな」 数日後、和真が離婚届を出してきた。 「おい、さおり。離婚届出してきたぞ」 「あ、そう。ありがとう」 「速攻で叩き出したかったけど、母さんの介護があるからな。ここ数日は置いてやってたが、離婚した以上は他人だ。すぐに出ていけ」 「オッケー。ちょっと手が離せないから、あとでね」 「どうせすぐに帰ってくるくせに、ご苦労なことだな」 「違うけど。今はお母さんの介護してるの」 「いや、出てくんだろ。早く出ていけ」 「何言ってるの? 帰ってきたんだよ。自分の実家に」 「はあ? お前に実家なんてないだろ」 「言ってなかったっけ? 私、お母さんの娘になったから」 「はあ? 縁組? 誰と誰が?」 「私とお母さんが。あなたの嫁はやめました。離婚したからね。でもお母さんの娘になったから、帰ってきたの」 「何言ってんだ?」 「今日から改めてよろしくね。私の方が年下だから、妹よ。ちなみに私はもう嫁じゃないから、お弁当は作りません。あなたの食事も洗濯も掃除もしません。そこはしっかり把握しておいてね、お兄ちゃん」 1週間後。 「くそ、さおり。いい加減にしろよ。このシャツ、アイロンかけてないからよれよれで、今日部下に笑われたんだぞ」 「自分でやってって言ったでしょ」 … Read more

29 August 2026

「土下座してでも、この1年で全部取り返します。それ以上のお金もつけて差し上げますから、どうか力を貸してください」――高校を卒業したばかりの娘に、そう言われた日のことを今でも覚えている。夫は私が独身時代に貯めた300万円を娘の学費から盗み、しかもその金で不倫相手とレストランを開いていた。レシピ帳まで持って行かれた。私は泣き寝入りするしかないと思っていた。しかし、私の目の前で娘が静かに笑った。そ…

「大地、今どこ?」 「どこって会社だけど。今日は残業で遅くなるって言っただろ」 「嘘でしょ」 「はあ? 嘘ってなんだよ」 「私の友達が見たって言ったの。大地が知らない女とホテルに入っていくのを」 「ああ、あれは飲み会で酔ってたから介抱してただけだ」 「飲み会? 残業じゃなかったの?」 「飲み会も残業みたいなもんだろ」 「じゃあ聞くけど、介抱ってラブホでするものなの?」 「……そこまで分かってたのかよ。もったいぶった言い方しやがって」 「何その言い方? 開き直るつもり?」 「逆に聞くけど、男女でラブホに入って何もないと思ってんの?」 私は震える声を必死に押し殺した。再婚してまだ3年。たった3年で不倫。しかも私の連れ子・みゆが大学に合格したばかりの、まさにそのタイミングで。 「ついこの間、家族でお祝いしたばかりじゃない。みゆに何て説明する気?」 「みゆはもう18だろ。この程度のことでガタガタ言わないって」 「そんなわけないでしょ。年頃の女の子が父親の不倫なんて知ったら――」 「はいはい。お前には分かんないか。まあ、お前は血のつながらない母親だもんな」 その一言に、心臓が氷のように冷たくなった。 「どういう意味?」 「みゆはもう慣れっこだってことだよ。俺がみゆの母親と離婚したのも不倫が原因だしな」 「何それ? 私は教育方針の違いだって聞いてたけど?」 「そんなの嘘に決まってんだろ。不倫して離婚しましたなんて正直に言ったら、お前は俺と結婚しなかっただろ」 「……そういうことだったのね」 「てか、みゆで思い出したわ」 「今度は何?」 「みゆの学費。不倫相手と店をやるための資金に使ったから」 「は? 店? 使ったって……300万全部?」 「学費の支払いはすぐなんだよ。俺とあいつの夢の店だから理解してくれ」 「ふざけないで。あのお金は私が独身の頃から貯めていたものよ。共有の通帳に入れてたから共有財産でしょ?」 「そんなバカな話が通るわけないだろ。店だって俺とお前でやるって言ってたじゃない」 「あー、最初からお前とする気なかったけど」 「え?」 「そうそう。お前が必死で作ってたレシピももらってくから」 「そんな――」 「じゃあ俺は今日からそっちには帰らないから。後のことは全部任せたぞ」 電話は一方的に切れた。私はしばらく、スマホを握ったまま動けなかった。 10分後。 みゆがバイトを終えて帰ってきた。「ゆかさん、ドンピシャー。マジで今さっき終わったとこ」 「みゆ、本当にごめんなさい」 「何なに? 急に。……え、まさか大学の学費、なくなったの?」 「ああ、まあ、そんな感じ」 「うわ、パパ終わってんね。らしいっちゃらしいけど」 「実は大地が全額使っちゃったみたいで。さっきネットバンクで確認したら残高がゼロで。せっかく合格したのに……」 「いやいや、別になんとかなるっしょ。バイトで貯めてるし。ワンチャンあるんじゃね?」 「いや、コツコツ貯めたとはいえ300万よ」 「まあでもなんとかするわ」 「なんとかって――」 「私の両親に借りてでも払うから安心して」 … Read more

29 August 2026

結婚式場の受付で「貴方の席はありません」と言われた。招待状を差し出すと、義姉は笑いながら「ああ、印刷ミスよ。消しておいて」と一言。そして私にこう言った。「私の結婚式に、中卒の女が来られるわけないでしょ。」夫はそれを黙って見ていた。でも私は知っている。義姉も中卒だってことを。そして夫は、私が式場を追い出された後も、何も言わなかった。傷ついたのは、学歴の話だけじゃない。あの日から、私はある決意を…

式場に着いた瞬間、受付で「席がない」と言われました。 「何かの間違いだと思うので、確認してもらえますか?」 「何も間違いじゃないわ。」 「え、でもお姉さんから招待状をいただきましたけど……」 「ああ、マジ?印刷ミスだわ。消しておいて。」 「いえ、だからもう来てしまってるわけで……」 「大体さ、考えれば分かるでしょ。私の結婚式に中卒の女が来られるわけないじゃん。」 「そんなシステム初めて知りました。学歴によって入場制限があるなんて。」 「祝儀は置いていきなさいよ。」 「夫と一緒に来ました。」 「あっそ、ならいいわ。」 「お言葉ですが、お姉さんも中卒でしたよね。」 「はあ?なんであんたが知ってんのよ。」 「夫から聞きました。高校の時に悪さして退学になったって。」 「で、それが何だっていうのよ。」 「だとしたら、学歴を理由に追い出すのは違うんじゃないかと思って。」 「バカ。」 「私は結婚後に高卒認定を取ったの。」 「そうなんですか。それは素晴らしいですね。私は家庭の事情で高校に行けなかったとはいえ、そこまでの努力はできなかったので。」 「あんたとは格が違うの。一緒にすんな。」 「でも、お母さんも中卒ですよね。」 「いちいちうるさいわね。昔の人なんだから、別に珍しくないでしょ。」 「正直に言ってください。私のことが嫌いなだけですよね。」 「うん。大嫌い。」 「わかりました。夫の姿が見えないんですが、ご存知ですか?」 「親族だから控え室にいるでしょ。私を放置して。」 「なるほど。夫に伝言をお願いできますか?この件についてどう思うか、至急連絡してくれと。」 「神父を伝言板に使わないで。でも今日は気分がいいから伝えてあげるわ。」 夫への伝言を託し、私は会場を後にした。 数分後、携帯が鳴った。夫からだった。 「姉貴から連絡しろって言われたんだけど。」 「私、追い返されたの。お姉さんから聞いてる?」 「うん。ひどいとは思わない?」 「ちょっとは思ったけど、空気読めよ。姉貴が主役が嫌だって言ってるんだぞ。楽しい式に水を差さなくていいだろ。」 「私が何をしたのか自覚がないのよ。学歴のことだけで追い返すなんて、ちょっと短絡的すぎるっていうか。」 「多分、顔じゃね。」 「どういう意味?」 「いや、前に姉貴から、今後親族の集まりにお前を呼ばないようにって言われたんだ。」 「なんで?」 「顔合わせの時に、姉貴の婚約者が俺の弟の奥さん綺麗な人だねって言ったらしい。事実だけど、それは良くないわね。」 「否定しろよ。自分の彼女の前で他の人を褒めるのはだめよ。あなたはよくやるけど。」 「そうだっけ?街に出れば、あの人可愛くないって聞くよね。」 「うん。正直に言ってるだけだけど。」 「本気で私の容姿が原因で式への参加を拒否したの?」 「多分そうじゃないかなと俺は思ってる。」 「この日のために服も買ったし、美容室まで行ったのに。」 「まあ、家でゆっくりしてろよ。」 「普通さ、私の妻だぞ。追い返すなんてあんまりだって怒るところじゃないの?」 「まあでも、身内の方が大事じゃん。」 「今、何とおっしゃいました?」 「家族が大事だろ?」 「そうだよな。」 「あ、そうですか。私は家族じゃなかったんですね。知りませんでした。」 「いやいやいや、そうじゃなくてさ、過ごしてきた時間が違うって話。今後誰と一番長く過ごしていくかも分からないんだ。」 「あ、そうか。」 … Read more

29 August 2026

夫が突然「タワマンに住もう」と言い出したのは、結婚3年目のことだった。嬉しくて夢中で賛成したけど、数日後、私は夫の電話を偶然聞いてしまった。「あいつアホだから、ちょっとおだてたら買おうか。財産分与目当てで離婚するんだよ」。私の貯金3億を狙った、夫と愛人の完璧な計画。私は何も言わず、その場は笑顔でうなずいた。そして3ヶ月後、夫は得意げに離婚を切り出してきた──「財産分与を要求する」。私はゆっく…

「タワマンに住みたいな」 ミキと結婚して3年。夫が突然、そんなことを言い出した。 「そろそろ俺たちも次のステージに行ってもいいんじゃないかな。それがタワマンに住むことなんだよ」 ミキは社長だ。若い企業だけど、それなりに成功している。 「芸能人でも、無理して高い家賃のところに住むって言うじゃん。そうすることで、さらに売上が上がったりするかもよ」 彼は駅前のタワマンを見つけてきた。予約段階で埋まりそうだけど、地方だから売れ残っているらしい。 「ミキと一緒に夜景見ながらワイン飲んでさ、子供作って2人で育てるのを想像したら、ワクワクが止まらなくなって」 ミキもその気になった。モデルルームを見に行くと言う夫に、名義は夫でいい、支払いだけ手伝うと承諾した。 数分後、夫が戻ってきた。 「タワマン買えそうだよ」 「え、本当?」 彼は電話で誰かと話している。 「あいつアホだからさ。ちょっとおだてたら買おうか。だってちょろすぎて笑い止まらんわ」 「し君ひどい」 「契約したら即婚してやるんな」 「あの銭逃げ場女がごねたら無理じゃない?」 「大丈夫だって。ああいう女はプライドが高いから、泣きついたりすがったりしないもんなんだよ」 「ええ、そうなんだ」 ミキは夫の電話を聞いていた。夫は「リオ」という女と組んで、ミキから金を搾り取る計画を練っていた。 「LINEの履歴は必ず消す。写真もだ」 「タワマンの鍵をもらうまでは会社以外では合わない」 「ここでもし探偵でもつけられてみろ。全部終わるぞ」 「あいつの貯金が3億くらいあるのは分かってるんだ。1億のタワマン買っても懐は痛まない」 「本当、銭逃げ場だよね。し君にあげないで貯め込んでるんでしょ」 ミキは夫の計画をすべて聞いてしまった。でも、彼女は何も言わなかった。その場は夫の計画通りに動くフリをした。 数日後、夫はミキにマンションギャラリーの話をした。 「結構良くない?」 「うん。地方のタワマンって8000万くらいなんだね。1億ちょいじゃなかった」 「それなら最上階しかないだろう」 「でも、忘れ物したら30回まで戻るのだるくない?3階が空いてたから、そこにしようかと思うんだけど」 「はあ。そんなのタワマンでも何でもないだろう」 「2階は駐車場だし、将来子供が走り回っても気を使わなくていいし」 「いやいやいや。なんで勝手に決めるんだよ」 「ごめん。でも1億超えたらさすがに俺の名義でローン通らない」 「8,000万でギリギリだって言われたよ」 「私の名義にしとく?」 「あ、言うな。そんなの男のプライドが許さない」 夫は怒って、考えると言い残して去った。 その夜、夫はリオに電話していた。 「どうしよう。あのアホ女がタワマンの3階とか言い出した」 「はあ。そんなのそこら辺のアパートと変わんないじゃん」 「マジでケちりやがってさ。最上階がいいよ。じゃないとタワマンの意味ないもん」 「でもぶっちゃけ俺の年収だと8000万くらいが限度なのは本当っぽいんだ」 「年収1000万もあるのに?」 「8,000万のローンを組んだら、月々の支払いが25万を超えるんだよね。手取り50万ちょいだから、半分も払うことになる」 「そんなんじゃ生活できないじゃん」 「だからあいつにマンション代を全部払わせるってわけ」 「そんなにうまくいくかな?」 「任せろ。俺には完璧な計画があるんだから」 「3階じゃあ嫌だよね」 「うん。し君と一緒ならどこでもいい。地下でも水中でもついていくよ」 「リオ可愛すぎんだろう」 3週間後、ローンの本審査が通った。ミキが保証人になったからだ。 「ありがとう。夫婦だもん。当然だよ」 夫はミキと一緒に、3階でもいいと思えるふりをしていた。 … Read more

29 August 2026

五年ぶりに元夫から電話がかかってきた。第一声が「母さん、明日の結婚式場代、1000万円ありがとう」だった。私は一瞬、何を言われているのかわからなかった。だって、私は一銭も払っていない。浮気を繰り返し、私たちの貯金を使い果たした男が、私の名前を勝手に使って「お前は役に立つ」と言ってのけた。そして、彼の息子からは、かつて自分に会わせていた「新しい母親候補」の話まで聞かされた。その時、私は彼の隠し…

「母さん、明日の結婚式場だ。1000万円、ありがとう。お前も役に立つじゃないか。父さんも感謝してたぞ」 電話の向こうで元夫が得意げにそう言った。五年ぶりにかかってきた電話の第一声が、これだった。 「え…何を言ってるの? 私、何か間違ったことした?」 「何を意味のわからないことを言ってるんだ。俺が感謝してやってるんだから、素直に受け取れよ」 「ちょっと待って。あなた、結婚したの?」 「そうだよ。相手はある会社の社長令嬢だ。俺にふさわしいお嬢様なんだ」 「そう…もうあなたも結婚する年になったのね」 「もう27だからな」 「あなたと離ればなれになってから、もう5年も経つのね…」 「あんたは順調にババアへの階段を登ってるって感じだな。この5年でずいぶん口が達者になったな。一緒に住んでた時は、まともに口も聞いてくれなかったのに」 「当たり前でしょ。あなたと私は赤の他人なんだから」 「結婚したんだから、一緒に住むのは当然よ。まあ、お父さんが再婚して、あなたは前の奥さんとの間にできた子供だから、混乱するのも当然だとは思うけどね」 「あんたは俺の前ではいい母親を演じてたけど、俺はあんたのことを母親だなんてこれっぽっちも思ってなかった」 「演じてたわけじゃないわ。私は心からあなたの母親でありたいと思って接してたのよ」 「そういうのがマジで気持ち悪かった。あんたみたいな地味でつまらないババアが母親だなんて、考えたくもなかったね。俺の母さんはもっと美人で、自慢できる存在だったから」 「そうなんだ…できるだけ最初はあなたと仲良くなれるように頑張ったけど、結局最後まで無理だったわね。あなたとは親子にはなれなかったと思ってる」 「そりゃそうだよ。それでもあんたは式場を払ってくれたんだな。まあ、かなりの物好きだよ。でも俺は感謝してるぜ。母親とは思わないが、使い勝手のある存在だと認識を改めてやるよ」 「いいえ、それはしなくていいわよ」 「は?せっかくの申し出を断るのか?」 「別に使い勝手のいい存在だと思われたくもないし。それに、私はあなたに感謝されるようなことはしてないわ」 「何を言ってるんだ? 式場を払ってくれただろうが」 「払ってないわよ」 「はあ?」 「他人の式場なんて払うわけないでしょ。しかも1000万円。今もらってる給料じゃそんなの無理よ」 「そういや会社を辞めたんだってな。父さんと同じところで働いてたのに」 「そうよ。経理部長であるあんたのお父さんと会社で顔を合わせるのが嫌だったから、自主退職したのよ。給料は下がったけど、自分がやったことを後悔はしてないわ。ただ、1000万円なんてお金を払える余裕はないわよ」 「マジか…でも父さんがそう言ってたぞ。友則が払ったって」 「うん…ちょっと待ってて。私が直接話を聞いてみる」 「連絡は取れるのか?」 「ブロックはしてたけど、さすがにこんな嘘をどうして言ったのか気になるから、連絡してみるわ」 10分後。 「友則、結婚式の話はどういうことなの?」 「おいおい、いきなり連絡してくるなよ。こっちは今バタバタしてるんだから」 「そんなの知らないわよ。いきなり私を変なことに巻き込まないで」 「義母さんから聞いたのか?」 「そうよ。いきなり感謝されて、びっくりしたわ」 「あいつ…なんでそんなことを?」 「それはこっちのセリフよ。なんで私が友則の式のお金を払ったことになってるのよ」 「それで、お前に何か不利益があったのか? はあ。別に、お前が払ったってことにしておけばいいだろう。何の問題もないんだし」 「嫌よ。気持ち悪いわ。しかも1000万円でしょ。意味がわからないわ」 「お前の顔を立ててやったんだけどな。そんな俺の気遣いもわからないのか?」 「つくづく、お前と離婚してよかったよ」 「それはこっちも同じ気持ちよ。あんたと別れて、今とっても幸せだから」 「はっ、言えよ。会社も辞めて、たった一人でつまらない人生を歩んでるだけだろ。それのどこが幸せなんだよ」 「勝手に人の人生を決めつけないでくれる? それよりも、あの1000万円ってのは何なのよ。そもそも、式に1000万円もかけたの?」 「当たり前だろ。相手は社長令嬢だぞ。とんでもないVIPたちも式には来るんだ。それなのに、恥ずかしい式なんてやってられない。だから、あいつなりに色々と頑張ってたんだ」 「でも、1000万円なんて、どうやって…」 「俺が稼いだものに決まってるだろう」 「5年前まで私たちは夫婦だったのよ。あなたの給料だって私は知ってるわ。それなのに1000万円なんて払えるわけがない。ただでさえ、あなたは金遣いが荒いのに」 「お前にはわからないだろうな。こっちは子供のためなら何だってできるんだよ。金なんて、その気になればいくらでも稼げるんだ」 「だとしても1000万円はさすがに大きすぎるわ。それに、どうして私の名前を出したのよ。普通に自分で出したって言えばよかったじゃない」 … Read more

29 August 2026

母は私に言った。「お前はクズの女が産んだガキだ。まともに育つか」と。それが、私が生まれた直後に、実の父が母に放った言葉だった。25年間、母は真相を隠し続け、私はそれを26歳の誕生日に初めて知った。結婚式を控えた私は、復讐のためだけに父を式に呼ぶことを決めた。あいつが今度は私の人生を終わらせる番だと。しかし、彼が私の結婚式から逃げ出した翌日、私は予想もしない事実を知ることになる。あいつを尻尾を…

「お父さんが私を捨てて、若い学生と再婚したって本当?」 母が突然そんなことを言い出したのは、26歳の私が何気なく父親の噂を尋ねた夜のことだった。 「なんで急にそんなこと言うの?」 「知り合いから聞いたの。もう25年も前の話よ」 「私、離婚したとしか聞いてない」 母はしばらく間を置いて、重い口を開いた。 「ごめん。あまりにも胸くそ悪くて言えなかった」 「分かるけど、もう私も26歳だし。覚悟はあるよ」 「そうね。もう立派な大人だもんね。……知りたいの?」 「うん」 「覚悟はいい? いい思い出ではないから」 「いいよ。どうぞ」 母は深呼吸をして、25年前のあの日を話し始めた。 「『ババアのくせにお前が産んだガキがまともに育つか』って、そう言われたの。あなたを産んだ直後に」 「は?」 「41歳での高齢出産だったし、あなたの父親は医者だったから、どんなリスクがあるかは分かってたんだと思う」 「だとしてもだよ」 「そうね。夫が妻に言う言葉じゃないわ。でも問題はその次よ。『医学部の学生が妊娠した。その子を大事に育てる』って言われた時は、人生で初めて白目を向いたわ」 実の父は、母が私を産んですぐに、若い医学部の学生に乗り換えていた。 「研修中の女を妊娠させたなんて、病院内でも結構噂の的になったらしいけど、若い女に浮かれてたのか平然としてたみたい」 「誰に聞いたの?」 「お父さんの友達。共通の友人だったからね」 「へえ」 「ね。お母さんは何か言い返さなかったの?」 「私が黙って『はい。そうですか』って言うと思う?」 「思わない」 「今でも忘れないわ。『覚えてろよ』ってだけ言って、離婚届にサインした」 「かっけえ」 「で、生物学上の父親はなんて言ったの?」 「『覚えられるかよ』って鼻で笑ってたわ」 なるほど、確かに子供の頃に聞いてたらショックだったかもしれない。 私がその話を聞いた「知り合い」とは、遠藤先生という私のかかりつけの医者だった。遠藤先生は、母と父の医学部時代の同期で、三人でよく遊んでいたらしい。本当に偶然なことに、その遠藤先生が私の主治医だったのだ。 「でも、勝手に娘に言わないで欲しかったわ」 「私が言ったんだよ。母ははっきり言わないけど、父は私のことを愛してないから捨てたんだと思うって」 母は首を振った。 「それは違う。あの人は高齢出産がどうとか色々と理由をつけて、ただ若い女が良かっただけなの」 「今更どっちでもいいけど、クズはクズだね」 「うん。でもクズから天使が生まれたから、プラマイゼロどころかプラスの人生よ」 「お母さん、そのせいであんなに苦労したんだね」 「大変だったけど、楽しかった。女手一つで大学まで行かせるなんて、なかなかできないよ」 「そう言ってくれるだけで嬉しいわ」 そして私は決めた。この胸のざわつきを、母にだけ抱えさせておくわけにはいかない。直接、あの男に会いに行こう、と。 数日後、私は遠藤先生に頼んで、父に連絡を取ってもらった。 「お前、くつになった?」 「26歳」 「そうか。大きくなったなあ。今は何やってるんだ?」 「普通に働いてるよ。もうすぐ結婚するの」 「おお、そうか。女は若いうちに結婚して子供を産むべきだ」 私はこみ上げるものを抑えて、核心を突いた。 「1つだけ聞いていい?」 「なんだ?」 「お母さんと離婚したのはどうして?」 父は一瞬眉をひそめ、少し間を置いてから、こう言った。 「いや、実はお前を妊娠してからお母さんは人が変わってしまった。神経症になって毎日怒鳴り散らかしてたんだよ」 「それは大変だね」 … Read more

29 August 2026

「お前、捨て山って知ってるか?」夫は定年退職したその日に、笑いながらそう言った。30年連れ添った妻の私に、だ。「退職金を半分持っていかれるくらいなら、山に捨ててやろうかと思ってな」半分冗談だと信じたかった。でも次の瞬間、彼は本気だった。「お前はもう必要ない。出ていけ」家事も子育ても、全て私がやってきたのに、彼は「お前じゃなくてもよかった」と言い放った。私は何も持たずに家を出た。しかし、数日後…

「お前、捨て山って知ってるか?」 夫が突然、笑いながらそんなことを言い出した。昔は年寄りを山に捨てに行ったという、あの話だ。私は半分呆れて聞き流していたが、次の言葉で固まった。 「今、お前を捨てられそうな山を探しているところだ。とはいえ冗談だがな。離婚となれば財産分与で半分持っていかれるんだろう? だったら山に捨てた方がマシだと思ってな」 「何言ってるのよ。あなた、退職金目当てで今まで結婚生活を続けてきたんでしょ」 「そんなわけないじゃない」 「本当か?」 「そりゃあ、あればありがたいけど、そんな目的でやってきたわけじゃないわ。家族として、お互いに支え合ってきたつもりよ」 夫は鼻で笑った。 「お前が何したって言うんだ? 家で飯作って、ちょっと掃除してただけだろ」 「ちょっと待ってよ。それがどれだけ大変なことだと思ってるの?」 「ほざけ。その程度のことは俺にもできるわ」 「じゃあ、やってみなさいよ」 「やってやるよ。だから出ていけ」 私は驚いて言葉を失った。夫は続けた。 「お前と30年も結婚生活して、もううんざりなんだ。お前はもう必要ない」 「さっき、退職金目当てじゃないと言ったな。じゃあ、退職金は全額俺のものだ。離婚して出ていけばな」 「本気で言ってるの?」 「もちろん。お前が俺の退職金を我が物顔で使うと思ったら、吐き気がするんだよ」 長年連れ添った相手とは思えない言葉の数々だった。私は家事と子育てに人生を費やしてきたのに、夫はそれを「何もしていない」と切り捨てた。 「私だって、あなたの仕事を支えてきた自負はあるのよ」 「家で飯作ってただけの女が何を偉そうに」 「ひどいこと言うのね。自分だって子育てに何も協力しなかったくせに」 「俺の稼ぎであいつらは立派な大人になったんだ」 「それは分かってるわ。でも、私が何もしなかったってことはないでしょ」 「お前じゃなくてもよかった。どの女を選んでも、お前くらいの働きはしたよ」 私の堪忍袋の緒が切れた。 「そこまで言うなら、出ていくわ」 夫は意外なことを聞いてきた。 「心配するわけじゃないが、行くところはあるのかよ」 「ないわね」 「息子夫婦の邪魔だけはするなよ」 「分かってるわ。お世話になりました」 私はその日、30年住んだ家を出た。 それから3日後、息子から夫に電話があった。息子は私と連絡が取れないと心配していたが、夫はこともなげに答えた。 「あいつは出ていった」 「は? なんで?」 「老後までじいさんの面倒を見たくないんだとよ」 「そんなこと言ったの?」 「ああ、ひどい話だろう。おかげでまともに飯も食えてないよ」 息子は警察にでも捜索願を出したらどうかと提案したが、夫は「自分の意思で出ていったんだぞ。失踪したわけでもあるまいし」と取り合わなかった。 息子はさらに食い下がった。 「でも母さん、どこで何してるか分からないんだよ。電話も電源入ってないし」 「そりゃそうだが、あいつの意思なんだから、ほっとけ」 夫は息子の心配を「お前が母さん母さんと言うからだ」と逆ギレして受け流した。 それからさらに数日後、息子が夫のもとを訪ねた。夫は焦っていた。 「母さんと連絡取れたか?」 「いや、まだ折り返しもない。何度もかけてるがつながらない」 「どうにかして見つけろ。大変なことが起きたんだ」 「どうしたの? 急に焦って」 「あいつが俺の退職金を持ち出したんだ」 「はあ?」 … Read more

29 August 2026