式当日の朝、携帯が震えた。相手は、今日結婚するはずの男だった。「悪いんだけどさ、今日の結婚式、なしにしてくんない?」「は?何言ってるの?今からヘアメイク始まるんだけど」「他に好きな人ができたんだわ。ももかが妊娠した。だから今日の式、俺とももかの結婚式に変更しようと思う」「は?」「キャンセル料もったいないだろう。新郎だけ入れ替えるってこと」「私の親族や友人が半分いるのよ。新郎が知らない女に変わ…
式当日の朝、携帯が震えた。相手は、今日結婚するはずの男だった。 「悪いんだけどさ、今日の結婚式、なしにしてくんない?」 「は?何言ってるの?今からヘアメイク始まるんだけど。悪い冗談はやめて」 「俺、お前とは結婚できない」 「なんで?今日まで一緒に準備してきたでしょ?」 「他に好きな人ができたんだわ」 「式当日に言うこと?」 「いつ言おうか迷ってる間に今日になった」 「マリッジブルーでもこじらせたの?」 「違うって。実は半年くらい前から付き合ってて、その子が妊娠したんだよ。今朝検査したら陽性だったって言われたんだ。こんな気持ちでお前と結婚なんかできないだろう」 「本当にあなたの子なの?」 「当たり前だろ。だから俺はももかと結婚する。責任取らなきゃいけないからな」 「私への責任はどうなるのよ」 そこで彼は、信じられないことを言い出した。 「ちょっと相談なんだが、今日の式は、俺とももかの結婚式に変更しようと思う」 「はい?」 「キャンセル料がもったいないだろう。どうせ俺とももかも、いずれ式はあげなきゃいけないし。譲ってくんないかな」 「何言ってんの?」 「分かりやすく言うと、新郎だけ入れ替えるってこと」 「分かった上で、何言ってんだって聞いてんのよ。招待客の半分は私の親族や友人なのよ。新郎が知らない女に入れ替わって、納得するわけないでしょ」 「そこはお前がうまく説明しとけよ」 「もう会場に向かってる人もいるのよ」 「だから今連絡してるんだろう」 「遅すぎるでしょ」 「金なら俺が全額払うから頼むよ」 「私に全部払わせたあなたにお金なんてあるわけないよね」 「それが、まとまった金が近々入る予定なんだ」 「怪しい。騙されてんじゃないの?」 彼女は頭を整理しようとした。半年間、彼は裏で別の女と付き合っていた。妊娠までさせていた。そして今、式場と新居を譲れと言っている。 「また式の準備を一からやるって考えたら、ぞっとする。このまま使わせてくれたら楽できるじゃん」 「いやいや、準備してたの、私よ」 「あんなのだるいに決まってんだろう」 「私が気を使うことじゃないけど、お下がりの結婚式なんて、相手の女性が嫌がるんじゃない?」 「ももかはそういうの気にしないって」 「女いるかな?」 「じゃあお前の身内には、飯だけ食って帰ってもらうか」 「誰が納得すると思ってんのよ。頭おかしいの?」 「じゃあ今すぐ連絡して、お前の方だけ断ってくれ」 「みんな今日のために予定を開けてくれたのに」 「悪いな」 彼女は深く息を吸った。混乱して見逃していたが、これはつまり、半年も騙されていたということだ。ありえない。 「どっちもいい女だから選べなかったんだよ」 「ケースに並んだケーキみたいに言わないで」 「確かに昔からケーキ選ぶの苦手だったわ」 「お母さんはなんて言ってるのよ」 「おふくろは大賛成してくれてるよ。後継ぎができたって大喜びだ」 「親子してどうかしてるわ。不貞行為を容認するなんて」 「おふくろが言うには、ももかの方が愛嬌があって好きだって」 「ああ、そうですか」 「大体、後継がどうとか言ってるけど、まだ性別も分からないのに浮かれていいわけ?」 「母さんの勘は当たるんだよ。とりあえず今回は身を引いてくれ」 「次回があるみたいに言わないで」 「式場スタッフが近くにいるだろう。ドレスをお前のサイズより二つくらい下げたやつで、いくつか用意するよう言ってくんない?」 「よく私に頼めたわね」 「それと、新居のマンション、あれもももかに譲ってやってほしい」 … Read more